二度目の涙
「だってそのゲームを作ったのもこの世界を作ったのも僕なんだもん」
幻聴まで聞こえてしまった。あぁ、疲れているんだ今日は早く寝よう。
「幻聴じゃないよ!全く。姿が見えないと人間は幻聴だと信じてしまうのか?」
……ん?
「しょうがないなぁー」
声が聞こえたので振り向くとまるでそこに最初からいたかのように少年が立っていた。詳しく言うと美少年だが。
全てが白いと感じた。『純粋』という言葉の権化のような、そんな言葉でまとめていいのか分からないけれど。白髪で白い瞳を持った美少年。
(何故この世界の男は皆美しいんだろうか。この家の庭師さんでさえも筋肉ムキムキのザ・紳士だし。)
「その方が女の子は嬉しいんじゃないの?」
「いや、だとしても前世を知ってるから……あれ?え、待って、勝手に馴染んでるけれど貴方誰よ。どうやって入ったの?どうして話してもいないことが分かるの?」
その質問を待っていたとでも言うようにドヤ顔で美少年は、
「そりゃあ僕は神様だからね!」
「はい?」
「だから!神様だって!あ、テナって呼んでね!」
えっと、うん、まぁ転生とかある世界なんだし?魔法とかあるし?もう魔王登場とか信じれるけれど悪役令嬢が5歳で急に神様と会話してる状況はさすがに笑いますわね。
「もう魔王信じるなら神様も信じてよ」
「じゃあ私を元の世界に返して。」
自分で言ったのに冷たい声が出てしまったことに驚いた。
「嫌だ。ってかもう殺しちゃったから体が無いし。今頃火葬されてる真っ最中だと思うよ?」
急に真顔になったと思ったら返ってきた答えは冷たかった。
「……殺した?」
「だってつまらないんだもん。
地球を作ったのはいいけど誰も僕の存在に気が付かない。姿を現せば戦争を始める。じゃあもう新しい世界を作ろうって思うじゃない?そして最後は地球人を転生させてこの物語は完成!終わったらまた新しい世界をつければいい!
ルズは地球でも見てたけど1番最初の記念すべき世界にピッタリだと思ったんだ!
でも転生させるには殺すしかなかった。外に出てきた君をトラックに引かせるのは簡単だったよ!
単にヒロインに転生させるのも面白くないし、君がどう動くのかを見れるのは悪役令嬢の役がいいと思った。君が動きやすいように仕用人の感情をコントロールして展開を早めた。
おかしいと思わなかった?人間がこんなにも早く心を開くはずないじゃあないか──────」
パァーンと高い音が響く。
「ふざけないで!じゃあ私は貴方の娯楽のために死んだの?友達、親友、先輩、好きな人も全て貴方のために捨てなければいけなかった?」
今私は涙目だと思う。昔からよく泣く子だった。最近は恥ずかしくて、どうしても辛い時は1人の時によく泣いていた。
神に抗ったってもうどうしようも無いことだと分かっていたのに。どこかで「いつか帰れる」なんて思っていたのが悪かったのだろうか。
「痛いなぁ……でも痛いなんて初めて思ったよ。やっぱりルズはこの世界に連れてきて良かった!」
私は愕然としてしまった。伝わってない。もとより会話になっていない。
(ダメだ。伝わることは無いのか…)
「そうだ!心を読めなくしよう!そうすれば面白いかもしれない!」
「またね」とテナはいつの間にか消えていた。
来て下さってありがとうございます!おいなりさん好きです(^^)
執筆スピードが遅くて本当にすみません。
今後ともどうぞよろしくお願いします