成果は、
“new world” は新しい価値観に出会った感動を歌った曲だ。恋でも夢でも、ましてお伽噺やニュースペーパーでもない歌詞は抽象的だけど、主人公の“悦び”だけはちゃんと伝わるように作った。
ザッ、と靴底が石畳を削る音を出してとまった。サビからラストにかけて足は揃ってた。息は苦しいぐらいあがっているけど、せめて四拍は動かずにいたい。
緊張感、というよりも不安だ。観客の反応が予想つかない。
手拍子もない、コールもない。アクロバットな振りのときには少し歓声が聞こえた。
(うぅ……胃が痛くなるな)
っは、と荒い息を吐いて酸素を取り込む。ほぼ同じタイミングで、メンバーが揃って腕をおろした。
汗だくのまま、正面をむき横並びになって姿勢をただす。
「……ありがとうございました!」
「っしたー!」
一礼して頭を上げ、はじめてお客さんの表情を見た。
「……なんだかすごかったわねぇ」
「何言ってっかわかんなかったが、やる気は感じられたぜ!」
「不思議だったわ。あなた達の故郷のお祭りかなにか?」
「がんばってね、お代はここでいいかしら?」
首をひねっている人が多かった。そのまま立ち去る人もたくさんいたけど、感想とともにおひねりをくれる人がいてくれた!
「ありがとうございますっ」
まだ整わない息のまま笑顔でお礼をいっていると、ちっちゃいおじさん……
「あ!あなたは昼の……凶器持ってた職人さん!」
「凶器ったぁなんだ! 金槌あれは仕事道具だ!」
おれの腰くらいの背でヒゲがもっさり長ーいおじさんは怒鳴ってくる。声がめちゃくちゃ大きい!
「おい、あんたら、いまのは完成形なのかよ」
おじさんは腕を組んで見上げて来る。眉をしかめて不機嫌を隠そうともしない怖い顔してる。
だけど、これはすごいチャンスだって全員がおもった。慎重に答えなければだめだ。ごくりと喉を鳴らしたおれの背中を誰かが手で支えてくれた。
「……いいえ。完成はしていますが、いまのは未完成です」
「チッ、やっぱりな! 本来はどうやんのか見せてみろよ」
「披露したいのですが、それには足りないものがあります」
おじさんの目をみてしっかり伝えた。
わかってくれるかな、楽器を使ってる人ならなにが足りてないかすぐわかるかもしれい。
おじさんはグ、とおれの目を見返して、それからすがめて聞いてきた。
「あんたたちが楽器を欲しがってるってのはマジなんだな。このためか?」
「っはい!」
「本当はドラムとギターベース、シンセサイザーも使うとです!めちゃくちゃかっこようなるんですよ!」
「どらむ?」
「ドラムっていうのはリズム体です!それが……」
こんな大きい声聞いたことないってくらい、声を張った成風がおじさんに詰め寄って説明しはじめた。おじさんも困惑気味だけど成風の話を熱心にきいてる。
「な、なぁ、あの」
唖然としていたら後ろから声をかけられ、振り返ると人間の少年がたってた。なんだか顔が赤い?
「なんでしょうか」
「お、おらにも話聞かせてください! まだまだ経験足りねーのわかるけど、おらは楽器職人をしてます!」
「!」
「しょ、職人さんっていうからには楽器を作ってるんすかっ?」
「はい!が、楽団に入るためにも日々研鑽はしてます!」
顔を見合わせた!
これが探していた人なんじゃないか!?
おれとミヤが感動と期待にぷるぷるしてると、灯富が勧誘をはじめだした!
「さっきの曲は未完成なんです。よければ貴方の楽器を合わせさせてみてほしいのですが」
「未完成?」
「はい。先程の曲は」
「まーった! オレの方が話は早かったよな!? なぁあんたたち!」
急に成風と話してたおじさんが、遮ってきた。鼻息荒く、なんか興奮してる。
「すげぇ話だ!楽器を自由に演奏していいなんてよ! あの唄にあうならどうやってもいいんだろう!?」
「ダンスにも合わせて、イメージも合わせなきゃだめです」
「おうよおうよ!オレァもう城のダンスなんかにゃ飽き飽きしてたんだ! あんたたちの唄にオレの楽器をつけてみてぇ!」
「えっホントですかっ!うれしいです!」
「オラも!おらもやりてーだよ!」
「うっせぇ!早いもの勝ちだ!」
言い争っているけど、音は種類が多ければ華やかで楽しくなる。二人以外にもいれたいが……そもそも、いま、ふたりもの人が志願してくれるなんてな!
おれはホッとしながら、言い合うふたりを仲裁するメンバーを眺めていた。




