虎ですわ
「暇ですわ!!」
「叫ぶな」
いつも通りシュエリアの休日に顔を出すと、部屋に入るなり元気よく暇してる嫁が居た。
「ところでユウキ、今年は何年ですの?」
「文章で分かりづらいこと聞くなよ……今年は寅年だ」
何年って「なに年」と「なん年」とで意味が全く違うじゃないか。
「はー。わかってないですわねぇ、ユウキ」
「は? 何が……」
わかってないって。寅年だよな……? もしかして今年からシュエリア年とかいう気かこの阿保は。
「まったく、仕方ないですわね。ちょっとトモリ呼んで来て欲しいですわ」
「トモリさん……?」
なんだ? 何する気なんだ。
とりあえず今は素直に呼んで来てみるか。
「で、呼んできたんだが」
「手早いですわねぇ……。で、トモリ、今年は何年ですの?」
「え~っと~?」
トモリさんが悩み始めると、シュエリアが満足気に頷いた。
「ユウキ、これですわ。干支を訊かれたら。干支だけに、え~っと? ですわ」
「下らねぇよ!! そしてトモリさんのこれは多分素だよ!!」
「あらぁ~?」
ほら、わかってない。自分がつまらんギャグやらされた自覚すらない。
「今~のは~古典的~ギャグ~かと~?」
「あれそっち?! トモリさんそっち側ですか!」
なんてことだ。トモリさんがこんなしょうもないボケを…………いや、割といつもしてる気もするけど。
「って言うかシュエリア、それ言いたかっただけか?」
「んな訳無いですわ。ここはひとつ、干支で下らない話でもして暇を潰そうかと思ったんですわ」
「さいですか」
「さいですわ」
んじゃあまあ、干支の話をするなら、もう少しメンツが欲しいな。
「とりあえずアイネ呼ぶか」
「そうですわね、干支の話なら猫は必須ですわね?」
「そうでもないと思うが……」
まあ、一応干支の話は猫出て来るけど必須かどうかと言われると……。
「じゃあアシェも呼んでくるよ」
「いってらですわ~」
ってなわけで、俺は早速アイネを声かけして呼びだし、アシェは部屋に迎えに行った。
「シュエリア、アンタ暇なの?」
「暇ですわ?」
「そう……」
一応、何かの研究をしていたらしいアシェだったが、皆でお喋りする旨を話したらなんだかんだ言いつつ、渋々ついて来た。「皆が集まってるのに一人だけ研究とかなんか嫌」らしい。
「それで、干支の話なんだけれど、ユウキって何年ですの?」
「うん? ……えっと?」
「ユウキ、そういうのいいですわ」
「違うわ! 単純に、何年とか気にしないからパッと出てこないんだよ……」
しかし、えーっとそもそも俺って何歳だったっけ……年齢とか最近気にした記憶がねぇな……。
「ゆう君は一九九八年生まれだから今年で二十四歳だね。で、二度目の年男だね」
「なんで義姉さんが俺より俺の事覚えて……ってか何時からいたんだ」
「えっ……シュエちゃんに連れられて来たからさっきからいたよ……?」
なんだ、またストーカーしてんのかと思ったが、俺が気づいてなかっただけか。余りに素で気づいてなかったせいか義姉さんが普通にショック受けてるな……。
「ユウキは虎男なんですのね」
「なんかそれ嫌だな」
どっかの作品の虎男は大変な変態だった。つい頭をよぎるから止めて欲しい。
「虎だから猫と仲いいんですの?」
「そんな安直な」
そんなことはないと思う。っていうか横でアイネが「おぉっ、そうだったんですかっ」と真に受けてるから止めて欲しい。可愛い妹が阿保の子になってしまう。
「まあそれはそれとして、ですわ。干支ってほら、年男とかあるでしょう、ユウキが丁度そうだけれど。そこで思うのだけれど、昨年は丑、つまり牛年ですわね?」
「そうだな……それがなんだ?」
「牛年ともなれば、その年の牛は年男ならぬ干支生物ですわ」
「何だその妙な語呂の悪さ……っていうか、だったら何なんだ」
丑年で干支の生き物だから、何だと言うのだろうか。
