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ラスボスさん。  作者: 有負 王
章ってなあに?ーーしょういうこと(章機能を使ってみたかっただけ)
12/25

祝え!新たなる年の幕開けを!(今月元号変わったばかりなのでセーフ)

お久しぶりでございます!

生きてる限りはエタる気のない有負です!

またまた調子に乗って過去以上に文量がおかしなことになってますのでご注意ください!見よ、このギャグ作品らしからぬ圧倒的ボリューム!


…はい。反省してます。次からは気をつけます…

なおこの話、年明けに投稿しようとしていたものですが、行事ネタをやりたかったので強硬突破します←

マイペースなので投稿頻度については許してください。あくまで"目標"なので(そっちも反省しろ

時は朝方。

ネモフィラさんはいつも通り自分の部屋から起きて、玉座の間に入り、ラスボスへ挨拶をして、


「おはようございます、ご主人さ」


「あけましておめでとう!!」


いきなりラスボスに大声で叫ばれました。


ゴオオオオオォォォォォッ


「!?」


玉座の間に暴風が吹き荒れました。ガタガタと像や絵画などの備品が音を立てましたが、勇者と戦いまくっても落ちたり壊れたりしないようになっているので平気でした。


「…な、何ですかご主人様」


「作者の国での新年の挨拶だ」


「は、はあ…」


「という訳でこれに着替えろ」


と、今度はどこからか一枚の服を取り出し、ネモフィラさんに押し付けました。




およそ十分後。着替え終えたネモフィラさんがまた玉座の間に戻って来ました。


「ど、どうでしょう、ご主人様」


ネモフィラさんが着ていたのは、朝顔の柄の振袖でした。

着物と振袖はよく混同してしまいそうになりますが、振袖は着物の一種であり、単に袖が長いという他にも、未婚女性が着るものという特徴もあります。奥様方は要注意。

昔は女性が恋愛感情を伝えるのはタブーであったため、袖が長いことを利用して袖の振り方で好意の有無を表したそうです。

つまり萌え袖に萌えるのは必然的な世の理だったんだよ!

また、最初は若い女性達が着ていたもののようですが、現在は未婚でさえあれば特に年齢は関係ないそうです。さりげない彼氏募集中アピールに最適!


「うむ、似合っているぞ」


「ありがとうございます!」


「ワシのことも見よ!」


ラスボスに満足気に頷かれてネモフィラさんが内心デレデレしているところへ、そんな声が響きましたが、


「…いつも通りじゃないですか」


そこにはいつもとあんまり変わらない格好をした竜王がいました。


「違う!見よこれを!」


そう言って竜王は袖をふりふり。そう、いつもとそっくりな着物ですが、袖の長い振袖仕様だったのでした。


「ほれ、旦那様!振袖じゃ!」


「ああ、そうだな、似合っているぞ」


「そうじゃ、振袖じゃ!ふ・り・そ・で!」


なぜかやたらと振袖であることを強調する竜王。どうやら先程の地の文の話から未婚アピールをしているようです。

よって、


「もがー!」


ネモフィラさんにより即座に縄でぐるぐる巻きにされました。


「そういえば、ご主人様も今日はいつもと違う服ですね。たしかそれは…えっと、同じ着物の一種の…?」


「紋付羽織袴だ」


ラスボスは紋付羽織袴を着ていました。ネモフィラさんにも同じようなことが言えるものの、翼や角があり、どちらかというと洋風よりな顔立ちにも関わらず、和装が異様なまでに似合います。信長が野望を炸裂させるゲームのラスボスと言われてもしっくりきます。え?そんなゲームじゃない?細かいことは気にするな。

なお、よく紋付き袴と略されたりもしますが、紋付羽織袴というのは裾まである長い紋付きの和服に袴をはき、その上から更に紋付きの羽織を着るものであり、袴そのものは前述の通りズボンのようなもののことなので注意しましょう。

作者もここで調べてなかったら危うく略しすぎて"袴"と書いてラスボスが上半身裸で筋肉を見せつけることになるところでした。ハッピーニューマッスル。


「ラスボス、あけおめー!」


「…あけまして、おめでとう、ございます…」


と、そこへ今度は二人の女の子がやって来ました。一人はマゼンタ、もう一人は白色の髪で、それぞれ黄色い星の飾りがあしらわれたピンク色の服、白い円の飾りがあしらわれた灰色の服を着ていました。どちらもわりと幼い見た目でした。

…決して作者はロリコンではない。OK?


