新曲へむけて
リーヴォリさんのお宅に住まわせもらうにあたり、リーヴォリさんは家賃について「遊ばせてる部屋だから」と最初は受けとってくれなかったが、真剣に説得してどうにか6ガルを納めることになった。
「助かるけど、破格の値段になってしまった……」
「人の良いご老人を騙してるような罪悪感があるな……」
まえの宿と同じく二階に二部屋借りておれと灯富がペアだ。
一人暮らしにはたしかに部屋数は多いしなんだか新築っぽい。
「リーヴォリさんもミステリアスだよな」
「ああ、言葉遣いも所作も綺麗だし、なにかをしていた方なのかもしれない」
気になるけど詮索はしない。
おれと灯富はなにも言わずに頷きあった。
翌日から、仕事はリーヴォリさん宅から通うようになり、ランチは戻ってきてみんなで食べるようになった。
ミーティングにリーヴォリさんの淹れてくれたお茶がでるようになって、グレードアップした感じ。
「んじゃあ、新曲のためにそろそろウワサをまとめようか」
「騎士はモテる、とくに隊長のシュヴァルという人が人気らしい」
「でも浮いた話はないっすねー」
「ドラゴンの目撃情報はないです。大昔にこの町の空を飛んだことがあるくらいで」
あとはダンス狂のお姫様の話かぁ……。えーまとまるか?これ。
みんなで頭をひねるけど、騎士の歌にしてはインパクトが足りない。時事ネタとしても同じだし。
紅茶をすすってたらふとミヤが口を開いた。
「思いきって町娘側の気持ちを歌ったらどっすかね?」
「ミヤち、忘れたの。 “love you”も女性目線の歌詞で叩かれたんだよ」
「あれはボヤッと解釈は任せる感じだったじゃん? 今回は騎士に恋してる!ってハッキリさせんの」
「なるほど、“cry”なら失恋ソングとしても使えそうだな」
いいかも。好きで好きで女子がアピールするけど、カッコいい騎士様は仕事に向かってる、ってやれば侮辱罪とかいって逮捕されないはず。騎士こわいってか逮捕こわい。でも、
「騎士が駐在してるんのに騎士ネタは外せないもんな」
「とりあえずやってみよう。歌詞は誰が書く?」
「ベースは僕がやります。編集はみんなでチェックしてください」
食休みをとったら、あとは自主連の時間だ。歌詞を考えると名乗り出てくれた成風は、地面に枝で文字を書いては消し、書いては消しで考えてくれてる。
(紙とペンが欲しいな)
主語を変えただけで形になった“英雄の歌”と違って、今回は変更点が多そうだ。
家の横の広いスペースでステップやダンスの練習をする。曲もないし、この世界じゃ踊る予定なんてない曲たちだけど、体が鈍るのが不安だ。
灯富は自重を使った筋トレ、ミヤはおれと同じく日本で披露するはずだった曲の練習だ。
「ヤオさん」
「んー?」
「リーヴォリさんのおかげで宿代がちょっと少なくなったじゃないすか。楽器買えたりしないっすかね」
「! そうだな。そこら辺の情報も集めよう」
言われてみれば、宿代が4ガル安くなったわけだし使いみちも考えなくちゃな。
楽器はモゴック爺には無いって言われたけど、吟遊詩人は持ってたのを見た。てことはこの町になくてもどこかで売ってるだろう!
早速みんなと相談して、とにかく書くものを買うことにした。
「じゃあおれ行ってくるわ」
「あっ、おれもお供するっす!」
モゴック爺の雑貨屋で書くものをくださいと言ったら木の板と炭の塊をもらった。
「もっと欲しいなら、そこらへんに木が生えてんだろ。皮をとって使え」
「え……えっ? 木の皮に字を書くってことす?」
「フン、おまえらは貴族か。紙みたいな高級なもん、この町にはねぇよ」
ぶっきらぼうに言われたけど、木の皮の剥ぎ方とかまっすぐにする方法を教えてくれる。モゴック爺は愛想はないけど優しいおじいだ。
「炭には布でも巻いておくんだぞ、手が黒くなるからな」
「はーい」
ふむふむ、またひとつこの世界の常識を学べたな。
あとは楽器が見つかればいいんだけど。
「モゴックさん、何度も聞いて申し訳ないんだけど、ほんとに楽器ってないのかな」
「ねぇよ」
「ほかの街なら売ってるとかはないっすか?」
「………ああ、そういや行商が売ってるときはあるな」
なんだと!これは重要なお話だ!
「必ずってワケじゃねぇぞ」
「その行商さんはいつ来るんですかっ?」
「あー……満月があとふた周りしたくらいだな」
カレンダーがない世界だからか月の満ち欠けで言われた……むずいな。空をチェックしないといかんな。