「鼠年にもなればあの高笑いする鼠が幅を利かせてきて『ここは東京だ!』と声高に千葉を占領するんですわ」
「待て。そもそもあれは高笑いじゃなく甲高い笑いだから。あと幅を利かせて無いし、千葉を占領もしてないから」
「そしてハム〇郎が牙を剥く年ですわ」
「剥かねぇよ?」
コイツあのプリティなハムスターをなんだと思ってるんだ。
「だと言うのに、牛年となってもなお、食糧としての消費量は特に減らない、その年を代表する生物になってなお、美味しく頂かれる牛。なんて哀れな生き物なんですの……」
「すげぇ意味不明な同情……共感出来ねぇよ……」
って言うかホントなんでそんなことを『今更』気にしてんのコイツ……。
思いっきりその哀れな生き物消費してんの、コイツだと思うんだけど。
「……なあシュエリア。今日さ、お前の好きな晩飯にしてやるから何食いたいか言ってみ」
「ビーフシチューですわ!!」
「これだもんなぁ……」
哀れだとか言っておきながら、コイツが何を置いても優先して食いたい好物。思いっきりビーフなんですが。
なんなら最低週一で食ってんですけど。ビーフシチュー。
「ハッ……なんか今嵌められた気がしますわ」
「自分から突っ込んできた感じだと思うが……」
嵌められたというより嵌りに来たという感じだ。
「ま、でもさ、牛ってなるとほら、エロ方面で需要あるから良いんじゃないかなぁ? 毎年丑年になると絶対胸おっきいキャラのイラストめっちゃ出て来るし」
「つまりトモリのエロイラストが描かれるんですのね?」
「そだね、この中なら間違いなくトモちゃんだね」
「あらぁ~照れ~て~しまいま~す~」
「トモリさん、照れるところじゃないかと」
どっちかというと怒っていいと思う。とんでもないセクハラだよ。
「で、丑はさておき、今年は寅年ですわ」
「そうだな」
「そこでネコ科のアイネに聞きたいのだけれど」
「えっ。にゃんですかっ」
「なんで干支に猫が居ないんですの?」
「知らないですよっ?!」
なんでアイネに聞いたんだ……ネコ科とか関係なくね……?
「ね、姉さまなら知ってますよねっ!」
「え? 知ってるけど……えっとね。干支は神様が『てめぇら元日によ、挨拶に顔出せや』って声かけしたのが始まりで『早かった順に十二匹、一年ごとに動物のカシラ張らせてやんよ』なんて言うものだから皆元日をドキドキ待ってたの。でも猫はついうっかり何時挨拶に行くのか忘れて鼠に聞くことにしたんだよ、そして猫は鼠に騙されて一日遅れの日付を教えられて遅れちゃったの。それで十二匹には選ばれなかった、とかがよく知られてる奴かな?」
「え、猫阿保なんですの?」
「にゃんですとっ!」
シュエリアのド直球な感想に食いつくアイネだったが、俺はそれ以前に義姉さんの語る神様がガラ悪いのが気になるんだけど。
「鼠が卑怯なんですよっ!!」
「そだねぇ。牛も鼠に利用されて二番目になっちゃったし」
「ほらっ! 鼠はズルイですっ!!」
「とまあこのように、これが原因で猫は鼠を追い回すって言われたりもするんだってー」
「なんか今、アイネが鼠咥えてた絵面思い出しましたわ」
「お前……それ言うなよ……」
アレはかなりショッキングな絵だ。あんまり考えたくない。
「ユウキはあれとキスを……」
「お前、俺とアイネになんの恨みがあるんだ?! やめろ!!」
「兄さま、その反応が一番傷つくんですがっ……」
あぁ、アイネを傷つけてしまった……。しかし……うーん……。
「すまんアイネ……でも鼠は……な……」
「大丈夫です兄さまっ、人間の姿では咥えてませんっ! ノーカンですっ!!」
「そ、そう……か?」
そうだろうか…………そうかもしれない?
「そうだな……?」
「そうですっ」
「ユウキって変なとこ押しに弱いって言うか、ちょろいですわよね……」
何故か呆れ顔のシュエリアだが……え、何俺ちょろいの?
