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ラスボスさん。  作者: 有負 王
章ってなあに?ーーしょういうこと(章機能を使ってみたかっただけ)
9/25

竜王、来たる(二回目)

お久しぶりでございます!本日は8月38日!いやー、ギリギリ8月ですね!私は月一投稿が目標って言いましたからね!ね!

ね!!(往生際が悪い

「帰ったぞ」


「おかえりなさいませ、ご主人さ」


「おかえりなのじゃ旦那様ぁ♪ご飯にするぅ?お風呂にするぅ?そ・れ・と・もぉ……」


「………??????」


「………」


いつもの異世界散歩から城に帰ってきたラスボスは、いきなり見知らぬ謎の女性に出迎えられ頭上に大量のはてなマークを浮かべて黙りました。ガン無視してさも誰もいないかのようにいつも通り出迎えようとしたネモフィラさんも台詞を遮られ、それどころかインパクト大な台詞をラスボスに言う女性にピシリと固まりました。額にはうっすらと青筋が浮き出ていました。


「なあネモフィラ、こいつは」


「どうされましたか?ここにはだーれも私たちの他にはいませんよだーれも」


「あ、ああ…」


「さあ勇者がいつ来るかも分かりませんし早く戻りましょう」


「あ、ああ…」


「ええい!ワシのことを無視させようとするでない!」


いつになくイラついた様子でラスボスを急かそうとするネモフィラさんにラスボスが圧倒されながらもそのまま玉座の間に帰ろうとするのを、先ほどの女性が通せんぼしました。

女性は、白いヨルガオの絵が入った真っ黒な着物を着て、長い艶やかな黒髪に艶かしさを感じる美しく整った顔、そして、


「そもそも娘のくせに親の邪魔をもがもがが」


「何を寝ぼけたこと言ってるんでしょうねーはい黙りましょうねー」


ネモフィラさんそっくりな角と翼、尻尾がありました。

それを見てラスボスが言いました。


「やっぱりお前この前の竜王じゃないか」


それを聞いて女性はびくう!と震え、


「な、ななな、な何のこっとかのぉー!?」


目を全力で明後日の方向へ向けて裏返った声でそう言いました。汗はだらだらとたれ、顔はうっすらと青くなっていました。

それを見てもはや見るに堪えないネモフィラさんが、


「……はい……そうです……私の……お父さんです……元………」


両手で自分の顔を覆いながらそう暴露しました。"元"とつけたのは単純に性別変わってるからか、『こんな奴もう親じゃねぇ』という思いからか、はたまた両方か。たぶん両方です。


「あ、ああぁーっ!この裏切り者ーっ!」


「そもそも協力した覚えはこれっぽっちもないですが」


「なぜじゃ!?昔はあんなに素直な良い子であったのに……」


「生まれてからずっと千七百年くらいもスパルタ式修行尽くしでしかも外にも出させてくれないとあればこうもなりますよ」


「それより竜王、何の用だ?もしかして我と戦う気に」


「それは本当に勘弁してくださいごめんなさい申し訳ありません許してください」


それを見たネモフィラさんは何か思いついた様子で言いました。


「ひょっとしてらすぼすくんに会いに来たのでは」


「!?っえいやそれは違う」


「よんだー?」


するとどこからともなくらすぼすくん人形がネモフィラさんの頭上に顔を出しました。はい、ひょっこりはn(以下略)


「あふひゃああああぁぁぁっっ!!」


すさまじい悲鳴を上げて後退りする竜王。そのままそこで尻尾を自分の体に巻きつけてうずくまりガタガタ震え始めました。しかしらすぼすくん人形は気にせずとてとてと近づいていきました。


「こわい……お人形さんこわい………」


「だいじょぶー?」


「なにもきこえてない……これはただのげんちょう……そう、きのせい………」


「どうしたんだあいつは」


「この前らすぼすくんにぼこぼこにされてから人形がトラウマになったらしくて…人形を見る度にあんな感じになるんです」


某フリーホラーゲームの美術館に放り込んだら面白いことになりそうです。人形やマネキンに怯えまくる竜王(笑)。


「それで、何でわざわざ女に変身してこんなことやってるんだ、竜王」


「こわい……こわいの……お人形さんこわいの………」


「こわくないよー?」


「……もう戻ってこい」


「らすぼすくんおいでー」


「わーいネモフィラちゃーん」


竜王かららすぼすくん人形が離れ、彼女はようやく立ち直りました。


「で、竜王、さっきの話だが」


「あ、ああ、なぜこうしているのか、じゃったか。それはじゃな……そなたと、つがいになるためじゃ!」


「……なぜだ?」


ラスボスが首を傾げました。


「チッ」


ネモフィラさんが舌打ちしました。


「なぜって、強さを求める我ら竜王の一族にとってこれほどの優良物件はないじゃろう!むろん交わっても子が絶対に強くなるとも限らぬし、成功したとしてもほぼ一世代限りじゃが、それでも史上最強の竜王が生まれるかもしれないと思うと、夢があるとは思わんかの!?」


