答えたいですわ
ちょっと長めです。
「ニューヨークに行きたいかー!」
「別に」
いつも通りシュエリアの部屋で皆でダラダラしていると、シュエリアが急に立ち上がって叫び出したので、とりあえず意味が分からんが率直な感想を述べた。
「ちょ、話終わっちゃいますわ。興味ないんですの?」
「ニューヨークに興味はない」
「割と失礼な発言だけれど……そうではなくて、わたくしが何をする気なのかに、ですわ」
シュエリアが何をする気なのか……か。
「どうせクイズだろ」
「え、何でわかるんですの」
「むしろその台詞で何故わからないと思った」
どう考えても某クイズ番組の超有名な掛け合いだ。知らない人が居たら多分若い世代だろう。
……いや、俺も若いけどさ。
「ってことでクイズしますわよ」
「問題ないだろ」
「用意してありますわ」
「用意いいな」
コイツ最近暇って言うより自発的に何かしようとすること増えたな。良いことだけど、何かキャラがブレている感がしなくもない。そうでもないか?
「ということで、ユウキが出題者ですわ」
「お前が用意したクイズなのに」
「記憶はスパッと消しておくから大丈夫ですわ」
「それ答えようねぇじゃん」
コイツは馬鹿なのだろうか。
「馬鹿じゃないですわ。クイズがしたいだけですわ」
「いやっ……えぇ……?」
つまり答えられなくても、クイズをやっている雰囲気が欲しいと……。
「いや、俺が用意するから普通にやろうぜ」
「あら、思ったより乗り気ですわね」
「まあ、な」
正直俺もクイズとか謎解きとか好きだし。最初はそんなんに憧れて探偵なんて始めた部分もあったが、実際的な仕事内容は猫探しが一番多い。
たまにはこういうのもいいだろう。まあ、出題側だけど。
「ねぇねぇ、それならお姉ちゃんが良い物用意してあるよ」
「うん?」
この人が言う良い物ってあんまり信用できないんだけど、大丈夫だろうか……。
「何を用意するんだ?」
「えっとー、それはねぇ……」
義姉さんは皆には聞かれたくないのか、俺に耳打ちで教えてくれた。
「――ってことで、ゆう君は問題作っておいてね。お姉ちゃん、ちょっとセットしてくるから!」
「え、おう……」
そんなわけで、俺が問題を作成。義姉さんが『良い物』を用意。他のメンバーはとりあえず準備が終わるまで自由行動となった。
そして二時間後。
「準備終わったよ! ゆう君も問題は出来たかな?」
「おう。それじゃあ行こうか」
「え、何処にですの?」
シュエリア達には何処に行くのかは告げずに、俺達は義姉さんが手配した車である場所い向かった。
「ここは何処ですの?」
「お姉ちゃんが持ってるスタジオだよ」
「何でスタジオなんですの」
「クイズやるならやっぱりセットが無いとね!」
「……人の事言えないけど、馬鹿なんですの?」
「ホントに人の事言えないよね?!」
確かにサッカーしたさに異世界を作成した馬鹿がいう事では無いな。
「こんなこともあろうかと用意してたのに!」
「何でこんなことがあると思っちゃったかな」
「シュエちゃんが居るから?」
「……なるほど」
「納得されると複雑な気分になりますわ」
何かシュエリアは納得いってない様子だが、俺は凄く納得した。コイツが居るならいつかは通る道だ。
「ってことで早速行ってみよー!」
俺達は義姉さんに案内されて、スタジオ内のクイズ番組風セットのある大きな部屋に招かれた。
「それではゆう君が出題者のクイズを始めたいと思います!」
「なんでシオンが仕切ってるんですの。こういうのって出題者兼司会者の仕事ですわよね」
「まあそれは、ここから俺がやるってことで」
てなわけで、俺以外の全員が回答席に着くのを待ってから、早速第一問を始めることに。