「まあでも他にも色々オカシイですわよね。龍とか順番遅すぎてビックリですわよ?」
「まあ牛が早めに神様の所に出発したくらいだからね、龍は逆にゆっくり出たんじゃないかなぁ」
「なんで年のカシラ張ろうって龍が転移魔法も使えないんですの?」
「えっ! えぇ……? 強い龍だとそゆことできるの?」
「できますわね」
「そ、そうなんだ……じゃあ転移した時に、うん、もう既に居たんだよ……多分」
「ふぅん……」
なんか納得してない感じのシュエリアだが、これに関してはあんまりツッコんでやるなと思う。言い出したらそもそも色々オカシイ話だし。特に龍。お前現実に居ないじゃん……。
「ま、いいですわ。でもせっかくだから干支っぽいことしたいですわね」
「干支っぽいこととは」
なんだそれは、阿保エルフらしい妙なワードではあるが。
「……アイネを虎柄にする?」
「にゃっ?! 止めてくださいっ兄さまは白猫好きなんですからっ!!」
「茶虎も好きだぞ?」
「茶虎くらいだったらいいですよっ」
「アイネちょろすぎですわね」
アイネがあんまりにもちょろい所為か、ちょっと悪い気がしたのかシュエリアはとりあえずアイネには「やっぱいいですわ」と言って引き下がった。
「わたくしが虎コスしたら、ユウキが発情するし……」
「しねぇよ。せいぜい小一時間写真撮るだけだ」
「小一時間キモイから止めときますわ」
とか言いつつ、なんか満足気な顔なのは何なのか。
よくわからんがコスはしてくれないのか。
「ってか寅年なんだからユウキがしたら?」
「誰得だよ」
「私得よ」
「しとくって……妙に語呂の良い言い方してるけどそんな言葉はねぇ」
っていうか俺が損してるだけに絶対やりたくない。
「じゃあお姉ちゃんが――」
「衣装用意するから、シュエリアがやってくれよ」
「なんか割り込まれた上に仕事増やされてない?!」
いや、だってな。この歳で義姉の虎コスプレとか見たくないし……。
「義姉さんにはいつも通りでいて欲しいだけだよ」
「! わかった! 用意してくる!!」
そう言って部屋を飛び出す義姉さんの背中を見送る。
「義姉さんちょろいな」
「ちょろい奴多すぎですわね」
「いつも通りでいて欲しいって、便利な義姉って意味でしょアレ」
「大体そんな感じだな」
まあ、そういう意味も含めて、いつも通りで、だ。
「わたくし着るんですの? 虎」
「そうなるな」
「じゃあせめてユウキはタイガーマスクにして欲しいですわ」
「えぇ? ……まあシュエリアだけにやらせるよりは、いいか」
本当は見てる……もとい撮る側が良かったんだけどな。
「兄さまがやるなら私もやりますっ! 今日から茶虎で生きていきますっ!!」
「アイネ、そこまで覚悟決めなくていいから」
普通に一通り遊んだらシュエリアにでも戻してもらえばいいと思う。
「じゃあ私もやるわ」
「私~も~」
続いてアシェとトモリさんも手を上げたので、義姉さんに連絡して全員分用意してもらうことにした。
「ふぅっ……結局皆でやるんだったら、衣装とスタジオ抑えた方がよかった気がするよ」
「すまん義姉さん。皆ノリで生きてるから」
「知ってる……。ってことで用意してきたから皆着替えてー」
「分かりましたわ」
「おう」
さて、とは言え着替えるも何も俺はマスク被るくらいしかすること無いわけだが。
「ユウキ、何してんですの?」
「ん? マスク被ってんだけど?」
「そうじゃなくて、ですわ」
「うん?」
あ、これは、もしかして。
「すまん、流石に着替えなら部屋出た方がいいか」
「じゃなくて、ですわ」
「え?」
いや、それは普通に出た方がよくね? と思うのだが。
「タイガーマスクを被るなら、やっぱりレスラースタイルが良いと思いますわ」
「お、おう?」
「だから服、脱ぐんですわ」
「…………え」
コイツ今なんと。何と言ったか。
このクソ寒い一月中旬に、上裸でタイガーマスクしろってか。
「寒いんですが」
「どうしても寒いならくっ付いていいですわよ?」
「脱ぐわ」
「ユウキ、アンタそういう所よ」
なんかアシェに嫌悪の眼差しを向けられているんだが、アイツだって同じようなもんじゃないかと思う。だって。
「あっ……ふへ、うぇへへへへ」
「気持ちわるっ」
俺が上を脱いだ途端、冷たい目で見ていたアシェが気持ち悪い笑い声をあげ始めた。
てか顔も相当だ。美少女とは言え、シュエリアのように完璧な美しさと可愛さではないし、とは言え綺麗な顔をしているだけに気色悪い顔をしていれば、余計にひでぇ絵面になる。
「ちっ、ちがっ……これは、へへっ、あれよ、ふひっ。寒くて、ほら、えへへっ、ね?」
「それで誤魔化せると思ってんのすげぇな」
ちょっとは隠せよ、コイツの方が俺よりよほど欲望に素直だろ。
「まったく、変態ばっかですわね」
「俺をコイツと同列にしないでくれ」
「いえ、そうではなく」
「ん?」
このパターン、もしや?
