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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
145/266

フィギュアと、ですわ

今週分です

「フィギュアって名前凄いですわよね」

「意味わからん」

 いつも通りの休日、シュエリアがまた意味不明な事を言い出した。

「だって『フィ・ギュア』とかにしたらもうなんかの魔法ですわよ」

「たしかにちょっと強そうだけど」

 しかしそれを言い出したら濁音入ってたら全部強そうなんじゃねぇの、とか思ってしまう訳で。

「そんなわけで今回はフィギュアについて語りたい気分ですわ」

「誰に向けて言ってんの?」

 少なくとも俺の方は向いてないシュエリアが急に語りだすもんだから、またどうせメタいアレなんだろうな。と思っておく。

「それで、フィギュアについてなのだけれど」

「おう」

「何を話したらいいんですの?」

「おいおい……」

 そんなことある? 自分で話題振っといて、内容無いって。

「じゃあ、完成度の高いフィギュアとは何かとか」

「舐めてるだけで最高な奴よ!!」

「アシェ。お前なら絶対言うと思った」

 急に扉をバンッと開けて入るなりアシェの放った発言に、俺は当たり前のように返した。

 なんか来る気はしてたからな。

「舐めてるだけでって言うけど、舐めても変な味するだけだからな」

「経験者の貴重な意見ですわね」

「いやごめん、舐めたことはないけれども」

 なんかあらぬ誤解を受けそうになってない、俺。

「無いんですの?」

「ねぇよ……って、なんだその驚いた顔」

「いえ、衝撃の事実だったから」

「そんなにか」

 俺はマジにフィギュアを舐める人だと思われていたらしい。

「舐めた事無いのになんで変な味するだけとか言えんのよ! フィギュア舐めんじゃないわよ!」

「だから舐めてないんだって。ややこしい言い回しをしやがって」

 まったく、アシェはフィギュアをなんだと思っているんだろう。人肌の味とか絶対しないと思うんだが。

「てかそこまで言うんならアシェは舐めたことあるのか?」

「無いわ」

「お前なぁ……」

 胸張っていう事かね、それは。

「駄目だ、アイネとトモリさんの方がまだいい意見言いそうだわ」

「私をネタ枠扱いしないでくれる?!」

「それ自分の日頃の行い省みてから言おうな。あと作者に言え」

 後者は無理だろうけどな。

 とりあえず俺らはいつも通り皆でお喋りの為にアイネとトモリさんも呼びだしてみた。

 二人は案外早くシュエリアの部屋に登場したが驚いたのは義姉さんも一緒だったことだ。

 理由を聞くと「アイちゃんとちょっと」という事だったので深く聞くのは止めた。なんか嫌な予感がした為である。

「それで何のお話しですかっ?」

「いつ~もの~むだば~な~?」

「そうですけど。トモリさんザックリ来ますね」

 確かに無駄話だけど。いつも通りだけども。

「フィギュアって何だと思いますの?」

「ふぃぎゅあ〇とですかっ?」

「なんでアイネがそんなの知ってるのか」

 アイネから出て来る単語じゃないだろふぃぎゅ〇っとは。義姉さんか教えたの。

