新天地ですわ!
「だりぃですわ」
「ふーん」
いつも通りシュエリアと過ごす休日。今日は昼間から全員揃ってる。
シュエリアだらだら、俺もだらだら、アイネもゴロゴロ、トモリさんはボーっとしてアシェはやたらと俺とシュエリアにちょっかい掛けては撃退される。義姉さんは何故か凄く大人しい。
そんな中、シュエリアが急に「だるい」と言い出したわけだが、俺は適当に返事しておけばいいと思い、返したのだが。
「ユウキはわたくしに興味ないんですの?」
「お前のことは好きだし、興味もある。ただお前の戯言には興味がないだけだ」
「嫁の話をよく聞かないで戯言と断ずる辺りに興味も好意も感じないのだけれど……」
そんなことは無いが……まあ、そう思われても仕方ないか。
「で、何がだるいんだよ」
「ん? あー、それですわ。わたくし今度新しくできるお店。シオンの作るお店の店長することになったんですわ」
つまりそれは仕事が増えてメンドクサイという事だろうか。
「しかしそれは義姉さんを前にして言う事か」
「シオンの前だから言ってんですわ」
シュエリアがそういうと、対面に座っていた義姉さんがむくれた。
「えぇー、給料めちゃくちゃ弾むのに」
「ちなみにいくらなのよそれ」
そして義姉さんの隣に座っていたアシェが金の話とみて食いついた。やたら興味深そうにしてるけど、なんだ。金欠か?
「何ならシュエリアの阿保じゃなくて私がやっても……」
「シュエちゃんじゃなきゃ無理だと思うなぁ」
「なんで私っていつもシュエリアより評価低いのよ……」
そう言って落ち込むアシェを見て、義姉さんがフォローする。
「人間性はアーちゃんの方がまともなんだけどね」
「それ以外が劣ってるってこと?」
「うん」
義姉さんが肯定すると、アシェがテーブルに突っ伏した。
「止めを刺してどうする」
「あちゃー、ついつい本音が」
「良いわよ……どうせ私はシュエリアの劣化エルフよ……」
なんかアシェがいつも通りへこまされてる。哀れだ。
しかしそんなアシェを見て、意外な人物が手を差し伸べた。
「大丈夫ですわ、アシェ」
「シュエリア……? 何よ、何がよ」
なんだ、シュエリアがアシェのフォローなんて意外だな。
「すべてのエルフはわたくしの下位互換だから、アシェだけが雑魚なわけじゃないですわ」
「あんたホント大っ嫌い!」
「何やってんだアイツは」
シュエリアは本当にアシェをおちょくるのが好きだな……。
あっちからもこっちからも滅多打ちなアシェ。しかしまあ、いつものことだし、下手に触れても話が逸れすぎるので、そろそろ本題に戻りたいところだ。
「それで、シュエリアは店長になるのがだるいってのをここで言って、どうしたいんだよ」
「待遇の改善を希望しますわ」
「何故それをここで」
「ユウキが居る場所ならシオンも譲歩するかと思って」
「シュエちゃんずっこいなぁ……でもそれが分かってても嫌と言えないのが情けない……弟の前で良いカッコしたくなる姉の性だね」
「って言うかそんなに職場環境悪いのか?」
義姉さんがそんなブラックな環境で働かせると思ってなかったんだが……。
「シュエちゃんが言ってるのって職場の人間関係の話でしょ」
「ですわ」
「ん?」
勤務内容が酷いのかと思ったがどうやら違ったようだ。どちらかと言うと労働環境の問題か。
「人間関係って、どんなだ」
「まず、店が夜限定のバーなんだけれど、働いているのが夜行性の異世界人ばっかりなんですわ」
「夜行性」
それはつまりアレだろうか、夜に生きる生物……猫とか……猫とか……。
「一応言っとくけど、猫じゃねぇですわよ」
「……誰もそんなこと言ってないだろ」
「思ってたでしょう」
「心を読む魔法はズルいと思う」
「使わなくても分かりますわ……」
ふむ、そんなにわかりやすいか俺。
