ことわざって何なんですの?
結構な数の下ネタが飛びます。苦手な方には申し訳ありませんがスルー推奨です。
「暇ですわねぇ……」
「んん?」
いつも通りシュエリアと部屋で過ごしていると、まあやっぱりと言うか暇だと呟くシュエリア。つい今しがたまでゲームしてたけどな……。
「……そういえば、こんなことわざがありますわ」
「おん?」
なんだ、急に。
「暇を持て余した神々の遊び。暇を持て余し遊び惚けるのは神のみに許された業という意味ですわ。つまりわたくしですわ」
「それはことわざではない」
って言うかそんな意味も無いし。
「じゃあ……小人閑居して不善をなす?」
「そんな言葉どこで覚えて来た……って言うかそれでいいのかお前」
それ教養のない人間が暇を持て余すと悪さするって意味だろ。そんな常用しない言葉知ってんのになんで「神々の遊び」とか言い出しちゃったんだコイツ。
「何でもいいから、暇で……そう、ことわざで遊びますわ」
「言葉遊びってことか?」
ふむ、そういうの見たり聞いたりは好きだが自分でセンスのいい言葉を選べる自信がないな。
「よし、アシェとトモリさんを呼ぼう」
「良いですわね。何か面白い発想をするかも知れないですわ」
シュエリアは既にちょっと楽しくなってきたのか乗り気だが、多分アシェは下ネタしか言わない。多分って言うか絶対。
とりあえず二人にスマホで連絡をしてみると二人ともすぐ来るとのことだった。
「アイネも呼ぼう。アイネー!」
「(ダダダダダダダッ)」
「それで来るんだから猫ですわよねぇ」
「いや、普通猫でも来ないと思うけど」
名前で呼ばれて認識できる猫も結構少ないし、そもそも呼ばれて気づいても来ない猫の方が多い。
ちなみに俺の経験だとカリカリの入った袋の中で飯が揺れるガサガサ音とか、ツナ缶開ける時のカパンッという音に反応してダッシュで来ることは非常に多い。いやホントに。
「おやつですかっ」
「おやつではないけど。シュエリアと遊ぶから呼んでみた」
「ふむふむっ、そうでしたかっ」
飯じゃないのは時間で分かりそうだけど。おやつというからにはチャオ〇ュール辺りを期待していたんだろうか。
そしてダッシュで来たアイネに続いてアシェ達も直ぐにやって来た。
「来たわよ」
「き~ました~」
「揃いましたわね」
アシェとトモリさんが部屋に来た段階でシュエリアがそう言うのと同時に、更に扉を開ける人物が居た。というか、義姉さんだった。
「お姉ちゃん呼ばれてないけど?!」
「シオンも来たんですのね。まあいいけれど」
「冷たい! お姉ちゃんも結構ワードセンスあるのに!」
「えぇ……? そうかしら」
シュエリアが疑いの目を向けているが、うん、俺もシュエリアに賛成だ。この人は正直ネタのセンスは死んでいる。
というか、今の発言。これから何をするか知ってるのは何故なんだろう。
「ちなみにさっきまでアイちゃんと裏取引してただけでストーカーじゃないよ!」
「ふうん。ま、いいですわ。それじゃあ始めますわよ」
という事で、いつも通りの六人で始めることになった言葉遊びだが。今回はどんなことをするのか。
……っていうか何か今流しちゃいけないワードが義姉さんから上がっていた気がするけど…………ま、いいか。
「とりあえず、ことわざクイズでもしますわね」
「ふむ」
ことわざクイズか。知ってる知らないとか、そういうレベルのクイズかな。
「第一問。〇〇も歩けば棒に当たる。〇に入る言葉は?」
「そういう問題かぁ」
なるほどな、すげぇ簡単なのは最初だからだと思っておこう。さて、答えは――
「ホモ!!」
