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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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ロマンですわ

「ロマンって何ですの?」

「は?」

 いつも通りシュエリアの部屋でアニメを見ていると、終わり際に急にそんなことを言い出した。

「男のロマン、とか言いますわよね。ロマンってなんですの?」

「あぁ、そういう」

 某アニメで「ロボットは男のロマン」的な話をしていたのを言っているのだろう。

「とりあえずロマンとは、でググれ」

「言葉の意味聞いてんじゃねぇですわよ」

「じゃあいつものか」

「そうですわ。語りますわ」

「はいはい」

 つまり暇ってことだな。

 そんなわけで、俺とシュエリアだけで語るのもアレなのでアイネ達にも集合して貰った。

 義姉さんは珍しく都合が付かなかったようで来なかった。

「それで、何のお話しでしょうかっ」

「ロマンについて語るそうだ」

「おいしいマロンですかっ?」

「アイネ、あざといですわ」

 アイネが可愛くボケたものの、シュエリアにすぐにあざといとツッコまれてちょっとだけしゅんとするアイネ。可愛いな。

「それでまず、男のロマンだけれど」

「あー……デカいもんかな」

「デカいもの……ですの?」

 俺の言葉にシュエリアが大量に疑問符を浮かべた顔をする。

「うーん、なんて言うのかな。無駄にデカい夢とか。大きくて強いとか、カッコいいとか……アレだ、一般的に女性に理解されない趣味的な物を夢にすることを男のロマンって言うんだよ。多分」

「なるほど? 大体わかった気がしますわ。女性には感性的に理解できない共感できない夢ですわね」

「そんな感じだと思うぞ」

 俺の言葉を受けてシュエリアがとりあえずそれっぽい解釈をしてくれた。

「で。ユウキにはあるんですの?」

「俺か? まあ、ガン〇ムじゃないけど、専用機は欲しいなって思う。自分だけのってのがまた、良いんだよなぁ」

「あー、男のロマンって奴ですわね。間違いなく」

 どうやらシュエリアには理解されても共感はされなかったらしい。

「逆に女のロマンとか考えてみたらどうだ?」

「女のロマン? ……そうですわね白馬の王子様とかですわよね」

「あー、女のロマンなのかもな」

 実際白馬のってのもわからんし、王子様ってのもな……。

「現代風に言えば高級車に乗ったイケメンってことだよな」

「ま、まあそうですわね」

 俺の言葉があまりにも身も蓋も無かったからか、シュエリアが引いている。

「シュエリア自身には無いのか、そういうの」

「わたくしですの……? そうですわねぇ」

 シュエリアはしばらくうんうん唸って考えると、何か自分で納得したようにうなずいてから答えた。

「愛する人と永遠に一緒に居られたら……とは思いますわ」

「それは多分男でもそう思うけど……まあいいか」

 そしてついでにその夢は叶う方の夢だ。

 っと、そんなことを思っているとなんだ、周りからジィっとジト目で見られている。

「な、なんだ」

「シュエリアも真正面から『ユウキと一生一緒に居たい』って言ってるのもそうだけど、そもそも女のロマンになってないのにそれを若干照れながら『まあいいか』とか言ってイチャ付いてんなぁと思っただけよ」