そう思いチラッと周りを見ると、居たわ、変態が。
「義姉さんはとりあえず俺を撮るの止めようか」
「大丈夫、ネットに流出したりしないから! お姉ちゃんが一人で楽しむ用だから! 生着替え、どうぞ!!」
「言い方! どうぞじゃねぇよ!!」
この変態義姉め、生着替えとか言うなよな。
ってか着替え早いな。もう着替えて撮ってるし。
「というか義姉さんのそれなんか違くねぇか」
「え、虎柄だけど」
「凄くおばちゃんっぽい」
「イメージは大阪だからね!」
「失礼な返し方しないでくれるか?」
それだと俺まで大阪=で虎柄、おばちゃんと思ってるみたいじゃないか。
「まあま、生着替え、どぞ」
「はぁ……もうこっちはいいや。で、アイネ」
「にゃふっ?!」
俺の脱いだ服を、こそこそ集めていたアイネに声を掛けてみると、思いっきりビクンッとした後に恐る恐る俺の顔を見上げて来た。
「にゃん、でしょうっ?」
「俺の服、畳んどいてくれてるんだよな?」
「え? ……あぁっそうですよっ!!」
「ありがとうアイネ」
「はいっ!!」
「それはどっちなんですの……?」
なんかシュエリアが怪訝な表情だが。どっちと言われてもな。
これはあれだ。ちょっと魔の刺した妹に気づいてないフリで言い訳を用意してあげただけだ。別に俺にアイネを責める気はない。可愛いし。
「とりあえず分かったのは、ユウキって相変わらずアイネにだだ甘ですわね」
「今のに関してはお前にだけ伝わるように口にしなかっただけに読み取ったことを非難しないが、俺はお前にも大分甘いよ」
「知ってますわ。いつも利用してる常連の意識が出てきてるくらいですわ」
「最低かよお前」
俺の甘さに付け込んでいる自負があるとか、嫌すぎる。
「にしてもシュエリア、虎コスにあってるけど、寒くねぇかそれ」
「うん?」
言われて、シュエリアは自分の恰好を見る。
なんて言うか、虎柄のもふっとした材質のビキニと言うのか下着と言うのかという恰好に、虎耳、虎尻尾と付いて、ネコ科っぽい髭もオマケのとてもこう、コスプレっぽい格好だったのだが。
絶対寒いと思うんだけど、本人は至って平然と言うのがなんか不思議だ。
「まあ、普通寒いですわよねこの恰好。わたくしは魔法で保護しているけれど」
「え、ズルくね。俺にもやってくれよそれ。さっきから寒い。ヤバイ」
「そう。じゃあくっ付くのは無しですわね」
「くっ付くからそのままで、お願いします」
「寒さよりそっちを取るんですのね」
シュエリアで暖を取れば両得というものだ。問題ない。
「さて、他も皆着替え終わったし、記念撮影ですわね」
「おう」
ってことで早速、写真を取ることになったのだが……。
「その前に幾つかツッコんでいいか」
「何よ」
俺はアシェと……トモリさんも見ながら言う。
「お前ら、なんか違くね?」
「え、嘘。どこが」
そんな馬鹿なと言わんばかりのアシェだが、気づかないもんかコレ?
