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近づく距離

「北川さん、今日はすごく、楽しかったです。貴重な休みを頂いちゃって、ごめんなさい」


「そんなことないよ、俺も楽しかった。ありがとう」


じゃあね、と言う言葉と共に、彼は背中を向けると、私から遠ざかり始めた。



帰りたくないな─────。



「あ、の」


「?どうかした?」


気づけば私は、北川さんのシャツを掴んでしまっていた。


それなのに、次に続く言葉はぜんぜん思いつかない。


不思議そうな顔をする彼を見てると何だかいたたまれない気持ちになり、思わず私は俯いて意味無く髪を触った。


「また、会ってくれますか」


時間稼ぎくらいのつもりで言った言葉だったものの、言ってしまった1秒後に、はっと気づく。


(今の、まるで私が北川さんに気があるみたいな言い方じゃなかった⋯?!)


というかそうじゃなくても、最近の私、何だか思わせぶりなことばっかりしてない?!


「ごめんなさい違うんです!これは別に恋愛的なそういうんじゃなくて⋯っ!あ、でも人としては好きなんですけどっ」


自分でも何言ってるのかよく分からなくなってきた。顔から火が出るんじゃないかってくらい顔が熱い。


「はは、俺告白してないのに振られちゃってるじゃん。⋯いいね、また休みがあれば会おうか」


「⋯はい」


嬉しいけど、恥ずかしい⋯!!


また余計なことを言ってしまわないうちに、私は「今日は本当に楽しかったです」と

言ってそそくさと家に向かった。


10秒ほどしてから1度振り向いてみると、まだ彼がそこにいて目が合ったことが、無性に嬉しかった。

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