「いいだろ、夫婦なんだし、新婚だ」

「そうね、でも私達が居ることも忘れないで欲しいわね」

「す、すまん」

 まあ二人だけの雰囲気みたいなのは、出ちゃってたのかもしれない。

「それじゃあアシェはどうだ、ロマン」

「うん? そうねぇ。ロマンねぇ……」

 アシェは指を手に当て「うーん」と考えて何か思いついたように言った。

「無駄にデカいロボとかに乗って銀河系破壊とかしてみたいわね」

「理解できないし共感できないけどロマンかそれ?!」

 百歩譲って巨大ロボまでは分るが、銀河系破壊とか意味の分からんこと言い出したのはなんなんだ。

「たまに何かを無性に壊したくならない?」

「お前それなんかの病気じゃねぇのか……」

 名前のある精神状態なんじゃないかと思ってしまう。大丈夫かコイツ。

「と、トモリさんは無いですか?」

「そう~で~すね~。王子さ~ま~はいる~ので~高級~車~?」

「良いですわね、高級車」

 言いながら何故か俺の脇腹を小突いてくるシュエリア。

「俺の一番はあくまでもシュエリアだから大丈夫だって」

「当然ですわ。じゃなかったら宇宙ごと消し飛ばしますわ」

「アシェより質悪いな」

 アシェのロマン(?)の方がまだ可愛いもんだと思えて来る。

「でも高級車なんてあっても乗れませんよ。免許無いし」

「え、免許無いんですの?」

「いや、俺は一応ある。けど、トモリさんがないだろ」

「トモリが運転するんですの? 白馬の王子様的な話ですわよね??」

 たまに義姉さんの車で移動するときは免許持ちの義姉さんかドライバーさんが運転している。

 俺は基本的に運転はしない。なので免許があっても運転が上手いかと言われると不安である。義姉さんなら持ってるような高級車なんて乗れたもんじゃない。

「したい~です~」

「その時は全集中で頼みたいですわね」

「はい~」

 この調子のトモリさんに車運転させたら事故が起きる気がする。割とマジで。

「まあ免許を取って高級車に乗りたいってのもロマンありますね。女のロマンかは別として」

 完全に偏見かも知れないが、女性のロマンと言えば玉の輿って奴のイメージがある。ようは金持ちのイケメンだが。

「まあでも、結婚してドレスも着て、ってなったら女の幸せ的な意味でロマンは叶ってるわよね。ねぇシュエリア」

「え? そ、そうですわね?」

 何故かニヤニヤしながらシュエリアの事を話し出すアシェ。

「つまり、将来の夢がお嫁さんだったシュエリア的にはまさに、ロマンの叶ったいい人生なわけよ、わかる?」

「お、おう」

 今度は俺に話を振って来るアシェ。どうした。

「そんなわけで、ロマンの叶っているシュエリアには分らない、私の夢ってのをユウキに叶えて欲しいのよねえ」

「そう来たか……」

 どうやらシュエリアの話をしたのはこういう言い回しをしたかったからのようだ。

 つまり「シュエリアは幸せだから今度は私を」ってことだ。

「でも銀河系破壊はなあ」

「アレは冗談よ。私のはもっと簡単よ」

「ほう、どんなだ?」

「撫でて」

「へ?」

「もうすっごく、一杯撫でて、抱き締めて偉い偉いって誉めて」

「…………は?」

 なん、何言ってんだコイツ。

「それは。それがお前の夢っていうか、ロマンなのか?」

「そ。好きな人に目いっぱい愛されて、褒められたいの。できればいい体してる人程良いわけだけど。ユウキはその点バッチリね!」

「お、おおぅ」

 そこまで別にガッツリ鍛えていたりはしないんだが……暇なら筋トレしてる程度で。

「じゃあ、ハイ。やって」

「え、お、おぅ」

 まあシュエリアにいつもしていることを考えれば、特に難しいことでもない。

 そう思ってチラッとシュエリアの顔色だけ伺ってみると、何故かちょっと照れ臭そうにしている……うん、まあいいだろう。

「ハグしてっと……アシェ、偉いな、よしよし」

「ふふ、へへへっ」

「ず、ズルいですっ私も兄さまにして欲しいことありますっ!」

「そういう話では無かったハズだが……」

「夢のある話だと思いますよ。ロマンティックに行きましょう」

「トモリさんまで……」

 そんな流暢に喋り出す程本気で来られたら、まあ、悪い気はしないし。

