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午後は風呂!

森に着替えの準備だ。

女体と男のときだと体型が違うので、いちどワンピースを脱がないといけない。パンイチになって元の服を着てからくしゃみだ。


「っへ……えぶッ!」

「くしゃみのクオリティ」


灯富には背中を向けて待っててもらった。騎士が追ってきてるかもしれないというのと、中身がおれってわかってても年下の女子の裸体を真顔で見る空間、てのに耐えられなかったらしい。たしかにシュールではあるね。


「ンハー……おーけー戻った。もうこっち見ていいぞ」

「……ほんとにくしゃみで戻るんだな」

「部屋で水かぶって見せたの忘れたんか」

「忘れてないけどさ、夢かとは思ってた。実生活のなかで改めて見るとインパクトがすごいな。少女がおじさんになるってどういう理屈なんだ」


魔法だよ。理屈とかわからんよ。

まあね、この魔法をつくった魔法使いの「沼にはまったおっさんを少女にしてやる」という思考は闇が深そうで興味はある。


おれと灯富は警戒しつつ、森からでて待ち合わせ場所にむかった。道中で明後日には仕事がなくなることと、騎士の愛人勧誘について話すと灯富は考えた様子で顎に手をやり、うーん……、と呻いた。


「騎士の身分が高くて愛人を持つことが普通なのかもしれないし、この世界は一夫多妻制なのかもしれないな」

「一夫多妻だとしても愛人って、おれは本命にはならないんか」


ちょっとショックだ。べつに付き合う気はないけど、女体化したおれはまあまあ可愛いと思うぞ! 声かけてきた騎士のうちで一人くらい本命にしてくれても良くない? なにこれ、なんか告白されたのに振られた感じになってんだけど。


(こんなことで始めての気持ちを味わうとは……)


ぐむむ、いつかこの気持ちを歌詞にしてやろう。

おれは苦いような感覚をあえてしっかり記憶に刻むことにした。




風呂は2日に一度は入りに来ることになった。

4人で2ガル、中でサービスを受けるのにさらに少額がかかるけど、元の世界で身綺麗にしてたおれたちが今の衛生環境に耐えられるのかどうかを天秤にかけたら、風呂には高くても入るのがベストという結果になった。ここの町のひとは一週間に1回2回らしいから、おれたちは珍しいほうだ。


「あーしみるぅ……」


水仕事で冷えた手と、しゃがむ体勢で疲労のたまった体にお湯が気持ちよすぎる。たらいに凭れ肩までつかってホフゥと息をつくと、体の芯がゆるんでく……。


目を閉じてウトウトしてたら、聞くともなしに、まわりの会話が聞こえてきた。


「最近じゃ夜はそこで毎日踊ってんだよ」

「そういえば締まったな、踊りのせいか」


……!!

バチッと目が開いてしまうが、天井に顔を向けたまま目線だけを声の方にむけると、もはや常連の鉱夫さんがいた!友人と話してるけど、おれたちには気づいてないみたいだ。


「おまえ踊りなんかできたのか」

「いや教えてもらったんだよ、奇妙な動きだけどふしぎと唄に合うんだ。みんなで手ぇ叩いたり楽しいぜ」

「そんなに言うならおれも行ってみるてえ。ダンスすらできねーけど教えてくれんだよな?」

「ああ、でもワルツなんかじゃないぜ?」


ふむふむ。ふむふむ!!

鉱夫のおじさん、おれたちのこと宣伝してくれてんのか。めちゃくちゃ嬉しい! ダンスも気に入ってくれてて良かった……町の人って四拍子が苦手でさいしょは苦労してたもんね、楽しんでくれてるのがなにより嬉しいぞ!


(それにワルツか……いい事きいたな)


社交ダンスはやったことないけど、お客さんが親しんでるジャンルなら新曲にいれるのも良いよな。あとで成風と話してみよう。社交ダンスできる人もみつかればいいな。


そのあとすぐに鉱夫のおじさんたちは出て行っちゃったけど、思わぬところで聞けたお客さんの感想に、おれはにやにやを抑えられないでずっと風呂に浸かっていた。

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