昼間に眠い姫
進学ができなくても、夢に向かって頑張った。
そんな彼女に立ち向かう厳しい現実。
夢の中ではどうか、幸せになってほしい。
いつからだろう、夜眠れなくなったのは。
私は楽天家だった。
ファッションを学びたくて専門学校に通いたいと思った。
それも好きだから、とか楽しそう、って簡単な気持ちだけ。
親にお金が無いから働いて欲しい、と遠回しに言われたときでさえ、それはそれで早くアパレルの世界に入れる!と張り切って就職先を探した。
アパレルと言えど服と対話し続けるのではなく、接客業と気づいてからは、それならそれでメイクや笑顔に気を使った。
適応能力が高かったのかもしれない。
裏を返せば、自分というものがなかった。
「おめでとう。人事考課でサブリーダーに昇格だよ。」
突然の辞令。
人事考課なんて嘘。
先輩が結婚して辞めただけじゃん。
それからはアルバイトや社員のシフト調整、在庫管理、販売促進活動と服からは離れていった。
その頃からだろう、夜眠れなくなったのは。
アルバイトの大学生が無断欠勤をするようになった。
本来なら休みの日もクレーム対応で呼び出された。
家に帰っても仕事の事が頭から離れない。
毎晩毎晩明日が来るのが怖かった。
そしてあの日……。
私は深い眠りについた。
別に死んだ訳じゃない。
ただ……眠ってしまっただけ。
「んー……」
久しぶりによく眠れた!
今日はクレーム来ないといいなぁ。
あれ……?今何時?
愕然とする。
時が止まる。
急いでスマホを確認すると、店長から何件も着信があった。
「うそ…嘘嘘嘘!!!!!!」
その後はほとんど覚えていない。
超特急で準備して店長に謝って病院を勧められたんだっけ?
夜は寝られないし、昼は眠ってしまう。
完全に昼夜逆転の生活。
「昼間寝てるから寝られないんでしょ!」
「寝てないで働けよ!」
そんな声も聞いた。
でも、それができてたら、こんなに苦しむことは無いの。
初めてできた「自分自身」というもの。
今私は病院にいる。
この経験を誰かに知って欲しい。
誰にも同じように苦しんで欲しくない。
今日もまた私は眠り続ける。