マキシマムじゃない、マキシムだ二度と間違えるな(前編)
お久しぶりです。
今年は最低でももう1話出すと言ったからな!約束通り!
例によって本当は去年書いたやつなのは内緒。
ハロウィンというか収穫祭だから10月過ぎてても時期的におかしくはないな!
え、もう12月?それは流石に嘘だよ、つい最近まで猛暑猛暑と騒いでたじゃないですか…。
季節は巡り、秋がやってきました。そう、ロイトヤルデン収穫祭の時期です。
前回の収穫祭の話から三話しか経ってないだろとか言わないでください。一応ちょうど一年ぐらいなのでセーフです(投稿時現在二年経過。アウト)
「今年のメインはブラッディメタメだな!」
はりきって腕をぐるぐる回すラークさんと、その横に並んで歩くラスボス。今年も一行はやって来ました。なお、メタメとはトマトのことです。
「ちなみにブラッディってついてるのは、周りの地面とか近づいた奴らが血塗れみたいになるからだぜ」
「ほう、そうすると今年はどんな競技があるんだ」
「それは…あれを見てみろ!えぇ~!」
そこでラークさん達が目にしたものとは!?
「押すなよ、絶対に押すなよ…」
「わかった、押すぜ」
ドスッ
「うわあああぁぁぁ!!」
パァンッパァンッパァンッ
「ざけんな何転んでんだよこのグズ!今の俺が採ろうとしてたのに!」
「うるせぇ背中ど突かれたれたんだよ!誰だ今押した奴!」
「び、びしゃびしゃぁ…せっかくほとんど濡れずにきたのにぃ…」
「ふっ、愚かな奴らめ。近づかずに遠くから攻めればいいのだ」
「おい馬鹿やめろ」
ドンドンドンッ
パパパパパァンッ
「ぐわああぁぁ!」
「目が、目がぁ~」
「誰だ爆発物持ち込んだ奴は!?めちゃくちゃ誘爆したんだが!?」
「くっ…盾がなければ即死だった」
「だぁーれが盾だってこの野郎…?このまま俺がお前に抱きついたらどうなると思う?」
「ふぇぇぇ…中の髪までびしゃびしゃ…やっぱりやめとけば良かったぁ…」
「おほぉ~!そこの真っ赤なびしょびしょでエッッな君!!このおもちゃの包丁とか持ってみてくれないか!?」
「くははははっ!どうだ、このリボルバーの力は…!面倒な術式や詠唱も無しにこの威力、この速度!ああ、一瞬にしてこの赤い世界を作り出してしまった自分が恐ろしい…」
「そうですね、恐ろしい程にはっきりした反則ですね。はい君退場」
「えっ、お、おい離せ!俺を誰だと思ってるんだ!元魔お…通りすがりのイケメンガンマンだぞ!」
「あーいいねそれ!その表情、ハイライトのない目!!返り血まみれで包丁持って血溜まりに座り込むそれ!!それだよ私が求めていたものはっっ!!」
「衛兵君、そこの変態も持ってって」
「なっ、何をする!私は今、世界の真理を!!美の究極形を目のあたりにしていたというのにぃっっ!!」
「で、何なんだあれは」
例によって展開されるカオス。ファンタジーなので仕方ありません(適当)
「熟すと爆発するブラッディメタメをいかに果汁に濡れず収穫できるか競う、その名もブラッディメタメ収穫大会だ!」
「ほほう、なるほど。今度は濡れなければいいのか」
「そうだ。そんで、爆発しないように実を収穫して、アイテムバッグにしまう。特殊なレインコートの白い部分の面積と、収穫した総重量で点が決まるぜ」
特殊なレインコートとは言いますが、実際は普通のレインコートの上に単に白い布を縫い付けただけの代物です。
また、簡易的なフェイスガードも配られるので、顔面がやられる心配は少ないです(完全に防げるとは言ってない)
「ちなみに、この点数は乗算だ。要するに、濡れてなくても最低1個は収穫しないと点が付かないし、何個収穫してもレインコートがずぶ濡れなら点がガタ落ちするって訳だ」
「そうか、無闇に攻めすぎても守りすぎても良くない、故に攻守に優れた者が勝者となる訳だな。なかなか奥深い」
これにはラスボスもうんうんと頷いて感心しきりです。でもたぶん発案者そんなに考えてないと思う(よくあること)
「よし、じゃあタイマーもらって始めるか!すいませーん!」
「はいはーい!参加者の方~?」
ラークさんが大声を上げると、カースドールの魔族が受付としてやってきました。
ちなみにカースドールはひとりでに動く人形で、今回はオーソドックスなビスクドール型です。人形の魔物とか軽くググったけど特に共通名称出てこなかったのでそのまま呪い人形です。
「ロー○ンメ○デンとかどうだ」
やめましょう。
「何故だ…最高にいい響きが閃いたというのに」
「こいつと俺が参加する。ラスボスと、ラーク・ワイジアスな。ルールはわかってる」
「わかりました、ラスボスさんとラーク・ワイジアスさんですね…了解です!ではこちら、装備一式です!」
「サンキュー」
「それでは、楽しんでってくださいねー!」
そう言って、カースドールの魔族はとてとてと去って行きました。
今回サキュバスと迷いましたがこちらで正解でした。ロリ…やはりロリは全てを解決する…!
