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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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ホワイトデーの件ですわ……?

「ホワイトデーっていつですの?」

「あ゛っ」

 とある日の昼下がり、シュエリアに唐突に問われたその言葉には、分かりやすい意図があった。

「ホワイトデー、いつですの?」

「すまん、忘れてた」

 いやそもそも、ホワイトデーなんてもん、俺の人生には今まで無かった。縁遠かった。

 それをいきなりしろと言われたら忘れてても仕方なくね?

 ……いえ、すみません、ホント、すみませんでした。

「殺してもいいですわよね」

「よくねぇよ?! まあまて、お返しだろ?」

「ですわ」

 ふむ、しかしどうしたものか。コイツの喜びそうな……お返し……。

「一日中好きなだけ甘やかすとか……? 無いか」

「ちょい待ちですわ」

「え?」

 なんだろう、何か変な事でも思いついたのだろうか。

「何で無いんですの?」

「お返しか? 忘れてたからだって」

「そうじゃなくて、その、だから……」

 顔を真っ赤にしてしどろもどろなシュエリア。うん?

「甘やかすのが……」

「それでいいのか?」

 俺が問うと、こくんと頷くシュエリア。なんだこれ可愛い。

「最初はどうしようか」

「ぎゅってして撫でて欲しい」

「おおぅ」

 ストレートに来たな。しかも、いつものお嬢言葉消えてるし。ガチか。

「こうか?」

「うん……うん?」

 シュエリアを抱き締めて撫でていると、なんでか疑問形の声が聞こえて来た。

「何で撫でるの下手になってんですの」

「いや、それは、ははは」

 まさか素直可愛いシュエリアにちょっと緊張してるなんて言えるわけもなく。

 うーん、前はこういうのもっと平気だったよな。

 時間が経てば経つほど好きになってる気がする。その内、手も繋げないくらい好きで大変んとか、甘あずっぱくなってしまいそうだ。まいったな。

「これさ、シュエリア以外に見られたらどうなるんだろうな」

「そりゃあ、自分もして欲しいって要求されるでしょう」

 それはハグしてナデナデなのか、それともお返しをして欲しい、なのか。

 人によっては変な事要求されそうだなぁ。

 そう、思っていると。

「見たわ。見てしまったわ!!」

「ッチ、死ねばいいのに」

「シュエリアえらく口悪いわね」

「機嫌悪いからですわ」

 最悪の相手に見つかってしまった。

 そりゃまあ、常時鍵無しオープンのシュエリアの部屋でやってれば誰かには見られそうだとは思ったが。

「で、何しているのよ」

「あー、これはな――」

 俺はアシェに、さっきまでの経緯を説明した。

「あるほど、私もお返し欲しいわ」

「そうなるよな」

 となると、他の三人にも、そうする必要が出てくるわけで。

「でも、そういう事なら今日の所は部屋に戻るわ。他の子にも言っといて上げるから。好きなだけイチャ付いてなさいよ」

「え」

 それだけ言うと、アシェは部屋に戻ってしまった。

「まさかアイツ、空気読んだのか」

「気を使えるなんてアシェも大人になりましたわね」

「聞こえてんだけど」

 まだ部屋の外に居たらしく、文句を言いながら睨みつけ、帰っていくアシェ。

「ふむ、じゃあ次は、どうする」

「そうですわね、鍵かけますわ」

「それだ」

 またアシェのようにならないように、一応対策は必要だ。

「後、人払いの結界も。オッケーですわ」

「念には念だな」

 鍵かけてもドアをノックされただけで壊れる雰囲気(下手したらドアも)というものがあるのだ。

「それで、何したい?」

「手料理が食べたいですわ」

「人払いの意味よ」

 早速俺が部屋の外に出てしまうではないか。

「そんなこともあろうかとここに異空間のキッチンを用意しましたわ」

「そうだった、お前何でもありなんだったな」

 コイツ、本当にこういうどうでもいいことにばっかり魔法使うよなぁ。

 異空間に入ってみると、某『三分ク〇キ〇グ』的場所だった。居空間感ねぇなおい。

「さて、それで何が食いたい……って聞くまでもないのか」

「ですわ」

 どうせビーフシチューである。コイツ好物ばっかり食う偏食なんとかしろっての。

「他に注文は?」

「ってもうできてますわね。都合いいけれどどんな魔法ですの……」

「企業秘密だ」

 これもご都合である。これを作者の魔法とでも言おうか。

「じゃあデザートが欲しいですわ」

「ふむ、パフェかな……」

 てことでさっさとパフェを準備する俺だが、シュエリアはその横で美味そうにビーフシチューを食っている、うん、なんて言うか可愛い。

「あんですの?」

「なんでもねぇよ。お前が可愛いだけだ」

「ホントに何でもないですわね」

「うわぁ、ムカつくなぁ」

 自分が可愛いのは当たり前といった風だ。当たり前だけどさ。

「他になんかあるか?」

「後はユウキにあーんして欲しいですわ」

「はいよ」

 という事で、調理も終わったので、シュエリアの横に座り、あーんをする。

「んく。うぇへへ」

「笑い方よ」

 シュエリアの笑い方が……可愛い。

「畜生お前何しても可愛いな」

「当然ですわ。あーん」

「はいよ」

「ぱくっ。でゅへへへっ」

「くっそ可愛いな。なんだお前」

 なんで今ので可愛いんだ。コイツ、ズルくね?

「他に何をしたい?」

「膝枕で撫でて欲しい」

「またガチ注文か」

 そういうわけだったので、異空間から戻り、部屋へ。

 するとそこに、トモリさんが居た。

「なんっ、なんでトモリが?」

「私には魔法は効きませんから」

「あ、そうでしたわね」

 シュエリアはさも当然と受け入れたが、え、トモリさんそんな特殊能力あんの。

 っていうかなんでこの人今ハキハキ話してるの?

「トモリはトモリが触れている物、トモリ自身が触れるだけで魔法を無効化『できる』能力を持ってるんですのよ」

「イマ〇ンブレ〇カーかよ」

 なんていうチート能力持ってんだよ。その上強いし。

「違いますわよ。トモリのは無効化『できる』ですわ。しないこともできますわ」

「そんな遊〇王のテキストみたいな……便利過ぎかよ」

 トモリさん、そりゃシュエリアに百回やれば一回は勝てるかもしれないと言われるだけあるわ。

「それで、トモリ、なんでちょっと怒り気味に刀に手を?」

「いえ、なんでもシュエリアさん『だけ』ホワイトデーのお返しでラヴラヴしていると聞いたので?」

「あ、そ、そういう……後で全員分のターン、ありますわよ?」

「あら……そう~ですか~」

 どうやら納得したようで、刀から手を放して間延びするトモリさん。怖かった……流石魔王。

「皆に~も~説明してきま~す~」

「そうして貰えると有難いですわ」

 そんなわけで、俺は後々全員分ホワイトデーのお返しで何でもすることになってしまった。

「さ、次はどうする?」

「そうですわね次は――」

 でもまあ、この日。

 トモリさんが皆に言ってくれたおかげかその後は誰の介入も無くシュエリアとの甘い一日は続き。

 しかし後日、俺は全員分、丸一日ずつ相手をすることになったのであった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00までを予定しております。

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