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ラスボスさん。  作者: 有負 王
章ってなあに?ーーしょういうこと(章機能を使ってみたかっただけ)
6/25

竜王、来たる(将棋の話ではない)

お久しぶりでございます、先月、先々月は投稿できませんでしたが書くのを止めたわけではございません。

一体何人の方が見てくださっているかはわかりませんがお待たせいたしました←

「いやあ、今日はいい天気だなぁ」


そう言って、農民村人たちが畑を耕していました。ラスボス城のある高台の麓のあの村です。

村人の言う通り、この日は雲一つない青空に、太陽がさんさんと輝いていました。


「そうだべなぁ。野菜もきっと喜んでるだよ」


「はっはっは、ちげえねえや!」


他愛ない会話。平和そのものの光景でしたが――


「あん?なんだべあれ」


「うん?何かあっただか」


その平和に唐突に一つの黒い陰が差し込みました。


ゴオオォッ


一匹の巨大な漆黒の竜が村の上空を通りすぎました。


「ありゃあ…ネモフィラの嬢ちゃん…?」


「にしてはでけえような…」


「…ま、城んとこ行ったし、どうせまたマスター絡みだべ」


「んだなぁ、この前なんて東の方にあるっつう魔族って奴らの国の王様決めるとこに行って来たって言ってたしな」


「そういやその王様に決まった人女らしいだよ」


「へーえ。女なのに王様とはてえしたもんだ」


「しかも、異世界から来た、まだジュウベエんとこの娘さんくらいの女の子なんだと」


「はーあ、異世界から来たってんなら確かにマスターがわざわざ行ったのもわかるけど…そんなに若いんか。大変そうだなあ。今度マスターに頼んでうちの野菜でも送ってやるか」


「おう、そりゃあいい考えだな」


後日、魔王少女のもとにいきなり新鮮な野菜が沢山届けられて骨じいさんが腰を抜かすことになるのですがそれはまた別の話です。






「ふふふ~ん♪ふんふふ~ん♪」


いつものラスボス城でネモフィラさんは鼻歌を歌いながらサンドイッチを作っていました。

この前の異世界散歩で食べたラスボスが美味しい上に食べやすい、といたく気に入り、ネモフィラさんも張り切って色々な具材に挑戦しているのです。今日は卵サラダとフルーツ。

作ってみては自分で味見して、上手くいったら村に持って行って村人達にも食べてみてもらうのがこのところの日課です。

ちなみに今日もラスボスはそのお手製サンドイッチを持って異世界散歩中。

上手くいったと思ったので多めに作って、村に持って行こうとしていると――


「――!」


――それは、突然襲来しました。


『…何をしている、我が娘よ』


重々しい響きの声がテレパシーのように頭に流れ込んで来ます。

その強烈な威圧感を放つ気配と声にネモフィラさんが城の窓を見れば、


「…お父…さん…!?」


そこには全ての光を呑み込まんとするかのような漆黒の鱗にその身を包んだ巨大な竜が顏を覗かせていました。


「な…何故、ここに…」


『黒い竜が落とされ従えられたと聞いたが…やはりお前か』


噂はラスボスの狙い通り順調に広がっていたようですが、思わぬ存在にまで届いていたようです。


『我が娘でありながら情けない奴だ…一族の面汚しめ…!』


「そ、それは…でも!あの方に勝てる訳が」


『勝てない…?それはこの我…竜王の娘でありながら、か…?』


そう、彼は竜王でした。

そして、なんとネモフィラさんはその竜王の娘だったのです!じゃじゃーん。

え、三話の終わりあたりでそれっぽいこと書いてた?なんのことやら。


「そうです。例え…例えお父さんでも、勝てはしません」


『たわけ!』


ゴウウウッ


竜王が吠え、暴風が吹き荒れました。

…にも関わらず城の中の物は揺れるだけで何一つとして落ちも壊れもしないのはいつものラスボスパワーです。


『少し放っておけば、とんだ戯れ言を言うようになったものだ!もう貴様に自由は与えん!連れ帰って五百年ほど叩き直してくれる!』


「…!そんなことは認めない!」


竜王が目を細めました。


『認めない、だと…?ほう、随分と大口をたたくようになったものだ。よかろう、我を倒して自由を勝ち取ってみるがいい!それができなくば先に言った通り貴様は連れ帰らせてもらう!』


「くっ…!」


戦うしかない。

そう決意したネモフィラさんは自身も竜へと姿を変えました。

例えそれが、無謀な戦いだと分かっていても。


『さあ来い!』


ゴオオオッッ


手始めにネモフィラさんは炎のブレスを放ちます。

竜王がほんの数瞬怯んだ隙に窓から翼を羽ばたかせ飛び出しました。


『ふむ、悪くはない炎だ』


炎のブレスを顔面に喰らった竜王は一瞬怯みこそしましたが、ダメージには至りません。


『では我のブレスも受けてみよ!』


ゴウオオオオオッッ!!


