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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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無駄な事ですわ

「お前、何やってんだ?」

 いつも通りシュエリアの部屋でダラダラ過ごし、漫画を読んでいた俺だが、ふと顔を上げるとシュエリアが謎の行動をしていたので訊いてみた。

「これですの? これは仕分けですわ」

 そう言ってシュエリアは顔をこちらに向けずに仕分けを続ける。

「……なんで」

「なんで? ユーチューバー並みに暇だからですわね。でも何だか絶妙に無駄な感じがユーチューバーみたいじゃない?」

 等と職業として成立してるユーチューバーの方々に大変失礼な暴言を吐きながらシュエリアは更に仕分けを続ける。

 柿〇種を柿〇種とピーナッツに分けてテーブルに並べ続ける。

「畳の目の数を数えるくらい極まってるな」

 とは言え正直、確かにユーチューバーとかがやりそうなネタ感ある気がしなくもないけど、そこはまあ、いい。

「そう? 結構楽しいですわよ」

「そうかあ?」

「そうですわよ。ん、なんか微妙に柿〇種の方が多い気がしますわ」

「ふうん……? ……あ、ググったら七対三だって書いてあったけど」

「それって重量換算なのか個数換算なのか気になりますわね?」

「重要なのは個数より重量だろうから、そちらなのではなかろうか」

「じゃあ量ってみますわ」

「待て」

「なんですの?」

 俺が止めるとシュエリアは素直に止まってくれたが、なんて説明したものか。

「それをやると作者が実体験に基づいて書かなければならなくなる。憶測で下手な事言えないからな。なので止めろ」

「すっげぇメタい理由で止めますわね……」

 そう言ってとても残念そうに溜息を吐くシュエリア。

 うん、本当に申し訳ないけど、こればっかりはな……。

「じゃあこの、たけのこ〇里ときのこ〇山のチョコ部分を削って量を比べてみる遊びも……?」

「やめろ、色々問題あるから」

「そう……。暇ですわねぇ……」

「やることなさ過ぎかよ」

 とは言えこっちから駄目出しをした以上、何か代案を上げてやりたいところだ。

 しかし何をしたものか…………ふむ。

「そうだな、無駄な事でもするか」

「具体的にはなんですの?」

 完全に思い付きだったのだが、思ったよりシュエリアの興味を引けたようで、腕に引っ付いて聞いてくる。

「例えば……よし、お互いに好きな本を選んで、その本の文字数を数えて、ページ数で割る。一ページ当たりの文字数が多い本を選んだ方の勝ちというゲームをやろう」

「おぉ、スッゴイ無駄ですわね。やりますわ」

「やるんかい」

 スッゴイ無駄とまで言いながらやるのか。ノリ良いな。

 ってことで、じっくり数えて、二時間後。

「俺の勝ちだな……って言うかなんでお前漫画選んでるんだよ、絶対一ページ当たりの文字数少ないじゃん」

「数えるのめんどくさくて」

「思いのほかやる気ねぇな?!」

 なんでやったんだよ、コイツ。

「真面目に文字数数えてるユウキを見るのは楽しかったですわ?」

「遊び方がさ……違うじゃん……」

 いや、別にコイツが楽しかったんならいいんだけどさ。

「さて、それで。次は何しますの?」

「んん? そうだなぁ……かめは〇波の練習?」

「とっても無駄ですわね。やりますわ」

「やるんかい」

 ってことで、態々外に出て練習開始。

 シュエリアは俺から距離を取るとポーズを取って叫んだ。

「どど〇波!!」

「おい、いきなり技が違うぞ」

「おっと、間違えましたわ……気〇砲!!」

「だから違うって! 何、お前鶴〇人の弟子なの?!」

「んもう、しゃあないですわねぇ……魔貫光――」

「違うって! お前実はかめは〇波あんまり好きじゃないのか?」

「そんなことないですわよ。ギャリ〇ク砲よりは好きですわ」

「どのくらいかわかんねぇし……」

「気〇斬の方が好きですわ」

「いやだからわかんねぇって……」

「魔〇光は微妙ですわ」

「なら言うなよ……」

 まあ、正直どの技を練習してもいいんだけど。

「どうせ無駄だしな……」

「まあわたくしはかめは〇波出るんだけど」

「……それ魔力だろ」

「使えるように自分を変えれば使えますわよ」

「そこまでして使わなくていいだろ……お前他にいくらでも強い技あるんだから」

「それいっちゃあお終いですわ」

 まあ技の強弱で言ったらコイツの世界の書き換えとか最上位だろうし、それもそうなんだけど。

「てかなんでやろうと思った」

「ユウキが技名叫んでる絵面見たかっただけですわ」

「素直にヒデェ理由だ。この年でかめは〇波練習してるのを面白半分に観察されたら恥ずかし過ぎるわ」

「そこが良いんですわ」

「俺は良くねぇよ」

 と言ってもこれもやはり俺が言い出したので、やらないのもそれはそれで、と思う。

「とりあえずベジ〇トソードでも練習してみるか」

「思いの外好きな技練習しようとしてて草生えますわね」

「うっせえ」

 なんかあの手刀からビーム出て切り刻む技カッコよくて好きなんだよなぁ。

 ちなみに名前は登場作品によって違うのでスピリ〇ツソードでもいい。

「……出ないな?」

「よく考えたらその技、別に技名とか叫ばないし構えとかも特に個性無いからつまらないですわね?」

「いや、それ以前に出ない」

「出ねえのは当たり前の前提ですわよ……」

