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買取と未知の山

「見慣れない顔だな、どこから来た」

「アメリカです、出身は日本なんですけど」


パン屋さんに教えられた雑貨屋は小さく、溢れるように物があった。入店するや店主のおじいがいて「そこらのもんに触んなよ」と愛想もなく言われたのでちょっとビビる。偏屈そ〜。


素直に顔をひきつらせる年下組のまえにでて、おれと灯富がにっこりと笑みを作って、買い取りを願い出たとこ。


「フン、どっちも知らねーな」

「あははっそうですか、ちょっと遠いんですかねー。あ、それで、この指輪とかどうでしょうか」

「…………良い細工だな。素材は白銀か、円もきれいだ。40galでどうだ」

「あーすみません、ホテルに四人泊まりたいんですが、40ガル?で何泊できますか」

「ホテル…? そこらの宿ならひとり一泊3galだ」


お、買取額はわりと高額っぽいな。おれは灯富と頷きあい、取引に応じた。


「おじいさん、ありがとう」

「またくるね!」

「フン」




「ヤオさんすんません、つぎはおれのピアス売るっす」

「いいや宮林。年齢順にいこう、だからつぎはおれな」

「おー次は灯富の高そうなやつ売ってやろうぜ、イタリアで買ったブレスレットとか」

「売るブツ選べんのか」

「ダメっすーヤオさんのご指定すー」

「ミヤちはヤオさんの信者だもんね」


資金が出来たことでホッとしたせいか、みんなもふざけあえる余裕がでてきた。


「それより宿だよ宿」


夕暮れの町にてつぎのミッションは宿探しだ。

雑貨屋があった道は商店が並んでいるらしく人通りが多い、と思う。多くが木造の2階建で入口に看板が掲げられてるけど、その文字が読めない。アルファベットではないし仏語でもアラビア語でもなさそう。なんか文字というより記号みたいな書き方だ。


屋台ならまだしも、扉を開けるタイプは店内がみえないから入るまでジャンルすら不明なのが辛いな。出入りしてる客層をみてもわからないし。


「難易度高いなぁ」

「これ攻略しないと野宿ってなら、かなりしんどいっすねー」

「文字どころかイラストの意味も不明だしな、って成風!」

「こんにちはあ」


おれたちが通りすぎたばかりの店に成風がナチュラルな態度で入ってったらしい。灯富が気づいてよかった……!


「ここ宿屋ですかー?」

「そうよ、何泊?」

「さしより四人で一泊できる?あとごはん付けれる?」

「二人部屋を二つ用意できるよ、一部屋5galだね。飯はないからどっかで食べといで」

「はーい」


唖然としてるおれたちの前で、成風と宿屋のおばちゃんは予約を進めていく。くるっと振り向いた成風がおれをみて、首を傾げた。


「ヤオさん、一泊10galだって。決めちゃっていい?」

「お、おう。泊まろう! お願いします。…助かった」


横にいって成風に小声で礼を言って、ポケットに突っ込んでたコインを取り出す。雑貨屋のおじいに教えてもらった通りに1ガルコインを10枚だす。


「ご飯食べに外に出ても良いですか?」

「ああ、顔を覚えたからね。好きに出入りしな」


おれたちは屋台でパンや串焼きを買って宿に戻り、そこでやっと落ち着くことができたのだった。




夜。

町はとても静かだった。


宿の部屋は年下の宮林・成風、おっさんのおれと灯富に別れた。あれからまた話し合ってドッキリ番組の可能性も捨てきれないので、しばらくは移動はせずこの町で過ごすと決め、この日は就寝となった。


それから体感で一時間ほどして、おれと灯富はそっと部屋を抜け出したのだった。



宿をでて静まりかえった町を歩く。人もいなければ街灯もなくて真っ暗。めちゃくちゃ怖ぇー。


「スタッフ、どこに隠れてんだろ」


月明かりを頼りに町の外周を歩く。岩の多い山に囲まれていてそんなに大きな町じゃなさそうだ。森っぽいのもあるから、隠れるならあそこか?


「夜尾、ここはスイスじゃないかもしれん。というかあんな山を初めてみた」


灯富が指差す山は、山頂を一周するようにキラキラした光環が浮いていた。幻想的というか現実感がないほどキレイだ。


「すご……おれたち、いま奇跡的な瞬間をみてる?」

「そうだな、ここが地球なら」

「は???」


あれ、灯富ってスピリチュアルなキャラだったっけ。


「いまからそういう方向にいくのツラくないか。年齢的にも不思議系はキツイぞ……? 灯富が本気なら手伝うけど」


それにすでに不思議系はもう成風が天然でやってる。なんで宿がわかったのか聞いたら「マークが宿っぽかったから」って言ってた根っからのアレだ。


「いまからキャラ変はおれもきつい。そうじゃなくて、ここの人たちの言葉が変だっただろ」


そういえば。

最初に宮林が言ってたように、町民が話してるのは英語なんだけどなんか二重に聞こえたんだよな。


「あれ? でも宿屋のおばさんたちは後半はふつうに英語だったぞ」

「観察してたらさ、おばさんの口の動きと発声が一致してなかった」

「まじか」


…………。


よくわかんないし考えたら鳥肌たつ。とにかく番組のスタッフもしくは隠しカメラを見つけよう。そしたら全部解決するはずだ。


話しながら町を半周したおれたちは森に入ることにした。

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