これ去年のだしホワイトデーすら過ぎてるんですけど(旧題:大体香水のせい)
お久しぶりでございます。地味に前回20話目だったらしいですね、めでたい(今更)
…前回投稿から半年経ってる上に2ヶ月遅れ(文自体は去年書き始め)のネタで投稿とか正気か?正気じゃないな、ヨシ!
また性懲りもなく前後編構成となっております。時間を無駄にする覚悟を強く持ってお臨みください←
「別n」
「はいストォーップ!!」
開始早々に某権利団体に目をつけられそうな発言をしそうになり、ネモフィラさんに全力で止められる魔王少女。
ここはラスボス城玉座の間。いつもの場所です。
「え?ああ、話始まってたんだ。…と、いうことは、読者さんも読んでらっしゃる!?」
たぶんそんなにいません。
しかし極一部のいるかもしれない物好き様方には感謝感謝です。
…そんなもの本当に存在するのか?この謎を解明すべく、作者はアマゾンの奥地へ(以下略)
「みぃ~な様よく聞け!いや読め!私こそが魔王少女こと!朝比奈舞桜ちゃんだっ!びしっ!よく覚えて帰るように!これテストに出ます!」
出ません。なお執事と姫同様に今後も表記変わりません。
「えーそんなー…ご無体な…」
「というかやっぱり魔王じゃないですか」
「いや舞桜だし!?舞う桜だし!?たしかに何度か魔王呼ばわりでネタにされたことあったけど、本当になるとか思う訳ないじゃん親も私も!?」
「第一何でここにいるんです?魔王としての仕事があるのでは?」
「いやいや、魔王にだって休日はあるって。まあ流石に緊急時にはすぐ返上になるらしいけど」
ちなみに日本の政治家も自分で仕事の仕方を決めるので休みはある…と思いきや、イベントだの会議だのであちこち走り回るので案外そんなにないという話だったりしなかったり。
一方魔王少女の国ロイトヤルデンでは、多少の差こそあれど身分に関わらずほぼ定期的な休みを取るのが一般的であり、政治に関わる人々も仕事が一段落つき次第休みを取ります。というかむしろ休みを取らないと民衆が魔王城で暴動を起こし、最悪クーデターが発生します。過剰労働許すまじ。
「…うちめっちゃホワイトだったんだ…ていうか暴動って」
「あの国は仲間意識が特に強いからな。親戚友人から、お前みたいなこの世界に身寄りのない奴も、誰かしらが休まない奴か休ませない奴を仕事から引きずり落とすぞ。あと自治がわりとしっかりしてるから、向こうより上の仕事が少ないってのもあるんじゃねぇかな」
「あ、ラークさん」
やはり唐突に現れ解説するラークさん。博識でいつでも出現してくれるキャラは物語にとってはとてもありがたいです。便利。
「おう、驚かなくなったなネモフィラ」
「そりゃあれだけ何度もやられてれば」
「そういや、チョコ作ってたんだろ?どんな具合だ?」
「あー…ちょっと苦戦中、ですね。やっぱりアーコから作るのはなかなか難しくて」
どうやらネモフィラさんはチョコレートを作っていたようですが、アーコ、日本でいうカカオで一から作ろうとしていたようです。
「チョコ…?そういえば今の時期だとひょっとして…バレンタイン?」
「そ。俺もちょうど作ろうかと思ってな。良けりゃついでに教えてやるけど、どうだ?」
ラスボス城廊下。あの後三人は、キッチンへ向けて移動していました。
「今更ですけど、バレンタインって女の子がチョコ渡すものじゃありませんでしたっけ?」
「別に元々は男女関係なく、ってか恋愛にも限らず親しい相手に贈り物する日だったはずだぞ」
昨今では有名な話ですが、バレンタインは世界的には主に親しい相手に贈り物をする日であり、日本のチョコ方式は商戦によって生まれた独自文化です。でもぶっちゃけ現代は売れ残りの安いのを買う方が色んな意味で美味しいとか。
まあ作者は板チョコより焼き菓子派なんですけど(隙自語)
