その時不思議な事が起こった(この小説ではよくある事)
おひさでございます。ラスボスさん七話目です。
今回のネタはタイトルで察した方もいるかもですが、一応先に一つ言わせてください…
私は好きではありますがにわかですのでパロ度も期待しないでくださいまし!!
まあ出来が悪くてもとりあえず某暗黒結社のせいにしといてください(更に原作ファンを敵に回す)
「廊下が長ーい!広ーい!」
「姫様、お待ちくだされ!」
姫と赤服執事がラスボス城の廊下を走っていました。
知っての通りこの前村人軍団が誘拐事件を起こしてからラスボス達との知り合いである二人です。
ちなみに姫と赤服執事にはそれぞれリセス、マリオンという名前がありますが基本姫と赤服執事呼びでいくので覚える必要はありません。というか作者も忘れてました。この小説よく見ると地味にちゃんとした名前が出ている人がほぼ皆無です。あの魔王少女ですら今のところ名前が出ていません。
魔王少女「ひどいですよ」
今"魔王少女"だと長いので略そうかと思ったら"魔女"しか思いつかなくてそれもう別物じゃんとなったのはここでは関係無い話です(今更)。
それはさておき、あの一件以降姫とその付き添いである赤服執事はわりと頻繁にラスボス城に遊びに来るようになっていました。
王族がそんなホイホイ外に遊びに出ていいのかということについてつっこんではいけません。ハイスペック赤服執事がついていますし、何よりファンタジーなので平気なのです(暴論)。
今日もそうして遊びに来ていたのですが、まず到着するやいなや姫が自分の住んでいる城をも凌ぐラスボス城の大きさにテンションが上がり、廊下や部屋を走り回り出し、赤服執事が追いつくか姫がすっ転んだり壁に衝突して止まるかするまでの一連が恒例行事でした。
どっちにしても当然赤服執事に怒られますが、この姫には全く堪えません。反省の色はゼロ。実はこれでももう十五才なのですが、絵に描いたような見事なまでのお転婆姫でした。加えて低い身長に凹凸の少ない体型、そして童顔のせいで初見で実年齢を見抜く人は皆無。ましてや知っている人でさえもう年齢を正しく認識しようとせず、毎年欠片も違和感を抱かずに十歳の誕生日を祝う始末でした。彼女は永遠の幼女です。…あっ、ちょっと待て何をする私はロリコンではな(ry
ガッシャーン
「姫様!?」
「あはははは、また棚とか高そうな壺とか色々壊しちゃった!」
今回は激突して止まるパターンでした。ちなみにこの姫、異様なまでに頑丈なので毎回すっ転んだり何かに激突したりしても傷一つありません。ある時なんて馬車に乗っていて遠くにドラゴン(普通に知性の無い狂暴な奴)を見つけて一人で勝手に飛び降りて、あろうことかドラゴンに向けて迷うことなく全力疾走してそのままその尾にぶん殴られて五百メートル程ぶっ飛ばされたこともありますが、やはり無傷だったので相当なものです。なおその後ドラゴンは当然のように赤服執事に成敗されました。普通は手練の兵士と魔導師がそれぞれ合わせて二百人、王国最強と呼ばれる王国騎士団長でも宮廷魔導師十人と協力してやっと倒せるのですが、そのドラゴンをいとも簡単に屠るこのお爺ちゃんは本当に何者なんでしょうか。っていうかそれってつまり本当の王国最強はこの爺ちゃんじゃんとか言ってはいけません。
うん、やはりファンタジーの執事パワーだ、間違いない。
「姫様…一人で勝手に走り回るなといつも言っているでしょう」
「だってここほんとに広くてすごいんだもの!うちの城ショボいしダサいし」
王国随一のプロ建築家達が本気で建てた城がまさかのショボくてダサい呼ばわりです。王国の建築家達は泣いていい。
「あれ?この棚の後ろ…」
「扉、ですかな?」
姫が激突してぶっ壊した棚の後ろに、隠し扉のように目立たない扉がありました。少しよく見れば分かるものの、大きな壺の置かれた棚の後ろともなればそうそう気づくものではありません。
さて、このお転婆姫が隠し扉なんてものを見つければどうなるかは知れたこと。
「よし!隠し部屋に突入よ!リセス、行きまーす!」
「ちょ、姫様ぁ!また勝手に!」
ズドゴーン
止める赤服執事を尻目に、扉をドロップキックで蹴破り突入する姫。
そのまま綺麗に前転して手近にあった物陰に隠れました。
「こちらリセース、潜入に成功した。大佐、指示を頼む」
「早急にそこから離脱しなさい」
「それは難しいな。敵に囲まれている」
「また何を…」
とりあえず姫のノリにのってみた赤服執事でしたが、当然拒否られたので扉のあったところをくぐると、
「へっへっへっへっ、少し遅かったな爺さん」
「姫様!?」
姫が謎の白い集団に囲まれ、縄でぐるぐる巻きにされていました。白い集団は美術とかで見る石膏像の全身バージョンが大量に立っているのをイメージすると分かりやすいでしょうか。
…そして何故か姫は段ボールを頭に被っていました。みかんの段ボールでした。
「すまない大佐、捕縛されてしまった」
「姫様アァァッ!?」
しかしノリも崩さず余裕綽々の姫でした。
「ちなみに昔はみかん箱で勉強したとよく言うが、その頃は段ボールやプラスチックじゃなくて木箱だったらしいぞ」
「知りませんよ!?」