「最初のクイズは早押しクイズ。問題文を読み上げるので、分かった段階でボタンを押して回答権を得た人から答えてもらう、と。不正解の場合他の回答者が全員不正解になるまでその問題の回答権は無くなるけど、失点のリスクは無いからどんどん行こう」
俺が大まかに流れを説明すると、流石に皆仕様は分っているのか、こくんと頷くだけだった。
「それでは第一問。なぜ山――」
「ポロロッカ!」
「……お前締め出すぞ」
一問目、かなりベターな問題を出そうとしたところ、シュエリアが即押ししたので、流石にベタ過ぎてわかったかと思ったのだが、とてつもない勘違いだった。
コイツは多分、これが、やりたかっただけだ。
「不正解なんですの?」
「むしろ何で正解だと思った」
「勢いで行けるかと」
「行ける訳ねぇだろ」
クイズをなんだと思ってやがるコイツ。
「はぁ……それじゃあ最初から。第一問。な――」
『ピンポン』
「……アシェ」
「わからないわ!!」
「…………てめぇ」
早押しクイズでわからないのに即押しする馬鹿が、ここにもいた。
「待ってユウキ。でもね? わからないことは、わかったのよ! だから押したわ!」
「そういう問題じゃねぇ!」
「あら、今のちょっと上手いわね?」
「お前らマジで締め出していいかなぁ?!」
不正解でもリスク無しだからどんどん行こうとは言ったが、これは違う気がする。
「まぁまぁ、落ち着いてゆう君。こういうネタ枠回答も楽しみの一つだから」
「バラエティ番組かよ……」
いや、まあ、楽しむためにやってるんだから、正解と言えば正解か。
……誰かマトモに答えてくれる人いないと進まないけど。
「ふぅ。問題。なぜ山を登るのかと訊かれて――」
と、ここまで俺が問題を読むと、今度はトモリさんが押した。
「山を~崩~す~より~早いから~?」
「すげぇ怖い事言いますね。不正解です」
「あら~」
と言うかこの人の場合崩した方が早そうなんだけど、気の所為かな。
「ところでゆう君、お姉ちゃんは答えが分かったよ」
「なら押せ」
「むぅ……はい押した! 正解はゆう君の心の中にある!」
「よーしぶっ飛ばす」
「お姉ちゃんにだけバイオレンスだね?!」
コイツ等ふざけすぎ。もうアイネしか残ってないじゃないか。
アイネにわかるかなぁ、これ。
「問題。なぜ山に登るのかと訊かれて、そこに山があるからと答えた人物は?」
「わかりませんっ!!」
「可愛い。よし次の問題行くぞ」
「ちょっ! アイネだけ扱い違くない?!」
そう言ってアシェがボタンを押してから突っかかって来る。
別に喋るたびに押さなくていいんだが。
「良いんだよアイネは、可愛いから」
「相変わらずえげつない贔屓するわね……」
妹贔屓するのは兄なら割と普通だ。多分。
「じゃ、第二問。昨年大ヒットした――」
『ピンポン』
「……シュエリア」
「娯楽の――」
「はい、不正解。次行くぞー」
なんかシュエリアの馬鹿が凄く下らないボケをかまそうとしたので、次に行く。
「昨年大ヒットした映画で、鬼になった妹と――」
「渡る世間〇鬼ばかり!」
「義姉さん、アンタ阿保か」
鬼ってだけでそこに行っちゃうのは何だろう、年代だろうか。若いはずなんだけど。
「はぁ。第二問。昨年――」
「ピンポン」
「アイネ、口で言わなくていいんだぞー」
まあ、ボタンも早押し出来てるし、いいんだけど。可愛いし。
「鬼滅〇刃ですっ」
「うん、正解」
「ちょっとちょっと、それ本当にあってるの?!」
俺が正解を出すと、アシェがまたまた立ち上がって突っかかる。
「ちゃんと正解だよ」
「本当は映画のタイトルをフルで答えるとかじゃないの?」