「あ、あけましておめでとうございます」


「あけましておめでとう」


「知らない子達ですね、最近来たんですか?」


しょっちゅう村へ足を運んでいるにも関わらず女の子達に見覚えがなかったネモフィラさんがラスボスにそう訊きました。


「まあそんなところだな」


「へえ…。お名前は?」


「スピィだよ!」


「…デ、デリィ…です…」


「スピィちゃんとデリィちゃんね…んん?」


女の子達の名前を聞いたところで何かが引っ掛かり首を傾げるネモフィラさん。


「…ど、どこかで、聞いた、よう、な……?」


口では疑問系でそう言いつつも、もう既に思い当たっているらしく、ギギギギという錆び付いた機械が動くような擬音が聞こえてきそうな動きでゆっくりとラスボスの方を振り返りました。


「それはそうだろう、この前会ったばかりなんだからな」


内心一ナノぐらい違うことを期待していたネモフィラさんでしたが、嫌な予感はラスボスにあっさりと肯定されました。現実は非情である。


「や、やっぱりこの子達は…」


「ごめんなさい!」


「!?」


また同じような動きで二人の方へ振り返れば、そこには頭を下げて震えながらそう言うデリィさんが。


「は、はい!?えー、あー…な、何が?」


「わ、わた、わたし、いろ、色々壊して、生き物消して、みんな怖くさせて、ひ、ひどくてっ、うっ、うううっ、うえぇぇぇぇん…」


困惑するネモフィラさんを前に、頭を下げたまま崩れ落ち、泣き始めるデリィさん。

ネモフィラさんも一瞬驚くものの、慌てて慰めにかかります。


「ああ、大丈夫、大丈夫だから!」


「なんでもそいつ、あの神様状態だとまともな自我がないらしくてな」


「!?」


そこへいつものように突如現れる化け物賢者ことラークさん。今回は壁に立っていました。

比喩ではありません。

それはもう自然に、壁に垂直に立っていました。なんなら他の人が床に立っている方がどうかしているような気すらしてきます。


「なんでそんな所に、というかどうやってそこにいるんですか!?」


「…一体いつから引力が地面に向けてだけ働くと錯覚していた?」


「たしかにな。引力というのは大抵の物には働いている。引力は質量に比例するから、普段は惑星からの引力が他より強く働いているだけだ」


「あのー、その手の話は作者さんが気絶するのでそろそろ止めておいてください」


作者は文系です。すーがく?ぶつり?なぁにそれぇ(゜▽。)


「それよりデリィ!せっかくだから自我のある状態のお前と戦いた」


「うっ、ご、ごめんなさい、いっ、いじめ、ないでっ、うう、うぇぇぇぇん…」


「ラ・ー・ク・さん?」


「はー、はひぃはひぃ、ひょうはんはんふんはっへ(あー、わりぃわりぃ、冗談半分だって)」


空気を読まず戦闘狂発言をかましデリィさんを泣かせたことで、ネモフィラさんに頬をつねられるラークさん。

結構な力で引っ張られてもはやどこのゴム人間だてめえはと言いたくなるほど頬が伸びていますが、生物の限界突破してるこの人には当然痛くも痒くもありません。


「半分は本気だったんじゃないですか」


「はっへほー(だってよー)」


「だってじゃないです」


「ま、それはおいといてだな」


「!?さらっと抜け出さないでください!?」


「残像だ。…って本当にそんな話をしにきたんじゃなくてだな、村の方で餅つきやらなんやらやるらしいから呼びに来たんだよ」


「ほう、餅か、いいな」


「たしかにいいですけど、あの村、ご老人が多かったはずですが大丈夫でしょうか…?」


毎年窒息事故で何人も病院に搬送されたり、お亡くなりになることで有名な餅ですが、今年も既にきっちり幾人かが病院や黄泉に送られています。

その上海外のニュースで取り上げられて「なんで日本人は死人が出るようなもんばんばん食ってんだよ」とか言われてますが、「美味しいし死ぬのは運が悪い時だけだから」という勇ましい返しをしている方もいます。