みかん箱の上に立って演説したって話もよくあるけど段ボールじゃ潰れちゃうからね。
「おっと、お喋りはそこまでにしてもらおうか」
そこで白い集団の一人が姫の首にパレットナイフを突きつけました。パレットナイフは正確には刃物ではなくへらですが、薄くて先が細めになっているので力を加えられれば普通にずぶりでしょう。ちなみにパレットとは言いますが、絵の具を削ったりする他にケーキにクリームを塗ったりするのにも使われるそうです。
「こいつに危害を加えられたくなきゃ大人しく言うことを聞くんだな」
「くっ…」
即座に姫を助けに行きたい赤服執事ですが、脅されて躊躇いました。
姫は前述の通り異常な頑丈さを誇りますが、それでも万が一ということもあり得ます。いや、億が一、いや、兆が一…いや、ないな。
「ハァッ!トァッ!」
「ぐはあっ!」
「ギエッ!」
「何だ!?」
その時、何者かが白い集団を蹴散らしました。
「くそっ!何者だ!」
辛うじて姫を抱えて襲撃から逃れたリーダー石膏像が謎の人物に問いかけました。
そしてその人物…ウェーブのかかった茶髪に翡翠色の目、青い服を着た少女は答えました。
「私は岩木アリシア…姫を人質に王国を乗っ取り戦略基地化しようとするあなた達クレイシスの野望を許す訳にはいかないわ!」
「何だと!貴様、我々の事を知っているのか…!もはやバレてしまっては貴様らは生かしてはおけん!」
そう言うとリーダー石膏像は窓から姫を投げ捨てました。特段書いていませんでしたがここは五階な上に窓の外は城のある高台の崖側。落ちたらただではすみません。たぶん姫は平気ですが。
しかし当然赤服執事は慌てて姫を追って窓から飛び出して行きます。
「姫様!」
「こちらリセース、窓から投げられた。身動きが取れない、至急救助を求む」
「姫様アァァァァァァ!?」
姫は最後までぶれませんでした。
「ふん、自分から死にに行くとはな…相手が減って助かったぜ」
「なんてことを…!おのれ!許さないわよクレイシス!」
「吠えていられるのも今の内だ!ものども、かかれ!」
リーダー石膏像の号令で石膏像軍団がアリシアに襲いかかりました。
「タァッ!スンッ!サァッ!」
しかし彼女は冷静に、見事な体捌きで石膏像達を蹴散らしていきます。
「…っ!」
それでもいかんせん相手の人数が多く、次第に壁際へ追い詰められていきます。ああ絶対絶命!
その時不思議な事が起こった!
「これを使え!」
突然響いた謎の渋いダンディーイケメンボイスとともに、なんと上から中央に虹色の石の嵌め込まれた四角い物体が降って来て彼女の手に収まったのです。
瞬時に頭の中に使い方が流れ込み、自然と体が動きました。
四角い物体を腰の前面に当てると、ベルトが出てきて腰に巻きつきました。
そして謎のなんかかっこいいポーズ(ご想像にお任せします)を決める!
「変身ッ!」
パララパララとかキュルキュルキュルとかなんか音が鳴って、アリシアの体が一瞬キャンバス地のような見た目に変化し、すぐさま真っ黒な絵の具が虚空から出現し纏わりついて装甲を形作りました。
そして、彼女は改めて名乗るのです。
「私は万色の娘!仮面ピクチャーシュバルツッ!RBッ!」
「仮面ピクチャーだとぉっ!?よく分からんが小賢しい真似を!怯むな、かかれ!」
強そうな見た目に変化したアリシア、否、シュバルツRBに一瞬怯んだ石膏像達でしたが、リーダーの号令で我に返り再び襲いかかりました。
「テァッ!タァッ!ハァッ!」
しかし彼女は数の差をものともせず目にも止まらぬスピードで石膏像達を倒し粉々にしていきます。
腕を捕まれれば振りほどきそのまま裏拳をかまし、同時に襲いかかられれば避けて相手同士をぶつけてそれを蹴飛ばしもう一体にぶつけて倒す。
果てはアメフトのように姿勢を低くしてタックルしてきた相手を踏み台にして跳躍し跳び蹴りで複数体をドミノ倒しに。
瞬く間に石膏像軍団が殲滅されていきました。
「ちくしょう!俺が相手だ!」
壊滅的な被害を見て、ついにリーダー石膏像が動きました。
「望むところよ!」
そして始まる格闘戦。リーダー格なだけあって他の石膏像よりも一回りは体格が大きく、頑丈で力強いです。
材質一緒なんだから強度も一緒だろと思ったそこのあなた、石膏は密度によって強度が大きく変わるそうです。彼は体格も大きくてそれに伴って密度も高い。つまりちゃんと理にかなった描写なんだよこれは!(あくまで偶然)
余談は置いといて、ともかく彼は強いので一筋縄ではいきません。手強いです。いちいち動きを考えないといけないので戦闘描写を書くのも一筋縄ではいきません。面倒です。
互いに一歩も譲らぬ接戦。気を抜いた方の負けです。
しかし突然リーダー石膏像が何かに気づいて、フッと小さく笑いを漏らしました。
「!」
気づいた時には時既に遅し。近くに潜んでいた石膏像がシュバルツRBを後ろから取り押さえました。よく考えたらこれ取り押さえられる女子と対する怪しい集団なのでシチュ的にヤバくねこれとか思ってしまったのは内緒です。
取り押さえられても振りほどくのは簡単ですがそうするとどうしても隙ができます。リーダー石膏像がその隙を逃す訳がありません。またしても絶対絶命のピンチ!