「ないな」


「なっ!?」


ラスボスに即答され、驚いた竜王はそのままネモフィラさんを見て言いました。


「ま、まさかそなた……もうヤって」


「死ねやこのエロオカマ親父いいいぃぃぃぃっっ!!」


「ひでぶっ!?」


ズドガアアアァァンッ


ネモフィラさん渾身の右ストレートで竜王がラスボス城の外壁にすさまじいスピードで叩きつけられました。


「……おい竜王、生きてるか?」


「……かっ……かろうじて……ぐふっ」


「らすぼすくんひーる」


「ん……お、おおお…治った…!というか、いつの間にそんなに強くなったんじゃ娘よ……」


「そりゃあどこかのダメ親父が何かしに来てもいつでもぶっ飛ばせるようにご主人様に鍛えてもらったからに決まってるでしょうが」


「あとせっかくだから我の加護も付けておいたぞ」


「な…なんと……ますます優良物件じゃ……!して、娘よ。もしや夜の技術も鍛えて」


「死に晒せゴミクズが」


「あべしっ!」


メキゴシャッ


先ほどよりも落ち着いた分、より静かに、より冷徹に、そしてより明確な殺意を持ってネモフィラさんが竜王の頭蓋を鷲掴みにして地面へと超高速で叩きつけました。


「らすぼすくんひーる」


「…こ、ここ、今度こそマジで死ぬかと思ったのじゃ……」


「そりゃ殺す気でやりましたからね、というか、これでも往生際悪く生き残りやがって……チッ。もっと鍛えないと……」


「それで、さっきの話だが。確かに我は強い奴が好きだが、自分で生み出すのは面白くないから好きではない。例えば」


そう言うとラスボスは自身の角に手をやると、


バキッガシャッ


「「!?」」


躊躇いなく折り、それをそのまま握り潰して粉々にしました。

その粉をラスボスが相撲で塩を撒くようにばっと振り撒けば、


「ピイー!」


「ウォオオーン!」


「ガルルルルルルル」


「シャーッ」


「ウコォーッキキキキケケケケ」


「ブルモオオオーッ!」


「ジジジジジジ」


「……ズッ ズッ!!」


「みゅう!」


「ドドギュウウーン!!」


「もしわしの味方になれば世界の半分をやろう」


やれ鳥だのやれ狼だのやれ蛇だの、様々な動物や虫、その他ヤバそうな生き物などに姿を変えました。


「「……」」


「と、まあこんな訳でな。生物など自分でいくらでも作れるが、交尾しようがなんだろうが、我の一部である以上強さなど大体予想がつくから面白くない」


突如当たり前のように発生した超常現象を前に黙る竜王親子。ラスボスの言うこともほとんど聞こえていません。


「おい、大丈夫か?聞こえ」


「パオーンッ!」


「っ、お、おう、大丈夫じゃ。し、しかし」


「ギャオオオオオオオオ!!」


「ガシャアアアアアアアア!!」


「何なんですかこれ…明らかにまずそうなのとかい」


「#○↓$★≒<〆*♪⊿゛♀←※∞°∴◇¶ζ!〒Ж∥?◎∋:ω」


「おい、そこのお前。青くてグネグネヒョロヒョロしてる者よ。もしわしの味方になれば世界の半」


「ぱるぱるぅ!」


「うるさいな。飛ばすか」


ラスボスがそう言って軽く手を振ると、あれほどいた生き物の群れが消えてしまいました。


「とにかくこれで分かっただろう。我は誰ともつがいになる気はない」


「ぐっ……ぐぬぬぬぬ、し、しかしじゃな…」


「往生際が悪りいぞ変態」


ラスボスが言うのを聞いてもまだ渋る竜王に、ネモフィラさんがまたキレそうになったところで、ある人物がやって来ました。


「おいラスボス!今日こそは本気を出させて……」


「ラークか」


そう、それはこの前登場した超万能賢者ことラークさんでした。

あれからというものの、もう各地の悪の魔王討伐なんか知るかと言わんばかりにしょっちゅうラスボス城を訪ねてきていました。ちなみに勇者がラークさんと顔を合わせると顔を赤くして気絶する発作を起こすようになってしまっているのも原因だったりもします。なのでほとぼりが冷めるまで、という理由(言い訳)で来ているのです。無論この人間なんぞとっくのとうに辞めてる究極生命体が一人で魔王をぶちのめせない訳がないのですが、彼は「勇者のいない魔王討伐は邪道だ。愚弄だ。なろうだ。微妙だ」という謎の持論を展開するので行きません。国からの圧力にしたって何をしても動きませんし、場合によっては魔王の被害なんか微笑ましく思えるような凄まじいしっぺ返しをされかねないのでほぼ手を出せません。

賢者とは何だったのか(今更)。


「……お前、もしかして黒の竜王か」


「ほう、そなた、ワシのことを知っておるのか」


「ああ、当然だ。今代の黒の竜王は尋常じゃなく強いって評判だからな。それに」


そう言ってラークさんはネモフィラさんの方を指差しました。


「そこのお前の娘と戦う時に条件として毎回お前のダメ親父っぷりを愚痴られてたからな。そりゃよけいに印象にも残る。やれ掃除をしないだのやれすぐ家を壊すだのやれ人形にズタボロにされただのあげくラスボスを見て泣いて必死で謝罪して逃げただの」


「娘よなんてことをー!?」


悲痛な叫びを上げる竜王を見てネモフィラさんは、


「ふっ、自業自得ですよ」


嗤っていました。どこまでも冷たく暗い瞳と声でした。ざまぁ感がこれでもかと滲み出ていました。とても実の親に対する態度とは思えませんでした。とはいえ前述通りの醜態を晒した上に娘の惚れた人を恥も外聞もなく堂々と奪おうとしているような親なので仕方ありません。

竜王とは何だったのか(天丼)。


「それは置いといて黒の竜王、俺と戦え!」


「ええいっやけくそじゃあっ!受けて立ってやるわ!」


しかし他人の醜態などさほど興味もない戦闘狂(賢者)でした。


「それじゃあ戻りましょうかご主人様」


「そうだな」


そして何事もなかったかのように城に戻って行くラスボスとネモフィラさん。

作者も正直めんどくさいのでこの後の竜王対賢者の戦いは割愛します。


「何ぃ!?それは酷くないかの!?」


「ごちゃごちゃ言うな!戦いぶりで語れ!レッツ肉体言語!」


「ええーいちくしょー!!」


めでたしめでたし。

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