「ほれラスボス」
「うむ」
ラークさんがラスボスに装備を渡して、二人とも速やかに一式着用しました。腰には収穫したメタメを入れる用のマジックポーチ。某次元ポケット的なあれです。
ちなみにレインコートは装着者の体格に合わせて勝手に伸び縮みする、地味に特殊仕様です。意外と小柄な賢者から、見上げる巨体の筋肉魔人まで対応可能。
「という訳で早速スタートだな!」
「ふむ、この辺り一帯はもうほとんど全滅しているな」
「さっきの銃野郎のせいだな」
「あれを見る限りでは、すぐに誘爆して少しのミスも許されないようだな」
「いんや?他のメタメの爆発ぐらいじゃ誘爆しないぜ。それに爆発の威力は輪ゴム鉄砲ぐらいだからな、ありゃ完全に銃が悪い」
「そうか」
そうして少し移動した二人。別にチーム戦じゃないので分かれてもいいのですが、ラークさんは目の前で張り合う気満々です。
「おっ、この辺はけっこう残ってるな」
「そうだな、ではここで…む?」
いざ尋常に勝負、といこうとしたところで、ラスボスが何かを感じ取りました。
次の瞬間、通り過ぎる音速の影。
「おう!?」
ラークさんも気づいていましたが、すぐに目を丸くすることになりました。何故なら、
「メタメを収穫してる…!?」
そう、影は異常な超速度で駆け抜けただけでなく、その通り道にあったメタメを全て、一切弾けさせることなく綺麗に収穫していたのです。
「フッ、驚いたかいgentleman達?」
その影はその場でくるりと華麗なターンを決めて二人を指差しました。
「その妙ちきりんな言葉遣いは!」
その人物は頭にお洒落な小さなハット、極端に細身な体には燕尾服をまとい、ハットに巻き付いて揺れるのは太いツル。
あと一応レインコートとフェイスガード。
そしてラークさんの言う通り、変な英語混じりの言葉遣い。
「そう、this僕こそジャック(仮)改め、ジャック・ザ・ランナーさ!」
以前の収穫祭で現れたあの妙なカポンキ(カボチャ)でした。
「なるほどな、魔族扱いになったか。まあ当然っちゃ当然だな」
なお、更新サボってる間に流行り始めた某エルフの物語とは微妙に違い、この話の魔族は外見こそ魔物そっくりではあってもちゃんと人の心はあります。
間違ってもいきなり一般攻撃魔法などを撃ってはいけません。
「まあ、そういうreasonで、名前も正式に決まったから君達も遠慮なく仮を付けずにジャックと呼んでくれたまえ」
「ほう、色々と面白いな。お前もライバルになる訳か。よろしく頼む、ジャック・ザ・ランナー」
「名前、ジャックのままで良かったのか?」
「フフ、以前やたらとその名でcallされたから調べてみたけど、なかなか素敵なnameらしいじゃないか。異界のlegendにあるカポンキ男のジャック・オー・ランタン、トランプというcard gameの王子、そして legendaryな通り魔ジャック・ザ・リッパー!語感もgreatだからね、そのまま真似させてもらったよ」
直訳すると走り屋ジャック的な(ガバガバ翻訳)
かなり安直です。
「ノンノン、僕は魔族ofハシリカポンキだよ?これ以上相応しいnameなど無いじゃないか」
「まあ確かに。…にしても、それはそれとして速すぎるな」
「そうなのか?」
訝しげにしつつもわくわくしているラークさんに、ラスボスが首を傾げました。
「ああ。普通のハシリカポンキは速くてもせいぜい競走馬くらいだし、品種改良しまくったやつも世界記録がその倍くらいだな」
せいぜいなどと言いますが、地球の競走馬でも自動車の法定速度に匹敵する上に、この世界の競走馬は時速百キロ近く。毎年魔物にまで死傷者が出るのは伊達ではありません。
そして世界記録がその倍ともなると、地球最速の鳥の飛行速度すら上回る始末。飛ぶより速く走る植物とは。
「でもまあ、世界記録レベルだと速度特化しすぎてほぼ曲がれないし、数秒後には風圧で自爆するしな」