竜王から凄まじい熱を持った蒼いブレスが放たれます。先程のネモフィラさんのブレスとは格が違いました。それは火炎というよりももはや全てを焼き尽くさんとする業火。


『……ッ』


辛うじて避けたものの、すれすれだったためにその熱気は直撃せずともネモフィラさんにダメージを与えます。

とはいえ彼女も竜王の娘。そもそも避けることも難しく、ましてや避けてもすれすれでは普通は大ダメージになるのです。耐えられる時点で普通の存在との格の違いが分かります。


『はああああッッ!』


今度はネモフィラさんが勢いよくタックルをしかけます。

圧倒的な体格差があれど、そのパワーは本物。竜王に比べると小さい体も相まって、スピードの乗って防ぐことの難しい攻撃のように思われましたが、


『甘い!』


ズッドオオオォ


竜王は狙い違わずピンポイントで正確に、ネモフィラさんを前足で叩き落としました。


『…!』


しかしそれは彼女も予想していたところ。

土煙の隙間から、ボロボロになりつつも最大限のエネルギーを溜めていたネモフィラさんの姿が竜王の金の瞳に写りました。


カッッ


ネモフィラさんから白いブレス、否、光砲が放たれました。

その速度は凄まじく、ブレスの比ではありません。込められたエネルギーもまた炎を超え、全てを破壊し尽くさんとするかのように真っ直ぐに、竜王へと迫ります。もはやいかに竜王といえど喰らえばただではすまず、しかし避けることもかなわない速度。


『…ハアッ!』


シュッッ


竜王はそれを恐ろしい反応速度で、紫の光砲を放ち迎撃しました。

一瞬にして打ち消され光砲は消滅。


『…そん、な…』


『…さすがだな。だが、無駄が多い。力の大半が光と音に変わっている。もっと力を純化させることだ』


戦意を喪失したネモフィラさんに、竜王が近づいて行きます。


『では、約束通りお前には我と共に帰ってもらう』


『嫌だ…』


ネモフィラさんがそう溢せば、


『…まだそんなことを言っているのか。…ならばその者より我の方が上であると分からせてくれる…!』


そう言って、竜王は巨大な前足を振りかぶりました。

ネモフィラさんはそれを見てぎゅっと目を瞑り、届かないだろうとは分かっていても、身勝手だとは分かっていても、心の中で叫ぶのです。


――助けて…ご主人様…!


竜王の前足がネモフィラさんめがけて降り下ろされました。




その時。




「らすぼすくんぱーんち」


『ぐっはああああぁぁぁぁぁあああ!?』


ズッドゴオオオォォォ


気の抜ける声が聞こえると同時、竜王が横っ飛びにぶっ飛ばされました。


『……!?』


予想と違うことが起きたことを察したネモフィラさんは、おそるおそる目を開きました。

そこには、


『!』


威厳のある服を着て、頭から立派な二本の角を生やし、背中に竜のような翼を広げた姿がありました。


ガラガラガラ


『むっぐうぅぅ……何者だ、貴様!』


土埃を上げながら瓦礫の中から出て来た竜王がそう問うと、そのもの(・・)は答えるのです。




「ぼくらすぼすくん。わるいらすぼすじゃないよ」






『かっわいいー!ゲホッゴホッ』


ネモフィラさんが叫んで、むせました。そりゃあ竜王にズタボロにされた状態で叫べばそうなります。

そんな彼女のもとにそのもの――そう、前にラスボスが留守番用に城に置いていったあのらすぼす君人形がてこてこ歩いてやって来ました。


「らすぼすくんひーる」


パアアアッ


『!ああ…癒されますぅ…』


ネモフィラさんが幸せの絶頂のような声音でそう言いましたが、ネモフィラさんなので回復魔法に癒されてるのからすぼす君人形の見た目に癒されてるのか分かりません。うん、たぶん両方だ。


