縄張りバトル(トマト)(後編)
さあ後半!冗長すぎて長いのはいつも通り!
前書き書くのも面倒で書くことなし!
当初は毎回五千字前後で収めてたはずなんですが、いったいいつから倍にまで膨れ上がるようになってしまったのでしょうか…。
それから約十五秒。二人はそれぞれ百個程度のメタメを集めました。
そのシーンをカットするなよとか言わないでください。
くだらない茶番に文字数を費やし、書くのが面倒なシーンはカットする、それがここの作者クオリティー。
「いくら畑が広いって言っても、俺達があんまり暴れると他の奴らの分がなくなるからな~。でもこの程度じゃ張り合いが…どうしたもんか。…おっ、そうだ」
ラークさんが先ほどとは別の笑みを浮かべました。
悪い顔です。とても悪い顔です。こんなでも一応賢者です。
「…フッ、ちょっとtimeを渡しすぎたかな」
一方のジャックさんは、既にそわそわとしていました。
腕組みをして、人差し指をとんとん、頭上ではツルがふりふり。そしてそこへ高速で飛んでくる赤い物体。
「wow!?」
しかしそこはさすがの音速カボチャ、驚きつつもしっかり避けて距離をとります。直後、ついさっきまで彼のいた場所が真っ赤に染まりました。
「…何の真似だい、Mr.ラーク?」
「おー、よく避けたし気づいたな」
そこへ現れるバーサク賢者。両手にメタメ。
ゾ○トラーク!
「そっちこそ一分間は日光浴してるって話じゃなかったか?」
「そりゃ、sunlightさえ浴びてれば日光浴だからね。moveしないとは言ってないさ。それより、僕のquestionにも答えたまえ」
「いや何、簡単な話だ。このまま俺達が遠慮なく競ったら他の奴らの分がなくなるだろ?」
という訳で、レインコートのルールを利用して雪合戦ならぬメタメ合戦をしようということのようです。
「I see、そういうことか。…それには僕も同意するが、もう少しruleを決めないか?」
「そうだな。思い付いたらつい先に手が出ちまった、悪い」
「berserkerかな?」
あながち間違っていません。一応賢者。
二人が話し合っているところへ、ラスボスもやってきました。
「ふむ、大体わかった。それなら弾数は一万でどうだ?」
「たしかにそれくらいなら大丈夫そうだな」
数を気にしてたのにそんなに持っていって大丈夫なのかと思われそうですが、元々この植物自体が地球のトマトより少し多めに実が生る上、収穫祭で毎年使われているこの畑の広さは実に東京ドーム二個分。
説明される側は不便ですが説明する側は便利な東京ドーム。
「具体的な単位で言うなら約十万平方メートル。他に例えるなら大体、畳五万枚分だ。あまりに広いものの話する時は何処の世界も不便だよな~」
「ふむ、人にとって僅かな広さの話はそんなに重要なのか。世界全体の広さを考えれば誤差だと思うが…」
「そりゃ世界規模で見られたらそうだろ。しかもお前の言う世界って宇宙一つ分の話だよな…」
ともあれ、収穫量的には三人が一万ずつ収穫しても、例年通りの一万名程度の参加者数なら一人当たり七千以上あります。爆発四散してしまう分を含めても十分すぎる量です。
ひょっとすると数を気にする必要自体なかったかもしれません。
「でも俺達が収穫量で競ったら普通になくなるからな」
だそうです。
そして、それぞれが一万ずつ集めてから再び集合。
場所は一般参加者への流れ弾を考慮して、まだ人があまり来ていないだろう中央付近のみに決まりました。
「開始の合図はどうする?」
「そうだな~…次にどこかでメタメが爆発した時にするか」
「ok、なかなか面白い始め方じゃないか」
合図も決まり、三人が少し距離をとって向かい合いました。
案外こういう時に限ってなかなか爆発音が聞こえてきません。風にそよぐ葉の音だけが時折聞こえて、静かに時が過ぎていきます。
しかし三人とも微動だにしません。
一人は仁王立ちで腕を組んで目を瞑り、また一人は獲物に襲いかかろうとする肉食獣のように姿勢を低くして笑みを浮かべ、最後の一人はハットのつばに手をやりながら片足を曲げてまっすぐ立っていました。
そしてもう一人は緑の着物っぽい服を揺らしながら眠たげな目で周りを見渡した後、何も考えていなさそうな雰囲気でじっと立ち尽くしていました。
遠くからは時折他の参加者の声が微かに聞こえてきます。
「おー、すげえな。本当にこの辺はまだ全然残ってる」
「フッ、だから言っただろう…この暗黒紅玉農家神であるこの俺なら確実に勝てると。しかもあの暗黒農家神族T○KI○の力を得た俺だぞ」