「あー、いや、そうじゃないんだよ」
「え」
俺の言葉を受けてアシェがポカンとした。
「まあお前の気持ちはわかるよ。アイネが答えたから俺が激アマ採点で正解にしたと思ったんだろ? でもこれ、劇場版タイトルを答えると思わせて原作タイトルを訊くって問題なんだよ。お前の答えだと引っかかるだけだよ」
「なん……だと……」
アシェが凄いショックを受けて席に戻る。
「さて、次はイントロクイズでもやろうか」
という事で、せっかく義姉さんが用意してくれたセットを使ってイントロクイズなんてやってみることにした。
「これから曲のイントロを流すから、それをさっきと同じ要領で早押しして答えてもらう。曲は全てアニソンで、曲名かアニメタイトルでも正解とする」
とてもざっくりした説明だが、まあわかるだろう。
特に質問なども上がらなかったので、続行する。
「じゃ、第三問」
俺が手元のボタンを押すと、曲が流れ始め……そして。
「紅〇華ですわ!」
「ちげぇよ」
シュエリアがまたやらかした。
「続きを――」
シュエリアの阿保は置いといて続きを流すと、今度はトモリさんが早押しした。
「無敵~の~力は~?」
「あってるけど……あってるけども!!」
曲名を、もしくはアニメの名前でもいいけど、答えてもらわないと正解には出来ないので、歌われても不正解だ。何ならトモリ節なせいで音程ガッタガタだし。
また曲を流し始める。
「そろそろわかるんじゃないか?」
イントロも流れ切ったところで曲が終わり、そして答えたのはアシェだった。
大丈夫かな、コイツ。
「わからないわ!」
「お前さぁ!!」
なんでだ、何故同じボケを二回する!
「ふぅ、満足したわ」
「満足しちゃったよ……」
もうホント……何なのコイツ等……。
「それで……他にわかった人は?」
「お姉ちゃん分かったよ! これはテ〇ン――」
「やめろ」
それは触れない方が良いと思うんだ。俺は。
「アイネは……」
「マジ〇ガーZですよねっ」
「わかることに若干ショック受けたわ」
「にゃんとっ?!」
なんだろう、こう、言っちゃなんだが、可愛い妹がその、昔のロボットアニメに理解あるとなんか、微妙なおっさん臭さと言うか……その……。
「ま、まあいいや。次行こう」
次の曲が流れ始めるとまたもや最速で押したのはシュエリアだった。
まだほんの一瞬しか聴いてないのに大丈夫なのか?
「紅蓮〇ですわ!」
「山張るの止めようか!!」
全然大丈夫じゃなかった。この阿保どうしよう。
そう思っていると、何故かアイネが押し始めた。
「え? あ、アイネ、大丈夫か?」
「大丈夫ですっ! ソルテ〇レイですっ!」
「俺の妹がこんなにオタクな訳が……」
正解だった。何でわかったんだろう……。
もしかして。
「アイネって俺と見たアニメ結構覚えてるのか?」
「兄さまと過ごした時間を忘れる事なんて無いですがっ?」
「お、おぅ……」
そうか、猫の時に膝にのっけて見てたアニメとかまでガッツリ覚えててイントロ一瞬聴いて分かるレベルとか、ちょっと記憶力怖すぎるけど。
「じゃ……次」
この分だとアイネが圧勝する気がするんだが、大丈夫かな。
別に誰が勝ってもいいけど、流石にアイネしか正解しないのはなぁ。
「そしてお前はまた最速で押したなオイ」
「この瞬間を待っていたんですわ」
「お前の場合待てずに毎回最速で不正解出してるけどな」
まあ、今回は正解しそうだから、いいけど。
「紅〇華ですわ!」
「うん、正解」
まあ、山張ってる阿保が居たから出題するか迷ったけど、他のメンバーが早く押すかと思って出してみたんだが、やはりシュエリアになったか。
「さて、次からはフリップで答えてもらうクイズになるが。まずはこれを見てくれ」
