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ラスボスさん。  作者: 有負 王
章ってなあに?ーーしょういうこと(章機能を使ってみたかっただけ)
19/25

わるいスライムじゃないよ(敵対しないとは言ってない)

あらやだ、約半年ぶりですってよ奥様。

しかもそれだけ時間かけておいて内容がすごく短いんですって。やる気あるのかしらね~…



あ り ま す(更新頻度を上げるとは言ってない)

「昨今の無双系でよく見る、強大な存在とされている魔獣がろくな戦いもせずにホイホイ降参して、その上喋りだして小物ムーブするアレ。あれはどうかと思わんかの!?」


「まさにその条件にぴったり合致してる人が何言ってんですか」


いつものラスボス城玉座の間。竜王が吠えていました。

そして今日も冴え渡るネモフィラさんの的確なつっこみ。


「ぐっ…わ、ワシの場合は仕方ないじゃろ…旦那様は人ですらないんじゃぞ」


「人じゃないパターンだっていくらでもあるでしょうし、実力差が絶望的に離れているという力関係は同じでしょう」


「じゃ、じゃが、きっとワシらの方が力の規模は大きいはず!」


「関わりすらない世界に時空超えたマウント取ってどうするんですか。どのみちここでやってることは同じでしょう、現実見てください現実」


「ぐ、ぐぬぬぬ…」


「ならば見に行くか」


不意に、ラスボスが二人に声をかけました。


「恐れず、話すこともなく挑んでくる魔物を」






「その謎を解き明かすべく、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった」


「別にこの森名前とかないみたいですけどね」


十数分後、ネモフィラさん達は城の北西の森の中を歩いていました。


「強いて言うなら人喰いの森だけど、実際は街道近くがそう言われてるだけで、この辺の森は全部未探索地帯だからな。引っくるめて呼ぶには広すぎる」


「というか何でまたいるんですかあなた」


「面白そうだから」


「…まあそうですよね」


メンバーはあの場にいた、ラスボス、ネモフィラさん、竜王、そして当たり前のように現れるラークさんの四人です。


「しかし、喋らぬのはいいとして、ワシらを恐れず向かってくる魔物…?今回のタイトルもあれじゃし、まさか雑魚のスライムではなかろうな」


「おいおい、スライムなめんなよ。その辺によくいるようなボールスライムならともかく、水辺とか洞窟にいるようなスライムの原種はなかなかエグいぞ」


そう、この世界のスライムには二種類が存在します。

一つはボールスライムと呼ばれる丸いもの。基本的におとなしく、敵意を持って囲まれたりでもしない限り脅威になり得ません。ありがちな雑魚モンスターです。

しかしもう一つの原種のスライムは、いわゆるアメーバのような不定形であり、積極的に捕食行動を行います。切られただけで体液が流出して弱るボールスライムと違い、熱の攻撃とコアへの攻撃以外はほぼろくなダメージにならない危険なモンスターです。

そもそも、スライムがファンタジーで雑魚扱いされ始めたのは某なんとかクエスト等といったrpgのせいであり、元は天井から降ってきて奇襲したりする強モンスターなのです。

それって黒光りしてカサカサするアイツと同じなんじゃ(それ以上いけない)


