いつもの武具工房
美しき宝玉を出たカナは慣れた道を通る。冒険者という職に就いたのはつい最近だが、持っていたセンスで数か月ほどでここまでに上りつめた。しかし勿論金は少なく、知識も少ないため依頼を受けず森を散歩するのがここ最近していることだ。しかしそれにはある明確な目的があった。
カナは自身の装備を確認し、一つ溜息をつく。カナの装備はとてもそこら辺の冒険者には買えない代物だ。しかしとてつもなく素晴らしい逸品と言う程でも無い。
そう、カナは装備を欲しているのだ。
そのまま歩きカナはある古臭い建物へと入る。そこの看板には”武具工房サラ”と書いてあった。
その扉を開けるとカランカランと可愛らしい音が鳴る。
「いらっしゃいませぇ~!…あ、カナ!久しぶり!」
店の奥から可愛らしい声を出し、姿を現したのはこの店の店長であり看板娘でもあるサラだった。
「ん、久しぶり!」
サラにとってカナは常連客の中でも同じ女性ということもあって仲の良い人物だった。
…余談だが殆どの客はサラ目当ての客だろう。
「お金、稼いだけどあとどんくらい?」
「えーと…カード見せてくれる?」
そう言われ、カナはポケットからカードを取り出した。これはキャッシュカードといい、預金通帳と同じようなものだ。
「ふーん…500万セルあるんだね。これなら武器一本は作れそうだけど…防具は無理かなぁ」
「じゃあ武器をお願いしたい!」
「どんなのにするかにもよるけど、500万セルは最高級品だよ?もしかしたら素材が足りないかも…。アイデアを教えてくれる?」
「えーと、武器は細剣でお願いする!付与効果はありったけスピードがギューンって上がってバシーンってできるのがいい!あとは…綺麗でかっこいいのにしてほしい」
「相変わらず注文が多いし何言ってんのか分からんし…。まあ、大体は分かった。付与効果を付けたいならもう少しお金が必要かな…。あと100万セル!」
「そこをなんとか…もう少し減らして!」
「じゃあ特別に99万セル!」
「あんまり変わってない…。まあ、頑張るよ」
「頑張って!」
交渉を済ませ身を翻したカナはそのまま真っ直ぐと門の方向へと向かう。
カナが頼んだ細剣は物凄く高価なものだ。大人一人が一日に使う食費でも多くて2000セルだろう。
それはカナが質の良い冒険者だからこそできることだ。
そうして今日もカナの奮闘は続く。