もうそろですわ!
今回短めですが手抜きではございません。いや本当に。
「もうそろそろエイプリルフールですわ!!」
「終わったよ」
いつも通りの昼下がり、阿保のシュエリアが阿保な事を言っている。
「いいんですわよ、もうそろそろって言う体で」
「っていうか、当日じゃなかったら何のネタにもならないのでは」
「……じゃあ当日という体ですわ」
「さいですか」
「さいですわ」
もうこの阿保にツッコみすぎても仕方ないので、とりあえずやりたいようにさせておくことにした。
「という訳で、嘘を吐きますわ」
「それ言っちゃ駄目だろ」
っていうか、そもそもエイプリルフールとかいう単語を出した時点で、もう騙される阿保は居ないっていう話でもある。
「わたくし、世界を滅ぼせる呪文を知ってますの」
「それ本当のことじゃんってツッコませたいんだろうがお前阿保か。嘘を吐くのが嘘だったってオチだろ?」
「と思ったところに呪文なんかなくてもできますわ。と答えるところまでがオチですわ」
「あ、くっそ騙された」
このシュエリア、なんて巧妙なヤツ。
「このような感じで他のメンツを騙しますわ」
「お前……いや、いいけど」
なんか、ちょっとそういう冗談通じないで荒れそうなのが何名かいる気がするんだが、大丈夫だろうか。
「まずはちょろそうなアイネから行きますわ」
「妹がちょろい扱いを受けているのは心外だが間違いなくちょろいな」
あの子はその、ちょっと阿保な子なのですぐ騙されそうでお兄ちゃんは心配です。
「というわけで呼んで欲しいですわ」
「はいよ――パンッパンッ」
「ズダダダダッ――にゃんでしょうかっ!!」
「ヅダなんですの?」
「にゃ?」
「いきなり話逸れてるからな」
この阿保は変なところに変なボケかまさんと気が済まないのだろうか。
「ところでアイネ、今日はエイプリルフールですわ」
「今日は違いますよっ? エブリデイフールですかっ?」
「……アイネって怖い子ですわね」
「可愛いよアイネは」
っていうか、まあ普通に趣旨を説明しないと成立しない段階でもうアウトだろ。
趣旨を説明しちゃったら嘘がバレるわけだし。
「次行きますわよ!」
「結局何のために呼ばれたんでしょうっ……」
「まあ見てればわかるよ」
というわけで次のターゲットはアシェだった。
アシェを部屋に呼びに行くのは俺の役目だった。なんでだ。
「で、何よ」
「アシェ、実はアシェに前から言おうと思ってたことがあるんですの」
「え、何?」
何故か急に重苦しい雰囲気を出すシュエリアに、アシェも何か深刻な物を感じたようで、緊張が走っている。
「実は……」
「ゴクリっ」
「アシェ、十円禿がありますわ」
「ぶうぇええええええええ?! うっそ?! え?!?!?!?!!」
「あぁ、こういう事なんですねっ」
「そういうことだ」
見事に騙されて狼狽えるアシェと、それを見て「シュエリアさんは阿保ですねっ」とシュエリアのすることを相変わらず阿保だなぁと見ている妹と俺。
そしてアシェの狼狽えっぷりを見て、心底楽しそうなシュエリア、なんて奴だ。
「アシェ、嘘だから。エイプリルフール」
「エイプリル、フール? シュエリアはエブリデイフールでしょ」
「ぶっ転がしますわよ」
「こわっ?!」
シュエリアの脅しにさっきより狼狽えるアシェ。シュエリアお前……。
「まあ、冗談はその辺にして、次行こうぜ」
「ん、そうですわね。じゃあトモリにしますわ」
「トモリさんかぁ」
トモリさん、騙せるかな……。っていうか、うん……。
「トモリさん、普通に受け入れそうでなぁ」
「むしろボケてきそうですわ」
「楽しみですっ」
「あんたらねぇ……」
俺らが既にトモリさんで遊ぼうとしているのを見て呆れるアシェ。やっぱコイツ常識人側か? 下ネタ大好きっていうか、下ネタ製造機だけど。
「じゃあ呼んできますねっ」
「うちの妹がノリノリだ」
「アイネは案外イタズラとか好きなんですのねぇ」
そんな感じでアイネを見送って数分、トモリさんがやって来た。
「えぶりで~ふ~る~?」
「わたくし全員にこれ言われるんですの?」
「俺は言ってない」
「思ってるでしょう」
「まあ」
「転がしますわ」
「なんで、トモリさんは許されたのに!」
畜生、なんて奴だ……。
「まあそれは冗談として、トモリ、実は――」
「シュエリアさんはエブリデイフールですよ」
「……実は――」
「ウーバーフールですか? 頼んでも無いのに大変です」
「…………」
トモリさん、ハキハキ喋りながらシュエリアの嘘ネタをガンガン潰してくな。
これが魔王か……。
「というの~は~冗談です~」
「というか嘘ですっ」
「あ、アイネ! 結託してましたわね!!」
「にゃはははっ!」
「ふふ~」
トモリさんとアイネ、仲いいもんなぁ。てかアイネは本当にイタズラとか好きだったんだな。全然しないのに。するとなると楽しそうだ。可愛い。
「むむぅ、最後はわたくしが騙されるとは……」
「そうだな。まあ俺は騙されてないが」
「しょっぱな騙された阿保が何言ってんですの」
くそ、忘れた頃かと思ったけど駄目だったか。
「さて、そろそろおやつの時間ですわ」
「ん? そうするか」
とまあ、いつも通り唐突に終わる無駄な遊び。
ちなみにこれ、後日義姉さんだけ呼ばれてなかったことで義姉さんに嘘をかまされて全員で騙されたのは別の話だ。
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