ポンッ


「!?…あれ、人間の姿に」


と、本人が何もしていないにも関わらずネモフィラさんの姿が勝手にいつものメイド服のドラゴン娘姿に戻りました。

裸体を期待してたそこのあなた、残念ながらラスボス城産のメイド服はちょっとやそっとでは破れないどころか竜に変身する瞬間には消え人間形態に戻る時にはまた出現して着用状態になるという空気も読める超絶ハイスペック装備です。

例え破れたりたまに漫画でやるように服だけ細切れにされたとしても瞬時に戻る自動修復機能付き。万全です。


「どらごんだとつかれちゃうからひとのままでいたほうがいいよ~」


「はいっ!」


「で、そこのどらごんのおじさん」


『誰がおじさんか』


らすぼす君人形の物言いに思わず竜王がつっこみました。

しかしらすぼす君人形は気にせず続けます。彼もまたOn my way。


「おともだちをいじめるのはゆるさないよ!」


『…ふん、なるほど、貴様が"あの方"とやらか』


何やら竜王が盛大な勘違いをしていますが、当のラスボスは外出中であり、ネモフィラさんはといえば、


「おともだちって…!可愛すぎですか……!!きゃーっ!」


一人悶えていたため間違いを指摘する者はいませんでした。

とはいえ勘違いしてはいたものの、見た目で油断ならないと一目でその力の強大さを見抜いた竜王は、一切の隙が無いように気を張り詰めながららすぼす君人形を見据えました。

彼は竜王。しかし決して慢心などせず、むしろ己が強者であるが故に相手の強さを正しく見抜き、自分より格上と分かれば油断せずに微かな突破口を見出だす。そこに決して間違いなどはありませんでした。


『確かに凄まじい力を持っているようだ…だが!あやつは叩き直さねばならぬ!!』


「もうたたかうきないってよー?」


『それがどうした!あやつは我が娘!せめて超えようと少しでも鍛えでもしていればまだましなものを……!あのように誰かの下につきのうのうと暮らすなど許さぬ!!』


「それはまだネモフィラちゃんにこうげきするってことー?」


『愚問だ!!あやつはこの手で』


そう、間違いなどありませんでした。

…あくまでも相手にこれっぽっちも突破口が無かっただけであって。

…抗うには絶望的なまでに差がありすぎただけであって。


「らすぼすくんぱーんち」


『ぐっはあああああああぁぁぁぁぁぁ!?』


ズドッゴオオオオオンンンン


「こうげきするのやめる?」


『ふん、これしきのことで』


「らすぼすくんあっぱー」


『おぐぅぅっ!!』


ドゴッヒュン


「らすぼすくんかかとおとし」


『うぶううううううぅぅぅぅぅぅ!!』


ズガドゴゴゴゴゴゴンッッンンンン


「こうげき、やめる?」


『………まだまだ』


「らすぼすくん―――」







「ふぅ~…落ち着きますねぇ…」


ネモフィラさんが紅茶を飲みながらほうっと一息つきました。

時は午後、おやつの時間も過ぎた、日は少し橙色を帯びつつあるものの夕方ともいえない微妙な時間帯。

ネモフィラさんは城の前に小さなテーブルと椅子を置き、景色を見てのんびりと紅茶を飲んでいました。

ラスボス城は丘の上にあるので周りの景色がよく見えます。空を見れば鳥の群れが飛び、下の森の方を見れば時折動物や魔物が見え、そして前を見れば、


「らすぼすくんきーっくらすぼすくんへっどばっとーらすぼすくんまわしげりーらすぼすくんちょーっぷらすぼすくんえるぼーらすぼすくんのうてんわりーらすぼすくんせおいなげー」


『おぐうぶがあどおぐあああっっ!!』


バキッズグッズドンドガンズドッゴオオオオ


竜王がらすぼす君人形にフルボッコにされていました。

これでもかとぼっこぼこ。時折明らかに体格差的におかしい技や普通人形では出せないような音が出たりしますが、小さい、それも一見ただの人形にしか見えないらすぼす君人形に手も足も出ずにぼこぼこにされる巨大な竜王はどこかシュールでした。

ちなみに特に今まで書いてませんでしたが、らすぼす君人形はソフビでもブリキでもなくただの布と綿製です。

ネモフィラさんが村に当初の予定通り試作品のサンドイッチを持って行った時に、凄い音と振動が立て続けにするが一体何だと(一応)きいてきた村人達にいつも通りラスボス絡みだと伝えると皆納得していました。