回答席全てから見える大型のモニターに映し出されたのは某国民的アニメの戦闘シーン。
「このシーンで次にこのピッ〇ロが使う技の名前をフリップに書いて答えてくれ。時間は一分、それじゃ、始め」
戦闘は孫〇空とピッ〇ロがラディ〇ツと戦うシーン。
技はもちろん止めを刺したあの技なのだが、さて、わかるかな。
「それじゃあ回答を見せてもらおうか」
時間になったので一人ずつ、回答を見ていく。
出題用の席からだと見えないので、とりあえず近くまで歩く。
「まずシュエリアは……『魔浣腸殺法』? お前……」
コイツは以前無駄な事をして過ごした時に思いきり技名を叫んでいた。知らないはずがない。
「フリップを渡されるとボケたくなる……芸人の性ですわね」
「誰が芸人か」
本職に失礼だから、それ。
「で? アシェは……」
「わからないわ!」
「……満足したんじゃなかったのか」
「分からない物は分らないもの。仕方ないでしょう?」
「まあ……いいか」
本当に分からないのなら、仕方ない。
「トモリさんは……『なんか凄い必殺技』ですか。うん、そうなんですけどね?」
「ダメ~ですか~?」
「駄目ですね」
小首をかしげて可愛く聞いてくるが、これで良いならいっそ全員正解だよ。
「アイネはどうかな……え?」
「正解ですかっ?」
「本当にアイネは優秀だな……」
フリップにはキッチリ魔貫〇殺法と答えが書いてあった。
「ふんすっ」
「うんうん、偉い偉い」
なんかもうまともに答えてるのがアイネだけな所為で、余計可愛く見える。
とりあえずひとしきり撫でると俺は一応義姉さんの回答も見ておいた。
「で。なんで義姉さん正解してんの」
「あれ?! 何で正解したのに嫌そうな顔なの?!」
何でと訊かれてもなぁ。
「いや、裏がありそうで」
「別に正解してるアイちゃんがゆう君に優しくされてるからお姉ちゃんも真面目に答えたとかじゃないよ!」
「ほぼ白状してるようなモノじゃないかそれ?」
いや、まあ、別にいいんだけどさ。
「さて次……ん?」
次に行こうと思って席に戻ろうとすると、義姉さんに掴まれた。
「なんだよ」
「お姉ちゃんも撫でて欲しいなぁ」
「……なんで?」
「なんで?!」
何故かとても驚いた様子なんだが、いや、本当になんでだ。
「アイちゃんは正解したら撫でたじゃん!」
「アイネは可愛いからいいんだよ」
「お姉ちゃんも可愛いよ!!」
「可愛いけど義姉さんはいいんだよ」
「うおえぇえおうお?!」
「いやだからどんな声だよそれ」
この人俺が褒めると顔真っ赤にして変な反応すること増えたな。防御力皆無かよ。
「はぁ……もういいか」
とりあえず面倒だからさっさと頭撫でて終わりにしよう。
そう思い、頭に手を伸ばしたのだが、褒められてテンパった直後でビックリしたのか、義姉さんは急に立ち上がろうとした。
結果。
『むにゅ』
「あっん……」
「変な声出すな!!」
うっかり……義姉さんの胸に手が行ってしまった……。
「ご、ごめん、義姉さん」
「いやむしろご褒美だけど……」
「そういう反応がなぁ……」
俺の義姉の残念なところだ。
しかし、これで済むのは俺と義姉さんだけだ。こんなのを見たら当然、他の連中は面白くないわけで。
「ほっほー。正解したらユウキから撫でられたり、揉まれたりするんだ?」
「ヤラシイですわねぇ」
「あらぁ……」
主に何もされてない三人からの圧が凄く強い。
「と、とりあえず次行こうか……」
なんかこれは……凄く、そう、凄く面倒な事になった気がする。
「次の問題はこれだ」
こちらも皆に分かりやすい問題。国民的アニメ、ドラえ〇んからだ。