「なんでそれ正解だと思ったんですの……いえ、説明しなくていいけれど」
もう絶対やらかすと思っていたけれど、初っ端からかまして来たのはアシェだった。
「どんな人でもいつかは棒に出会うって言葉でしょ。知ってるわ」
「こっちがご存じねぇですわよ。どこのことわざですのそれ」
「母様は似たようなこと言ってたわよ?」
「アンタの母から学んだ言葉は大抵忘れた方が良いですわ……」
アシェって母親に溺愛されてるはずなのに変な事ばっかり教わってるよな……。
「そう~ですよ~間違~ってます~」
「トモリは分かってますわよね」
「はい~淫魔も歩けば竿に当たる~です~」
「それ淫魔界隈のことわざですの……?」
「飛べる~のに~無駄~に~歩くと~悪い竿に当た~って~お腹を壊す~という~?」
「似たような言葉だけど意味全然違いますわね……」
確かに犬も歩けば棒に当たると比べて全然意味違う。
っていうか悪い竿に当たってお腹を壊すって、淫魔が言うとアレにしか聞こえない。って言うかそもそも〇の部分以外を変えちゃ駄目だろ……。
「まったく。答えは犬も歩けば棒に当たるですわ。次行きますわよ」
「次こそ正解よ!」
「どっから来るんだその自信」
コイツが正解することは無いと思うんだが。
「次は………『急がば○○〇』これの答えはなんですの?」
シュエリアが問うと、またもアシェがバッと手を挙げて答えた。
「急がばマワせ! でしょ!!」
「頭湧いてんですの?」
「シュエリア、アシェはいつもこうだぞ」
「知ってるけど、アシェの育った環境のえげつなさにドン引きですわ」
まあ、うん。こんな発言を女の子がドヤ顔で言うんだから、教育は相当悪いんだが。
「ちなみにトモリ、こっちは分りますわよね?」
「えっ…………マワせ~じゃ~ないんで~すか~?」
「アシェって淫魔レベルの教育受けてんですのねぇ……」
「淫魔界隈で生きていくなら真っ当な教育ってことになるな」
その道で生きるなら、ある意味アシェのアレは英才教育の結果ともいえるのか……。
「アイネ、分かりますわよね?」
「はいっ。急がば回れっですっ」
「正解ですわ。ていうかこのレベルがわからないのビックリですわよ……」
まあ正直、俺もこの辺は肩慣らしだと思ってたのにわからないアレな人が二人もいると思わなかった。まあ、異世界人だという言い訳も出来なくもないが。
「次行きますわよー。弘法にも〇の誤り。これは分りますわよね??」
「分かるわよ!!」
どうやらシュエリアとしても簡単な問題くらいクリアしてくれないと難しいのに行き難いようでまた簡単な問題だが、さてこれは分るんだろうか。アシェが自信満々なのが怖いんだが。
「トモリは? どうですの??」
「分かり~ます~」
「それじゃあ一斉に答えてもらいますわ。せーのっ――」
「「弘法にも竿の誤り!!」」
「――次行きますわよ」
「「えっ?!」」
二人揃って爆死したので次に行くことにしたシュエリアだったが、アシェがそれを止める。
「何が駄目なの?! これってどんな名人でも一夜の過ちはあるってことわざでしょ?!」
「そう~ですよ~」
「アンタらの界隈とだと話合わないのがすっごくわかりましたわ……」
トモリさんはまだ淫魔だし仕方ないのかも知れないが、アシェの方はもう完全に母親から淫魔教育されてるとしか思えない。娘になんて事教えてんだあの人。
「はぁ。次はことわざの意味クイズですわ」
「あ、それならお姉ちゃん出題してもいい??」
「ん、いいですわよ? わたくしも回答側やってみたいし」
どうやら義姉さん、一問も答えない内から出題側に回る気のようだ。なんか嫌な予感するのは俺だけか?
