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娯楽の国とエルフの暇  作者: ヒロミネ
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それっぽい話ですわ

「先日の話、ちょっと最終回っぽかったですわね?」

「また下らん事言い出したな」

 いつも通り、シュエリアの部屋でダラダラと過ごそうと部屋を訪れると、出会い頭にいきなり下らない発言が飛んできた。

「だってそうでしょう。闘いを終え、心の傷ついたヒロインと主人公が、思い出の場所を巡って初心を取り戻すように、それでいて二人の進展した関係が傷を癒す……なんだかいい話でしたわね?」

「……そんな話だったか?」

 思い出巡りはまあ、したけど。そんな綺麗な話だったかと言われると、全くそんなことは無いと思う。

 ただ嫁の愚痴聞いて、慰めた話では。

「何かしら、今ユウキが身も蓋もないこと考えている気がしますわ」

「そんなことないぞ」

 そう、これはただの事実だ。

「っていうか最終回っぽいとかそういう話、前にもしたよな? またするのか」

「いえ、今回は『っぽい』話をしますわ」

「っぽい話?」

 なんだろう、それっぽい、話? うーん、イマイチわからん。

「例えばだけれど、カップ焼きそばって、焼きそばっぽいけど、違いますわよね」

「まあ、茹でてるしな」

「……そう言う事では無いのだけれど。ほら、色々違うでしょう? 味って言うか、食感とか」

「あぁ……俺は固茹で派だ」

「だから茹でる話じゃねぇですわ」

 まあ冗談はさておき、言いたいことはなんとなくわかる。

 つまりアレだろ、今回の話は『〇〇っぽいけど違う』そういう話だ。多分。

 っていうか、これは某日常系な漫画で聞いた話な気がするんだが、いいのか? いいか、話題が被るなんてよくある話だ。

「最終回っぽいけど違う、焼きそばっぽいけど茹でそば。そういう話だろ」

「だから茹でる話じゃねぇですわ。でも、そういうことですわ」

 とりあえず、俺の認識はあっていたようだ。

「で、何か無いですの? そういうの」

「うーん、そうだな。シュエリアってエルフっぽいけど、シュエリアだよな」

「……何かしら、今、エルフだっていう事実を否定された気がしますわ」

「違うのか?」

「違いますわよ! 思いっきりエルフですわよ! まあ、正確にはハイエルフでエルフの上位種だけれども、エルフですわ」

「でも、シュエリアはシュエリアだろ」

「何かしら、言葉だけはいいこと言ってる風だけど、凄く失礼な事言われている気がしますわ」

「それこそ良いセリフっぽいけど、違うよな」

「そうですわね!」

 うん、ちょっとだけ面白くなってきたかもしれない。

「じゃあアイネとかも呼ぶか。せっかくだし」

「そうですわね、皆呼んで、一人あたり一つ案が出れば、尺的にも十分ですわね?」

「誰も尺の事は言ってないが……そうだな」

 まあそんなわけで、皆を招集。

「――という訳で、それっぽい話をしますわよ」

「シュエリアってエルフっぽいけどシュエリアよね」

「ですねっ」

「です~」

「だねぇ」

「え、何。なんでそれ共通認識なんですの?」

 まあ、誰もコイツをエルフとしてカウントしないわな。

 シュエリアって言う別の生物として認識してしまうんだ。

「そ、それより、何か無いんですの?」

「露骨に話戻そうとしたわね。でも、そうね……それっぽい話ならあるわよ」

「え、なんですの?」

 シュエリアが問うと、アシェはドヤ顔で答えた。

「ちん〇すこうってち〇こっぽいけどち〇こじゃないわよね」

「ユウキ、この馬鹿出禁にした方がいいですわよ」

「今は同居してるから、まずは追い出さないとな」

「ちょっ!? 人がせっかくそれっぽいこと言ったのに何よその反応!」

 いや、これはどう考えてもこの馬鹿が悪いだろ。