「吸血鬼とか、何故か人狼、それにゴーストとか、サキュバスですわ」
「へぇ。いい店じゃん」
「人選だけでその発言出る辺りユウキって結構中二病の気がありますわよね」
「そんな馬鹿な」
別に中二じゃなくてもその人選なら面白そうな店だと思うはず……多分。
というか、それは置いておくとしてもそれの何が問題なのだろうか。
そう思っていると何故かアイネがつっこんだ。
「それで、何が問題なんでしょうかっ! 猫差別ですか!!」
「だから猫じゃねぇですわ。まあ、種族だけなら別に、そんな嫌うようなことは無いのだけれど。なんていうか、皆変なんですわ」
「シュエリアさんよりですかっ?」
「…………そうですわ」
「シュエリアが我慢するなんて珍しいな……」
敢えて否定せず肯定したってことは、それだけ変な連中ということなのか。
「具体的にどう変なのよ」
「それは……はっ! 思いつきましたわ!」
「思い付きで人を悪く言おうなんて碌な女じゃないわね」
「アシェじゃなし、そんなことしないですわ」
「はぁ?! 私がいつそんなことしたのよ!」
「わたくしの元婚約者(笑)にしたこと覚えてないんですの?」
シュエリアに問われて、アシェが引きつった顔でしどろもどろになりながら答える。
「あれは、あれよ……人間だれしもそういう時があるものでしょ。小さいこと言うもんじゃないわ」
「どっちが碌でもない女なんですの……」
どう見てもアシェの方が碌でもない感じではあるが、それはそれとして。
「シュエリアは何を思いついたんだ」
「あぁ、それですわ。新しい店の従業員にユウキ達を会わせてあげますわ」
「それで?」
「変な奴だったらユウキも人員確保に協力して欲しいですわ」
「思ったより働く方向性で話を進める気なのはビックリだよ」
だるいとか言ってたからやらずに済む方法でも考えるのかと思ったけど違ったようだ。
「どうせなら新店舗の店長もした方が儲かるからできる限りやりますわ」
「そうなのか。しかしそんなに稼いでどうすんだ」
「オタクって金がいくらあっても足りない趣味だって、ユウキも知ってるでしょう」
「……シュエリアから自分がオタクだってハッキリ聞いたのって初めてな気がするわ」
「そこ気にするとこじゃないですわよ」
しかしまあ、確かにアニメに漫画、ゲームってだけでも結構な金の掛かる趣味だが、そこにコイツは暇に飽かして様々な娯楽に思い付きで手を出すから余計に金が掛かるしな……。
趣味=娯楽って範囲広すぎてそりゃあいくらあっても足りない趣味だ。
「ってなわけでユウキ、飛びますわよ」
「……うん? 飛ぶ?」
「いっせーのでジャンプですわ」
「それはアレか、あの、アレか」
「ですわ。せーのっ」
ってことでジャンプして、はい、店内。
何でこんな古臭いお約束をやる必要があったのかは知らんが、着いたからいいや。
「それで、ここどこだ」
「バー『闇の眷属』ですわ」
「バーなのに中二病臭すげぇなオイ」
店内は闇魔術とかの儀式でもしてそうな内装で薄暗い。ハロウィンパーティとかに案外よさそうな雰囲気だなぁとかふと思ってしまうようなそこはかとなく現実味の無い空間だった。
「そしてジャンプしてないのに義姉さん達もいるのな」
「転移魔法使ったんだからジャンプする必要なんて無いですわよ?」
そう言って俺を憐れむように見るシュエリア。
「言い出しっぺのお前にその態度取られるとシンプルに腹立つな」
「短気ですわねぇ」
「お前まじいっぺんしばくぞ」
「通常の三那由他倍で返しますわよ」
「そこは三倍にしてくんない? なんで那由他までいった。報復に気合入り過ぎだろ」
「ちゃんと加減はしますわ」
「そういう問題か……?」
これって不可思議とか無量大数でないなだけ良いと思うべきなのか?