「このアニメに出て来るドラえ〇ん。この青い姿が印象的だけど、元の色は何か、これが問題だ」
彼は諸事情により黄色から青になってしまった変わったロボットだが、これはわかるだろうか。
「で、答えは……っと」
まず、シュエリアを見てみる。
「正解だな……」
「ですわね?」
「……うん」
正解なんだけど、シュエリアが凄く良い笑顔でこちらを見て来る。
凄く見て来る。何かを待ってるのは明らかだ。
しかしここで俺から手を出すと、何か言われそうな気もする……どうしたらいい。
「撫でてもいいですわよ?」
「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」
俺が撫でたい感じになってるけど、まあいい。下手な事言って怒らせる必要も無い。
そう思って撫で始めたのだが。
「相変わらず手触りの良いサラサラな髪だな……爽やかで甘い香りまでするし……」
「まあ、女の子ならそういうもんですわ?」
「そうか」
アイネのふわふわした髪とはまた違った感触でこれはこれで……。
「アンタいつまで触ってんのよ。こっちは待ってるんだけど?」
「えっ……あぁ、そうだな」
ついシュエリアを撫でるのに夢中になってたら、思いっきりアシェに怒られた。
「じゃあアシェの回答も……え、正解?」
なんでコイツまで正解してるんだ。
「何よ?」
「い、いや、正解だな。うん」
「そう、それだけ?」
「え……?」
それはつまり、そういう事なのか?
「……撫でてもいいですか」
「良いわよ?」
「おぅ……」
非常にうれしそうに許可されてしまった。
なんかクイズの趣旨が違ってきている気がする、というか、コイツ何で今回に限ってわかるんだよ……。
「もしかしてお前ずっと答え分かってたのか?」
「ん? 当たり前でしょ。ただまともに答えてもどうせ……何でもないわ」
「??」
何か言いかけたが何でもないと露骨に隠されてしまった。
うーん?
「あぁ、真面目にやっても絡んでもらえないから構って欲しくてわざ――ぐふぅっ!」
「アンタそういう所よ!!」
何故かアシェの気持ちを察したはずなのにボディブローをかまされてしまった。
意味が分からん……。
「とっとと次見てきなさい!」
「うっす……」
アイツ運動センス皆無なのになんで殴るのだけは強いんだ……。
「それでトモリさんも正解なんですね……」
「まあ~大事~な~ことな~ので~?」
「色がですか?」
「スキン~シップ~?」
「なるほど……」
つまりトモリさんもそっちなんですね。
「撫でても?」
「どちらか~といえば~揉み~?」
「いや勘弁してください……」
アレは故意では無く事故だ。というかトモリさんにそんなことしたらいやらしさしかない。
完全にアウトだ。
「しかた~ないです~」
「では。失礼して」
トモリさんのことも撫でてみたが、あれ、様子が。
「どうかしましたか?」
「いや、え?」
なんでキリッとした、この人。
「雰囲気が、変わったので」
「あぁ……いえ、なんて言うか、そうですね。気を楽にして撫でられても良いんですけど、こうして集中して、愛しい人に触れられるのも、いいなぁと思うんですよ」
「そ、そうですか」
まさかトモリさんが俺に撫でられるのをそこまで喜ぶとは思ってなかった。トモリさんもこういう触れあいとか好きなんだな。
「そ、それじゃあ次行こうかな……」
「なぁんでトモリの時だけ照れてんのよ」
なんかアシェから睨まれている気がするが……気にせず次行こう。
「アイネも正解か、偉いなぁ」
俺が当然のように撫でようとすると、アイネに避けられた。
「えっ……」
「むぅっ」
避けられて酷くショックな俺と若干不機嫌そうなアイネ。