「アシェ、他に無いんですの? 無かったら出禁ですわ」

「わ、わかったわ! じゃあデ〇ルドってちん――」

「アシェ、今までお疲れ様ですわ」

「待って!! わかった、考えるから! 私の番は後にして!!」

「ったく、次やったらマジ出禁ですわよ」

「うぅ……」

 まあある意味、あの流れで下ネタで押し切ろうとした根性と言うか、度胸は凄いと思う。

 でもアイネが真似すると困るので止めて欲しい。

「じゃあ他に……誰か?」

「はいはい! お姉ちゃんも思いついたよ! 言っていい?!」

「それじゃあ、シオンで」

「大丈夫なのか……? なんか義姉さんが妙に乗り気なのが嫌なんだが」

 今度は義姉さんか……大丈夫かな。不安しかない。

「えっとね。大抵の職業ユーチューバーってユーチューバー騙ってるニートだよね」

「何かしら、っぽい話と違う、単なる批判ですわよねそれ」

「こういうのじゃないの? ヒカ〇ン『っぽい』ことしてユーチューバーぶってるだけでしょ?」

「えげつない暴言吐きますわね。わたくしですらドン引きですわよ……」

「はい、次々ー」

 これ以上義姉さんにかまってもドツボに嵌りそうなので、次。

「じゃあ私いいですかっ」

「お、アイネか、いいぞ」

 アイネなら安心だな。ちょっとくらいアレな発言しても可愛いからどうとでもなる。

「かにかまはカニっぽいだけで実はカニじゃないですっ」

「そうだな、偉いぞー」

「オイそこの妹バカもとい猫バカ、ツッコミなさいよ」

「どこに」

「ボケるべきでしょう。凄く無難に、全く話の広がらない受け答えしてじゃねぇですわ」

「って言われてもな」

 正直かなりまともな答えだっただけに、ツッコミ様がない。

 それこそ「ボケろよ」ってツッコむことは出来るが……前の二人が酷過ぎただけに、真っ当な答えに安心してしまったところがある。

「でもまあ、そうだな、敢えて話を広げるなら、商品名と内容が一致してない物とか、それこそ似てるだけとかあるよな」

「ふむ、例えばなんですの?」

「かっぱえび〇んは河童入ってないよな」

「むしろ入ってたらどうすんですの」

「食う」

「食うんですの……河童を……?」

 何を言ってんだコイツ。お菓子だぞ、食うだろ。

「お前、たべっ子どう〇つに動物入ってても食うだろ?」

「それ、動物の形の話ですわよね? マジでカバとかラクダが原材料だったら食わないですわよ?」

「食わないのか」

「むしろ食べるんですの?」

「食べるわけないだろ。何言ってんだ」

「え、何。わたくしが悪いんですの? これ」

 シュエリアが何故か戸惑っている。いつものノリなら軽くイラっとした辺りで殴られるかと思ったが。

「冗談はさておき。かっぱえび〇んは別に河童っぽくないし、たべっ子ど〇ぶつも別にそこまで動物っぽくないよな。名前だけって言うか」

「まあ、そうですわね」

「似ているって言う意味で言ったらまだミ〇キーの方がネズミに似てるよな」

「まって、それいいんですの?」

「でもネズミっぽいけど、着ぐる――ぐふっ!」

 最後まで言い切る前にシュエリアに鳩尾を殴られた。流石に全力で殴られたら色々出ちゃうので、息が苦しいだけなので、手加減はしっかりされているが……。

「おま……なんで……」

「それ以上言ったらいけないからですわ」

「シュエリアの癖に正論だと……」

「さあ、アイネとユウキも喋ったし、次はトモリですわね」

 そう言って今度はトモリさんに話を促すシュエリア。

 トモリさん、大丈夫かな。まあでも、なんか髪縛ってるし、真面目に話す気なのかな。

「実は……わたしがやったんです……」

「……はい? 何を」

 なんだろう、急に真面目なトーンで何かしらの告白を始めたんだが……なんだ? 何をやらかしたんだこの魔王。

「どういうことですの?」

「……いえ、こう言ったらそれっぽいかと」

「なるほど、そっちに行ってしまったのか」

