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ラスボスさん。  作者: 有負 王
章ってなあに?ーーしょういうこと(章機能を使ってみたかっただけ)
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アイディアが湧かないときは取り敢えず動き回ってみる

高台の上にある古めかしい城。

その中の玉座の間で、今日もふんぞりかえって勇者を待つラスボス。ときどきネモフィラさんが銀のお盆にお茶とお菓子をのせてやって来ます。

いつものラスボス城です。


「ご主人様、ジパチアのお茶とオズキラ餡の饅頭です」


ラスボスの座る玉座の近くに置かれた小さなテーブルに、お茶と三個の饅頭を置くネモフィラさん。

ちなみに呼び名が違うだけで、お茶は普通の日本茶で饅頭も普通の小倉餡です。ネモフィラさんお手製。原料の作物は村のものを頂いています。


「ああ、悪いな」


「いえいえ、これくらいしかすることがないので…」


謙遜するように言うネモフィラさんですが、実のところ本当にやることが他に無いのです。

掃除は城に定期的に清潔にする魔法がかかっているので必要なく、洗濯もラスボスは着替えずに全部魔法で綺麗にしてしまうので必要ありません。ネモフィラさん自身のメイド服も元々城にあったものなので城と同じく。

風呂はラスボスはやっぱり魔法でやるので入りませんし、ネモフィラさんは折角だからと城の大浴場に入りますが、それも結局大浴場に入ると勝手にお湯が沸くのですることがありません。

ファンタジーなので全部魔法でなんとかなってしまうのです。


「いや、ご主人様だけですよこんなに全部魔法だけで済ませられるのは」


ラスボスなので仕方ありません。


「ふむ、美味いな」


「ありがとうございます!」


美味いと言って饅頭を食べるラスボスですが、実のところ食事すら必要はありません。水分も同じく。単なる娯楽にすぎないのです。

もはや生命体かどうかすら怪しいほどのスペックですが、ラスボスなので仕方ありません。


「……」


「……」


暫く無言のゆったりした時間が流れます。聞こえるのはときどきの風と鳥などの動物の声のみ。少し饅頭を食べてお茶を一飲み。ザ・まったり。


「…さて、と」


饅頭を食べ終えたラスボスが珍しく立ち上がりました。


「? どうされました?」


「たまには少し、散歩にでも行こうかと思ってな」


「散歩ですか、いいですね~」


「お前も来るか?」


「いえ、お気になさらず。ひょっとしたら留守の間に勇者なんかが来るかもしれませんし…」


「そこは問題ない」


そう言うとラスボスはどこかから一体の人形を取り出し、玉座にちょこんと座らせました。


「なっ、何ですかそれ!」


「留守番用のらすぼす君人形だ」


それは可愛くデフォルメされたラスボスの人形でした。もしこの城にお土産屋があったら間違いなく人気グッズとして売られているでしょう。

ネモフィラさんが物凄い勢いで尻尾を振っています。


「可愛いですねぇ~」


「それと…」


ラスボスが玉座の隣にさっきまでお茶と饅頭を置いていたのとそっくりな小さいテーブルを出して、そこにベルを一つ置き、そして垂れ幕のように"ご用の方はベルを鳴らしてください"と書かれた紙をテーブルから垂らしました。これにてラスボス城留守番モード完成です。ちなみにベルは金属製の、上の出っ張りを押すタイプです。


「これでよし。という訳で、外出しても問題無いぞ」


「じゃあ、私はちょっと村の方にでも行ってきますかね」


「ああ分かった。では行ってくる」


「はい、いってらっしゃいませ!」






ガヴァラ暦5897年。

地球の新興国家ラナヤの大富豪マスト=リーディス率いるデランド財閥が、B16ー9宇宙域のほぼ全てを支配下におく超帝国ガーナリアゼンフェリオと手を組み、地球を支配せんと大量の軍を送り込んできた。

日本、アメリカ、ロシア、中国など主要な国家を幹部に置いた地球連合、通称アスラスト同盟は全武力を持ってこれに対抗。デランド財閥を地球から追い出し、一度は軍をほぼ全滅させることにも成功した。

しかし地球側もかなりの被害を受け、核兵器も残りは当初の三分の一。最終兵器たる超高重力砲(ブラックホールカノン)も一度発動する羽目になり、エネルギー不足から地球の住民は厳しい生活を強いられていた。決して少なくない被害を被ったガーナリアゼンフェリオは激怒。止めようとするデランド財閥を乗っ取り、今度は地球を獲物ではなく侮れない"敵"と見なし滅ぼすために全兵力を結集し、神皇帝エブリオ:ガージェス:ゼンフェリオ自ら軍を率いて地球へと攻め込んだ。