「じゃあ行くよ? 問題。頭隠して尻隠さず。このことわざの意味は何かな?」
義姉さんの問題を聞いた瞬間。アシェが速攻で手を挙げたのを見て、俺は嫌な予感の正体が分かった。
「それはもちろん後背位でしょ! バックよバック!!」
「うーん残念!」
「えぇー?! うそー!」
「むしろこっちが『えぇ……』だよ」
これは義姉さん、完全にアシェに下ネタ言わせようとしてこの問題選んでるだろ……。
「トモちゃんは?」
「丸飲み~では~?」
「そういう絵面あるけどっ!!」
なんでこの二人自分の界隈から出てこないの? どんだけホームで戦いたいんだよ。
「アイちゃんは分るよね?」
「はいっ、マミってますねっ」
「ほとんどトモリさんと同じじゃん……」
言ってる意味がエロか凄惨かの差しかねぇ。
「ここまで全員不正解だねぇ。シュエちゃん、答えは?」
「壁尻ですわ」
「お前もボケちゃうのかよ!!」
誰が正解するんだこのクイズ。もはやクイズというかただの大喜利だぞ。
「うーん、皆残念。答えは、隠しているつもりのモノが一部露呈している事、だよ」
「何それ、まんまじゃない」
「だから正解出来ないのがおかしいって話だぞ……」
「深く考え過ぎたわね……」
「考えてあの答えなのかお前」
アシェの頭の中どうなってんだろう。ちょっと見てみたい。
「次いこっか。次はねぇ……後は野となれ山となれ、これの意味は何かなぁ?」
この問題、またしても先手を取ろうと手を挙げたのはアシェだった。なんでコイツこんだけ不正解出してんのに一番乗り気で積極的なんだ。
「一度やってしまえばどこで青〇しても同じって意味よ!」
「そんなことわざあってたまるか!!」
なんつう事言い出してんだコイツ。本当に頭の中覗きたくなってきたぞ。何考えて発言してんのコイツ。
「アーちゃん、凄い下ネタ言うね……そこまでよく思い付くよね……」
「何かしら、何とも言い難い理不尽を感じるのだけれど」
まあ、ほとんど義姉さんが言わせたようなもんだしな……。
「あ、もしかしてこっちかしら。いい? 言っても」
「え、いいけど。何かな……?」
「始末した人間を後は野なり山なりどっかに捨てるだけって情景のことわざでしょ?」
「そんな物騒なことわざないよ!!」
「えぇ、これも違うの……?」
なんかアシェが信じられないって顔してんだけど、こっちの方が余程信じられねぇんだよなぁ……。
「きっと~世界創造の~瞬間かと~?」
「そんな奇跡的瞬間を表すことわざあっても使いどころないよ?!」
「あら~?」
まあ確かに、神視点とかで言われたら後は適当に世界が出来上がるくらいな言葉に聞こえそうだけど……。ことわざとして使うにはあまりに世界規模過ぎて使い難いな。
「二人とも違いますわよ。後はどうとでもなれを態々難しく言ってカッコつけてるだけですわ」
「意味はあってるけどシュエちゃんの解釈すごいひねくれてるね……」
「ほら、正解ですわ」
「なるほどねぇ、中二病って奴ね」
「なるほ~ど~」
「わぁ、シュエちゃんの偏った意見が拡散していく……」
なんか義姉さんが引いてるんだけど、そもそも変な事言わせる為に出題し始めたのこの人なんだよな……。
「こうなったらもう公平にゆう君が出題するしかないねっ!」
「結局そうなるのか」
まあ、そうなる気はしてた。うん。
「じゃあ今度はことわざの意味を言うから、そこから正解のことわざを答えてくれ。複数ある場合もあるから、審議する場合はググることにするぞ」
「オッケーですわ」
という訳で俺が出題するわけだが……ふむ。
「じゃあ、問題。何かをする前はあれこれ考えるが、実際やってみると簡単に出来る事を何という?」
答えとしては『案ずるより産むが易し』を想定してはいるが、まあコイツ等の事だ、真っ当には答えないだろう。どうせ真っ当に来ないなら、義姉さんみたいに露骨に言わせてるようなのよりは、独自性を出せるこっちの方が大喜利にはいいだろう。