つまり餅は美味しい上にその年の運試しにもなる、すごい食べ物だったのです(不謹慎)。


「あの村の奴らがそんなヘマするとは思えないし、最悪なんかあってもラスボスか俺でどうにかできるだろ」


「…それもそうですね」


「お餅ー!デリィお餅だよお餅!」


「うっうぅ…で、でも…怖い…」


「誰も怒ったり怖がったりはしてないって!だから大丈夫!行こー!」








「で、何ですかこれ」


そう言うネモフィラさんの目の前には、


「ブヒブヒ」


「ブフーブフー」


なんかもふい猪の大群がいました。

ネモフィラさん達一行のいるここは、いつもの例の村の近くにある草原。その場所を埋め尽くさんばかりに大量のもふもふ猪がいました。

よく見るとそれぞれその体に一つずつ米俵や臼、杵、砂糖やオズキラ(小豆)の入った袋やらを背負子のような物でくくりつけて背負っています。


「ふっふっふ、よくぞ訊いてくれたっ!」


「だっ、誰ですか!?」


突如上から響いた声にネモフィラさんが空を見上げれば、


「とうあふっ!」


バタッ


二つの風船の付いた紐を握った水色の髪の少女が目の前に降ってきて、倒れました。

倒れました。

手に持っていた風船が、静かに空の彼方へと飛んでいきました。


「親方!空から女の子が!」


ラークさんノリノリです。


「…だ、大丈夫ですか」


ガバッ


「大丈夫だ、問題ない」


「涙目じゃないですか」


「……ちょっと、怖かった…」


「なんだ、さk」


パキッ


「!?」


少女を見て何かを言おうとしたラスボスが一瞬で氷漬けになりました。

とはいえラスボスなのですぐに脱します。


パキャガシャッ


「その辺は内緒でね?」


「ああ、そういうことか、わかった。お忍びか」


「まあね~。細かい説明めんどくさいしね」


「……」


大体どういう類の人なのか察しがついて色々問い質したくなったネモフィラさんでしたが、先程ラスボスが氷漬けにされたのを見たので何も考えないことにしました。


「で、sーー…何て呼べばいい?」


「えー、そんなの普通に」


「そのままではすぐわかるのではないか」


「っあ、…えっ、えーっと…ふ、フリル。うん、そう、フリルでいいや!」


「ふむ、じゃあフリル、なぜ風船を持って空から降ってきたんだ」


「え、だってその方が世界観的にいいかな~って。凄いでしょ?メルヘンでしょ?ファンタジーでしょ?…でも、浮力適当にしすぎて風船三個減らしただけで、あんなにすぐ落ちるとは思わなかった…怖かった…」


「それで、これは結局何なんだ?」


「ふっふっふ、これはですねぇ、簡単に言うと、見ての通り、猪にくくりつけてある餅の材料やら何やらを追っかけてゲットしようぜ!っていう感じなのですですよ。今年の干支猪だしね」


ちなみに、今言われたように今年の干支は猪ですが、中国など他の国では豚であることも多いようです。一説には元々は豚だったものの、日本に干支が入ってきた頃にはまだ豚がいなかったこと、猪肉には万病を防ぐ効果があるとされていたことなどから猪になったと言われています。

また、それ以外にも国によって干支が違っていたりすることがあり、豹が入っていたり、なんと干支の昔話で鼠に騙くらかされたはずの猫が入っている所もあります。

つまりただ単純に日本の猫が馬鹿だったとい(以下略)


「なるほどな、面白そうだなそれ」


「ほう、面白そうだ」


「へー、追いかけっこだって!」


「なぜそんなことを急に?」


「普通にやっても面白くないじゃん。そのまま餅つきやってもせいぜいラスボスがこの星ごと臼を真っ二つにするぐらいのネタしかなさそうじゃん」


「えっ」


ネモフィラさんがラスボスを見ました。


「いや、さすがに我も先んじて言われていれば気をつけるぞ」


「その言い方だと、言われてなかったらやらかしてたように聞こえるんですけど」


「……」


ラスボスが目を逸らしました。


「……」


「ま、まあとにかく、さっそく始めちゃいましょー!」


そうこうしているうちに、村人やラスボス達が"スタート地点"と書かれた旗の立っている近くに集合します。


「はいはーい!ではでは~、これより餅つき前のイベントとしてー、…して~、…えっと…なんだろこれ、何て言えばいいんだろ…まあいいや、猪捕獲合戦を始めます!皆ー、盛り上がってるかーい!?」