ギリギリで応戦するアスラスト同盟だったが、やはりその戦力は下がっている。

興ざめしたエブリオは、滅星兵器インダ×バルタを起動。地球を消滅させようとしていた。


『こちらバリウス!敵の滅星兵器とおぼしき物体を確認!攻撃をしたが銃弾、砲弾、レーザー、いずれも反応無し!核兵器による攻撃も辛うじて微細な傷のみ!』


『こちらレンベル!敵の旗艦を始めとする艦隊を発見したが、バリアにより攻撃通じず接近も不可!』


超高重力砲(ブラックホールカノン)はどうした!あれならもしかすれば…」


「無理です!あれはつい先程使ったばかり!今使えばほぼ全エネルギーは枯渇し、下手をすれば暴発して我々も飲み込まれる危険性があります!」


「じゃあ次はいつ使える!」


「本体の調整に約十分、エネルギーの回収・充填に約六分です!」


「十六分だとぉっ!?そんなに待てるか!クソッ…!どうしたらいいんだ…!」


「長官!ガーナリアの皇帝を名乗る者から映像通信です!」


「繋げ!」


『ごきげんよう、愚かなる原始人達。ご気分はいかがかな』


「…貴様…ッ!」


『おお、怖い怖い。その物言いはこの私が神皇帝エブリオ:ガージェス:ゼンフェリオと知ってのことかな?いやいや失礼、きっと君らのような猿ではそんなことも理解できないのだろうね、可哀想に』


「黙れ黙れ黙れ!そもそも最初に攻め込んだのはそちらだろう!」


『だから?それが何か?むしろ君らを偉大なる我々が有効利用してあげようとしたのに刃向かった愚かな君たちが悪いのだろう?違うかね?』


「黙れー!!もう貴様の顏も見たくないわ!!」


「じゃあなんで通信繋げたんですか」


「うるさい!貴様は黙っていろ!!」

『おやおや、もはや黙れとしか言えなくなったのかね。いや失礼、元からか』


「ちーがーうーだーろー!!このハゲー!!」


「いや禿げてないですけどこの人。むしろもっさりですけど。っていうか好きだなその台詞」


「ええい!黙れと言っただろうが!!第一何故そんなに暢気にしているんだ!」


「いやー、なんか、なんとかなっちゃう気がするんですよねー」


「何を言っているんだお前は!何を根拠にそんなことを言っている!フン、どうせ自分には関係無いとでも思っているんだろう!」


「いやいや、そんなこと無いですけど。いやー、大変だなー」


「なんだと…ッ!」


『おや、彼はもうおかしくなってしまったようだ。君らが間違った選択さえしなければこうはならなかったのにねぇ』


「黙れ!」


「いや俺まだまだ至って正常なんですけどおっさん。ってかもう長官の台詞考えるの面倒になって黙れ以外言わせなくなったな作者」


『こちらデデンダル!敵の滅星兵器付近に未確認物体を発見!画像データを送る!』


「長官!画像の拡大・解析完了しましたが…これは……人?」


「はあ!?馬鹿な、宇宙空間に人間がいる訳があるか!」


「ロボットとか宇宙服着てるとかの可能性は考えないんですか」


「か、考えとったわそのくらい!おい、貴様!無駄にイケメンの自称神野郎!今度は何のつもりだ!」


『…何だそれは?私は知らないが…。まあいい。インダ×バルタのエネルギー充填は完了した。これを使えばバリアで守っている我々以外の半径7000ドックの物質は全て消滅する。という訳でさらばだ愚かなる諸君。誰に刃向かったかをよく噛みしめ、悔やみながら消えていくといい。ハッハッハッハ…』