そして案の定、最初に挙手したのはアシェだった。ここまで来ると最初にあった不安感はもはや期待感になっている。さて、どう来るか。
「答えはズバリ『逆算したら初夜の仲良し』よ!」
「うわぁ、すげぇ語感の回答来たな」
もうなんて言うか、コイツ天才かな。下ネタ製造機としてはかなり優秀なんじゃないかな。
「あれこれ考えても、結局は出来る時は簡単に出来る。考えるより産むが易しってね」
「知ってて言ってんのがもう、コイツほんとなんなの」
答え言っちゃったじゃん。ボケた後に言っちゃってるじゃん。
「お前なぁ。ボケるならボケるだけにしとけよ。答え言っちゃったらもう他の連中がこの問題でボケられないだろ。答え言っちゃってるんだから」
「それはそれでなんで怒られてるのか妙な感じね……」
こっちだってボケられそうな問題をそれなりに選んでるのだ、回答側にもそれなりに配慮して欲しいものだ。
「でもせっかくだから大喜利しとかない?」
「んまあ、シュエリアとかがしたいなら」
そう言って俺がシュエリアや他のメンバーを見ると、皆それなりの答えを用意している様で「うんうん」と頷いていた。
「ふむ。じゃあシュエリアの答えを訊こうかな」
「シュエリアに不可能は無い。ですわ」
「うん、言いたいことは分った」
つまりコイツはあーだこーだ言ったり考えたりしても結局なんでも出来ちゃう自分天才って、そう言いたいのだ。
「なんか冷たいですわね?」
「いや、お前が何でもできるのは本当の事だけどこうもストレートに来られるとなんと返したものか」
自分の名前をことわざにしてしまってる辺りもなんとも痛いというか……。
「アイネは……どうだ?」
「私ですかっ。お任せくださいっ」
なんかやけに自信満々なのが逆に不安なんだけど。大丈夫かコレ。
「こほんっ『でき婚報道思いの外容易し』ですっ」
「妹からあんまり聞きたくないワード出てきちゃったな」
どこでそんな言葉覚えて来たのかな俺の妹。
「あー、芸能人とかって恋愛とか何だかんだ隠しててもデキると結婚報道するよねー、あはははは」
「まあ……するけど……」
可愛い妹からでき婚って言葉はあんまり聞きたくなかったな……実際するんじゃないからいいけど、何だろうなぁアイネが言うと妙な生々しさみたいなのが出ちゃうと言うか。
「まあ猫的にはでき婚ってとても自然なので人間って妙な言葉作るなぁって感じですがっ」
「ほら来た……」
なんだかんだ猫なんだもんなぁ……。これがなぁ。
「姉さまはどうですか?」
「お姉ちゃん? お姉ちゃんもかぁ」
どうやら義姉さんは考えてなかったようで、ひとしきりうんうん唸った後、ポンと手を叩いた。
「案ずるより挿れるが易し?」
「それはエ〇漫画だけだよッ!!」
阿保か、そんなことある訳ねェだろうが……。
「でも多分現実だと、最終的には捕まるけど何回かはヤれるよ?」
「知るか! 最低だなアンタ!!」
俺の義姉底辺クズ過ぎんだけど。アシェの下ネタと違ってこの人が言うと犯罪性があるのがな……。
「つうか別にボケるのは下じゃなくてもいいんだが」
「それもそうですわ。わたくしのようにしていいんですのよ」
「お前の様になるのも大概だけどな……」
それはそれで、勘弁してくれって感じだ。
「トモリさんは……どうですか?」
「わた~しは~はい~」
どうやら何か思いついたようで、手を挙げてくれた。じゃあお願いしてみるか。
「それじゃあトモリさん、どうぞ」
「考える~な~感じろ~?」
「それはなんか違うと思いますよ……」
「あら~では~プロシ〇~ト兄貴~?」
「考える前に暗殺は終わってるけども!!」
なんでこの魔王そんなの知ってるってか、覚えてるんだ。
でも彼の生きざまは確かにこの言葉の意味に近い気は……するか?