「義姉さん、アイネに妙なネタばっかり教えるなよ」

「いや、これ絶対ゆう君発信だから」

「えぇ?」

 そんなことないだろ、俺アイネに教えた記憶ないぞ。

「昔、兄さまと一緒によく聴きましたっ……懐かしいですっ」

「俺の所為だった」

「ほらね」

 むぅ、猫の時の記憶もあるんだったな。そうなるとほとんどのオタク知識は俺の所為なのか。

「ちなみにお姉ちゃんは舐めてるだけで最高だと思うよ!」

「アシェの再来か」

「アーちゃんも舐めてるんだ! 同志!!」

「あ、本当に舐めてるよこの人」

「同志扱いされるのは甚だ遺憾よ」

 どうやらホントに舐めちゃう人と一緒にされるのは嫌な様子のアシェは「うへぇ」と嫌そうな顔を作っている。

「ちなみに何のフィギュアを舐めたんですの?」

「やめろ馬鹿シュエリア!」

「うん?」

 シュエリアは純粋な疑問として聞いたんだろうが、こんなの恐ろしい回答が返って来るに決まっている。

「そんなの自作のゆう君フィギュアだよ。当たり前じゃん」

「ほらもう! こうなるのわかってたから聞きたくなかったのに!」

「あ、あぁ……ごめんですわ」

 とりあえずこれで俺の義姉の変態性癖がまた一個確定した。この人は俺の姿をしたフィギュアを舐めてる。

 超怖いんだけど。

「流石に引くわ」

「ユウキがシオンに引いてない時ってあるんですの?」

「ふむ……無いな」

「ひどっ!?」

 よく考えたらこの人が何かする度に引いてる気がする。うん、今更だな。

「さて、舐めるのはもういいとして、トモリさんはどう思います?」

「ふぃぎゅ~あ~ですか~」

 トモリさんは少し思案する素振りをすると、何かを閃いたように答えた。

「よく~見えるかと~」

「一応聞きますね、何が」

「パン~ツ~?」

「あ、はい」

 知ってたよ、うん。そうだよね、パンツだよね。

「胸~も~」

「そうですね、視放題ですよね」

「触れま~す~」

「ユウキ、視放題はどうかと思いますわ」

「ちくしょう嵌められた!」

 くそう天然め! こういう所なんだよなぁトモリさん……。

 たまにトモリさんの天然に下手に乗ってもとい流されて適当に相槌を打つと下手を討つことがある。今回みたいに。

「視放題なのはそうだけど、流石に胸をとか言いだされるとね」

「兄さまっ、全体の造形美も良い物ですよっ」

「アイネ、俺は一点だけを見てるわけじゃないからな?」

「胸全体を見ているんですかっ」

「そういう意味でもない!」

 なんで俺そんな胸だけ凝視してる変態扱いなのかな。

「ゆう君は脇派だもんね。あと太腿も食い入るように見てるよね、食い込みとか特に」

「そうだけど何で知ってんだよ!」

「見てたからね、前に」

「ストーカー被害の時か……」

 見られてたのか……いや待て、うん? 見られてたの? アレを??

「待て義姉さん、それ、いつ見た奴」

「つい最近ストーカー辞めるまで?」

「よく見る光景だったと?」

「まあ、ほどほどに?」

「なるほど……」

 これは、ヤバいな。義姉さんに変な事言われるとマズい。特に――。

「シュエちゃんのオリジナルフィギュアじぃっと見つめてた時はゆう君はシュエちゃん大好きなんだなぁって思ったけど。同時に何で本物が傍にいるのに本物を見ないのかなぁって思ったよね」

