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ステージ確保

モゴック爺が教えてくれた東端の食堂にやってきた。

朝食を兼ねて朝イチで到着。


「やってなくね?」

「そもそも本当に店か?」

「看板らしきものはあるっす」


なんていうのかな、ストレートに言うと掘っ立て小屋。

教えられた食堂は倉庫と言われた方がしっくりくる木造のちいさいお家だった。


「おはよーございまーす」

「なる…っ」

「はやいはやい!」


おれたちが止めるより早く、成風が木戸をノックして入っていく! まじで躊躇いないなー!


「あら、まだ準備中ですよ」


追いかけるようにして中に入ると、ほそーいおばあちゃんがいた。

中は床張りにテーブル席が4個あるだけで、あとは観葉植物と食器棚だけ。キッチンまで仕切りがなく、むき出しのかまどのまえでおばあちゃんが鍋を煮てた。立ち姿が品が良さそうな人にみえてなんだか不釣り合いだなって思った。


「すっ、すみません。あの食事もなんですが、ぼくたちお仕事のお話がしたくて」

「お仕事?」


お玉で鍋をぐるぐるしつつおばあちゃんがこちらを見てくれた。


「はい、突然すみません。ぼくたちロックオブサンドというアイドルグループでして、その、お邪魔じゃないお時間はありますでしょうか」


おれが代表して挨拶をしてる間、メンバー三人はおれの後ろで姿勢よくしてる。楽屋挨拶とかでよくあるフォーメーションだ。


おばあちゃんはおれたちをキョトンした顔で見ていたが、微笑んでうなずいた。


「お話はよくわからないけど、お掛けなさい。出来たてのスープをご馳走するわ」

「はいっ、ありがとうございます!」

「「「 ありがとうございます! 」」」

「ふふふ、そんなに畏まらなくて良いよ。さあさあ座って」


お言葉に甘えて奥のテーブル席に座らせてもらう。4人がけなので、おれと灯富が隣、向かいに成風と宮林が座った。

おばあちゃんは鍋からスープをたっぷりよそって置いてくれた。


「黒カブのスープよ。葉っぱもいれてるから栄誉たっぷり。さあ召し上がれ」

「いただきます!」


……美味しい!コンソメスープっぽいっていうか懐かしい味がする!! ここに来てからこんなに馴染む味っていうのはなかったからか、感動しちゃう。


「美味しいです!」「やさしい味ですね」「おいし」「うまいっすー!」


おいしいおいしいと口々に漏らしながら食べてたらあっと言う間になくなった。


「おかわりはいかがかしら?」

「お願いしま…… あっ!でも無くなっちゃいますよね」


竈に置かれた鍋はひとつだけで、しかもふつうの家庭用サイズに見える。おれたちがお代りしたらたぶん全部食べちゃう容量だ。


「いいのよ、趣味でやってるだけだから。今日の営業はお昼からにするわ」


すっかり甘やかされて完食したおれたちは、ご馳走するわというおばあちゃんにしっかりお代をお支払いしてお礼を言った。


そして、本題のここで歌わせてくれないかというお話をさせてもらう。


「そんなわけで、夜のあいだこちらで歌わせて頂きたいんです!」

「よいですよ」

「なるべくご迷惑に……っい、いいんですか!?」


にこにこと微笑むおばあちゃんがあっさり許可をくれたから、なんかおれたちがお年寄りを騙してる気持ちになる。いや騙してなんかないけど!


「ええ、構わないわ。けれどお伝えしたとおり、このお店はお客様が少ないですよ。一組しかこない夜もよくあるわ」

「場所を提供してくれるだけで有難いです。精一杯がんばりますので、よろしくお願いします」


灯富にならって全員でザッと頭を下げた。


「ふふふ、よろしくね」

「はい!」




おばあちゃんの名前はリーヴォリさん。趣味で食堂【冬の白花亭】をやってて、一人で切り盛りしてるそうだ。


おれたちはさっそく今日の夜から歌わせてもらえることになったので、準備のために一度町に戻ってきた。


「っはー!よかったな。とりあえずは前に進めた」

「曲を何にするか早急に決めようか」

「やばいっす、2日も練習さぼってるからダンスやばいっす」

「え、ダンスつけるの? 楽器ないから無理じゃないかなあ」

「「「 あー 」」」


たしかにダンスは無しだな。あの食堂の大きさからしても難しいと思う。


「アカペラでやるとしたらバラードでコーラスが多いやつがいいだろうな」


うちのメインボーカルは灯富だけど、アイドルなもので全員が歌うように作られた曲ばかりだ。ひとりが歌ってるときに他はコーラスやハモったりしてて、さらにダンスもしたりと忙しい。

二日間、なにもしてなかったのでじんわり焦ってくる。


「動きがなければ、生でも声はでるよな」

「“love you”ならテッパンじゃないっす?」


ライブでもマイク立ててしっとりしっかり歌う系だ。歌詞も一途な愛を歌ってて人気曲。


「そうだな、そうしよう。夜尾、曲はどれくらい用意したほうがいいと思う」

「んー、愛系でスベったら即座に変えたいから二曲は保険でほしいな」

「“cry” ならシリアスっぽくてテイストも違いますよね。あとは“夢追い”とか」


三曲を決めて、それからは町外れの森に移動してひたすら練習をした。

聴き直す機材がないからチェックが出来ないのがイタイ。


それでもできる限りをして、おれたちは【冬の白花亭】へ向かったのだった。


感想、ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)!

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