「「「いええええええぇぇぇぇぇぃ!!」」」


背中からなんか鎖を束ねた足っぽいのを出して背伸びして、少し高い位置からメガホンを使い大声で叫ぶフリル。人々も実にノリノリです。


「何ですかこのノリ」


「わ、わたしは怖いから…」


「そんなこと言わずにデリィも一緒にー!ゴーゴー!」


「む、無理、あああぁぁ~…」


「運も実力の内!運とパワーで、この年の福を掴み取れー!」


「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」


「それではまもなくやりますっ!Are you ready?」


「「「…できてるよ」」」


「何ですかこのノリ」


「ではでは~…ready go!」


プオオォ~ン


フリルの掛け声と共にどこからか笛の音が流れ、参加者と猪の群れが一斉に走り出しました。音がホラ貝っぽいのはファンタジーなので気にしてはいけません。

そしてあっちこっちでたちまち土や草や大声が飛び交い始めました。


「うおうっ!」


「でいやあっ!」


「くそっ、ちょこまかと」


「猪早すぎワロタwww」


「リアルアタリハンテイ力学で草」


しかし皆中々猪を捕まえることができません。

それもそのはず、この猪達は前述の通りぬいぐるみかと見紛うようなもふもふ感であり、見た目より本体が小さいためちょっと手を伸ばした程度ではすり抜けてしまうのです。

というかそのもふもふ毛込みの見た目でも精々大型犬前後の大きさであり、それがすばしっこく動き回るのでけっこうな難易度です。

とはいえ捕まえることに成功する者も徐々に現れ始めます。


「ほーら、怖くなーい怖くなーい。だからこっちにおいでよ猪くぅーん。うふ、うふふ」


「ぶ、ぶひぃ…」


「ほらほらー、大丈夫だよー?なんならおもいっきり突撃して来てもい、いいんだよぉーうふふふふふ」


「…ぶ、ぶひーっ!」


ドスッ


「あっはぁ!いい、いいぞぉ!それだぁっはんぅ!か、体の奥底に、響いてぇ、めっちゃ快感ぅ~」


「ぶひぃ…」


「もっと、もっとぉ!ほらほら、もっと突進してきたまえっ!あは、あはははははははは!」


「……」


ガシッ


「ああ…もう捕まえちゃったか…しかし猪に突っ込まれるのがこんなに気持ちいいとは…さぁー次々!うふふふふふ!」








「だぁーっ!」


「ぶひーっ!」


ドタンッ


「あーもうこん畜生!」


「ふっ、そんな土まみれになって、無様なもんだ」


「うっせぇ!ってか、お前なんか何もしてねぇで突っ立ってるだけじゃねぇか!」


「クックックック…甘い。甘すぎるぞ。あんこと蜂蜜と黒蜜と砂糖をかけたグラブ・ジャムンぐらい甘いぞ!」


「いや何だよそれ」


説明しよう!グラブ・ジャムンというのは激甘で有名なインドのお菓子であり、作者ぐらいの年齢なら大体16個も食べれば一日分のカロリーが全て賄えてしまうという恐ろしい代物である!

材料は小麦粉約百グラムに対しコアと呼ばれる濃縮乳が驚きの約一キロ、そして更に更に驚くなかれ、なんと砂糖水二キロをブチ込むという恐怖!ひえええええええ…

ちなみに実はあんこも小豆と同等以上の砂糖がブチ込まれていたりするので最初はそれをメインにネタにしようと思ったのだが、一応"世界一甘いお菓子"で調べたらそれが霞んでしまうレベルの物を発見してしまったのである!ひええええ(ry

なお小倉あんはあんこの総称だとばかり思っていたら実はつぶあんともこしあんとも全然別の代物であったのである!ひえ(ry


「そして長々と作者が語ってくれたがその内容とは全く関係ない我が奥義を喰らえ!暗黒爆発(ダーク・インパクト)!」


ボムッ


「ゴホッゴホッ、何がダークインパクトだただの煙幕じゃねぇか!煤まみれだぞこの野郎!」


「ふっ、だが貴様がごちゃごちゃ言ってる間に俺はもう二匹捕まえたぞ」


「ぶー…」


「ぶひー…」


「ウゾダドンドコドーン!?」


「…それにな…この暗黒爆発(ダーク・インパクト)を発動するための常闇王の宝珠(ダークキングオーブ)はな、俺が…この俺が、闇の加護を受けし樹木の(ダークデスウッド)を一週間徹夜して、数多の犠牲を産み出しながらようやく作り上げた代物なんだぞ!」


