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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
128/266

誕生日? ですわ

「一月八日。わたくしがこちらの世界に来た日、またの名を仮誕生日がもう過ぎてますわ!!」

「何の話だ」

 いつも通りシュエリアの部屋にやって来ると、シュエリアの阿保が何かを喚き出した。

「現実のこれ書いてる日は一月十三日だし、投稿されるのは十四日ですわ!!」

「今日は一月八日だよ……」

 現実のとか言い出したぞ、コイツには何が見えてんだ。

「現実見ろよ、な?」

「見てますわ! 見てるから言ってんですわ!!」

「駄目だコイツ……」

 一応、仮とは言えコイツの誕生日と言うことになって居る日だから、皆で祝おうと言う話になって居たのだが、主役がこれってなんかもう心配しかない。

「それはさておき今日はわたくしの誕生日ですわ」

「切り替えの温度差がホラーなんだけど」

 さっきまでのテンションから急に冷めて来られるとなんか取り憑いてる疑惑が。

「そこでなんだかシオンが名案があるとかだったから、今日の誕生日の仕切りはシオンに任せましたわ」

「ほお、それはまた……」

 こういう時というか、どういう時でも割と自分がやりたいように楽しむシュエリアが義姉さんにやらせたのか……てっきり自分の誕生日すら自分で盛り上げるもんだとばかり思っていた。

「それで、準備が出来たら連絡が来ることになって居たのだけれど、丁度さっき連絡が来たから、ユウキと一緒に転移で向かうって言っときましたわ」

「そうなのか。アイネとかトモリさんは?」

「アイネとトモリ、アシェはシオンに頼まれてパーティの準備側ですわ」

「へぇ、俺なんもしてないな」

「嫁の誕生日になんもしないのはどうなんですの……」

 と言って呆れるシュエリアだが、そんなこと言われてもな……。

 特にやるべきことってないと思うし。

「ま、とりあえず行こうか」

「そうですわね」

 実際シュエリアも気にして無いようで、それ以上特に何も言わずに転移した。

「ここ……ですわね。え、ここ?」

「何だろうな、これ、え、何だこれ」

 俺とシュエリアが着いた場所にはなんか、こう、何かわからない建物が……うん?

「海の家……いや、洋館?」

「教会……でなくお城ですの?」

 俺とシュエリア、二人の言葉が大体あってて、ほとんど間違ってるような。

 そんな意味不明な建物に俺達は出会ってしまった。

「間違えてるだろ、飛ぶ場所」

「え? でも……シオンのGPSの座標が……ここになってますわ?」

 それじゃあここであってるのか?

 ってかGPSって。義姉さんそんなもんでシュエリアを誘導してるのか。

「まあ入ってみるか?」

「で、ですわね」

 なんかもう、初めから不安しかないんだけど。この誕生日会大丈夫だろうか。

 とりあえず建物に入ってみると、何処かしらから、音が聞こえて来る。これは……。

「波の音……?」

「小豆かも知れませんわ……」

「その差異はどうでもいい気がする……」

 って言うかなんで波の音。どういう催しというか、BGMだこれ。

「でも内装は……なんて言うか、ハロウィンですわね?」

「いや、これハロウィンか? なんかやたら緑と赤、白も目立つけど」

 リースにクリスマスツリー。紅白の幕に……門松……?

「意味が分からねぇ……」

「異世界ですの?」

「ツッコミ難いボケすんなよ……」

 コイツからしたら地球がそもそも異世界だし。間違ってないんだけど、この場合の異世界ってのは日常的ではないことの比喩だろう。

「ってか出迎えも無しか」

「とりあえず、ここの二回、パーティ用のホールがあるらしいですわ」

「義姉さんに聞いたのか?」

「ですわ。そこに来て欲しいって」

「そうか……」

 まあそれなら、とりあえず二回を探せば済むけど。にしても誰か出迎えてくれてもよさそうだが。

「行くか」

「ですわ」

 俺とシュエリア、二人とも若干言葉数が減っている。

 なんて言うか、意味不明な空間な上に、薄暗いのも手伝って妙なホラー感出てるせいかもしれない。

「……ユウキ、あれ、なんですの」

「うん?」

 シュエリアの指さす方を見ると、暗い通路の先に、青白い、人型の何かがこちらを向いていた。

「幽霊だな」

「断定早いですわね……?」

「いや、だって、幽霊だろ……」

「ユウキ、わたくし達に慣れ過ぎて幽霊出ても平然として居られるメンタルになったようですわね」

「元からあんまりホラー苦手じゃないけどな……」

 まあ他にも色々理由はあるが。

「とりあえず手招きしているし、行くか」

「えっ…………行くんですの?」

「むしろ何で行かないんだよ」

「むしろ何で行くんですの?!」

 なんでコイツこんな行きたがらないんだ。コイツの誕生日だよな。

 ……うん?

