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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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たまには二人で。ですわ

「暇ですわ」

「うーん、暇なぁ」

 いつも通りの休日にいつも通りのシュエリア、さて、暇と言われて今日はどうしようか。

 そう思っていると、ノックもせずに扉をバンッと開ける奴がいた。

「ユウキ、デートしましょう!!」

「はぇ?」

 急に変な事を言い始めたアシェに対し、つい変な声が出た。

「何言ってんですのアシェ。阿保なんですの?」

「なんでよ。私だってユウハーの一員じゃない」

「一応聞きますわね。何ですのそれ」

「ユウキハーレムの略ところで略称と言えばドラセクってカーの部分完全に消えてるけど略称としてこれでいいのかしらね?」

「阿保ですわね」

「阿保だな」

 アシェがどうしようもなく阿保なのはわかった。が、確かにちょっとだけ言いやすいかも知れない。ユウハー。

「まあ、家族ではあるな」

「そして嫁でもあるでしょう?」

「……まあ」

 そう言う意味ではデートもなんら不思議の無い行為ではある。しかしなぜ今。

「しかし、いきなりデートって言うのもどうだ。なんで急に」

「私思ったのよ。私って影薄くない?!」

「いや全然」

 むしろ俺基準では存在感バリバリなタイプだ。阿保だし五月蠅いし下ネタばっかり言うし、他にもまあ、色々。

「でもその割に接触少なくない?」

「接触?」

 まあ、確かに接触は少ないが。

「それと存在感は関係ないだろ」

「あるわよ! 女としての価値の問題よ!」

「お、おぅ」

 そう言われると男の俺にはわからんのだが。

 まあ確かに、アイネはいつもべったりだし、シュエリアも大概だ。

 義姉さんはあんなだからいつも避けてるけど何だかんだスキンシップは多い。トモリさんは毎日俺から精気吸ってるし一緒に寝てる。何なら最近は二人でバーとか行った。

 そしてアシェは…………あー…………。

「言わんとしていることはわかった」

「そう。分かられた瞬間のユウキの表情に憐憫を感じたけど頑張って無視するわ」

「すまん、顔に出てたか」

「無視するわ」

「おう……」

 憐れまれるのは嫌なようだが、ドンマイ。と言いたくなってしまう。

「ってことでデートしましょう」

「と言われても、プランとか無いぞ」

「お家デートでいいわよ。私の部屋に来てね」

「まあ、お前がそれでいいなら……」

 本人がそれでいいのならいいが、ここの連中はお家デート好きだな。全員引き籠り体質だからか?

「で、来たけど。何すんだ?」

「すっごくめんどくさそうね」

「来る前にシュエリアに『暇なわたくしを放置した上にあんまりイチャイチャしてわたくしより仲良ししたら殺す』って言われたからな」

「何そのふわっとした基準で訪れる殺意。怖すぎるでしょう」

「だろ。だからあんまり過剰な事はするなよ」

「分かってるわよ。やるのはちょっとした――人体実験よ」

「デート、とは?」

 ググりたくなるくらい意味不明な内容のデートだった。なに? 何されんの俺。

「大丈夫、安全な人体実験だから」

「安全じゃなかったら困るわ」

「最悪シュエリアも居るし」

「最悪の場合アイツを頼る実験は安全とは言わないと思う」

 それはかなりヤバい実験なのでは?

「まあまあそう言わずに。とりあえずそこのベッドにうつ伏せになって」

 そう言われて指されたのは部屋の角にあるベッド。アシェの部屋には研究実験に使う機材が多いのでごちゃごちゃとしたイメージだが、整頓はされている為に別にベッドに辿り着けないとかそんなことはない。