「へ、へー…いや、私はまるで縁も興味もなかったもので…」
「? 舞桜さんはお綺麗な方に見えますけど、色恋沙汰はなかったんですか?告白されたりだとか」
「まあそりゃ多少なくもないけど?でも私、一人であちこち遠出するのが趣味だったから、あんまり深い関わりはないし好きでもなかったんだよね~。旅は道連れ世は情け、人脈は広く浅くって感じ」
「なるほど…ん?何か変わった香りしません?」
ふと軽く首をかしげながら、ネモフィラさんがそう言いました。
「え?…うーん、言われてみれば確かにちょっといい香りがするかも…?花?」
「あいつじゃねぇか?」
ラークさんが手で示す、差し掛かった右の廊下の先には、
「か、カラフル!?」
「うわめっちゃ派手!」
ウェーブのかかった上にやたらとカラフルで巨大な髪を揺らしながら、黒いファーコートを羽織った長身の人物が丁度通りすぎて行くのが見えました。
「…え?今の…何?この…その…何?幻覚?」
「わ、私も見ましたし、微弱ですけどまだ気配があります。ちゃんと実在しますよ…多分」
「どうする?この城他にも知らない内に色々変な奴らが住み着いてそうだから、気にしなきゃそれまでだと思うが」
「うーん…よし、追いかけよう!なんか香水とかファッションに詳しそうだし、チョコのアイデア何かもらえるかも!」
「えー!?正気ですか!?」
魔王少女の決断にネモフィラさんが目を剥いて驚きました。確かに、ラークさんにすら変な奴呼ばわりされるようなあからさまに怪しい格好の人に、普通関わりたいとは思いません。
「何またさらっと俺をディスってるんだよ作者」
「…いや、確かに。ご主人様のメイドとして、むしろこの城を歩き回る怪しい人物を放置する訳にはいきませんね。私も同行しましょう」
「ネモフィラ院」
「まあそうなったら俺もついてくわな」
「ラーク院」
「いや俺の家名ワイジアスなんだけど」
「それを言ったら私もペニーブラックが苗字なんですけど」
「…これ本当にバレてないんですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「そのフレーズで答えられると不安しかないんだけど」
三人は現在、あの派手派手星人を追って廊下を進んでいました。廊下には陰に隠れられそうな壺や像等もそれなりにありましたが、いかんせんそれぞれの間隔が広めです。
「そこでこの変装だ」
「変装…変装…?」
ネモフィラさんは緑のアフロウィッグと両手に葉っぱ付きの木の枝、魔王少女は般若面に釘バット。
「そして、俺こそが張り込み尾行もお手の物、名探偵ラークだ」
そして、ラークさんは探偵っぽい茶色のチェック柄のベレー帽とケープ、パイプを装備していました。
その状態で、隠れもせずに六メートル程後ろを堂々と歩いていました。
「色々突っ込みどころはあるんですけど、まず本当にバレてないんですかこれ」
「バレてないっての。わざわざ目の前に行ってアピールしたり、あとは触ったり囁いたりでもしない限りバレねぇよ」
「じゃあこの格好はなんd」
「ラークさんだけ何でそんなちゃんとした格好なの!?ずるい!ネモフィラさんはお遊戯会だし私はもはや意味わかんないんだけど!」
そう抗議しつつも、律儀に装備を身につけたまま控え目の声量で怒鳴る魔王少女。迫る般若面はシュールながらもちょっと怖いです。
「ちなみにケープとマントの違いは丈の長さだ。これは短めだからケープだな」
作者はこれを書いてる時にググって知りました。地味に増える使いどころのわからない知識。
でもすぐ忘れるので使いどころも何もなかったりします。老人(これ書いてる時点で二十歳)なので仕方ないね。
「質問に答えなさーい!故郷のお母さんが泣いてるぞー!」
「うん?ああお前らの格好か。いやだって、面白いだろ?」
ラークさんのお手本のような笑顔とサムズアップ。