「ビビってんの?」

「は、はぁ?! ビビってねぇですわよ! でも、ほら! 幽霊だし! わたくし今日は主役だし?! 呪われるのとか今日は勘弁して欲しい気分なだけですわ?!」

「めっちゃビビってるじゃん」

 なんでコイツチートエルフなのに幽霊にビビってんだろう。

「ビビってねぇですわ! なんか生理的に無理なだけですわ!」

「生理的にて」

 幽霊相手にそれってどうなんだろう。と言うか……。

「お涼さんに失礼だからそのくらいにしとけ?」

「へっ……? お涼?」

 そう、アレは幽霊、もといお涼さんだ。

 なんかいつもと違って、髪は乱れてるし、前にだらっと流してるせいで風貌は貞子に近いが、お涼さんだ。

「シュエリアさん、結城さん、ご案内に上がりました」

「ま、マジですわ……というか、だとしたらその格好は何ですの……?」

 今も若干ビビってる風に聞くシュエリアだったが、何で未だにちょっと怖がってんだ?

 まあ確かに、迎えに来る恰好ではないが。

「この格好ですか。これはですね――」

「な、んですの?」

 思いきりビビりながらもお涼さんの話に前のめりのシュエリア。なんて言うか、これはこれで可愛い。

「だって私――地獄への出迎えですから!!」

「ふぎゃああああああああ?!」

「あ、逃げた」

 結構な悲鳴を上げながら、廊下を全速力で突っ走る阿保エルフ。

 この暗い中よくあの速度で走れるな。というか、何しでかすかわからし、危ないから追わないとな。

「すみませんお涼さん、俺シュエリア追いかけるんで」

「えっ……あ、結城さん……いえ、はい……」

「……ん?」

 なんかお涼さんが変だが、これも義姉さんの考えたお出迎えの一種だろうか?

 でもとりあえず今はシュエリア追わないとな。

 とは言え俺の速度で追いつける気もしないが……。

 そう思いながらとりあえず、シュエリアの向かった方向に走っていると前から何か、いやもう、どう見てもシュエリアが突っ込んできた。

「シュエリア戻って来たの――がっ」

「ユウキ大丈夫ですの?!」

 戻って来るなりシュエリアに強烈なタックルをかまされたので全然大丈夫では無い訳だが……しかし、この様子は冗談とかボケてるのではなく、何故か本当に心配しているようだ。