「ほう…兵器転用はできないのか?」
「できなくはないけど、コスパ最悪だぜ?実際、技術が半端な国がやろうとして走る方向制御できずに自爆したことあるし、制御できるレベルの国なら普通の兵器使った方が安い、速い、強いの三拍子」
「そうか」
「おやおや、同族がuselessだというのは聞き捨てならないな。僕ならpossibleだけど?」
ジャックさんがそう言ってパチンと指を鳴らすと同時に、周囲にボコボコと生えてくるカポンキ。
「おおすげー!…じゃなかった、凄いしめちゃくちゃ見たいしめちゃくちゃ気になる…気になる…!けど、今はやめとけ…」
ラークさんがとてつもなくうずうずしていますが、こんなところで時速百キロの砲弾を何発もぶっ放した日には色んな意味で大惨事です。
真っ赤だな~、真っ赤だな~(現実逃避)
「おっと、確かにそうだったね、sorry。それと、普通のやつと同じspeedだなんてまさか。僕の生み出したやつならworld recordだって超えられるし、それでいてfreedomに曲がれるし風圧ごときで自爆もしないさ」
「何!?それはぜひとも今…じゃない、後で色々見せてくれ」
「of corse、いくらでも良いともさ」
「ふむ、ともあれ新たに音速の勇者が一人我に挑もうというのだな。面白い」
脱線しまくった話をラスボスが戻してくれました。
体勢を立て直せるラスボス、強い(適当)
「うおっ、そうだった忘れてた」
「へえ、今いくつだいyou達?」
「まだ始まってすぐだ。一つも手を付けていない」
「oh、それは何と!僕もyou達に挑もうと思って同じくらいに始めたけど、もうthirtyも取ってしまったよ」
「我らが始めた場所はちょうどそのタイミングで全滅したからな。場所を移していた」
「数字を英語にするのは見づらいからやめてさしあげろ」
「oh、それは失礼。ともあれ、これではせっかく挑もうと思ったのにunfairだ。一分ほどtimeをあげよう。僕はその間に日光浴…photosynthesisでもしているさ」
「光合成、だな。相変わらずどっから仕入れてるんだその英単語」
「フッ、gentlemanは勤勉なものだからね、魔王城のlibraryを大いに利用させてもらったさ。まして、この足があれば距離などnothingに等しい…あちこち回ってるのさ、これでも」
「へえ~、俺も大抵の書物は読破してるつもりだからな、色々見解を聞きたいぜ」
「really!?それはぜひもない、talkingがはかどりそうだ」
「それはそれとして、一分も我らに渡して良いのか?」
再び脱線しまくっていた話をまたラスボスが戻してくれました。何も考えずに適当に文書いてる作者より有能です。
…もはや地の文とかいらんのでは?
「物語の導線となるのもラスボスの役割だからな」
「おお、そうだったそうだった。わざわざ挑みに来たってことは、知ってるだろ?俺達、強いぜ?」
「それはof corse。何せ…victoryできるからね。strongな者の余裕というやつさ」
「言ったな~?」
ラークさんがニヤリと笑みを浮かべました。
~世界観説明コーナー~
・カースドール
魔物および魔族の一種で、その名の通り呪いの込められた人形。込められた呪いは持ち主の怨念や、精霊を介して自我の宿った人形自身の怨念であったりと様々。また、素体も同じくぬいぐるみから石像まで様々。ゴーレムのように意図的に作ることも可能ではあるが、発生要因が呪いである以上制御は難しく危険。そのゴーレムとは発生要因の違いや魔力の回復力の他に、運動能力が素体に左右される点がある。例えば、関節のある人形や素材の柔らかいぬいぐるみであれば問題ないが、石像などの関節のない硬質な素体であろうものならそもそも動けないか、ずりずりと身を引きずったり跳ね回って移動する羽目になる。