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アンコール

言葉の荒いおじさんがキオッジャさん、訛ってる少年がレーニョくん。キオッジャさんは人間じゃなくてドワーフらしい。

仲裁によってやっと落ち着いてくれたところで、屋台から食べ物を買ってきて広場の植え込みに座り、改めて自己紹介と事情説明。

ふたりとも職人街で仕事をしてて、おれたちが工房を手当たり次第に訪問してたのも見ていたらしい。


「わけわかんねぇ人間がきたと思ったね。貴族のふらふらしてる息子じゃなかったのか」

「オラも楽団を買いたたく怖い貴族かと思いますただ」

「買い叩くとかあるんですか?」

「ああ、アイツら女を呼んでちちくり合うのに、楽団で雰囲気つくんだよ。そのくせ金はしぶりやがるっくそが!」

「ち、ちちくり……」


あまり深く聞きたい話だじゃないけど、だから工房の人たちは話聞いてくれなかったのもあるんだなってわかってスッキリした。


「キオッジャさんは楽団員なんですよね?」

「おう! オレぁ太鼓が得意なんだがよ、太鼓を求めんのは男しかいねぇし、貴族んとこ行ったらやれ小さく叩けだ、あんまり叩くなだ言いやがって!! しまいにゃどっかで流行りゃ同じ曲ばっかり!くそだよ!」


口が悪い。そして愚痴がとまらない。

この世界の音楽業界ってどんなだか、そういえば知らないな。


「レーニョくんは何が得意なんす?」

「あ、はい! オラ、まだ見習いなんですけど、オルガンを作りたくてきますた!」

「! オルガンがあるの!?」


これはでかい情報だ!


「は、はい!教会とかにあります」


ああっ教会か!盲点だったなー!まえの世界でも賛美歌のためにオルガンがあったもんな。みんなも思い至ったらしく、おれとおんなじ「あー」の顔。


「そろそろいいだろ!早くやってみようぜ!オレぁ太鼓持ってくっからよ!」

「あっ、お、オラもリュートもってきます!」

「えっ!あっちょ、待っ……」


串焼きを食べ終わるやいなやキオッジャさんが駆けていき、レーニョくんも釣られるように走ってった。


「……行っちゃったっす」

「まさに嵐のよう、ですね。僕、楽譜用意しておきます。“new world”以外も合わせてみたいです」

「“英雄”なら現状アカペラだから合わせられるかもしれないな。“町娘”はアドリブも難しいだろう」


今夜しかチャンスがない。とにかく音楽として成立させて、なおかつ価値があると感じてもらえれば、もしかしたらキオッジャさんもレーニョくんが楽団として協力してくれるようになるかもしれない。


さらにまだ夜が始まったばかりのこの街で、おれたちの音楽がどこまでやれるのかみたいもんね!


「メロディーの確認と、振り、楽譜チェックしていこう!」


キオッジャさんたちが戻るまでに、わかりやすくイメージもまとめておかなきゃな!




「では聞いてください、“英雄の歌”」


ふたたび広場の中央にあらわれたおれたちに、街の人の興味がむいてるのがわかった。二回目?と聞きながら戻って来てくれた人もいる。


灯富がとるカウント、それが合図となってキオッジャさんの抱えた太鼓が鳴らされた。スネアドラムみたいなのに、ひとつで高低音のどちらもでる不思議な太鼓だった。


灯富が歌いだすと静かに奏でられるのはレーニョくんの切ないリュートの音。おれたちが買おうとしてたのはこういう音だったんだな……。


一度だけ歌ってみせただけで、イケる!って言っただけあり、キオッジャさんもレーニョくんもほぼアドリブなのによくメロディーを覚えてる。声だけだった曲に、ふたつの音が入るだけでかなり華やかになるな!


(ちょっとぎこちないけど、ぜんぜん許容のうちだ)


やっぱりこの世界の主流は三拍子だそうで、強打のタイミング

がぎこちない。でもリズム自体は完璧だ。

おかげでおれたちも全員でダンスを合わせやすい!


(すごい、こんなに違うんだ)


もう感動。ひさしぶりに、音楽とちゃんと歌えてる気がする!


気持ちよく歌って、歌い上げて、そして終わった。

体中に充足感がみちてるのがわかる。これはメンバー全員そうでしょ、と顔をみようとしたら大きな声が聞こえた。


「いいぞー!もう一回だ!」

「ステキだったわ!英雄ホワンホーの唄よねっ?」

「あ、あの、横向いたとき、わたしの方みてましたよね……かっこいい」

「アタシとも目があったわ!」

「兄ちゃんもう一度歌ってくれ!」


パチパチという拍手とともにかけられる言葉。指笛で囃し立ててくれる人もいる。


気づけば周りにはたくさんの人が集まっていた。

足元にはコインが投げられてて、ちらっと見ただけでも今までの最高額になってる。


「おう!もう一度だ!ボーッとしてねーでやるぞ!」


キオッジャさんがスティックを打ち鳴らした。それが合図みたいにさらに観客が盛り上がっていく。


「では……」


おれはゴクリと喉を鳴らした。顔が勝手に笑ってるのかわかる。


「ではリクエストにお答えして!」


アンコールだ!

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