「大丈夫……だが。お前何、どうした」

「え、っと。ちょっとビックリして勢いで走り出してしまってから、さっきユウキが居ないのに気づいて……その、戻って来た感じですわ……」

「……そうか、そういう」

 ったく、相手はお涼さんなんだから、別に何もされないのに。

 って言うか、ツッコミどころ多いな。

 アレはちょっとビックリしたっていうレベルなのかとか、そもそも何でお前走って逃げてんのとか、戻ってくるのも何で走って来たとか。

 そして一番ビックリなのが、ビックリして走り出し、もといビビって逃げ出したのにわざわざ俺を心配したのか、戻って来たところだ。

「お前ってホラー苦手だっけ?」

「別にゲームとか映画ならいいですわ。でもほら、本物って、なんか、ほら」

「うん、よくわからんけど、わからないだけに怖いのはわかった」

 上手く言い表せない恐怖。ある意味で分からないからこそ怖いとか、必要以上に意識してしまっているってところか。

「別に、怖くは無いですわ……ただちょっと苦手なだけですわ……?」

「言いながらきょろきょろと挙動不審なの何とかならないか」

 どう見てもビビってるじゃん。まったくコイツはとんだ強がりだ。

「さて、義姉さん達の居る部屋探そうぜ、とっととさ」

「あ、それならさっきここから少し行ったところに明かりの漏れてる部屋がありましたわ」

「なるほど、そこかも知れないな」

 そう言って俺とシュエリアはその明かりの付いて居る部屋を目指して歩き始めた。

「でさ、めっちゃ腕にしがみつくのは何なんだ」

「今度逃げ……走る時にユウキを一緒に連れてく為ですわ」

「さいですか」

「さいですわ」

 いやこれ絶対ビビって……まあいいや。

 さてそれにしても、本当にシュエリアが見た部屋は会場なんだろうか。俺としては第二のイベントが起きる場所な感じがしてならない。

「こ、ここですわ」

「確かに明かりが漏れてる」

 着いたのは両開きのドアの前。確かに淵から若干の明かりが漏れている。

「入るか」

「入るんですの?!」

「入るよ……」

 なんでコイツここまで来て入るの躊躇ってんだ。ビビり過ぎだろ。

「はいガチャっと」

「ちょっ……ユウキ……っ」

 とりあえず俺が扉を開けて中に入るとシュエリアもそれについて入って来た。

「いえーい! 新年明けましてハッピーサマーハロウィーン!! ほっほー!」

「今度は頭の可笑しい義姉のターンか」

「怖いですわっ?!」

「義姉さん相手には素直に言う辺り、お前未だに義姉さんちょっと苦手だろ」

 コイツまだ義姉さん怖いんだな。なんでだろう。性格か?

「大丈夫だよシュエちゃん、ゆう君取ったりしないから」

「そ、そうですの?」

「え、そこなのか?」

 そこ心配してんの? 俺が義姉さんに、シュエリアを差し置いてどうこうされるとか無くないか?

 いや、まあ、実際俺はシスコンの気があるわけで、いつ義姉さんになびくかシュエリア的には意外と気にしているのか……?

「それで義姉さん、今回のこれは何なんだ?」

「うん? あぁ。シュエちゃんってほら、イベント事とか好きでしょ? だからこう、全部乗せしたら喜ぶかなぁって」

「全部って」

 全部ってつまり、アレか。

 海の家(夏)。ハロウィン(秋)。クリスマス(冬)。正月(新年)。

 ……うん? 春どこ行った?

「ならあのお涼さんは?」

「りょーちゃん? あの子は夏の風物詩、ホラー枠だけど」

「お涼さんだけでか?」

「へ?」

「え?」

 義姉さんが俺の質問に間抜けな声で返すもんだから、俺もそんな感じになってしまった。

「お涼ちゃん以外にも居たでしょ? 色々」

「……は?」

「…………ふへ」

 何言ってんだろうこの義姉は。お涼さん以外、何も無かったハズだ。

 あ、これもあれか? ホラー展開なのか?

