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お姉さんに任せる案件

【白花亭】でライブ。

まだ一曲しかないのに、何度も聞きに来てくれるお客さんがいるのが嬉しい。


今夜は壁際にスタンバイした段階で、後方の席にいた女子二人組が立ち上がって前にしゃがんで待ってくれた。すごい……もうファンになってもらえたと考えていいよな!


ファンサービスにも気合いが入るのはおれだけじゃない。みんないつもより格好つけてたもんね。


「ありがとうございましたー!」


最後のお客さんを見送り、食堂の片付けをしてリーヴォリさんと家に帰る。

上空にはちょうど半分になった月。


「モゴック爺のいってた満月って、あの月での満月だよね?」

「そうだと思う。太陽のまわりにあるふたつの月は満ち欠けしてたか覚えてない」

「していましたよ。今日は右が上弦、左が下弦でした」

「じょうげ……? え、なにそれ、どんな???」


世界のシステムがわからないまま帰宅。

リーヴォリさんに夜の挨拶をして各部屋へ戻ろうとしたら、首を傾げた彼女に声をかけられた。

 

「月の満ち欠けを気にしていたようですが、日付に疑問がおありなのかしら。よければお教えしますよ」

「ぜっ、ぜひ!!」


ありがたい申し出にすぐに飛びついちゃう。


やっぱりカレンダーはなくて、この国の人は夜空の月の形で数えてるそうだ。一年は12ヶ月か13ヶ月。いまが何月かは教会や町役場の飾りで判断できるんだって。

気候の変動があまりない町だから季節感はそんなにないらしい。


「じゃあ満月が2回っていうのは2ヶ月後ってことっすね」

「思ったより遠かったなぁ」

「でも貯金するにはちょうどいいくらいじゃないですか」

「ああ、高価らしいからどのみち今は買えない。頑張って金を貯めよう」


うう。まだ金欠生活は続くんだな……。




ゴシゴシ、ゴシゴシ。


「今日は多いわねー」

「腕が疲れてきたぁー。ヨルちゃんは大丈夫?」

「はい!」


洗濯業務中です。

今日はもうニ波が終わったんだけど、出しそこねた洗濯物をふらふらーと持ってくる騎士がめちゃくちゃ多い。

おかげでペース配分がくずれるっていうか、対応に出なくちゃいけないのもあって面倒くさい。


「洗濯物の追加を頼めるだろうか」


またひとりの騎士がTシャツみたいな下着を一枚だけ持って現れた。これ!こういうの。まえからチラホラいたけど今日は多い気がするよ。


「はい、お承りします」


でもこういうの含めて洗濯係の仕事なんだし笑顔で対応するしかない。ゴシゴシしてた泡まみれの手をぴぴッとはらって受け取りに行く。


「お預かりしますねー」

「頼む」

「はい、おつかれさまです!」

「あ、ああ」


立ち去る騎士を見送って、新しく発生した洗濯物を盥に突っ込む。ゴシゴシしてやろうね。


「洗濯物の追加を頼もう」


また……!なぜ騎士たちはまとめて来ないんだ、チームワークはどうしたんだよ。


「私がでるわ」

「お願いしまぁす」


こんどはチェルシーちゃんが対応にでてくれる。

こんなことを繰り返しやっと最後の洗い物がおわり、干し場へ行けた。干す量もいつもより多いから新しくロープを張っておく。


「はー!これでおしまい!」

「疲れたねぇ」


使った盥を片付けてお給金をいただく。いつもより遅くなっちゃったな。


「さいきん追加の洗濯が多いねぇー」

「うん、はじめの頃は追加なんてなかったのにね。しかも一枚だけとか、翌日でも良いだろうに」

「潔癖なのかなぁ」


三人で兵士宿舎正門まで歩く。すれ違う騎士や職員に「おつかれさまでーす」と小さく会釈しつつ二人のあとをついて歩いてると、チェルシーちゃんとステイシーちゃんがクルっと振り返った。


「もしかして、その挨拶は毎回してるの?」

「え、えと、はい。癖で……」

「クセ! ははーん、なるほどなるほどぉー」


ステイシーちゃんがニヤニヤしてる。なんだ……?


「騎士様が追加で洗濯頼んでくる理由、わかっちゃったかも」

「私も! ふふふっ、これなら対処できるわね!」


なんかおれを除いて話が進んでる気しかしない。なんだ、おれの挨拶のせいでなんか不利益がでてたのか。

ぐぬぬ、と理由を考えてると頭を撫でられた。


「まぁお姉さんに任せなさい! それよりヨルちゃん、ランチいっしょに行かない?」

「あ……すみません、予定があって」

「えっまだ仕事があるなんて言わないよね!? しんじゃうよ!」


ステイシーちゃんにギュッと腕を組まれた。びっくりしたけど、心配してくれるみたいなので慌てて否定する。


「ちっちがいますお仕事はないです。食堂、そう、食堂でお手伝いしつつ場所をお借りしてご飯を食べてるんです」

「それは仕事じゃないの……?」

「はい、私が好きでやってることなので」


リーヴォリさんのお手伝いはやりたくてやってるからな。

夜の営業の仕込みだったり、掃除だったり。

朝食兼ランチは天気がよければ外の森で、雨が降るなら店内を貸してもらってる。ほんとにリーヴォリさん様々、もうおれたちの生命線だよ。


「そうかぁ。残念だけどまた今度だね」


ばいばーい!と町の広場で別れた。

手を振ってふたりを見送ったあと、ササッと見回して人影のない建物の陰へ走る。


「へっブシュン!」


うむ。こよりのくしゃみにも慣れてきたなぁ。だいぶスムーズに出せるようになってきたぞ。

遅なった……

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