これは、どういう……。
「トモリさんばっかり意識してる兄さまにはナデナデさせてあげませんっ」
「なん……だと……」
まさか妹にそっぽ向かれる日が来るとは……。
「俺の妹が反抗期……」
「そーいうんじゃないと思うよ、ゆう君」
義姉さんはそう言うが、じゃあこれは一体。
「単純にヤキモチだよ。ゆう君が誰彼構わず撫でまわすから」
「いや、言い方。でもほら、ハーレムだし、誰か一人しかかまわないわけにも……」
俺がそういうと、義姉さんに頭を軽く叩かれた。
「駄目だよゆう君、その言葉に逃げてちゃ。確かに皆ゆう君が好きで、ゆう君も皆を好きだからこの形だけど、それとこれとは話が別。皆ゆう君に大事にされてても、ヤキモチ焼いちゃうことだってあるし、不安もあるの。そこをわかってあげたうえで全員幸せにする甲斐性が必要だと、お姉ちゃんは思うなぁ」
「……義姉さん……」
いつもなら義姉さんが真面目な事言うとツッコみたくなるが、これは結構な正論だった。
確かに、ハーレムだし、こういう事もあるとか、仕方ないとか、そればっかりじゃダメだな。
「ありがとう義姉さん」
「うん」
「たまにはマトモな義姉さん」
「え? うん?」
「たまにありがとう」
「うん?!」
なんか素直にお礼を言ったら恥ずかしくなったので、誤魔化してしまった。
早速で悪いけど、仕方ない。ごめん。
ということで、アイネには別の形で答えようと思う。
「アイネ、正解おめでとう。こっちおいで」
「……にゃっ?」
アイネを手招きして呼ぶと、近寄って来たアイネを抱き締めた。
「アイネは皆より正解してるから、このくらいはいいよな」
「にゃっ……そ、そうでふゅねっ!」
「噛んでるぞー」
まったく可愛い妹兼、俺の将来の嫁だなぁ。
「さて、後は義姉さんだけど……」
「うん」
「何で不正解なんだ」
「だって!!」
義姉さんは思いきり立ち上がるとテーブルを叩いて抗議してきた。
「あんなの何度もされたらお姉ちゃん色々大変だよ!!」
「何度もしねぇよ!!」
アレは事故だ。故意じゃない。
せっかくちょっと見直したのに、またこれだよ。俺の義姉は、まったく。
「はぁ……まあいいけどさ」
そう言って、とりあえず義姉さんの頭をポンポンと撫でた。
「ふぇ……ふぁああああ!?」
「いやだからどういう反応だよ……」
撫でられた部分を両手で押さえながら半狂乱でのたうつ義姉さんを見て、この人やっぱ変だなと思う。
「だって正解して無いのに!」
「いや、なんかいいこと言って俺の事諭してくれたお返し? ある意味正解の報酬?」
「そういうとこじゃないかな! ゆう君の悪いとこ!!」
「どうしてそうなる」
義姉さんは不意打ちに弱いと言う事か?
「なんかこれ、アレですわね」
「ん?」
俺と義姉さんの様子を見ていたシュエリアが、近寄って話しかけて来た。
「もうクイズとかいいから、いっそイチャ付くだけの雰囲気になってますわ?」
「つまり?」
俺が聞くと、当然と言わんばかりに答えた。
「帰って全員でだらだらイチャイチャしますわ」
「お前はそれでよくても他は……」
良くない。かも知れないと思って見回したが、そんなことは無さそうだ。
「……じゃあ、帰るか」
「ですわ」
という事で、なんだかクイズよりやりたいことができたようなので。全員で家に帰って、皆で仲良くスキンシップ多めの時間を過ごすことなった俺達。
クイズの最多正解数のアイネには後日、シュエリアから生きたマグロが一本贈られたが……アイネにはマジで嫌そうな顔をされていたのが傑作だった。
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