どっちにしてもコイツに手を出すと怖いから止めとこう……。
「それで? 店に来たのはいいが、店員は居るのか?」
「今の時間でもいますわよ。住み込みだから」
「そ、そうか」
バーで住み込みってのもよくわからんが……店内からじゃわからんがこの建物自体が住居が一緒になってんのかな。
それならそれで営業時間外の住居に押しかけてるわけで、別の問題が発生している訳だが。
「ちょっと呼んできますわね」
「お、おう」
アイネ達と共に、しばらく席について待っているとシュエリアが複数の女性を連れて帰ってきた。
「彼女たちがわたくしの部下として働く店員ですわ」
「ほほう」
シュエリアが紹介してくれたのは五人の女性だった。
「左から順番に自己紹介するんですわ」
「えー……はい……じゃあ……」
言われて最初に自己紹介を始めたのはなんだかとてもやる気の無さそうなテンションの割に派手な金色の長髪と開かれれば大きいのであろう紅い瞳の中、高校生くらいの少女だった。
本人の性格からは余り想像できないパンクな衣装に頭の上にちょこんと乗った黒いリボンが印象的。
見た目だけならかなりの美少女だが、シュエリアの話ではこの子ら問題児らしいしなぁ。
「えー……っと。ヴァンパイアの……あれです。私で。よろ……」
「うん、なんかもう接客向いてない感凄まじいな」
最後の「よろ」だけ聞くと若干イマドキっぽいが、実際は「よろしく」と言おうとして途中でめんどくさくてやめたような感じだった。
「名前はルミアですわ。ちなみに吸血鬼で夜行性だけど、夜になっても基本的にはこのテンションですわ」
「ってことは夜になると別人のように明るいとかは」
「無いですわ」
「なるほど」
うん、まあ。ちょっと人付き合い苦手そうだが、シュエリアが言っていたほどかと言われると微妙だと思う。ギリギリ接客できない事も無い気がする。
「それじゃ次はアタシだね! アタシはワーウルフのジーナ! 好きな物は肉! 趣味は食べる事! よろしく!」
「こっちは非常に分かりやすいな。接客に問題は無さそうだが……」
見た目もそこまで狼要素強くない、というか耳と尻尾くらいにしか見られないし犬か狼か判別できないレベルでただただ耳と尻尾がもふい。色彩はグレー多めだから狼なイメージはある……か?
スレンダー体系にシンプルな白Tシャツにジーンズの短パン。かなり健康的だが時期的に寒そうだ。いや、一応獣娘だから体温調整出来てるのか?
「この子は夜になると狼成分増えすぎて人語喋れないんですわ」
「なんでバーに立たせようと思った」
夜の店に適してないだろそれ。昼間働けよ。
「まあ、そんな感じで、次ですわ」
シュエリアが次にと催促したのはゴースト……幽霊だったのだが。
これはもう、見た目からなんか違う気がしてならない。
「このお店で給仕としてお世話になります幽霊のお涼です。よろしくお願いしたします」
「……あまりに普通過ぎてツッコミ難いなぁ」
「まあ、人格的には一番マトモですわよ」
そもそも幽霊に接客させるのってどうなんだ。これを客はどう受け止めて接客されればいいのだろう。
と、いうか。
「お涼さん、日本人ですよね」
「えぇ、その通りです」
「……うーん」
この洋風な店内に西洋の怪物。その中にただ一人ザ・幽霊という見た目の二十歳程の日本人女性。
三角の頭巾とか白い装束とか、もろに日本の幽霊像のまんま。
これは流石になあ……。
「場違い感は否めないな」
「でも唯一まともに接客できそうな子ですわ」
「まあ、確かに」
とは言えやはり幽霊に接客されるのもな。差別するわけではないが、ポルターガイストで酌とかされても困るだろう。
「それで、次は――」
「……………………」
お涼さんの隣を見ると、じっとこちらを見つめて動かない、いかにもな魔女って感じな少女。
「……なあシュエリア、何で俺無言でガン見されてんだろう」
「喋ってますわよ、この子」
「え?」
そう言われて耳を澄ませてみたが俺には彼女の声は聞こえていないのだが。
「えぇっと、名前とか聞いても?」
「…………」
「あの……」
「……」
これは何というか、事故じゃないだろうか。
「小説でこんだけ『……』が続いたらもう事故だよ」
「メタいこと言うもんじゃないですわ。この子めっちゃ声小さいんですわ。だからいつもはLI〇Eなんだけれど、今日はスマホ忘れたみたいですわね」
「L〇NEでしか会話できないとか接客アウト過ぎるだろう」
「ちなみに名前はルンルンですわ」
「全然ルンルンしてないじゃん……」
完全に名前負けしてる気がする。
というかこれマジでこの調子だとまともに仕事できるメンツ揃ってなさ過ぎてシュエリアの負担がヤバそうなんだが……。
いや、何もホールだけが仕事とも限らないのか。いや、バーでそんなことあるか?