加えて城に帰ってきたネモフィラさんがそのことをぼそっと呟くと、らすぼす君人形は過度な音と振動を遮断するという万能ぶり。

しかしいくらスパルタな扱いを受けていたとはいえ、


「らすぼすくんぱいるどらいばー」


『あがぐえええ!!』


「らすぼすくんすりーぱーほーるど」


『うぐぐぐあががが』


目の前で実の父親が血みどろでぼこぼこにされているのをのんびりと紅茶を飲みながら見ているとはなかなかネモフィラさんもいい性格をしています。


「こうげき、やめる?」


何度目になるか分からないらすぼす君人形の問いかけ。

これまで地味に断るたびに喰らわせる攻撃を一回ずつ増やしていくというもうコレ普通に拷問だろという仕打ちをしています。死なない程度に。絶妙に。時折程々に回復魔法かけて。うん、拷問だねこれ(確定)。

しかし問われた竜王、


『…うっ…うむむ…ぬぬぬぬ…』


しかしこの期に及んでイエスと答えません。キリストとは関係ありません。ギャグが面白くありません(自爆)。

さすがに微塵も勝てる可能性など無いと理解している竜王ですが、もはやこれは意地です。いつまで耐えられるかという単なる意地です。これは決してイージーなことではありません。やはりギャグが面白くありません(大爆発)。

と、そこへ、


バチバキバリバリバリッ


何かを無理矢理ぶち破るような音が響きました。


「……」


『…………?』


竜王へマウンドポジションで攻撃を加えようとしていたらすぼす君人形が突如その動きを止め、腕を振り上げた姿勢のまま無言で別の方向に振り向いたので、竜王も思わずつられてそちらを見ると、そこには、




―――威厳のある服を着て、頭から立派な二本の角を生やし、背中に竜のような翼を広げた姿がありました。




途端に竜の姿であるにもかかわらず竜王が目に見えて分かるほどに顔面、いや全身蒼白になりました。

当然、今まで自分がズタボロに負けていた相手がもう一人増えたというだけでも悪夢なのに、それは自分の今まで戦っていた人形などとは比べ物にならないサイズで、ダンディーかつ整った、見る者に鳥肌を立たせるような威厳のある顔、そして、その気になれば神をも(物理的にも精神的にも)射殺すことのできる鋭い眼光を宿した目を持っていました。


簡潔に言うと、似てはいても格が違いました。


あれは、自分ではたとえ百兆倍強くなっても勝てない。存在の格自体が違う。

神?違う。そんな程度のものじゃない。あれはもっと…もっと上の、神をも超えた別の何かだ。


「あ、お帰りなさいませご主人様」


「ああ、今帰った。面白そうなことになっていそうだったからな、少し早く帰って来た。…それはそうとあいつは……強いのか?」


「はい、私のお父さんなんですが、竜王なので強い方ではあると思いますよ。少なくとも、私なんかよりはずっと強いです。お恥ずかしながら…」


「ふむ。…手加減すれば楽しめそうか」


そう言って、彼―――当然ラスボスです―――は竜王に手を向け、無造作に竜王を一瞬で回復させました。ついでにらすぼす君人形もラスボス達のところへ戻って行きました。

そして、今にも死にそうな心持ちの竜王へ、更なる悪夢の一言を言うのです。


「どうだ、お前、我と戦ってみな」


『もっ、もももも、申し訳ありませんでしたあああああっっ!!!!』


「…え?」


『ごめんなさいごめんなさいもう二度と刃向かいませんから許してください見逃してください勘弁してください何でもしますから』


「べ、別に戦うことを強制はしないし、無理に何をしろも言わないが…無論、帰りたくば帰っても」


『うわああああああああああああおかあああちゃああああああああああああんんんん!!!!!!!!』


瞬間、竜王は翼で飛び上がり叫びながら逃げて行きました。


「…………逃げたな」


「…ごめんなさい…あんなのの娘だと思うと…私としても恥ずかしい限りです…」


ちょっと残念そうに呟くラスボスに、ネモフィラさんが顔を手で覆いながらそう言って、はあー、とため息をつきました。

実の父親に割と辛辣な台詞を吐くネモフィラさんでしたが、あそこまで情けない姿を見せられれば仕方がないとも言えました。あんなの呼ばわりされても仕方がありませんでした。竜王(笑)。


『うわああああああん!!作者と娘がいじめるううううううう!!!!』


めでたしめでたし。

毎度読んでいただきありがとうございます!

という訳で今後もグダグダペースで投稿していきますので待っていただける方は首を長ーくして待っていていただけると幸いです←

(っていうか前書きと後書き一々やるの止めるって言ったのに全然止めれてない←)

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