「…おい待てそれはつまり、この前村の共有財産の炭がごっそり消えて一週間後に半分だけ粉々になって戻ってきたあの事件は…」


「…ああ…我が闇の神が仰られている…その件については触れてはならないと…さもなくば祟りがもたらされるであろう、と…」


「…ああ、そうだなぁ…祟られるんだよなぁ…お前がなぁっ!待ちやがれこのクソ野郎!」








「うーん、なかなか盛り上がってますねぇ~。どこもかなり見ごたえがありそうな感じですが、解説のネモフィラさん、どこに注目します?」


「えっ、私が解説ですか!?…んっんー、そうですねー、やっぱりあそこにいる二人なのでは?」


「ほうほう!それはそれは?もしかしてあの二人ですか?」


「そうっ!あの二人です!あの雄々しく威厳に満ち溢れた姿、ラストボスオブラストボス!ラスボスッ!!そして、魔法はおろか格闘術まで極め、神をも殴り倒す賢者という名の何か!ラークッ!!」


「…ち、力強い説明ありがとうございます。両者凄まじい速さですねぇ~。しかしそれでいて猪を傷つけずふんわりとホールドしています」


「恐らく運動エネルギーを操作することによりあの動きを可能にしているのでしょう。とはいえ専門家ではないので詳細はわかりかねますが…というかなんであれが見えるんですか…。私でもぎりぎり残像が見えるくらいなんですが」


「ふっふっふ~、私はですねぇ、この世界用に作った特別製の体なのでけっこう速いものも見えるのですよ~。………というか、あの世界の体持ってきたら、この世界、滅びるし」


「はい!?」


「どうにかしてナノマシンを全部取り除ければ…いや、そんままでもラスボスさんがどうにかしてくれそう…いやでも、気を抜いたら何百人、いや何千、何万人の犠牲者が出るか…」


「……。おっと、ここで何やら動きが変わりましたよフリルさん!」


「うぇっ!?あー、うっ、そっ、そうですねぇ、あれは…時空の歪み!?」


「えっ!?またですか!?」








「へっ、どうだラスボス、俺は今四百七十体ぐらいだぞ!」


「我は七百五十体ぐらいだな」


「な、何ぃ!?くそっ、すぐ追いついて…あん?」


「む、時空が歪んでいるな…また何か来るぞ」








空中の一部が目まぐるしく色を変え、やがて四角い穴が空き、そこから何かが飛び出して来ました。


『ディメン神ー!』


飛び出して来たのは、一台の乗り物らしき謎の物体でした。先端の尖った十字架のような形をしていました。


ガッシャーン


「うおわっ!」


乗り物はそのまま地面に激突し、中から一人の少年が飛び出して来ました。


「おいマドウ無事か!?」


更に続けて似た形の乗り物がもう一台飛び出して来ました。こちらは地面には激突せず、ふわりと着地し、今度は少女が一人走り出て来ました。


「あーだいじょぶだいじょぶ。あっはっは、またこれは派手にやられちまったわ。しかし何の前触れもなくいきなり突っ込んできやがるとは」


「…! 大丈夫じゃないだろうがこの間抜け!」


「あ?あーわりわり、ディメン神ちょっと壊しちまったみてえだわ」


「ちーがーう!痣だらけになってるぞお前!早く手当てを…」


「…おい待て待て待て、その包帯の量、お前あわよくば俺を絞め殺そうとしてるだろ!ていうか痣は包帯巻いてもしょうがねえだろうが!」


実は内出血を抑えるために有効とかなんとからしいですがそれはさておきます。


「だが骨折しているかもしれないし固定しないと!」


「折れてねぇよ!……あんまり」


「やっぱり折れてるじゃないか!」


「うるせえこんなもんちょっとほっときゃ治るんだよ!そもそも今そんな暇なんかねえだろ!今にあいつがまた突っ込んで来るぞほら見ろこの野郎!」


二人が口論しているところへ、先程の四角い穴から彼らの乗り物に勝るとも劣らない巨大な何かが飛び出し突っ込んで来ました。


「ハアッ!」


バシィンッ


そこへ更に何者かが割り込み、巨大な何かを受け流し進路を反らしました。


「グガアアアアアアッフ!!」


メキメキメキメキャアッ


「…でかっ」


「でけえでけえ、でけえど…」


「すごく…大きいですね…」


「ドスファ○ゴ…よりもっとでかいなありゃ」


突っ込んで来たのは、猪でした。

超巨大な、猪でした。

竜王には流石に遠く及ばないものの、竜の姿のネモフィラさんよりも一回りは大きい、三階建ての家くらいの体高でした。しかも丸々と太っているので実際にはもっと大きく見えました。