 ってか、なんか今、シュエリアが変な声出してたな。

「おっかしいなぁ……目が合うと動き出す鎧とか、ドッペルゲンガーとか、小豆洗いとか用意してたのに……?」

「あぁ、小豆洗いか……」

 確かにそれは、会ってないけど、聞いたな。

 最初の波の音。あれ、小豆洗いか。しかしまあ、他の連中には心当たり無いな……。

「なあシュエリア、わかるか?」

「えっ……? えっと……鎧とわたくしの姿した奴なら、走ってる最中にぶっ飛ばしましたわね……?」

「災難だな鎧とドッペル」

 死んで無いと良いんだが。大丈夫かな。

「大丈夫だよ、アレ作ったのアーちゃんだから」

「アシェぶっ殺しますわ」

「アシェに対してだけ恐怖よりヘイトが勝ってる……」

 コイツ相変わらずアシェにだけはやたら強気なのな。

「まあまあそう言わず。お誕生日会を楽しんで欲しいなあ」

「そうは言うけれど、他のメンツはどうしたんですの?」

「大丈夫、今来るよ!」

 義姉さんがそう言うと、何処からともなく誕生日ソングが流れ始め、同時に会場となる部屋の至る所から凄い格好をした、見慣れた連中が入って来た。

 そして踊る、歌う。凄い格好で。

「なん、なんで彼女らは水着か仮装何ですの……」

「海とハロウィン……後はクリスマスと新年のイメージだからね」

「一月ですわよ?」

「大丈夫、部屋暖かいから!」

「そ、そうですの……?」

 なんか見るからに寒い格好で出て来られると色々心配になる。

 いくら部屋が暖かくても、流石にあの格好はな……。

「あ、でもアシェが水着来てるのは滑稽でいいですわね」

「お前アシェをなんだと……」

 いや、しかし水着勢思ったよりノリノリなのは何なのか。

 とりあえずひとしきり誕生日ソングを歌って、踊った後、全員で決めポーズまでして――

『シュエリア(さん)誕生日おめでとう!!』

 そこまで言い切って、ようやくこの意味わからん何かが終わったようだった。

「シュエちゃんおめでとー」

「え、何ですのこれ、嬉しいのか面白いのか感情が定まらないのだけれど」

「それに関しては、この色々カオスな空間の所為なのは間違いないと思う」

 こんな祝い方されたら、色んな所で感情が追い付かないだろうな。

「あれ? シュエちゃんあんまりこういうの好きじゃなかった?」

「……嫌いでは無いですわ」

「だよね!」

「嫌いじゃないんだ」

 この全部乗せのカオス。シュエリアは嫌いじゃないらしい。

「アイネはサンタ衣装なんだな」

「そだよ。私達ってほら、もう二回もクリスマスやってるのにさ、一回もサンタ衣装の美少女やってないじゃん?」

「「確かに」」

 シュエリアと見事にハモってしまった。

 いかんな。こういう所が似ているとまたアシェ辺りに呆れられそうだ。

「だから今回はアイちゃんにサンタさん。トモちゃんに巫女さん。アーちゃんに水着を頼んで、お姉ちゃんが仮装って訳なんだよ」

「そうなんですのねぇ」

 なるほどな、義姉さんなりに、考えている様だ。まあ、この全部乗せは結構カオスだが。

 特に開幕の義姉さんの挨拶とかは酷かった。

「でも衣装だけじゃなくて、ちゃんと各イベントをイメージしたものを用意したからね!」

「へぇ。例えばなんですの?」

 シュエリアが問うと、アシェが何かを持ってやってきた。

「あらアシェ、なんですの」

「これ、私からの誕プレよ」

「……爆弾ですの?」

「そんなもんでシュエリア死なないでしょ」

「ですわね?」

 そう言って素直にアシェからプレゼントを受け取るシュエリア。それでいいのか。

「で、このジャックオランタンはなんですの」

「夏と言えばスイカ割り、ハロウィンと言えばカボチャでしょ? 和洋折衷って奴ね」

「なるほど、一般人じゃカボチャなんて割れないと思うけれど、面白いですわね」

「シュエリアが私からのプレゼントシンプルに喜んでるの怖いんだけど」

「文句言われると思ったんですの?」

「うん……まあ」

 正直俺もそう思ってた。何ならカボチャぶつけられるまで考えてたんだけど。

「好意で貰った物を、それもわたくしの誕生日に態々用意された物に文句言うなんてしないですわ」

「そ、そう……よかった」

「まあ、その態度は腹立つけれど」

「モノには文句言わないけどアシェには言うんだな……」

 まあ、いつも通りだな。うん。

 そして次はトモリさんが寄って来る。

「次はトモリですの?」

「はい~これ~を~?」

 トモリさんが出したのは、え、何だこれ。

「これは……なんですの?」

「バ〇ブで~すが~?」

「…………了解ですわ」

 シュエリアが微妙な顔で何かを飲み込みながら言った。

 アシェにああいった手前、誕プレになんて物をとも言えないしな。

 そしてそんな微妙な空気の中寄って来るのはアイネだ。

 アイネ、頼むぞ。まともな物を。

「アイネも、何かくれるんですの?」

「はいっ! これとこれをっ!!」

 そう言ってアイネが出したのは、白い布? と写真だった。

「これは……ユウキの写真ですわね? で、こっちは?」

「はいっ、それは兄さまの着古したシャツですっ!!」