 急に思わせぶりな事言い出してそれっぽくしたかったんだな。

 まあ、いきなりなんの脈絡も無しに言い出したから、それっぽいどころか、何が何だかさっぱりだったわけだが。

「今更だけど話題にしたものが何とも言えない話題過ぎて話し難いですわね?」

「本当に今更だな」

「え、じゃあ私はどうするのよ! 私の番は?! 私だけ見せ場無しなの?」

 アシェがシュエリアに抗議しているが、正直どうせ下ネタかなんか、酷い事しか言わないだろうから、アシェの番は要らないと思う。

「どうせ下ネタとか、ロクな事言わないんでしょう? 知ってますわ」

「ちっがうわよ! ちゃんとそれっぽい話考えたわよ!」

「あっそう、じゃあ早くしてくれる?」

「露骨に態度悪いわね……でもいいわ。こほん。えー、下痢したときのアレはカレーに似て――へぶっ!」

「腹パンしますわよ?」

「け……蹴ってから言う……? それ……」

 しかも思いっきり顔面に入ってるしな……。

「やっぱりアシェに任せるのは駄目ですわね」

「ま、待って。今度はちゃんとやるわ。さっきのはそう、おふざけよ」

「ふざけるのはアシェだけにしてくれる?」

「え、私って存在がふざけてるの?」

 相変わらずアシェに対するシュエリアの風当たりは強いな……。

 まあ、仲が良いからこそと思っておこう。

「そ、そんなことより。私、冷蔵庫にあったバナナ味のアイス食べたんだけど、あれってバナナ入ってないんですって。あんなにバナナ風味なのに、っぽいだけなのよ!」

「へぇ、それは、凄いですわね……」

「でしょう! ……って、何シュエリア、その顔、え、何でキレてるの?」

 あぁ、アシェって本当に、残念な奴だな。

「あれはわたくしが自分用に買った奴ですわ」

「そ、そうだったの? じゃあ私が買い直してくるわよ……ね? だから、その……殺さないでくださいっ!」

 いや、流石にそこまではしないと思うんだが……。

 まあ、今のシュエリアが怖いのはわかる。コイツの食い意地は凄いので、それだけに食べ物の恨みが普通より怖い。

「じゃあ殺さないから、バナナアイス分のアシェの肉をそぎ落としますわ」

「怖すぎるんだけど?! わかった! 三倍! 三倍にして返すから!!」

「そう、じゃあ爪を剥ぐだけで許しますわ」

「許してないよね!! どうしたら許してくれるの?!」

「……十倍、今すぐ」

「行ってきます!!」

 シュエリアの出した条件を飲むと、アシェは即座に部屋を出て行った。

 あの運動音痴でも命の危機ならあれだけの速度で走れるんだな……。

「で、シュエリアなんでそんな怒ってんだ。いくらなんでも怒り過ぎじゃないか?」

「……ぽいかと思って」

「お、おう……」

 まあ、確かにシュエリアっぽかったけどな……食べ物でキレる辺りが、うん。

 とは言えアシェが可哀そうな気もするが……勝手に食べてしまったと言う事実もあるだけに、まあ今回はアシェも悪かったという事で……。

「っぽいって難しいですわね。思わせぶりだったり、似て非なるモノだったり」

「まあ、そうだな」

 わざわざ考えて話題にするようなことでもないだろうしなぁ……。

「さて、アシェがアイスを補充してくれるし、もうそろお昼ですわ、飯はよ」

「おま……今更いいけど、家事を俺に任せきることに躊躇いなさすぎだろ……」

「いいから、いいから」

「はぁ……」

 まあ、実際いいんだけどな。俺も俺でコイツに飯上手そうに食ってもらうの、好きだし。

 とりあえず、俺は昼飯を作る為に部屋を出た。

 飯を作って戻ると、もうみんなは別の話をしており、こうしてそれっぽい話は、いつも通り意味のない無駄話として終わったのだった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は来週金曜日18:00です。

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