「まあでも、これで全員か」
「ですわね。次の問題はよですわ」
「はいはい……次はそうだなぁ」
何がいいか、うーん。
「とても用心深いことの例えに使うことわざで」
「はいっ!」
「おぅ……アシェか」
またコイツか……とは思うが、まあいいだろ、どうせ全員何かしらボケるんだろうし。
「孕まぬ棒のゴムよ」
「そんな転ばぬ先の杖みたいに言われても」
「じゃあ孕まぬ為のピル?」
「まんまじゃん。ドストレートじゃん」
コイツはそういう回答しかしないんだな。知ってたけど。
「仕方ないですわねぇ。わたくしが行きますわ」
「おぉ、じゃあシュエリア、どぞ」
俺が促すと、シュエリアはドヤ顔で言い放った。
「わたくしですわ!」
「はい次行こうかー」
「ちょっ、せめてツッコんで欲しいですわ」
「シュエリアまで下ネタ言い出したし」
「そっちの突っ込むじゃねぇですわよ! ユウキの方こそアシェに浸蝕されてますわ?!」
コイツ阿保だなぁ本当に。せめてことわざっぽく言えっての。
「せめてもっとことわざっぽくならんかね」
「ふむ……石橋を創って渡る?」
「お前が創ったのなら完璧だろうけども」
これはことわざとして他人が使うには無理があるだろう。
「はいはい! お姉ちゃんも答えたい!」
「えぇ? じゃあ、義姉さん」
「ボス戦の前のセーブ!」
「普通! ボケろよ!!」
「そんな怒られ方ある?」
いや、だって、そういう流れだったじゃん。
「んもう、それならさ、いっそボケ一辺倒でいこうよ」
「というと」
「既存のことわざをボケに変えて各々言ってこ?」
「今まさにそうだったと思うが」
今更何言ってんだろうこの義姉は。
「例えばアーちゃんに振るときっと無限に出て来るよ」
「マジかアシェ」
「泣きっ面に顔射」
俺が問うと、即レスしてくるアシェ。本気か?
「最低だな。他には」
「短小の背比べ」
「えげつねぇ。次」
「触らぬ尻に祟りなし」
「本当に無限か?」
「挿入は一時の恥出さぬは一生の恥」
「マジか」
「喉元過ぎれば熱さを忘れる(意味深)」
「そんな応用まであるのか」
「下手な種付け数撃てば当たる」
「なるほど?」
「仏の顔にも三度」
「何を?」
「身から出た○○」
「何が出たんだろうな」
「精液は口に苦し」
「直球来たなぁ」
ってかコイツ、本当に無限に出て来るじゃん。全部下だけど。
「アシェすげぇなお前。頭の回転速いんだな」
「ま、これは性活周姦から来るものだからそんな大したもんじゃないわよ」
「そんな生活習慣嫌だな」
常日頃どんな生活してたらこうなるんだ。俺らと居ない時何してんのコイツ。
「ところでユウキ、シュエリアの顔を見てみなさい」
「ん?」
シュエリアの顔? なんだろうか。何かを訴える目はしてるが。
「ここで問題。今のシュエリアの気持ちをことわざを用いて述べよ」
「すげぇ問題来た」
しかも回答者俺限定。なんだろう。なんだこの顔。造形が美しいのと可愛いのしかわかんねぇ。
「……あ」
シュエリアの顔を見ていると、ふと気づいた。ってか、顔ではなく、指だが。
「食指が動く?」
「ですわ!」
「おぅ……当たっちゃったよ……」
つまりアレだ。いつもの、アレだ。
「飯か」
「はよ」
「お前な……」
コイツが暇だから遊んでたのに、まったく、自由な奴だ。
「まあ可愛いから咎める気にもなれないのだが」
「可愛い子には楽をさせろってことですわね」
「そんなことわざ嫌だな……」
まあでも、可愛い嫁には楽をさせちゃうんだけどさ。
「今日は何がいいか」
「海老で鯛を釣ったような料理がいいですわね」
「海鮮か。いいな」
しかし、俺は全く知識が無いのだが海老で鯛を釣ることなんてあるんだろうか。疑似餌とか他の餌の方が得じゃね? って思うのは俺だけ?
「さて、それじゃあ、働かざる者食うべからずって事で、手伝った奴だけ夕飯な」
「ちょっ! わたくしを甘やかすんじゃないんですの?!」
「お前はあれだ。傍に居てくれたらそれだけで十分だよ」
「ちょっといいセリフっぽいけどそれ単なる戦力外通告ですわよね?!」
「そんなまさか」
コイツが器用で料理も上手いのは知ってる。なので戦力外通告などするわけもなく、本当に傍に居てくれたらそれでよかったんだが。
「そこまで言うならわたくしがとっておきの海鮮丼を作ってあげますわ!!」
「お、おう」
何故か煽られたと思ってやる気になったようなので、まあ敢えて水は差さず、俺達はシュエリアを含めた全員で夕飯を作ることになった。
ちなみに。後日アシェに他にもネタがあるかを訊いてみると、なんかえげつない数のことわざ(この世界で生まれ育った俺も知らないのを含む)で下ことわざを言って来たので、内容は別としてアシェは意外と頭が良いことを知ったのだった。
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