 なんかスッゲェ呆れ顔されたんだけど、おかしいな。

「シュエリアが一緒だからワンチャン出るかと思ったのにな」

「わたくしが出るように細工すると」

「そうそう」

「それもアリだったかもしれないですわねぇ……」

 何でか凄く悩まし気な表情のシュエリア。こういう冗談を本気で乗ってくれる辺りが面白くて好きだなぁと思う。

「まあ出せないもんは仕方ないな。次はどうすっか」

「んー。そうですわねぇ。無駄な事……あぁ、小説家を目指すとか」

「おいやめろ。なんか今凄く突き刺さった音したから」

「え、ユウキ小説家志望だったんですの?」

「いや、そういう訳じゃないけどな……?」

 本当に全くそんなことはないのだが、なんだろう、核心を突かれたとか、傷口をえぐられた、そんな音がした気がした。

「じゃあ……ユーチューバーになる?」

「だから止めい。その遠まわしだけどあからさまにユーチューバーディスるの止めろ」

「えぇ……」

 ったく、他にないもんかね……無駄な事。

「むしろ無駄な事を考えてるこの時間が一番無駄ですわね……?」

「おぉ、上手い」

 って言ってる場合か。……いや、言っててもいいか、別に。暇だし。

「あ、耐久動画を見続けるとかどうですの?」

「できればひーちゃんの声だといいな」

「それ耐久になってねぇですわ……」

 確かに、無限に聞いてられる自信があるな。

「じゃあ……あ、アイネの肉球むにむに耐久とかいいんじゃないですの」

「それ俺にとって耐久でも何でもなくないか」

「……そうですわね。むしろアイネが耐える方な気がしますわ」

 意外とないな、無駄な事。

「トモリからスタバのドリンクパクって逃げる遊び?」

「死人が出るから止めろ」

 あの魔王からスタバ盗るとか、コイツなんつう危険な事考えやがる。

「両方不死者だから大丈夫ですわよ」

「あの魔王なら不死者でも殺しそうだけどな」

「……わたくしはほら、別世界に転移できるから」

「それだと俺は詰んでるんだよなぁ」

 って言うかどっちにしろ人……魔王に迷惑かける遊びは無しだ。うん。

 別にトモリさんが怖いからとか、そういう理由ではない。

「無いですわねぇ、無駄な……あ」

「ん?」

 シュエリアが何か思いついたようだが、何故かニヤニヤするだけで何も言わない。

「なんだよ? 何か思いついたんだろ?」

「え、えぇ……まあ……ふふっ。でも、ほら。下らないから、ユウキ多分怒るし駄目ですわ」

「なんだよ、そう言わずに言ってみろよ」

「いいんですの? じゃあ――」

 シュエリアは大分勿体ぶると、ドヤ顔で言い放った。

「この世に無駄な事なんて、ないんですわ」

「テメェのそのドヤ顔が一番無駄だよ」

「怒らないって言ったのに、やっぱりキレ気味ですわね……」

 いや、正直本当に下らない事言うんだろうなとは思ってたけど、うん。

 実際言われるとなんか、ドヤ顔も相まってイラっとしたよ、うん。

「っていうかそういうのはオチに持って来いよ。今言っちゃ駄目だろ」

「じゃあとりあえず、百メートル先のコンビニまでタクシーで行く?」

「凄く無駄だけども百メートル先にコンビニ無いぞ」

「じゃあただただ百メートルだけ乗りますわ」

「その発想は無かった」

「やる?」

「多分彼らの仕事の邪魔になるから止めろ」

 流石にこんなところに普通にタクシーは通らないし、だから電話なりアプリなりで呼ぶことになるわけだが、流石に呼びつけて百メートルだけ乗せて下さいとか迷惑系ユーチューバーじゃあるまいし。

「じゃーどうするんですの」

「うーん……寝る?」

「惰眠ですわね」

「そうそう」

「却下ですわ」

「駄目か……」

 まあ、俺もぶっちゃけ眠く無いしな。うーん。

「と言うかシュエリア、これさ、暇じゃね」

「…………そうですわね?」

 いくら無駄なこと探しても無駄だし、結局のところ、冷静に考えると暇だ。

「無駄な事するなんて、無駄だし。何か有意義なことしよう」

「ふっ……そうですわね。じゃあ、タクシー呼びますわね」

「……なんで」

 どうしてそうなったんだ。何か思いついたんだろうか。

「五百メートル先にはコンビニがあるからそこに行きますわ」

「どっちにしろ無駄使いじゃねぇか」

 俺がツッコむと、シュエリアは不敵にほほ笑んだ。

「ふっ……ユウキ。この世に無駄な事なんて何一つないですわ」

「このやり取りが今日一無駄だよ……」

 そう言うと、俺はシュエリアからスマホを取り上げた。

「ちょ、何すんですの」

「いいから。行こうぜコンビニ。ほら」

 俺が手を出すと、シュエリアはなんかまんざらでもなさそうに手を握って来た。

「まあ、こういうことなら」

「よし、行くか。行って、入店せずに帰ろうぜ」

「アイス買いますわ」

「それじゃ無駄じゃないじゃんか」

「良いんですわよ、無駄な事なんてハナから無いのだから」

 そう言ってシュエリアは晴れやかな笑顔と共に、俺の手を引いて歩きだす。

 そうか……うん。

 正直さっきまでの俺らの時間は凄まじく無駄だったと思うが、まあでも。

「お前が楽しいなら、無駄じゃないか」

「ん? ……ですわね?」

 とは言った物の、正直いつにもまして無駄な事してたなとは思ったのだが……。

 一応それっぽい結論が出たので……まあ、無駄なことなんてそうそう無いなと、思っておくことにした。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00を予定しております。

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