「異世界のアイドルを勝手に神格化した上に闇堕ちさせるんじゃない。あと力を得たも何も魔導テレビで鉄○DA○Hちょっと見ただけだろそれ」
「細かいことは気にするな…。これで獄血爆裂紅玉を求める亡者どもをメッタメタに打ち倒」
眠たげだった目をカッと見開いたかと思った次の瞬間、黄色い着物の残像を残して少女が消えました。
スパアアアァンッ
「痛ってぇぇぇーっ!?」
パァンッパァンッ
「「「!!」」」
遠くで見事に鳴り響いたハリセンの音、その直後に聞こえたメタメの爆発音を合図に、三人が一斉に動き始めました。
バシュンッ
まずラスボスとラークさんのいる地面からメタメを持ったツルが高速で生えてきたかと思うと、次の瞬間には握り潰して果汁を撒き散らします。
「甘い!」
しかし二人とも生え始めた時点で大きく距離をとっており、お返しとばかりにラークさんが他の二人に向けてメタメを光速投球。
どうやら着弾前に爆発しないようにバリアを張っているらしく、青白く光っています。これこそ文字通りのレーザービーム投法。
しかしそれもラスボスは体を手綱こんにゃくのような角度で捻って避け、ジャックさんは頭をレインコートごと飛ばして回避しました。
ちなみに手綱こんにゃくは煮物とかに入ってるねじれたこんにゃくのことです。まさか正式名称があったなんて。
「ふん!」
そして今度はラスボスのターン。
複数個のメタメが集まった塊を頭上に放り投げると、花火が爆発するかのように分かれました。そして概ね半分ずつ、それぞれ近い方にホーミングして弾が襲いかかります。それはさながらメタメのつぶて。
「うおおおお何だそれカッコいい!!」
「ほう、確かにbeautifulだ」
感想を言いながらもきっちり回避するラークさんとジャックさん。
そして、そうした攻防戦がしばらく続きます(いつもの描写放棄)
~少し離れた場所~
「うおおおお何だこいつ!?」
「……」
バシュッスパンッバシュッ
「痛っ、危なっ、ぐあっ」
パァンッパァンッパァンッ
「フッ…この俺に"代償回避"をここまで連続で使わせるとは…大した手練れだな」
「うるせえ何がサクリファイスだ毎度毎度俺を盾にしやがって!」
「何、そう褒めるな。生け贄のお前に対してわざわざ獄血を避けつつ盾にしてやっているこの俺の暗黒傀儡術の質の高さに!」
「一言たりとも褒めてねえ!?確かにそれは助かってるけど!そもそもこいつたぶんお前狙ってるだろ!?」
「そうだな…だが、仕方のないことだ。何せ、この俺の魅了顔と堕天覇気が老若男女問わず狂わせてしまうのだから」
「……」
バシュッバシュッ
「危ねっ!どうにもそんな雰囲気には見えねえけどな!」
「フッ、ただ魅了できるだけなら良かったのだがな…俺の力はその美麗さと強大さ故に正気を失わせ、時に人を暴徒としてしまう…そう、今はまさに畑でSAN値直葬という訳だ!」
「……!」
バシュスパァァァンッ
「痛ってええええええ!!何か今すげえ鋭い一撃だったんだが!?」
「…フッ、なるほど。少し試してみるか…聞け幼子よ!ある魔王はこう言った…『物事とは冷静に遂行すれば上手くいくものだ。…まー往々にして上手くいかない時もあるが』」
「……!」
バシュスパァァァンッ
「痛ってええええええ!!は!?何!?何が!!??」
「まあ落ち着け幼子。その魔王はこうも言っている…『まーおうち着けばどうにかなる』」
「……!」
バシュスパンパァァァンッ
「ぐああああああああ!!マジでやめろ痛てえんだが!?」
「フッ、フハハハハ!読めた、読めたぞ!この幼子は駄洒落に反応している!この俺の洒落にチャレンジしようとは、可憐な見た目からは窺い知れん!これは何という試練!」
「……!」
バシュシュシュスパンバシュッ
「ぐおっ、うぐぁっ!……分かってて言うんじゃねえええええ!!」
「what?何やら騒がしいね」
メタメの果汁飛沫をイナバウアーで避けながらジャックさんが呟きました。
「うーん?ああ、どうも駄洒落にハリセンでツッコミを入れる奴がいるみたいだな。しかもだいぶ強そうだ」
「ほう?それは面白そうだな。…布団が吹っ飛んだ!!」
「……!」
バシュンッ
謎に仁王立ちをして大声でド定番の駄洒落をかましたラスボスに、一瞬にして彼方から肉薄して来た少女の鋭い一撃が放たれました。しかし当然当たりません。
バシュバシュバシュ
「うむ、いい動きだ!順番に駄洒落を言いながら続けるのはどうだ?」
執拗に狙い続けてくるハリセンを全て避けながらラスボスが言いました。
「……」
それに応えるように一瞬止まった少女がハリセンを開くと、そこには文字が。