「そんでこういう深い森にもわりとよくいるから、初心者冒険者はもちろん、ベテランもよくやられる。なんなら商人とか子供の行方不明の原因も専らそいつだ」


「ひえ…」


「ふん、だから何じゃ。どの道ワシらの敵ではないぞ」


「くっくっく、それはどうかな」


「何?」


豪語に対してラークさんがにやにやと笑い、竜王が訝しみました。


「実は大体予想は付いてるんだよな」


「ほう、さすがにお前は会ったことがあるか」


「まあたぶんな」


「では少しインパクトにかけるかもしれないな」


「いいや?予想通りなら相当希少な奴だからな。俺だって一回しか会えてねぇから」


「ら、ラークさんがそこまで言うなんて…」


「ふ、ふふあはっはは!わわわワシごときの敵ではなくもなくもなくもないな!!」


ラークさんがやたら誉めるおかげで、竜王父娘が戦慄したり言葉がおかしくなったりしています。


「何びびってんだよ、お前ら竜王だろ」


「だってあなたがそんなに言うんですよ!?」


「そうじゃ!化け物のお前がわざわざ興味を持つ程のものじゃぞ!」


「だから何で本物の人外にまで化け物扱いされなきゃいけねぇんだよ!?」


「ふむ、そろそろだな」


ラスボスがそう言ったのを聞いて、一同は改めて周囲に目を向けました。


「そ、そういえばさっき言ってたスライムが増えてきましたね」


「…スルーしとったが旦那様がまたおかしなことをしとるの」


いつの間にか近くをうろついていたアメーバスライムは、そのことごとくがラスボスの角から自動で発射されるレーザーの迎撃によって蒸発させられていました。


「まあご主人様ですし」


「順応しとるな…」


「着いたぞ」


そうしている内にラスボスが立ち止まりましたが、


「ヘァッ!?ももももももうか!?」


「着い…た?」


そこは一見、ただの湖でした。

周囲にはそれなりの数のアメーバスライムがいましたが、地を埋め尽くすような数という訳でもなく、別段おかしな様子も見られません。


「うーん、スライムが湧く泉…みたいなものですかね?無制限に現れれば脅威になり得る、ということでしょうか?」


「な、何じゃ、その程度か。脅かしおって」


「いいや?そうでもないぞ」


そう言ってラークさんが指差す先に飛んで来たのは、一羽の鳥。少し離れた所に降り立ち、水を飲むつもりなのか湖へと近づいていきます。


「ふん、どうせ湖から湧いてきたスライムどもに喰われるだけじゃろ、あわれな奴じゃ」


「ところがどっこい」


一定距離まで近づいた時点で何か危機を感じたらしい鳥は、数歩後退りした後、背を向けて立ち去ろうとしました。

しかし、何故か急に転んだかと思うと、今度はびちゃびちゃと水の音を響かせながら必死で羽ばたいて飛び立とうとします。


「…水?」


少しだけ浮かび上がった鳥の足は、水のような半透明な何かで覆われて地面と繋がっていました。

鳥がバランスを崩して落下した次の瞬間、


ザバアアアァァァァ


「「!?」」


湖から突然発生した波が、鳥のいる場所だけを覆いました。

飛び出てきた水の塊はその場に留まり、鳥は湖の中へと送り込まれていきました。


「なっ、ななななっ、何、何じゃ!?」


「ま、まさかこれ…この湖…」


何かに勘づいたネモフィラさんの呟きに答え合わせするかのように、湖から目の前の水の塊へと青い球体が移動してきました。十数個の球体が。


「ひぇっ…」


「という訳でこれが、」


球体がこちらを凝視するかのように集まり、湖側にも数えるのが嫌になる程の球体が浮かび上がり、


「き、キモい…」


「本当じゃキモッ」


揺れと地響きを伴いながら湖の水が塊のまま盛り上がりました。


「伝説の魔物、レイクスライムだな!」


「う、嘘…これで1つ?」


「元の姿のワシよりでかいぞ!?」


その圧倒的な巨体に腰を抜かす竜王親子をよそに、ラークさんの目はきらきらと輝いていました。

レイクレイク!レイクがあるs(略


「いやしかし、本当にまた会えるとはな…!壮観だぜ」


「壮観とかそういうレベルじゃないですよこれ!?というかこんなサイズの生物が存在することが驚きですけど!?」


竜王もそうだそうだと言っています。


「お前らが言うか」


巨大生物筆頭の一族に即座につっこみを入れるラークさんですが、実際のところラスボス城と同じぐらいの竜王ですら普通に食われそうな大きさです。


「え、ええ縁起でもない事を言うな!それに、多少大きいぐらいが何じゃ!ワシならどうとでもできるわ!」


「ほう、そうか。だが大丈夫だ」


ラスボスが言うと同時、水中で木が何本も折れるような、濁った音が左右後方から聞こえてきました。


「……」


「ひっ…」


「おっ!?マジかマジか!!」


黙り込んで真っ白な顔になった竜王と、息を飲んで冷や汗を流すネモフィラさん、そしてより一層オラわくわくすっぞになったラークさんの3人が振り返ったのは、ほぼ同時でした。

そこには、


「もう3体追加だ」


同じモノが3体存在していました。デデドン(例のBGM)


「では、存分に楽しめ」


「えっいやちょっ、ご主人様どこへ!?」


「竜王が望んで来たのだからな、邪魔をするのは野暮というものだろう。我はまた来れば…いや、探す事もできるからな、倒しても構わん」


それだけ言い残して、ラスボスはその場から一瞬にして消え去りました。


「………嘘ぉぉぉおおぉおぉおおおぉぉおぉぉ!!?」


「よーしやるかぁ!」


「…やるしかないみたいですね」


「はっ?正気?正気かそなたら?」


「さっきどうとでもなるとか言ってたじゃないですか」


「ま、まあ…ブレスで全部消し飛ばせばどうにか」


「あ、森破壊しすぎると変なのが人里行くかもしれないから範囲攻撃禁止な」


「何じゃと!!?」


「……頑張りましょう」






その後、地道にコアを破壊するという死闘を繰り広げて、実は森の主的な存在だと気づいたラークさんがテレパシー的なもので和解しました。


「小物ムーブする奴ら、楽で良いな」


「…そうですね」


めでたしめでたし。

・レイクスライム

名前の通り、湖に擬態する超巨大なスライム。伝説の魔物だが、存在があまりに突飛すぎるため、近年では都市伝説レベルでその存在を疑問視されていた。群体生物に近いが、合体も分裂も自由自在であり、果てはコアすらなくともしばらくの間体の一部を分離させて動かす事ができる。体の硬度も自在で、完全な液体と化す事もできる。また、生息地一帯の水分を掌握するため、体の一部を摂取した生物が無意識の内に支配されている事が多い。体内にはおぞましい数の青いコアが存在し、これを一つ残らず破壊しない限り殺す事は不可能。

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