粘鉱石
岩蚯蚓との戦闘が終了したカナは、細剣をチンと腰に差した後、大きく息を吐く。
久しぶりの戦闘にも拘らず、余裕の無い本気の戦いを強いられた。いつもより疲れ、心臓が動悸するのはこのためだ。ロックワームとの戦闘は初めてだったので、これで勉強になったと自身を慰め、彼女は先を歩く。
洞窟の道はそこまで長くなく、歩き始めてものの数分で開けた場所に出た。そこは粘鉱石と思われる黄緑がかった白色の鉱石が少しばかり露見している。
(やっとだ…)
再び大きく息を吸い、深く息を吐くとカナは魔納袋を取り出し、中から粘鉱石用のピッケルを取り出す。このピッケルは特殊なもので、見た目は安物の石ピッケルだが、その表面には特別な加工をしている。これはツルドメ草という名前の植物…一般的に”魔草”と呼ばれる特殊な効力を持った草から抽出した水分や粘着力をはじく成分のある液を塗っているのだ。
そのピッケルを使えば、天然の粘鉱石の粘着力をほぼほぼ無視して採掘することができる。しかし石のため脆いため貸出用や使い捨て用として使われることが多い。
そのピッケルを使い、カナは少しだけ露見している粘鉱石へ向けてそれを振るう。
__カチン、カチン
そんなリズミカルな音が響き、だんだんと周辺の石が削れて行く。
それを続けること一時間。カナは魔納袋を確認する。
「リストオン!」
そのキーワードを唱えた途端、魔納袋から光り輝く半透明のパネルが空中に浮いた。
そこにはリストがあり、何が幾つ入っているのかが一目で分かるようになっている。
今は、
粘鉱石×5㎏
となっている。
「リストオフ!」
そう叫んだ後、ピッケルを魔納袋に収納しそろそろ帰るかと帰路に着く。
無事に洞窟から出ると、既に太陽は真上よりも少し西に傾いていた。もう昼を回ったかと思い、少しせかせかと歩く。
とした時…不意に空中から殺気を感じた。上を向くと鷹のような生物が嘴を尖らせて突進して来るところだった。咄嗟にステップで躱し、すぐさま細剣を抜く。
その生物…否、モンスターとは、カナは何度か戦ったことがあった。
名前は大鋭鷹と言い、単体での推奨レベルはⅢ。
よって対峙したカナは大鋭鷹の攻撃を身体を捻るだけで避け、そのまま翼に細剣を突き刺し、最後は蹴りで倒した。が、この時点でカナは嵌められていたのだ。