"いい度胸"
「いいなそれ!坊主が屏風に上手にポン酢の絵を描いた!!」
本人の許可も得られたらしいことで、早速ラークさんがメタメをレールガンもどきの魔法で他二人に撃ち込みながら駄洒落を言い放ちました。
最近はどんどん実用化に近づいてるらしいですね、レールガン。さすがに生身で撃つ物ではなさそうですが。
「……!」
バシュンッ
「ならば僕も…『やあジョン、食器をmikeに見立てて何をしてるんだい?』『これがまさにフォークsongってやつさ、イカしてるだろ?』『Oh、イッツナイフ』」
「……!」
今度は少女がジャックさんのもとへ。
「アイスを愛す!!」
「……!」
「ナスガス爆発!!」
「……!」
「『this団扇、センスいいだろ?』『fantastic!』」
「……!」
きっちりメタメ合戦を続けつつ、駄洒落とそれに反応した少女が高速で飛び交います。
そうこうしている内に、やがて他の参加者も気がついて近くに続々とやって来ました。
「何だあれ」
「駄洒落を言ってるらしいな」
「そんなルールあったか?」
「まあ急に追加されたんじゃね?駄洒落を言いなしゃれっt」
スパアアアァァァン
「レーロォォォン!くそっ、よくもレーロンを!仇は取ってやる、嬢ちゃんお前勝った気でいr」
スパアアアァァァン
パァンパァンパァンッ
「うわああああ!メタメが誘爆した!!」
「たしかに誘爆の危険が酷そうだな、距離を取るべきだ。ユーはバックして私の後ろに」
スパアアアァァァン
「よく見たらあれメタメ投げ合ってね?」
「そんなバカな…いや、いいなそれ!」
「は?おっ、おい、いやいややめろ!!」
「クックック…そういえば異世界にはイカがペンキを塗りたくるゲームがあるらしいな、一番塗りつぶした奴が勝ちだとか。…覚悟は、いいか?」
スパアアアァァァン
パパパパァン
「ハハッ、駄洒落が地雷っぽいけどうっかり言って自爆してる奴が多すぎる、バカみたいだなあいつら」
「アイル・ジー・バック」
「は?」
スパパアアアァァァン
パァンパァンッ
「ぐわあああ!何で俺まで!!」
「うん?何でこんな所にカポンキがいくつも」
「隣の普通の畑から種でも飛んできたんじゃね?それかひょっとしたら、去年のハシリカポンキの残りだったりしてな」
「うっわ…もし走り始めたら大惨事だな」
「アッハッハ、冗談だよ冗談。大会用の畑は運営が毎年管理してるんだし、こんな目立つもん残ってる訳ないだろ。ほら、蹴っ飛ばしても」
ポコンッ
「問題な」
ズドンッ
パァンパァンパァンパァンパァン……
「うわああああ何だ何だ何だ!?」
「オレンジの何かが!!」
「ハシリカポンキ!?何で!???」
こうして多少の混乱が広がり、参加者の平均点が例年より爆下がりしたりしましたが大会は無事に終わりました。
骨じいさん「は???多少????無事?????無事!!!?????どこg
結局、ラスボス、ラークさん、ジャックさんの順で上位三位を占めることとなりました。
その後表彰式を済ませて、三人は特別に今回の大会後の畑の整備をすることに。
謎のハリセン少女も確保され、本人曰く同行者も在住地も今は不明ということで、そのまま監視も兼ねて魔王城に滞在することになりました。
「ふむ、畑の整備というのもなかなか面白い。これだけ広いとやりがいもあるな。我も畑を作るか」
「おっ、それ楽しそうだな!俺も手伝うから何か植えてもいいか?」
「ふーむ…たったの一年ながら、nostalgicなこの畑…落ち着くね」
「くっ…賞にかこつけて後始末をさせてみたが、全然罰になっとる感じがせんわい…。ふーんだ、まあそれならそれで、散々こき使わせてもらうだけじゃもんねー。全っ然悔しくなんかないもんねー」
「ハハッ、まあ閣下、そんなにカッカなさらずに」
「……!!」
スパアアアァァァン
「痛ぁっ!?」
「すまん、逃がした!」
「確保しろー!」
~世界観説明コーナー~
・ブラッディメタメ
地球でのトマトに相当する、赤い実をつける野菜の一つ、メタメ。その派生種で、実が熟すと僅かな刺激で破裂し遠くに種子を飛ばす。その際に肥料を兼ねた果汁も辺りに撒き散らすので、近くで真っ赤なそれを浴びた人や大地はまるで血塗れのように見える。ハシリカポンキと同じく魔界、並びにロイトヤルデン魔王国の特産品の一つ。ハシリカポンキとは違い怪我や命に関わる恐れはないため、栄養をたっぷり蓄えたその実は畑の肥料から料理の材料まで広く親しまれている。性質上、完熟した実はそのままで調理するのが難しいため、果汁か完熟直前の実を使うのが一般的。