表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/24

思い出さないように…

 女は失恋すると髪を切るという古くからの言い回しがある。

その言葉をきくと、思い出とともに捨てるためだとか、イメチェンすることで気持ちも入れかえるだとか、そんな前向きな意味を連想するけれど、私はそうではないと思う。


「桜井さんですね。今日はどうされますか?」

「カットお願いします。お任せで、ばっさり切っちゃってください」

「了解です!」


──ただ、怖いだけなんだ。


自分の髪を鏡で見るたびに、彼のくれた褒め言葉とか、私の髪を撫でる優しい手とか、全てを鮮明に思い出してしまうことが。

どうしようもなく辛いのに、思い出だけはいつもキラキラと輝いていて、それが私を余計辛くさせる。


「こんなに長いのに切っちゃっていいんですか?」


私の髪は背中が隠れるくらいある。彼が「黒髪ロングが好き」と言っていたから────


(何思い出してんだろう…)


「いいんです、イメチェンしたくて」

「イメチェンですか、いいですね!もしかして、彼氏でもできちゃったりしたんですか?」


愛想の良い笑顔で人のよさそうな美容師さんが、そう聞いてくる。


「あー…えっと、そんなとこです」


逆だなんて言えば、気まずい空気になるのが目に見えている。

少し心は苦しかったけれど、一生懸命笑顔を作った。


「じゃあ、うんとかわいくしてあげますね。任せてください!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