ブツッ


「通信途絶!」


「敵の滅星兵器からのエネルギー反応が急激に増大!!」


「こうなったらやむを得ん、一か八か超高重力砲(ブラックホールカノン)を…」


「!! 滅星兵器のエネルギーが膨張を開始ッ!!」


「何ぃッ!もう発動したのか!!クソッ!クソッ!!」


「……!? エ、エネルギーの膨張が停止!」「何だと!?何が起こった!」


「と、突如ほぼノータイムでエネルギーの膨張が停止しました!停止した地点は…人!?人形の物体の存在している場所です!!」


「何ぃ!?何だそれは!」


「さっきのやつだな。やっぱりフラグだったんだなあれ」


「人形の物体を中心にエネルギーが収縮を開始!…いや、これは…凝縮されている…!?」


「エネルギーの収縮が停止!」


「な、何が起こるんだ…」


「!! 人形の物体から凝縮されたエネルギーが解放!進行方向は…敵軍!!」


「…敵軍消滅…」


「……そ、それは、本当か?本当なのか?」


「…はい、間違いありません」


「……」


「……」


「ほら、なんとかなるって言ったじゃないですか」


こうして、地球は危機を免れた。






「ふう…危なかったな」


そう言って、かいてもいない汗をぬぐっているのはラスボスでした。

さっきの謎の人形物体は皆さんお察しの通りラスボスです。ただいま空間をぶち破りながらのんびり歩く豪快な散歩、その名も異世界散歩の真っ最中。

やはりあれだけのエネルギーの攻撃を受けるとさすがのラスボスも…なんてことは全然なく、普通にピンピンしていました。惑星を消し飛ばす威力の攻撃を受けても当たり前のように無傷です。

やはり生物かどうか怪しい、というかそもそもどんな物質でできているのか知りたくなる程の謎スペックですが、ラスボスなので仕方ありません。

さて、ではラスボスは何が危なかったと言っているのかというと、


「まったく、ネモフィラの作ったサンドイッチが駄目になるところだった」


サンドイッチの心配でした。またまたネモフィラさんお手製。材料はチーズやハムや野菜や卵、そしてラスボスの取り寄せた異世界の本を読んで完璧に再現したマヨネーズ。どれも村で取れたものを原料に使っているので新鮮です。


「歩き食べは止めた方がいいな」


実のところラスボスは異世界ものでも割りと見かけるアイテムボックスとかインベントリ的な能力も当然持っていたので、そこにしまっていれば周囲がどうなろうが全く問題なかったのですが、今は歩きながら食べていたのでそうもいかなかったのでした。皆さん、歩きスマホや歩き食べは止めましょう。食べ歩きはいいですが。

いや、特に歩きスマホはホントに止めてほしい。もうあっちにふらふらこっちにふらふらするもんだから全然軌道読めないしぶつかりそうになるし果ては自転車乗りながらやってる人なんか見たときは本気で戦慄したし(暫く作者の私怨が続くので割愛)


「それにしてもだいぶ大きめのエネルギーだったが、つい跳ね返してしまって大丈夫だったか…」


ラスボスは惑星を消滅させるエネルギーを"つい"で跳ね返してしまえるようです。物凄いことのように思えますがラスボスなのでよくあることです。


「…まあ、いきなりこんなものを撃ってきてこのサンドイッチを駄目にするところだったんだからそれくらい仕方がないか」


攻撃なんてしてきた無礼者の扱いはサンドイッチ未満でした。やはりラスボス、恐ろしい存在です。


「さて、どこか落ち着いた場所を探してそこで食べるか」






「あ、お帰りなさいませ、ご主人様」


「ああ、今帰った」


ラスボスが城に帰ってきたのは夕方頃でした。

そういえば特に時間は書いてませんでしたが、ラスボスが城を出たのは大体午後三時頃です。


「散歩はどうでした?」


「ああ、なかなか刺激的で楽しかったな。やはり新鮮な気分になる」


ラスボスはこんなことを言っていますが、実のところ結局あの後もなんとなく(空間をぶち破りながら)歩いていると何故かやたらトラブルの起きてる場所に出てしまっては成り行きで魔王や邪神なんかを三百人くらいぶっ倒したり、その他通りすがりに世界を救うことをかなりやっていました。刺激的どころの話ではありませんでした。

しかしそんなこととは知らないネモフィラさんは、


「そうでしたか、それは良かったですね!あ、夕飯はシチューですよ」


いつも通りにそんな会話をするのでした。


めでたしめでたし。






「ああ、そういえばこんなもの拾ってきたんだが。変わった色だったから飾ろうと思ってな」


「へ~、綺麗な宝石ですね。何ていう石ですか?」


「石の名前は分からないが確か全生命抹消装置とかいうやつの動力炉っぽいところにはめられてたな」


「!?」

なお、今回の途中の宇宙戦争的なやつに出てきた名称は全てテキトーに考えたものです。

よって意味を調べてもたぶん無いはずですし、もしあってもまるっきり全然関係無いのでご了承くださいませ。いや、フリでは無いですよ念のため。

それと、何か矛盾点やその他不自然な点があったとしてもそれは単に作者の力量不足なのであしからず…。

この小説、ギャグだから深読みしても全くの無駄ですのよ。


まあ、基本何かあってもファンタジーだから仕方ないと思ってください(定番の逃げ口上)

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