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恋文  作者: 鶴園 稔
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十二時を越えてあなたの誕生日、「おめでとう」さえ届かない距離。

携帯電話の液晶が、日付が変わったことを示している。

忘れることはできない。今この瞬間、彼は誕生日を迎えた。

何となく気にかけるこの日を彼と過ごしたことはない。

彼は今、誰といるのだろうか。

ひとりであればいい。

私が毎年ひとりで迎えるこの瞬間を、彼もひとりで迎えていればいい。

彼は今、九州にいる。新幹線で五時間。きっと、会える距離にいても、この日に会うことはしないだろう。

それが、私と彼との距離だ。


「今日だよ。」

学生時代、何かの拍子に聞いた誕生日。返ってきた答えがこれだった。

なんでもないように取り繕ったようで、少し恥ずかしそうで、そんな様子で彼は答えた。

「言ってくれればよかったのに。」

と呆然と答えた私に彼は困った様子で、

「だって、いつ言えばよかったの。」

なんてもっともなことを言う。

その日家に帰って私は携帯に彼の誕生日を登録した。

七年経っても携帯に通知されることもなく思い出すようになるなんて思いもしなかった。淡い、淡い思いに。

  知らない振りをしていたあの頃。


彼氏はいる。優しくて、大人で、眉目秀麗とはいえないけれど、あたたかいひと。

なにかと理由をつけてひとりで過ごすこの日にあたたかいひとは気づいているのかもしれない。

 それでも毎年ひとりで彼の好きなお酒を呑んでいる。



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