「めちゃめちゃ余計な事言うじゃん!!」

 クソ、途中で止めたかったけど止めようとしたらシュエリアに魔法で妨害されて言い切るまで何も出来なかった……。

「ユウキ、そんなにわたくしの胸が好きなんですの?」

「胸だけじゃねぇよ! 全体だよ!!」

「ちょ、急に褒めるのやめろっていつも言ってますわ……」

 つい勢いでツッコんでしまったが、今のだと俺がシュエリアの全体を好きってことになるよな。いや、そうだけど、そうなんだけど。

「でも舐めては無かったね」

「そこまで気持ち悪いことしねぇわ!!」

「でもユウキ、夜は――」

「それは言わんでいい!!」

 シュエリアがなんか流れで恐ろしいことを暴露しそうだったので阻止した。

 今度はシュエリアに邪魔もされなかったのでツッコミ容認ということだろうか。

「はぁ……何がしたいんだ義姉さん」

「いやあ、フィギュアって言ったら、ゆう君がデザインがシュエちゃんのをたくさん持ってたなぁって思って」

「たくさんあるんですの?」

「フィギュア以外もあるよ」

「わたくしの事大好きですわねぇ……ふふっ」

「う、うっさい」

 むう、アレは俺だけの秘密だったのだが、ストーカーにはバレていたらしい。

「見てみたいですわね、それ」

「え?」

「見てみたいですっ」

「え??」

「みましょ~う~」

「えぇ??」

 これ、見せる流れになってる? マジカ。

「待て待て。アレは俺の部屋だ。勝手に入るのは許さん」

「駄目なんですの?」

「駄目だ」

「どうしても?」

「む、だってほら。シュエリア、引くだろうし」

「引かないですわよ。せいぜい『あぁ、わたくしの事大好きなんだなぁ』って悦に入るくらいですわ」

「それはそれでなんか嫌だな」

 しかしまあ、はあ、仕方ないか。

 見ようと思えば魔法でいくらでもなシュエリアが敢えてこう言ってるんだ。そして俺もシュエリアに大丈夫と言われればまあ、そこまで嫌でもない。

「わかったよ、行くぞほら」

「楽しみですわ」

 そんなわけで、俺のグッズが気になると言う一同を連れて俺の秘密部屋に移動する。

「え、ここの本棚動くんですの?」

「あぁ、隠し部屋だからな」

「流石探偵ですわね」

「探偵関係ねぇよ」

 俺の職業は全く関係ない。そもそも探偵(猫探し)が仕事みたいなモノだし。

「さて、どんな部屋かワクワクしますわね」

「別に普通だけどな……」

 そう、普通だ。普通に……うん。

「じゃ、開けるぞ」

 そう言って俺が部屋を開けると、皆最初は「おぉ!」とか声出してテンション上がってたのに、その後約二名を除いて直ぐに冷めた。

 まあ、そりゃあそうなるだろう。だって普通に『部屋一面がシュエリア』なんだから。

「これは……キモイわね」

「なんで私が無いんですかっ」

「そこ~です~」

「二人はそこ気にするんですのね……」

 まっとうにキモイと思ったのはアシェだけだったらしく、残り二人は自分のデザインされた物品が無いことに少々お怒りの様子だ。

「当然ですっ何でですかっ」

「いや、うーん、なんでって……統一感?」

「なんかふわっとした理由でしたねっ!」

 特に理由があるかと言われればなく。強いて言うならシュエリア一色に染まっている方がしっくりくる感じがするからだろうか。

 そして部屋を見てもテンションが下がらなかった、引かなかった二人、シュエリアと義姉さんが語りだす。

「いやあ、私のゆう君部屋並みに揃ってるねぇグッズ。ほとんどは写真加工かな……なんで絵とかじゃないんだろう」

「絵とか造形じゃわたくしの美しさが表現しきれないからですわよきっと」

「うわあ、凄い自信家だねぇ」

「事実ですわ」

「まあその通りなんだけど」

「その通りなんだ?!」

 義姉さんの言葉に非常にツッコみたくなる部分があったがそこは置いておき、とりあえずシュエリアの言葉に返事をしておいた。

「フィギュアとかも、まあできは悪くないけど本物のシュエリアに比べると格段に落ちるっていうか」

「まあ仕方ないですわよね。わたくし超絶美少女だから」

「そうなんだよなぁ」

「ゆう君がツッコミ放棄して普通に話しちゃってる……」

 なんか義姉さんに言われた気がするが気にしないでおこう。今はフィギュアの話だ。

「でもまあ、それでも元が良いから他のフィギュア見てるよりずっといいなって思うよ」

「そ、そうですわね。元が良いですわ」

「なんで照れてんだよ」

「うっさいですわ」

 こんだけフィギュアだのタペストリーだの抱き枕だのあったら俺がどれだけシュエリア好きかなんてわかりそうなもんだ。今更照れてどうするのか。

「まあ、こんな感じだよ。どうだ」

「まあ、ユウキは凄くわたくし大好きみたいだから、これからはもっと甘えたりしていいですわよ」

「またその発言か、お前その内俺がお前の膝枕から動かなくなっても知らないぞ」

「欲望駄々洩れですわね……いいですわよ、程々になら」

「言質取ったからこの後実行で」

「えぇ、仕方ないですわねぇ」

「にゃっ、もう終わりですかっ」

「いちゃいちゃ~たいむ~?」

 というわけで、この日はその後、俺がシュエリアに膝枕されてだらっと過ごしたわけだが。

 後日アイネとトモリさんの二人からの異議申し立てにより、二人のグッズを作って飾る部屋まで用意することになったのは余談である。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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