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仲良くなれてきた

「よお兄ちゃん!仲間連れてきたぜ!」

「あたしもヒマそうな子さそってきたよ」

「今日もたーくさん飲むからねーおかみさん、ビール!!」


「それではお聴きください。まずはいつもの“英雄の歌”から」


ヒューヒューと盛り上げてくれる観客。

あれから数日の間に常連さんがどんどん新規のお客さんを連れてきてくれて【白花亭】はテーブルがさらに2席増えた。


“英雄の歌”がはじまるとお客さんたちも合わせて歌ってくれる。もう合唱の状態だ。これを「もういっかーい!」のアンコールのまま2回は繰り返す。

“町娘の歌”になると、数人のお客さんが立ち上がったりその他は座ったまま体を揺らしたり手拍子をしてノッてきてくれるようになった。ストンプによる音もリズムもいい感じに熟れてきた。


「ありがとうございましたー!」


「おうまたな!」

「いいもの見せてもらったぜ、楽しかったよ!」

「またくるねぇー」


ライブがおわったらお客さんと一緒にごはん食べてまた歌ったりして過ごす。そんでお酒が入って踊ったせいかご機嫌に酔ってるお客さんたちを送り出して、閉店作業だ。


「歌って疲れているのに、お手伝いありがとうございます」

「いえ、場所をお借りしてるし、これくらいさせてください」

「ズンドーでかくなったから重いっすもんね」


ライブのせいでお店の雰囲気が変わってしまったと思う。繁盛してるから良いってわけじゃない。おれたちはライブの状況がうるさくないか、ご迷惑じゃないか、どうか気遣わずに言ってくださいと話をしたけど、リーヴォリさんは本当に優しくて「老後の暇つぶしにやっていたお店なんですよ、賑やかになって楽しいわ」と言ってくれた。


そのあとのミーティングで、出来るかぎり恩に報おうと結束したよね。


「さあ帰りましょうか」

「はい」

「ふふふ、今夜のらいぶは舞踏会のようでしたね」

「舞踏会ですか?」

「ええ。ダンスホールで男女が手を取り合い踊るのよ。今夜はとても楽しそうで、思い出しました」

「ロマンチックっすねー」


成風とミヤが相槌をうちながら談笑してるが、リーヴォリさんはわりと謎多き女性だよな。




朝。仕事の時間です。

小川で仕度をして兵士宿舎までやってくると、正門のまえにチェルシーちゃんとステイシーちゃんが立ってた。


「あっおはようヨルちゃん」

「おはようございます。ここで会うの珍しいですね」


首を傾げてたら、チェルシーちゃんが手荷物を掲げてみせた。


「コレをあげたくて、ヨルちゃんを待ってたの」

「早く行って着替えよー」

「きがえ??」


両脇から腕を組まれて連行されるように仕事場へ連れて行かれた。すごいな、女子ふたりがかりだと、おれみたいなもんは引きずっていけるのか……。


「ヨルちゃん、そっちの物置でこれ着てみて」

「入り口は見張ってるから。はやくはやくっ」


チェルシーちゃんにぎゅうと荷物をおしつけられ、ステイシーちゃんには急き立てられて物置小屋に入った。


「着方わからなかったら言ってねぇー」


閉められた扉の向こうからのんきな声。

仕方なく薄暗い小屋の中で荷物をあけると、中には服が入ってた。これに着替えろってことか?


(あ、わあ……なるほどー)


シンプルな長袖のワンピース。生地は硬めで、被ってきるのかな? うなじ辺りのボタンを嵌めて、腰紐を結ぶつくりだ。


「着れたぁ?」

「あっま、まだです」

「手伝おうかあ?」

「だ、大丈夫ですっ!」


外ではゴトゴトと音がしてるから、洗濯の準備をしてくれてるんだと思う。おれがいつまでもここに居たら仕事が進まない……!


(しょーがないんだ……!)


今まで来てた服を脱いで、思い切ってワンピースを被った。ウエストで紐を結び、おずおずと小屋の扉をあける。


「わあ、にあう!」

「可愛いー可愛いいー!」

「うわぁ!」


ぎゅむっと抱きしめられた。満面の笑みのふたりに上からじっくり見られて緊張する。

だ、大丈夫なのか、なんかの犯罪に問われるんじゃないかっ。


「それ、私のお下がりなんだけどあげるね」

「えっそんな、いただけませ」

「着なきゃだめよー」


プニっと鼻を抓まれた。


「!?」

「ヨルちゃんの服って生地が薄いでしょ? あれじゃあ悪い男が寄ってきちゃうよ」

「これなら胸も足も隠せる! 似合うし可愛いし、ぜったいに着て帰ってね」


ね?とふたりに強引に頷かされた。

おれの服装が浮いてたのはたしかだけど、もらっていいのかな。


「さて!お仕事しましょう!」


チェルシーちゃんの明るい掛け声でハッとなり、おれは用意してもらった盥に水をはりにいった。

感想、ブクマ、評価ありがとうございます(^ν^)やる気!!

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