「オイ待て妹」

「ふにゃっ?」

 俺の嫁になんてもん渡してんだ俺の妹。流石にビックリだわ。

「写真までは、百歩譲ってわかるんだが。え、何。なんでシャツ」

「私の宝物ですがっ?」

「アレは、アレか? 俺が要らなくなったシャツをアイネが使うって言うから渡した奴か?」

「ですっ」

「そ、そうか」

 使うって言ってたから、てっきり何かのリサイクルと思っていたが、思いっきり現物のまま使っていたようだ。

 何に使ってたのかは知らない方が良いのかもしれない。

「とりあえず、仕舞っときますわね」

「はいっ」

 言いながらシュエリアはカボチャもアレも写真とシャツも一緒に異空間に仕舞った。

 ところでここで気になるのは、シュエリアの表情だ。

「ふ、ふふっ」

「…………」

 なんでだろう、アイネからのプレゼントに一番喜んでる感じがするのは。

 ニヤニヤしてるし、怖いんだけど。

「大事に使ってくださいねっ」

「えぇ、大事に使いますわ」

「……聞かなかったことにしよう」

 何を、何に大事に使う気なんだろうとか、気にしないでおこう。

 なんかもう、こう考えると仲のいいトモリさんとアイネが結託しているとしか思えない。

「あ、そだ。お姉ちゃんからもあるんだ。受け取ってもらえるかな?」

「シオンには誕生日を主催して貰っただけで充分ですのに……」

「まあま、そう言わずに!」

 そう言って義姉さんが出して来たのは……これは?

「最新版、フルダイブVRゲームのハード一式だよ!!」

「ふおぁああああああああああ!! ありがとうですわっ!!」

「一番更新されたなどう見ても」

 シュエリアらしいと言えば、らしいんだけど。なぜだろう、若干傷ついたのだが。

「ソフトは今までの互換性あるから全部行けるし、それ用の新しいソフトも開発してるから、出来たら逐一プレゼントするね」

「マジですの?! ひゃっほう!」

「俺の嫁……」

 シュエリア本当に遊ぶの大好きだな……。

「ちなみに家族で出来た方が楽しいと思ったから人数分シュエちゃんに上げるね」

「大盤振る舞いですわね?!」

 いやホントに、この人凄まじく金使ってるだろこれ。

 この会場といい、このプレゼントといい。なんでここまで。

「だからまあ、シュエちゃん。誕生日のシュエちゃんにこんなこと言うのもなんだけどさ……ゆう君とこれからも仲良くしてね」

「へ? えぇ。仲良くしますわよ?」

「うん、よかった」

 まさかこの人、そんなことの為に?

 義姉の余りの阿保さにビックリした……。

「それでユウキ、ここまで来たら、ユウキはどうなんですの?」

「ん? 俺か」

 まあこうして皆からプレゼントがあったのに、俺から無いのはな。

「まあその、コレ」

「これは、何ですの?」

「髪飾りだな」

「……ふうん」

 むう、反応が微妙だ。まあ、アレの後では仕方ないか。

「これ、ゲームの十字キーっぽいデザインですわね」

「あー、面白いかなと思って?」

「フーン……」

 何だか興味無さそうに背中を向けるシュエリア。

これは外してしまったか。まあ、うん、センス無かったかな。

「ま、貰っときますわ」

「お、おう」

 これならせめて他の皆の前に渡すべきだったか……。

「あら~シュエリアさん~ご機嫌~です~?」

「顔真っ赤ですけど大丈夫ですかっ」

「大丈夫よ、死にゃしないわ。ただの病気だから」

「大丈夫では無いのではっ?!」

 背を向けたシュエリアに、しかし真正面に立っている位置にいる皆が声を掛ける。

「ちょっ! ユウキから顔逸らしたのにバラすんじゃねぇですわっ!!」

「別にいいでしょ、嬉しいならそういえばいいのに。文句は言わないけどお礼も言わないって訳でもないでしょ?」

「そ、それは、そうですわ……?」

 何だか話が見えない。つまり?

「あー、その、ユウキ……?」

「……うん?」

 振り向いたシュエリアさん、なんだか顔真っ赤で目が泳いでるんですが。

「あ、あいがと……ですわ」

「……おう」

 なんか今、噛んだけど。それ以上に気になること。

 よかった、コイツ喜んでくれてたんだな。

「シュエちゃんは恋の病だからね。大好きなゆう君に貰った誕プレが一番かぁ」

「なるほどっそれで病気ですねっ!」

「解説しなくていいですわよっ!!」

 なんか、こうして喜んでもらえるとこっちも嬉しいもんだな。

「ユウキまで笑ってやがりますわ?! ぐぬぬぬぬ!」

「シュエちゃん可愛いなぁ」

「うっせぇですわ!!」

 いや、ホントに俺の嫁可愛いな。

 その後俺は一日中照れて真っ赤だったシュエリアの事を想いながら、シュエリアの自棄酒に付き合った。

 後日、当然だが、トモリさん以外がぶっ潰れた後の会場は、結構凄惨な姿になって居たのだが……まあ、これはこれで、後始末含め楽しい誕生日会だったと思う事にした。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00を予定しております。

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