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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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当たり前の日常ですわ

今回短めです。

「わたくしって異世界から来たのに、順応早かったですわよね」

「そうだな」

 いつも通りの昼下がり、シュエリアに突如、そんな話を振られた。

 ふいに昔を懐かしむ何かでもあっただろうか。

「その所為で、お約束をやっていなかったと思って、後悔しているわたくしですわ」

「お約束?」

「なのでお約束を用意してみましたわ」

「用意とな」

 お約束を用意とは、一体。

「ユウキ! 大変ですわ!」

「何が」

「箱の中に人が入ってますわ!!」

「……あぁ」

 お約束って、そういう。

「あぁって……。見て! 大変ですわよ!」

「あぁはいはい、箱に人が……んっ?!」

 仕方なく、言われた通りシュエリアの指さした方を見ると、確かに箱に人が入っていた。

 段ボール『箱』に『アシェ』が。

「……何してんだ、アシェ」

 いや、でもなんだろうこの既視感は。気の所為かな。

「んー!! んーっ! んんんっ!」

「ん。そうか、シュエリアに詰められたのか」

「んーっ! んんんんっ、んんっ!」

「なるほど、体を麻痺させられて、無理矢理か」

「なんで会話成立してんですの?」

 まあ、でも、うん。

「七十点かな」

「んー?!」

「まだ成長の余地があるっていい事ですわね」

「そうだな、次は他のパターンも見てみたい」

「頑張りますわ。アシェが」

「んーーーっ!!」

 この後、アシェはちゃんと戻してもらったものの。

「はあ、酷い目に遭ったわ」

「ドンマイですわ」

「やった張本人がいう事?」

「ドンマイですわ」

「便利ねぇドンマイ!!」

 シュエリアに悪びれる様子もなく、アシェが憤慨する。

 うん、まあいつも通りだな。

「それで、他には無いか」

「そうですわねぇ」

 シュエリアがうーんと唸り、考える。

「食文化の違いからくる飯顔とか?」

「なんだその飯顔とかいう謎ワードは」

 言わんとしている事は何となくわかるような、わからないような。

 ようは、美味そうに食う顔……か?

「お前らに食レポみたいなこと出来ないだろ。美味いかマズいくらいだろ」

 俺がそう口にすると、シュエリアとアシェが心外だとばかりに口々に文句を言う、が。

「わたくし『ゥンまああ~いっ』くらいは言えますわ」

「私だって『○○の宝石箱や~』くらいは言えるわよ」

「どっちもパクりじゃねぇか」

 人様の反応パクって来てよくもまあ自分はやれるぞ、と来たもんだ。

「他にできそうなことでとか無いのか?」

「できそうな……水爆?」

「やるなよ」

 確かに異世界転生すると現代知識チートとかやるし、それを見て周りがざわつくけど、この場合それだとちょっと違う気がする。

「異世界から日本に来たら驚くこと、とかだろ?」

「やっぱり箱に人が入ってるくらいですわね」

「それしかないのかよ……」

 なんて言うか、コイツはコイツで順応性というか、理解度が高い所為で何見ても直ぐに慣れてしまうんではないだろうか。

「私はあるけど、驚いたこと」

「あるのか」

 どうやらアシェにはマトモにお約束なリアクションと取りたくなるようなものがあったらしい。

「トモリの和服見たときに凄い綺麗でビックリしたわね、後シュエリアのシャツも、この世界の服って着心地いいし、驚いたわ」

「あー。なるほどなあ」

 まあ実際、シュエリアなんてこの世界来た時はアレを穿いてなかったくらいだしな。

「そういう意味では文化的な驚きはありますわね」

「あるのか」

「えぇ。例えば耳かきとか。そんなの無かったから意外と言うかなんというか、驚きの発想とも言えましたわねぇ」

「そういうもんかね」

「そういうもんですわよ」

 異世界では耳かきという発想は無かったようだ。痒くなったりしないんだろうか。

「他にはないのか、所謂カルチャーショック的なの」

「そうですわねぇ……食事が美味しいのは本当ですわよ」

「さっきの飯顔云々ではなく」

「ではなくてですわ。本当に美味しいモノばかりで困りますわ」

「困るのか……」

 この場合何を食べようか迷うという意味なんだろうなと思う。

 実際今から何かを悩んでるし。今日の夕飯に何を頼むか、だろうか。

「夕飯はビーフシチューがいいですわね」

「悩んだ結果いつも通りじゃねぇか」

 コイツの中の食事の選択肢が実際どのくらいなのか知りたい気もするが、話が逸れるしやめておこう。

「他には……」

「ネット~でしょうか~」

「うぉっ……トモリさん来てたんですね」

 いつの間にかひょっこり現れて俺の右隣に座っていたトモリさんである。

 にしてもネットか。

「電波~も~よくわか~りません~」

「まあ、仕組みとか考えたら現代人ですらよくわかってないで使ってますからね」

 そういう物として受け止めて仕組みがどうなってるか、原理がどうとかまで知ってる一般人の方は少ないはずだ。

「確かに眼に見えない物を当たり前のように使ってましたわね。電波とか何ですの」

「Wi-Fi? とかもよくわからないわよね」

「俺に聴くなよ、わからないからな」

 そういうのは発明、発見した偉い方に聴いて欲しい。全然わからんから。

「そういう意味で言えば、VRゲームって凄いですわよね」

「あぁ、義姉さんとかフルダイブ作っちゃったしな」

 某作品、もといSA〇でS〇Oが開発された年までに本当にフルダイブVRのゲームを作る天才である。

本人曰く本当はもっと早くできたらしいが……そこら辺はよくわからない事情でもあるのかもしれないし、どうでもいい。

「仮想の世界での冒険……そして転生……驚きですわ」

「後者はフィクション限定だからな」

 転生までセットになったら本当に驚くわ。やってみたいもんである。

「でも転生ではなくても異世界転移くらいはあるかもですわ」

「お前が目の前に居るだけに無いと言い切れ……いや無いわ!!」

「見事なノリツッコミですわねぇ」

 シュエリアが嬉しそうに笑う。

「はあ。まあゲームとかテレビとか、現代の文明って凄いもんなんだなって思うよ」

「あら、ユウキもそう思いますの?」

「うん? いや、お前らの話聞いてたらさ、当たり前のように使ってるものとかも実際、凄いモノだったりするわけなんだなぁって」

「あぁ、そういう。確かに、日常にある色々な物が当たり前のように使っていてもそれが当り前じゃない事ってあるんだなって感じると……魔法とかもそうですわね。こっちではないから、当たり前に使っていただけに不便さも感じる世界ですわ」

「お前の場合魔法が便利過ぎるだけだと思うが……」

 なんでも出来てしまう魔法って、ホントにド級のチートだからな。

「それでも、ですわ。何だか当たり前の日常にも感動が見えてきましたわ」

「さよですか」

「さよですわ」

 まあそりゃあ、何よりかな。

 当たり前のようにあるモノにも感動と感謝を忘れてはいけないと思ったわけだ。

「という事でユウキ」

「うん?」

「そろそろお腹、空きましたわ」

「はー」

 コイツ、今さっき良い感じの話してたのに、もうこれだよ。

「で、なんだっけ」

「ビーフシチューですわ」

「はいはい」

 こうしてまた、俺達の話は無駄話として終わり。

 俺達はまた翌日には、いつも通り当たり前の日常を当たり前に生きていたのだった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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