何歳に見えますか?
「店長、シャンプーのつめかえどこでしょうか?」
「あー、そこの引き出しの中にあるよ」
…店長?店長って、
「えっ店長されてるんですか?!」
「あはは、そうなんです。この店、俺がはじめたっていうか」
「そうだったんですか…まだ若いのに」
思わずそう言うと、北川さんは苦笑をもらした。
「まだ若いのにって、桜井さんの方が若いじゃないですか!そういう台詞は四十越えてからにしてください笑」
あまりに屈託なく笑うものだから、ついつい見とれてしまいそうになって、あわてて目をそらした。
「私、いくつに見えますか?」
何の気なしの質問だったけれど、北川さんは一瞬ためらうそぶりを見せた。
「…俺、お世辞とか優しさとかあんまり使えないタイプなんですけど、いいですか?」
「え、そうなんですか?そういうの上手そうなのに…」
「思い切り外すことがあるんですよー」
話しぶりからして、おそらく女性に失礼なことを言ったことがあるのだろう。想像すると、何だか笑えてくる。
「私別に気にしませんよ。老け顔ってよく言われるし」
「うーん…25くらいですか?」
「わ、ぴったりそうです!何で分かったんですか!?」
「はは、俺もだてに美容師やってるわけじゃないので。服装と髪質で何となく分かるかな。桜井さんはもっと若いかなとも思ったんですけど、20代前半にしては落ち着いてて、話しやすいなって思ったので」
「…お世辞使えないタイプじゃなかったんですか」
「俺やっぱまずいこと言ってますかね」
「やっぱ何でもないです。北川さんはおいくつですか?」
「当ててみてください」
「はずしてたらごめんなさい、30くらいですか?」
「そんなとこです、32なんです」
「じゃあ、そろそろカラーしますか、こっちの椅子へどうぞ~」