うーん。最後の一人はマトモだったりしないのか?
「それで……最後は――」
俺が話を振ろうとすると最後の一人が一歩前に出た。
「フッ……ついにっ真打っ登っ場っ! 我が名はア――」
「よし、これは人材教育の必要があると見た」
俺は彼女の自己紹介が終わる前にもう結果が見えていたのでさっさと結論を言った。
「まてい! この我の言葉を遮るとは貴様――」
「とりあえず中学生は働かせちゃ駄目だろ」
「中学生ちゃうわ!!」
俺が痛い中学生を除こうとすると、憤慨した中二の子がそれを否定してきた。
「違うのか」
「こんなグラマラスな中学生見たことあるのか!? ん?」
「無いけど。見た目は大人、頭脳は子供だろ?」
「それはただの馬鹿! 我はもっと高尚な――」
「中二病と」
「違わい!! 我は――」
「その一人称話し難くね?」
「い、いや、別に我は――」
「親の前でもそれで話してるのか?」
「え、それは流石に……」
「ちょっとユウキ、中二病苛めなんてせこい事するもんじゃないわよ」
「ん、おお」
俺が中二の子にちょっかいを掛けていると、思いの外アシェに止められた。
「こういう時は先人として、生暖かくスルーしてやるのが粋ってものなのよ」
「俺にこういう時期は無かったけど玄人が言うと重みがあるな」
「誰が玄人よ。てかアンタは現在進行形なのによく言うわね」
「え?! 俺って現在進行形なの?!」
そんな馬鹿な……え、まじ? マジでか?
「それで? 貴女、名前は?」
「え、えっと……われ……わた……我は、アセトです……だ」
「なんか田舎者みたいになってんぞ」
「アンタの所為でしょ、可愛そうに」
どうやら俺に中二病をツッコまれ過ぎて設定がガッタガタになってしまったようだ。
「あの、十八歳で、サキュバス、です……だ」
「へぇ、トモリと同じサキュバスなのね、この子」
「あら~」
なるほど、このグラマーな体系はサキュバス故か……にしても中二病のサキュバスとはまた妙に濃いのが出て来たなぁ。
と言うかそれ以前に未成年なんだけど、良いのかな……こんな店で働かせて。
「そこのトモリ……さん……とやらはサキュバスなのか……ですか……だ?」
「もうしっちゃかめっちゃかだな」
最後の「だ」とか絶対要らないし。
「アンタの所為でしょ。アセト、アンタもう自由に話しなさい。この阿保は気にしなくていいから。ね」
「あ、はい……こほん。お前も我が同胞だったのだな、トモ――」
アシェにフォローを受け、最初の調子に戻ったアセトだったが、直ぐに言葉に詰まった。
「どうしたのよ」
「え、あ、いや……トモリ……様は、サキュバスであらせられる……ですね」
「いやホントにどうした」
中二に戻ったはずのアセトがトモリさんの事をチラチラ見ながら物凄く挙動不審だった。
「どう~か~されまし~た~?」
「い、いえ! なんでもございません!!」
そうは言うが、どうみてもアセトの反応がおかしい。
「どうしたんだアセトさっきから変だぞ」
「え、いやっ、その……トモリ様ってサキュバス……なんですよね?」
「そうだが」
「…………魔王とか魔神とかでなく?」
「魔王ではあるな」
まあ、元だけど。
「そんな方に『お前』とか『同胞』とかお花畑な事言ってしまった! どうしよう!!」
「中二病がそれを気にしてどうする……」
いっそ中二病もお花畑の部類だから今更気にしても仕方ないと思うんだが。
「そもそもトモリさんはそんなこと気にしないって」
「そ、そうか?」
「見ろトモリさんを、あの何物をも受け入れる包容力丸出しのおっとり感を」
「丸出して、言い方ってもんがあるでしょ」
「それはともかく、トモリさんは度量の広い優しい人だってことだ」
「あら~うれし~い~です~」
褒められて喜ぶトモリさんを見て、今更本人の前でガッツリ褒めちぎったことを理解した。
「ま、まあそんなわけで仲良くな」
「お、おぅ……そういう事ならば、我はトモリと友の契りを結ぼうではないか、光栄に思え、我が盟友になれることを!」
「……はい~」
なんか一瞬トモリさんが固まった気がしたが気のせいだよな。いつも動きがゆっくりだから、そう見えただけ、だよな。
「トモリさん今結構イラッとしたっぽいですっ」
「え、そうなのか……」
ま、まあ中二病とは言えちょっと上から来たから、かな。
その内こういう子だって慣れれば、大丈夫だよな?