「くっ、悔しい…けどイケメンだから許しちゃう」
「チョロい」
「チョロいですね」
「二人して言う!?」
「それに、アフロと釘バットはただのおもちゃだけど、枝とお面はちょっと凄いやつだぞ」
「そうなんですか?」
「えぇ~…これが?」
そこでラークさんは勿体ぶったように一度目を瞑って腕を組んだ後、片目を開けてパイプをくるくる回しながら二人に向けます。
そう、名探偵によって今明かされる衝撃の真実。
「なんと、瘴気の森の中央の巨大樹の枝と、古代遺跡の呪われた神社に封印されていたお面だ」
「「はあぁぁぁ~~!?」」
「こ、これが!?」
「いやあぁぁぁ呪われる!外す外す外す!!」
大慌てで枝を慎重に持ち直したり、お面を外そうとしてぐるぐる回したりする二人。
「いやわりぃわりぃ、ちょっと脅かした。本当は世界樹の枝と神器のお面だ」
「…それもそれでやばくないですか」
「だから言っただろ、ちょっと凄いやつだって。ちなみに浄化したり祓ったりした結果だからさっきのも嘘じゃないけどな」
「えぇ…」
「ご利益ありそう」
「あなたはあなたで現金ですね」
「お、着いたみたいだぞ」
そうこうしている内にレインボーヘアーが目的地に着いたらしく、背伸びをして壁に両手を当てました。次の瞬間、手のひらから黒い綿のような物体をもこもこと出し、そのまま縦長の長方形を描くようにしゃがみながら手を移動させます。
「何あれ?粘土?うんk」
「やめてくださいはしたない!?」
「今の俺達の行動が書かれてるの知ってるわりに禁止用語多くないかお前」
「だからこそなればこそ!地雷は積極的に踏んで行くスタイル」
はた迷惑なキャラです。押すなよ!押すなよ!(フラグでない)
「なるほど、あれドアだったみたいだな」
ラークさんの言う通り、長方形が完成した途端に綿が扉に変化していました。それを開き、先へと進んで行く虹色ボンバーヘアー。
「よし、俺達も行くぞ」
扉の先の階段をしばらく下り、たどり着いた先には、
「…やっぱり派手!」
「…ですね」
やはり壁や床、家具等がカラフルな部屋が広がっていました。
とはいえ、ここの主らしき人物よりは彩度が低く、まだ目に優しい方です。小物程度なら、一点一点は普通に売られていても違和感がありません。
「あの椅子とかなんかIK○Aにありそう。あ!サメだ!Twitt○rで見たあのぬいぐるみだ!なんかめっちゃファンシーな色してるけど可愛い!こっちのが好きかも」
「サメだ、殴れ!」
「やめてあげて!?」
「……」
二人が物珍しげに部屋を見回す中、入り口の左にあった腕を組む巨人像を見て難しい顔をしているネモフィラさん。
それに気づいたラークさんが声をかけました。
「どうしたネモフィラ?」
「いや、これ…ご主人様によく似ているような気がして」
「これ?」
「どれ?」
「どれのことだ?」
言われて、ラークさん、魔王少女、像がネモフィラさんの視線の先を見ました。
「…本物!?」
本物でした。ラスボス本人でした。
「ああなんだ、我のことか」
「い、いつの間に」
「俺が出てきた時は驚かなかったじゃねぇか」
「だってこの部屋、というかお城には色々あるからてっきり像だと」
「お前達が面白そうな所に向かっていたからな、我も見にきた。待つ間に少し意識を別の所へ飛ばしていたが」
「…瞬きも呼吸もしてませんでしたよね。魔力も体温も感じませんでしたし」
「ふむ、そういえば生物は無意識でも動くのだったか。次からはそこも再現するようにしよう」
「……」
絶句するネモフィラさんをよそに、魔王少女は刀を構えた渋い男前の侍がハートのあしらわれたリボンをあちこちに身に付けて全身虹色に光っている、ゲーミング侍像の頭に先程のサメを乗せながらはしゃいでいました。
めちゃくちゃ説明が長いですが、実際そうとしか形容できないので仕方ありません。