そのままの勢いで近くの森に突っ込み、一角の木々をまとめてなぎ倒しました。


「「「……」」」


あまりの出来事に、一瞬辺りを静寂が包みましたが、フリルが即座にマイクをひっ掴み叫びました。


「さあー今回のメイン巨大猪の登場だー!食用ですので遠慮情け容赦なくぶっ倒してもらってオッケー!というかメインディッシュなんでパパッと倒しちゃってくださいっ!」


「「「うおおおおおおおおっっ!!!」」」


とたんに気合に満ちた声がそこら中から上がりました。


「…なっ!?ちょっと待て、あいつは危険だ!ただのでかい猪ではないっ!」


「んー!?んー!んーんー!」


背後に唸る包帯の塊を転がしながら先程の少女が叫びますが、ここにいるのはとんでもない戦闘力持ちの人物達。


「おらぁ!」


「破ッ!!」


「無駄無駄無駄無駄無駄ァー!」


「あたたたたたたた!!」


「死ねぇ!」


「細切れにしてやる!」


「気合い百倍!暗パンチ!」


「闇の雷に裂かれて滅せよ!魔麒雷閃戟!」


「永遠なる氷雪の(エターナルブリザードプリズン)!相手は死ぬ!」


「暗黒神の鉄槌(ダークゴッド・ジャッジメント)!」


「だから炭を使うな!?」


老若男女が巨大猪に群がり好き勝手にタコ殴り。


「……」


これには先程の少女も唖然としていると、


「ご無事で何よりです、主様、歯車」


「ぶっはあ!この、野郎、マジで、あの、包帯、全部、巻きやがってぇ!?へぇ、はぁ、はぁ…」


先程猪を受け流した赤紫色の髪の女性と、彼女に包帯を解かれた少年が声をかけました。


「私は女だ!野郎ではない!」


「知るか言い方なんざどうでもいいんだよ!ふざけんなっつってんだよゲホゴホォッ!」


「落ち着いてください主様」


「はぁ…悪い、で、何だありゃ。バグってんのかこの時代は」


「何、この辺りは少しおかしな奴らが集まりやすいだけだ」


「…誰だお前」


「…貴様、さっきまではいなかったはずだな、あの集団の中にも」


しれっと会話に混じってきた見知らぬ青年を半目で見る少年と少女。

しかしそれを意に介さず青年は持っていたノートにさらさらと何かをかいて、ページを破って三人に突きつけました。


「ただのイケメン旅人だ。会えて光栄に思え」


「…随分偉そうな奴だな。マドウみたいだ」


「あんだと!?…って何だこの不気味な絵は!?」


「…面白い方ですね」


「似顔絵だ。ありがたく受け取っておけ」


「はぁ!?似顔絵だぁ!?このバケモンが俺だっていうのか!?いらねーよ!」


「…ありがたく受け取っておこう」


「…正気かお前、趣味悪いな」


「絵なんて描いてもらったのは初めてだ、しかも私を描いた絵なんて…!貴様のもいらないならもらうぞ」


「…そう言われるとなんか自分で持っておきたくなってきたからやんねーよ…まあ、記念にはいいか…」


「…何が目的です?」


「…なるほど、お前は俺を造った奴らを知っているのか。安心しろ、むしろ刃向かう側だ。組織もとうに潰してある。完全に消した訳じゃないから残党がお前らに関わりのある奴らである可能性は否定できないがな…しかし、面白い物を持っているな、お前ら。手土産ならこっちの方がいいか…」