 シュエリアも相変わらずの様子なのでいいだろう。

「さ、アシェもこのくらいでいいだろ? 次アイネだってさ」

「ん。本当はもうちょっと堪能したかったけど、また今度ふとした時にしてくれていいのよ?」

「あいよ」

 アシェはこれで結構甘えん坊の様だ。「いい子いい子」されたいってことだし。

「それで、アイネは?」

「マタタビをキメながらナデナデされたいですっ!」

「言い方よ」

 マタタビをキメるとか、薬じゃねぇんだから……。

「というかマタタビなんて……」

 無いと言いかけたところでアシェがそっと俺に何かを差し出して来た。

 何か、というか。マタタビだった。

「なんで持ってんだ」

「今作ったわ」

「アシェも大概、便利能力だよな」

 コイツ等のこういう欲望に対して素直なところは結構好きだが能力まで使う程なのはどうだろう。

「それじゃあアイネ。おいで」

「はいっ」

 アイネは猫の姿ではなく、猫耳だけ生やした状態で俺の膝上にぽんっと座る。

「はいマタタビ」

「にゃりがろうございまふっ」

「もう既にキマってる」

 出来上がんの早いな。でもってこれで撫でればいいんだっけか?

「よしよし」

「にゅふふっ、にゃはははははははははははははっ!」

「テンションたっか」

 マタタビのせいか、やたらとテンション高いアイネであった。

「もっろお願いひますっ」

「おおう」

 とりあえず言われるまま撫で続けること十数分。

 テンション高いアイネは何だか徐々にテンションが落ちて来て、そのまま寝てしまった。

「寝たな」

「寝たわね」

「寝ましたわね」

「寝落ちですねぇ」

 とりあえず寝てしまったアイネはそっと寝室に運び出し、最後に順番待ちしているトモリさんのロマンを叶えることになった。

「それで、トモリさんは何ですか?」

「はい、愛を囁きながら耳を舐められたいです」

「ド直球に淫魔なの来たな」

 しかも若干趣向が偏ってるし、変態さんかな。

「私のは駄目ですか?」

「うっ」

 ここでトモリさんだけはダメなんて言うのは流石に扱いが悪い。

 まあシュエリアも……今度はこちらを見てうんうん頷いてるのでやってやれと言う事だろう。

「じゃ、じゃあやりますか」

「はい」

 そう言って右に座っていたトモリさんは俺に体を預けて来る。

「お願いします」

「はい…………愛してるよ、トモリ。ぺろ」

「はうっ……ふふっ、ふふ。ありがとうございま……す~」

「はあ……緊張した」

 なんか変なプレイさせられて緊張してしまった。

「さて、これで『わたくし以外』の分のロマンを叶えていきましたわね?」

「うん?」

 これで終わったと思うと、シュエリアが変な事を言い出した。

「お前のは俺と一生一緒だろ?」

「それはそれとして、わたくしもありましてよ」

「急にお嬢っぽいな」

 いつもなら多分「わたくしにもありますわ」程度だったろう。ありましてよって。

「そこは置いといて、ですわ。良いですわよね? わたくしも」

「まあ、そりゃあ」

 この流れでシュエリアだけ駄目ってのもな。

まさか一緒に居るだけで満足だろとは流石に言えないだろう。

「ビーフシチューとハンバーグが同時に食べたいですわ」

「…………ん?」

 なんかコイツのだけ、あれ、俺関係なくね。

「俺にどうこう、ではなく?」

「思いあがるんじゃないですわ……と言いたいところだけれど。半分はあってるだけに言えませんわね? ユウキに作ってもらった料理だから良いんですのよ」

「さようで?」

「さようですわ」

 そういうことならまあ、そうだな、時間も夕飯時か。

「じゃあ作るよ両方。お前のロマン、な」

「期待してますわ!」

「お、おぅ」

 なんか本当に、凄い期待されてるのが伝わって来た。

 表情と声がもう、「期待してます」って感じだった。

「じゃあとりあえずこの話はここで」

「お開きですわ」

 そんなわけで。

 今日も又、俺達の駄弁りは食事時に終わっていくのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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