「にしても、結構可愛いねこの部屋~。○ゃりー○みゅぱ○ゅみを感じる」
「それは何の呪文だ?」
「じゅ、呪文…呪文じゃなくて人の名前なんだよね、これが」
「ほう、面白い響きの名前だな。ではあの像の魔物は何だ?」
「あれは…トーテムポール、じゃないかな、たぶん。めっちゃ派手だけど。あと魔物じゃないと思う」
「ではこれは?」
「あーこれは…あの、何だっけ、ど忘れしたな~…しかもやっぱり派手だし。たしか、なんとかの口…忍術の口?新宿の口?」
「真実の口ですよ」
「そうそれ!よく知ってたねネモフィラちゃん」
「占いの機械に興味がありまして」
作者も小さい頃に初めて見かけて、占いの機械だと聞く前に元ネタの手を噛まれる話を先に聞いて、どっちが本当なのかビビりまくっていた思い出。
しかし単に噛むだけでなく、手首ごと切り落とすという話もあるとか。やっぱり怖い。
「ついでに言えば、一説にはこの顔は海の神だって話もあるぜ」
「ほう、神の顔を持ち相手を噛みちぎる魔物か…強そうだな」
「たぶんそれも魔物じゃないって」
「ではこの箱は?」
「それは…うーん、よくわかんないけどヤバそうじゃないそれ?玉手箱?コトリバコ?」
次にラスボスが示したのは、謎のお札や鎖等で封印されているらしき箱でした。色々くっついているのでわかりにくいですが、どこか宝箱らしき面影があります。
「コトリバコはわりとえぐい代物だから、知らなくて調べる奴は気をつけろよ」
「お札の言葉は…『封印』、『キケン』、『開けるな危険』、『開放禁止』、『Don't open』、『触らぬ神に祟りなし』、『開けるなど否いなイナ、絶対否!』、『この箱開けるべからず』、『開けるなよ、絶対に開けるなよ』…」
「うっわ、やっぱり開けない方が良さげじゃん。そもそも開けられそうにもないけど」
ネモフィラさんが箱にべたべた貼られたお札の文字を読み上げ、それを聞いた魔王少女がビビっていましたが、
「はっ!そうか、そういうことか!」
そこでラークさんが大げさに何かに気づいたようなリアクションをしました。
「何が!?」
「ふっふっふ、この名探偵ラークの目、いや耳は誤魔化せない…皆さん、ついさっきの言葉を思い出してみてください」
「さっき…?」
「鍵となるのは3つの言葉。まず1つ目、『この箱開けるべからず』。どこかで聞いたフレーズだとは思いませんか?」
「も、もしかして…かの一休さんの『このはし渡るべからず』?まさか何か隠されたメッセージが!?」
「まあまだ慌てないでください。次に2つ目、『開けるなよ、絶対に開けるなよ!』」
「ま、まさか…伝説の、ダチョウな倶楽部の前フリ!」
「そう!そして3つ目、『開けない方が良さげじゃん。"そもそも開けられそうにもないけど"』」
「な、なんと…なんと綺麗なフラグ…!」
「もう皆さんお分かりでしょう…ここまで来たならその答えはただ1つ!」
人差し指を立てた手を天に向けたラークさんがラスボスを見て頷くと、ラスボスもまたしっかりと頷き返しました。
ネモフィラさんは嫌な予感がしました。とても嫌な予感がしました。めちゃくちゃ嫌な予感がしました。(表現の三段活用)
「開けゴマ!」
「ふん!」
バキバキバキャッバコンッ
ラークさんが手を振り下ろして箱を指差すと同時、ラスボスが箱をこじ開けました。
「そんな気はしましたよ!!」
「やったぜ!」
「あらっ!?何の音!?」
飛び交うお札に鎖に紐、諦めと嘆き、やりきった感に野太い驚き。
「クク、ククク、フゥーハハハ!よくぞ俺の封印を解いた!時は来た!」
そして当然のように溢れ出すどす黒い煙と禍々しい紫のオーラ、ありがちな台詞。
果たして、ここから一体どうなってしまうのか。
そして、またこんなに長く遅く書いて、作者はせめて4月中にこれを書き終えられるのか(執筆時現在4月22日)。
つづくつづく。