「お前ヒョウ柄じゃん」
「……あ」
虎柄とヒョウ柄、間違える人いるだろうか? いる気もするけど、コイツがそうだったとは。いや、この場合は衣装を用意した義姉さんか?
「ちょっとシオン! これヒョウ柄じゃない!!」
「え、誰だろうアーちゃんにそんな入り知恵したのは。せっかくのネタ枠が台無しだよ」
「虎柄とヒョウ柄の違いを指摘するのを入り知恵とか言うなよ……」
「てかネタ枠なの私?! また!」
いつもネタ枠だからもういっそ諦めた方が良いかも知れないアシェが、声を荒げる。
しかしまあ、俺はもう一人気になる人がいるので、そっちに目を向けてアシェは義姉さんに任せた。
「トモリさん、それ、虎柄じゃないですよね」
「で~す~ね~」
虎柄じゃない衣装、というかもはや一見して虎じゃない着ぐるみ姿のトモリさんがいつもより間延びした返事をした。
「トモリさんそれなんだか分かってますか?」
「キ~リ~ン~で~す~よね~」
「そうですね」
キリンの着ぐるみだった。いや、柄の配色はそこそこ似ている気がしないでもないけど。
これもネタ枠だろうか。
「トモリさんはそれでいいんですか?」
「ま~あ~性~に~合う~か~と~?」
「合い過ぎていつもより間延びしてますからね」
まあ、本人が良いなら、良いか……?
なんかネタ枠が多すぎて、一見したらなんの写真だかわからなそうだけど。
「それじゃ、皆ならんでー撮るよー」
アシェの方は義姉さんが何とか言いくるめたのか、そのままの恰好で並んでいた。
写真はタイマーで全員で撮る。俺を中心に左にシュエリア、右にアイネ。後ろの列に真ん中をトモリさん左右にアシェ、義姉さんと並んで撮る。
「はい、お疲れー。写真は後で現像して皆に渡すよー」
「おう、了解」
この写真、きっと真ん中にタイガーマスクとキリンが居る謎の写真になってるだろうな。
「アイネは茶虎って言うかホワイトタイガーだしな」
「姉さまがこっちの方が可愛いと言ってたのでっ!」
「まあ、確かに可愛い」
それに元が白だからこっちの方が手間が掛からないだろうし。
「てかいつの間にやったんですの?」
「姉さまが魔法で染めましたっ!」
「義姉さん器用な魔法使えるようになってんな」
大技っぽいのは出来ないらしいけど、小技はいっぱい持ってるんだろうなぁ。
しかし今更だが、俺だけ凡人では? 周り皆ファンタジー色あるのに。
「さてユウキ、そろそろ離れていいですわよ?」
「え、なんで」
「何でって……着替えるでしょう」
「着替えなくていいからこのままくっ付いてたいんだが」
「着替えた後くっ付いてもいいですわよ」
「着替えたら肌面積減るから密着度がさ……」
「アンタ本当に一部の欲望に素直ですわね……」
まあ、シュエリアの方は実は冬でもネタTに短パンとかだから、別にいいんだけど、俺がなぁ……。
「でも、タイガーマスクだとキスもできないですわねぇ」
「着替えよ」
「兄さま、そう言うとこだと思いますっ」
どうやら俺は最愛の妹にも変な奴だと思われている様だ。
「アイネも同じ状況なら、同じことすると思うぞ」
「しないと思いたいですっ」
思いたいってことは、しちゃうかもしれないと思ってるんだな。素直な妹だ。
「まあ、アイネの場合は脱がせた後のキスより脱がれた物の方が……」
「にゃんてこと言い出すんですかっ! その場合は兄さまの方がいいですよっ!」
「その場合はって。その場合じゃなかったら脱がれた方に行くってことじゃん……」
俺の妹も大概だった。
「ま、そんなことよりユウキ」
「なんだ?」
俺が問うと、シュエリアがコクンと頷いて答えた。
「ぶっちゃけ飽きて来たからゲームしますわよ」
「あ、はい」
どうやらここまでで、干支の話飽きちゃったらしい。
そんなわけで、俺達はこの後、ま、いつも通りゲームしたり駄弁ったりして、何年も関係なくいつも通り過ごすのだった。
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