 無いが、ベッド周りから薬品の臭いがする。うーん、これは。

「お前、寝室は別に用意した方がよくないか?」

「え、何で?」

 俺の問いに素で「何で?」と返してくる辺り、コイツこの臭いに慣れきってて気づいてないな。

 別に臭いって程でもないが、やっぱり落ち着かない。

「薬品の臭いが染みついてるぞこのベッド」

「え、ホント? うぅん、それじゃあ確かに変えた方が良いわね。ほい」

 そう言ってアシェはベッドを錬成で作り直した。

「これでいいでしょ」

「いや、部屋を別の部屋にしろよ……」

「寝室は別に使っていいってこと?」

「そうだよ」

「ふうん。ならそうさせてもらうわね」

 そんなわけで丁度、横の部屋が空いていたのでそこをアシェの寝室として使う事にした。

「ベッド錬成っと。はい、横になって」

「はいよ」

 今度は薬品の香りとかはしない普通のベッドだ。っていうか相変わらずコイツの能力便利だ。扱いが難しそうなので欲しいとは思わんが。

「そうそう、それで私が跨ってっと」

「おい、これどういう状況だ」

 ベッドでうつ伏せの俺に跨るアシェ。なにこれ。

「まあま、これからだから。よいしょと」

「うん?」

 言うとアシェは俺の背中を触り始めた。

 …………触られ続ける事数刻。気持ちがいい感じがする。

「あのー、アシェさん、これは何の人体実験かな?」

「えっ?! あ、あー、アレよ、人の体の構造を理解するために筋肉の付き方とかを調べているのよ」

「ほう。マッサージではなく?」

「……そうとも言うかもしれないわね!」

「素直じゃねぇ……」

 つまりアシェは俺にマッサージしてくれるつもりだったようだ。

 人体実験なんて言わなくてもいいのになぁ。

「というと思ったか。お前、本当は俺の体触りたいだけだろ」

「ぐっ……巧妙なツンデレテクニックだったはずなのに……」

「まあでもお前、マッサージ上手いな。人体実験とかいうだけあるか?」

 なんだかんだ筋肉好きのアシェだ。体の構造などを理解しているのかマッサージがとても上手い。

「ちなみに今は二人きりだからアシェって呼んでいいのよ」

「お前でよくね」

「アーたんって呼んでもいいわ」

「お前でいいよ」

「名前で呼ばれたいの」

「……わかったよ。アシェ」

 そう言えば俺はコイツを名前で呼んだことがほとんどない気がする。お前、とか、コイツとか、アイツとか、そんなんばっかりだったな。

「それで、アシェさんや、この後は何か予定はあるのかね」

「え?」

「ん?」

 デートに誘ってくるなりマッサージしてくるくらいだから、他にもしたいことがあるのかと思ったのだが?

「お前――」

「アシェ」

「……アシェ、俺の体触りたかっただけだろ」

「そうとも言うわね」

「はぁ」

 そう言えば最初に接触が少ないとかどうとか言ってたもんなぁ。

「マッサージだってそろそろ終わりだろ。やり過ぎも良くないし」

「そ、そうね……うーんどうしようかしら」

 大変心地いいマッサージではあったが揉み返しというのもある。何事もほどほどに、適量で、だ。

「耳かきはシュエリアがしょっちゅうしてるし……あ、膝枕してあげる」

「ほうほう。それで」

「頭を撫でるわ」

「なるほど」

 という訳で今度は頭を撫でられる為に(?)膝枕される俺。

「これ、楽しいか?」

「私は幸せよ。楽しいかどうかと聞かれるとシュエリアみたいなこと言うわね。と思うわ」

「あー。毒されてんだな俺」

 楽しいより、幸せを感じる場面か、ここは。

「まあ美少女に膝枕で撫でられて悪い気はしないな」

「もっと褒めていいわよ」

「アシェってカッコいいよな」

「それ褒めてる?」

「褒めてるよ。まつ毛長いし、切れ長で釣り目なのもカッコよさげだし。赤い髪と合わさってカッコいいよ」

「そ、そう?」

「それに反して中身が可愛いのがいいよなぁ」

「え、えへへへ」

 うーん、なんとなく褒めてみたけど、アシェさん相好を崩してらっしゃる。ちょろいな。

 こうしてみると俺の周りはちょろインばっかりだな。主人公適正無い俺には助かるわ。

「もう、えへへ。ユウキも意外と私の事好きなのね」

「まあそりゃあ、好きじゃなかったらこんな事はしないなぁ」

 まあ最初の出会いとかは別にしても、コイツの人となりと言うか、キャラはとても楽しいものだし、一緒に居て楽しい奴は好きだ。それに美少女だし。

「それにしても、アレね、ユウキ」

「んー?」

 今度は何だろうと思いつつも、心地よい眠気に襲われていた俺は適当に聞き返したのだが。

「暇ね」

「もう飽きたのかよ!!」

 眠気も吹っ飛ぶ内容だった。

「お前も大概シュエリア側だよ」

「そうね、そうなってる気がするわ」

 というかコイツはシュエリアの元の世界からの友人枠なのでそもそもそっち側な気がするが。

「そういえば、シュエリアは出会った頃はマトモに友人居ないようなこと言ってたな」

「ん? あぁ。まあ私も含めて、一応元の世界じゃ王族のシュエリアに皆『王女様』とか『様』とか付けて呼んでたからね。シュエリアにはそれが友達っぽくは無かったのかもね」

「なるほど」

 確かに俺が呼び捨てにしたときになんか、周りにそういう奴がいなかったとか、そんな話をしたような気がしないでもない。

「でもこっちじゃいきなりシュエリアを呼び捨てだったよな」

「だってもう国も無いし、姫様も王女殿下もないでしょ。だからいいのよ」

「そういうもんか」

「そういうもんよ」

 なんか違う気もするけど、コイツの場合は元からそう呼びたかったのかもな。

 リーシェもシュエリアをちゃん付けで呼んでたし。いや、あの子は天然っぽいけど。

「ねえ、暇だしシュエリアのとこ行ってなんかしない?」

「お前、デートどこ行ったんだよ……」

 なんかもう、そういうイイ雰囲気ぶち壊しって感じだ。

「ま、私のヒロイン力なんて所詮こんなものってことね」

「自分でそういう事言っちゃうんだな」

 まあ、いいけどさ、コイツ含めて俺の周りの女性は結構そんな人ばっかりだし。

「それじゃあ、満足したようだしシュエリアのとこ行くか」

「そうね、でもたまにでいいからまたこういうスキンシップさせて欲しいわ?」

「あぁ、たまにならな」

 流石に毎日とか言われると色々シュエリアに言い訳が大変だからな。

「わかってるわよ。シュエリアに『わたくしよりアシェを構ってる』なんて言われたら面倒だしね」

「そういうことだ」

 とまあ、そんなわけで俺はアシェとたまにマッサージとかしてもらう約束をして、シュエリアの部屋に向かう。

 ちなみにこの後シュエリアの部屋で「もう終わったんですの? 早漏?」とかほざかれたのは余談である。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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