「それでまあ、どっちにしてもこのメンツで仕事するのは心配なわけですわ」
「ふむ……」
しかしどうだろう、これはこれで面白いメンツが揃っているのではないだろうか。ある意味では『そういう』店だと思っていればどこぞのシュエリアが人気になる喫茶くらいには繁盛しそうな気がする。
「これはこれでアリってことで」
「はぁ!? 何でですの!」
俺の結論が気に入らなかったのか、驚くシュエリア。
「良いかシュエリア、この闇の眷属という店名もそうだが、どう見ても普通のバーではない内装もそうだし、この店はな、そういうテーマの店なんだよ。だからこのくらいキャラが立ってても、変人でも、ネタ枠でも、需要があればアリなんだよ」
「でもこれ管理するのわたくしですわよ?!」
「管理職ってそんなもんさ……知らんけど」
正直言うともう結構面白いメンツでお腹いっぱいなので、そろそろ帰りたさがある。
「まあまあシュエちゃん、その分給料だって多いんだし、頑張って欲しいな?」
「むぅ……まあ、それは……」
「っていうかシュエちゃんの仕事って実質たまに顔出してお酒飲むだけだし」
「うん?」
なんだそれ、どういう事だ。
「言ってなかったっけ? シュエちゃんの仕事は主にシュエちゃんに付いてる大量のお客をこのお店に引っ張る為にシュエちゃんがいるお店として宣伝して、たまに顔出して一緒にお酒飲んで駄弁るだけだよ」
「店長と言うのは」
「あくまでもシュエちゃんは喫茶の方がメインだし、何より夜の時間を拘束されるとアニメ見れないってキレられたから適当に暇出来る役職にしただけだよ。肩書だけだね」
「……おい」
それじゃあこの話。なんだったんだよ。
「シュエリア、本当か」
「…………良い暇つぶしになりましたわ」
「お前晩飯抜きな」
「ちょっ! 人でなし! 悪魔!」
「何? ユウキは悪魔だったのか? ならば我と契約を――」
「…………」
「ルンちゃんが『その悪魔は私の僕にするのっ☆ ぜったいぜーったい渡さないんだからっ♪』と言っています」
「お涼さん通訳できたんだ?! ってか何? ルンルンってそんな感じなのか?!」
思ったよりルンルンしてたわ。ビックリだ。
「なんだかもう滅茶苦茶ですねっ」
「まあ~この人~数~ですか~ら~」
「お姉ちゃんはそういう問題じゃないと思うけどなぁ……」
確かにこれは人数の問題じゃない。メンツの問題だ。
「どうでもいいけどそろそろ帰らない? お腹すいちゃったわ」
「そうですわね、帰って晩ごはんですわ!」
「お前は抜きだけどな」
「……ユウキだけおいて転移しますわ」
「卑怯だなお前?!」
とまあ、この後もしばらく皆で騒いで。
結局晩飯は彼女たちの住居の方で皆でごちそうになり、後日、シュエリアはしっかり晩飯抜きの罰を喰らったのだった。
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