そう言って青年は、またしてもさらさらとノートに何かをかき込みました。

今度はページから何かが浮かび上がり、それを掴んで三人それぞれに放り投げました。


「ぬっ!?」


「おうっ?」


「……」


「似顔絵もくれてやったが特別サービスだ。この俺が大盤振る舞いしてやったんだ、喜べ」


「これは…ポイントフラッグ!?」


「驚いてないでさっさと参戦してこい。ここの奴らをなめてるとあの程度すぐ倒されるぞ。力を回収しないとまずいんだろう?」


「っ、そうだった、早く行くぞマドウ、パルネア!」


「うるせー!てめえが俺を包帯玉にしなきゃさっさと行けたんだよ!」


「主様、先程のポイントフラッグを」


「おう、わかってんよ、変身!」








「おい、そろそろシメるぞ!」


「トドメはマスター達に譲れー!」


巨大猪が弱ってきたのを見て、村人達が叫びました。


「よっしゃあ腕が鳴るぜ!」


「うむ、たまにはシメのみに参加するのもいいものだ」


「あ、あの…」


困惑するデリィの前にいるラスボス、ラークさん、スピィさん。


「なんで、お餅つく道具持ってるの……?」


「もちろんこれで攻撃するんだよ!はい、デリィの分!」


「え、えぇ……」


「よし、タイミングを合わせるぞ、後ろからもう一組来るから気をつけとけよ」


「…?」








『『『モードポイント!』』』


『♪♪♪―――シュバルツー!』


『♪♪♪―――シュバルツアールビー!』


『KAMEN WRITE = フー! ―――ディベルディベル、ディーベールー!』


「祝いなさい!全世界の力を受け継ぎ、時空を駆け、全てを導く運命の者…、その名も仮面トラベラーマドウ、ディベルモード!新たなる道を刻みし瞬間である!」


「うっわ、何だこれ変身音なっが」


「この俺のだからな、特別製だ。気分がよくなってきたからもう一個おまけしてやる」


『FINAL FORM WRITE = TO TO TO TOKIOMI !』


『FINAL FORM WRITE = SO SO SO SORAOMI !』


「ちょっとぞわぞわするが我慢しておけ」


「は!?な、何をぉっ!?あぁああっ、体がっ!?体がなくなる!?」


「…害はないようですが……奇妙な業ですね」


「…ぶっっあっはっはっはっはっ!!ディ、ディアナお前時計になってやんの!元からちんちくりんのくせに胸も身長もコンパクトになりやがって!こ、今度は俺を笑い死にさせる気かよっ、あっはっはっはっはっはっはっは!!ひー、腹痛えー!」