「残念だったなぁっ!」
「くっ…!」
くっころ(くっ…殺せ)じゃないよ。くっころ(くっ…殺される)だよ。(どうでもいい)
「せいやっ!」
「ぐはあっ!」
「何っ!」
しかしその時、何者かが現れシュバルツRBを取り押さえていた石膏像を吹っ飛ばしました。
「危ないところでしたな」
「あなたは…!」
そう、それは赤服執事でした。
「アイエエエ!?シツジ!?シツジナンデ!?」
先程姫を追って窓から落ちたはずの赤服執事がそこにいる状況に、取り乱したリーダー石膏像が思わず奇声を上げました。まさにSRSでした。
「私めも加勢いたします。残っていた敵は始末しましたのでご安心を」
赤服執事の言う通り、残っていた石膏像達は全て破壊されていました。竜殺し余裕な彼にはこの程度なんてことはなかったのです。というかそもそも五階から飛び降りて崖下まで落ちていったところで彼がどうにかなるはずがありません。執事なので。
「キャー!爺やかっこいいー!頑張ってー!」
そして少し離れたところにはちゃんと姫もいました。歓声を送りながら破壊された石膏像の頭を積んで遊んでいました。少し不気味ではありましたがそれ以上に哀れでした。あれがヤツの墓標だ…。なむなむ。
「ありがとう。さて、これで形勢逆転ね」
「くぅっ…!おのれえええぇぇぇい!!」
一気に巻き返され自棄になったリーダー石膏像が拳を振りかぶってシュバルツRBに襲いかかりました。
「はぁっ!」
「ぐおっ!」
しかし抵抗むなしく即座に赤服執事に手刀をかまされバランスを崩しました。
「今です!」
赤服執事が言うとほぼ同時にシュバルツRBはリーダー石膏像へ向けて走り出し、その勢いのまま拳に力を集中させ、突き上げるようにして虹色の光を放つ強烈なパンチを繰り出しました。
「RBパンチッ!」
「ぐああっ!」
間髪入れずに高く跳び上がり、宙に浮いたリーダー石膏像へと虹色の光を放つとどめの両足蹴り。
「RBキックッ!!」
「ぐぬおおおおおおお!おのれピクチャアアアアアア!!」
シュバルツRBがスタッ、と着地すると同時に、背後でリーダー石膏像が爆発四散しました。
こうして世界の平和は守られたのです。ありがとうシュバルツRB!
「うむ、バッチリだ!」
いつの間にか部屋にいたラスボスが腕組みをしながら満足気に頷きました。
「え!?え!?何がですか!?っていうか何だったんですかあの集団!?そして誰なんですかあの人!?」
いつものようにネモフィラさんもついてきていましたが一人全く何が何だったのか理解できず困惑していました。
そんな彼女に、ラスボスはかのヒーロー、否、ヒロインを見つめたまま、答えるのです。
「決まっているだろう。あいつは……仮面ピクチャーさ」
「いやだから何なんですかそれ!?」
めでたしめでたし。
「そもそも変化するための道具投げたのご主人様ですよね!?」
「その答えは……そう、風だけが知っている」
「…だめだこれ」
お読みいただきありがとうございました!
そういえばTwitterでも言いましたが最低でも月イチで更新することが個人的な目標ですので毎月最低一回は話が追加されるものと期待してもいいかと思います。え?誰も期待しない?はっはっは。
そうそう、今言ったように私Twitterもやってて近々更新できそうな時はそこで告知(?)したりしてますので更新しそうなタイミングを早めに知りたい方はそちらもチェックしてみてもいいかもしれません。@kannmatterってやつです。名前はそのまま。え?誰もそこまでして更新タイミング知りたくない?はっはっは。
ではでは、次回も気長にお待ちくださいませ~。
え?誰も(もういい)
…やっぱり全然やめられない前書きと後書き…。