「ぬあっ、なっ、何だとこの魔帝があっ!」


「私は地球儀ですか…特に体に違和感もないですし、本当に奇妙な業ですね…」


「やかましい、さっさと行ってこい、急いでるんだろう…ん?そうか、この俺と一緒に攻撃したいのか」


「いや別にそういう訳じゃ」


「いいだろう、今は気分がいいからな、特別に一緒にやってやる、超大サービスだ…変身」


『KAMEN WRITE = DIVEL !』









「そんじゃいくぞー!せーの!」


ラークさんの掛け声とともに、デリィさんとスピィさん、ラークさんとラスボスがそれぞれペアになって、巨大猪に向かって走り始めました。

村人達も慌てて道を空けました。


「空も飛べるはずぅーっ!」


「I'll be back…」


「衝撃しゅごいのぉんっ~~!」


「おい厨二野郎!早く移動しないと」


「…我が神の生贄となれっ、代償回避(サクリファイス)っ!!」


「…っざっけんなてめええええぇぇぇああぁぁぁぁぁーーー!!」


一部の人達が間に合わず吹っ飛ばされました。


「「えーいっ!!」」


バゴンッ


「グルオンッ!?」


まずデリィさんとスピィさんが巨大猪の頭部を杵でぶん殴りました。

巨大猪が気絶し、力が抜けて倒れ始めます。







『フィニッシュポイント!』


『FINAL ATTACK WRITE = 』


「足引っ張んなよ!」


「お前、誰に向かって言ってんだ?それはこっちの台詞だ」


「おい元に戻せ!」


「うるせー!このままやった方が面白そうじゃねーか!」


「ずるいぞ!私だって新しいモード試したい!」


「子供かてめぇは!?後でも試せるだろーが!」


「折角変身したのにぃ~…!」








「「はあああぁぁあああっっ!!」」


デリィさんとスピィさんが巨大猪の前からどくと、すかさず飛び込んで来た化け物コンビことラークさんとラスボスが、杵で思い切り巨体を打ち上げました。


「よし、後は…」


「おいラスボスどこ行く気だ?」


終わるやいなやラスボスが何やら体を黒い霧状にしてどこかへ行こうとしていました。


「…ちょっと用事を思い出してな、急ぎの用だ」


シュウウゥゥー


「あ、おい!何を企んでんだ、俺も混ぜろよ!ちくしょー!」


置いていかれて拗ねるラークさんをよそに、大きな時計が巨大猪に張り付いて動きを止めさせ、時計と同じような大きさの地球儀が巨大猪の上に乗っかり、同じく巨体をその場に固定しました。


『ファイナルアタック・ゼウスパーク!』


『DI DI DI DIVEL!!』


「「喰らええええぇぇぇっ!!」」


「ふんっ!」


そして、三人の戦士が巨大猪をキックで貫きました。


「ーーーーー!!!」


巨大猪は断末魔さえ上げられず、とどめを刺されました。


「…ジョーカー・ブロウ」


『切札の一撃ッ…!』


一拍遅れて、巨大猪が漆黒の十字の光を放ち、爆発しました。ちなみに普通光がない状態が黒色に見えるので黒い光という表現は正しくなく、ありえないのですがファンタジーなので気にしてはいけまけん。というか他にどうやって表現しろっちゅうねん!?(逆ギレ)

爆発した巨大猪は何とも都合の良いことに、毛皮と骨や角、そして大量の、大体スイカサイズのブロック状にカットされた肉に解体され、いつの間にか出現していた巨大なまな板の上に落下しました。


「さらばだ」


シュウウゥゥゥー


「…凄かったな、今の!見たか!?敵の時間を止めたんだぞ私が!今!」


「見た目が奇妙な割に、どうしてなかなか強力な業でしたね…」


「…おい待て、今なんか変な奴が増えてたぞ」


「…たぶんあいつだ。気にするな」


「あいつって誰だよ!?めっちゃ気になるんだけど!?」


「…着物を着た筋肉魔人、とだけ…下手にバラしたら、この俺ですら何されるかわからん」


「ああ、あいつか…」


こうして、猪捕獲大会は無事終了し、村では予定通り餅つきをしたのでした。餅つきは今回の話が長すぎて作者が飽きたので割愛します。一応少しだけ説明すると、結局星が真っ二つになったりしました。

めでたしめでたし。








「おいラスボスずりーぞお前だけ最後も参加するなんて!」


「さあ、何の話だ?あれは正体不明の謎の戦士、仮面ボスシークレットだ。我にも正体が全くわからん…謎だ。一体誰なんだろうな。全くわからない」


「あーわかったわかった!もう正体不明でいいから、それよりあれ装杖だよな!?俺にもああいうのくれよ!」


「お前には必要ないだろう。それに自分で作ればいいのではないか?」


「簡単に言ってくれんなよ、素材とか集めるの大変なのに…そもそもああいうデザイン作ったことないし、あのレベルだと普通のよりもっと素材色々必要になってくるだろ!?なあー、俺にもああいうの作ってくれよー!」

装杖(そうじょう)

以前ラスボスの説明していたように、特定のアクションにより持ち主に鎧やローブ等の装備を纏わせることができる道具。トリガーとなるアクションは、初めて持った時、魔力を流す、ポーズをとる、スイッチを押す、等様々。杖とはいうものの、大半が杖の形で製作されるだけであり理論上は他の形で作ることも可能(かなり難しく現在の通常の技術では作製できないが、実際他の形で作製された物も極僅かながら発見されている)。大昔の魔道具発明家の倉庫に埋もれていたオリジナル(後に別の場所で更に古いそっくりな物が発見されるが、こちらがそのままオリジナルと呼ばれ続けている)が発見されたのを皮切りに、多くの者により魔術、科学、スキル等の多方面から同様の代物の作製が試みられたが、成功例は非常に少なく、初めて発見された物を上回る性能の物は数える程しか存在しない。現在では、そうして製作され続けている研究者達の努力の結晶達、大昔の遺跡や倉庫等から発見される類似品、オリジナル、職人達によって作られている比較的簡単な物(それでも数十年の予約待ち)、そしてどこかの賢者もどきやラストボス等極々一部の鬼才によって作られる超高性能品(もはや別物)が存在している。

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