黒い部屋3
研究所の前でたむろしてた群衆は、一人残らず、研究所に入っていった。
俺達はというと・・研究所の前の庭?いや庭園で休んでいた。
今、入って行っても多分、さっきと同じようになるから、時間差をつけるという訳だ。
二人も賛成した。さっきのは、二人にも、堪えたらしい。
まぁ、時間差を付けるというは付属の要素で、まず一番に足を休ませたかった。無論、さっきのハイヒールの所為じゃない。(それも、あるけど)なんせ、三十分位、ずっと立っていたのだ。足も痛くなるだろ。・・二人も、多分同じ理由だと思う。
それから、二十分位はベンチに腰掛けて、雑談をしていた。最初はすごい混み方だったが、
次第に人も少なくなって来たので、俺達は、入る事にした。しょっぱなから驚いた。
「うわぁ、すっげえな・・・。なんていうか・・表現の仕方が分かんねぇよ。」
明久も同じく驚いてる。なんせ数万冊の本が、円状に並べられていたのだから。大ホールみたいに広い所の壁が、びっしり本で埋めつくされていた。真ん中の、テーブルには、パソコンが置いてあった。本を探すときに使うんだろう。しかし、これはすごい。
壮観だね、まったくもって。だが葉は、少しも驚いて無いのか、平坦な口調でいった。
「ふぅん、此処は資料室の様だな・・。まだ、他の所は混んでるだろうし、ここで時間つぶすか。」
「・・・時間、つぶすって、言ってもなぁ・・・・」
することが無いんだけど・・。だが、葉は不気味なほど笑いながら、
「元々、勉強する為に来たんだから、勉強しなくちゃな。」
あっ・・・・・・・・。た、確かに。いやいや、此処でやることねぇだろ〔汗〕
だが、葉は俺たちを追い詰める台詞を考えていたかの様に、追い詰めていく。
「どうせ、“光子”なんて、名前だけ知ってるぐらいだろ?どうやって形作られてるかも、知らないだろ?」
「そんな事、知るわけねぇだろ!それ理解できんのって、この大学ぐらいだろ。俺らが、
理解できなくったって大丈夫なんだから、しなくて良いじゃん。」
「高二で、ちょこちょこと、大雑把にだが、習うぞ。予習だよ、予習。」
「ま、まだまだ先の事だろ、それに俺たち、やれば出来るしさ。なっ」
「そうそう、まだ先のことだって」
俺たちは、葉のペースに乗せられまいと、必死に抵抗を、試みたが・・・・・
「やれば出来る、って事は、つまり、やらないってことだろ?ふっふっふ、墓穴を掘ったな。それに、やる事ないだろ?時間を無駄にしちゃあ、いけないな〔笑〕」
正論の前に脆く砕け散った。やっぱり、口論じゃ、葉に勝てません〔涙〕
〜とある大学〜
ヒュウウ・・と、窓に風が当たる音が、聞こえたかと思うと、聞き慣れたチャイムが聞こえてきた。小学校から聞いている、なにひとつ変わらない、平凡な音だ。
二限の授業の終わりを告げる、チャイムが鳴った。この時間は、数学の授業だったが、今日だけは、はっきり言って無駄だった。授業が行われた意味は無かったと思う。
数学の授業は、毎日毎日、暇だった。先生に問題があるのだろう。
なんせ、この先生は、ただ普通に問題の解き方を教えて、問題集をただひたすらやらせるだけなのである。この行動を例えるなら、役者が何の感情もこもっていない声で、台詞を棒読みしているだけなのだ。人というのは、まず驚きや変化を求めるということを知らないのだろうか。驚きや、変化がないと、人が何をしても無駄で終わってしまうものだ。
毎日毎日、同じ事を繰り返していても、人は慣れるだけで、やる気や努力の類は何ひとつ感じられなくなる。むしろ、やる気の喪失により作業の停滞さえ招く恐れがある。
そして、それがさっきの現状だった。問題集をやっている振りはしているものの、手は動いていない。ケータイで暇を潰している者さえいた。やはり皆には無駄だっただろう。
だが、その時間を有効活用しない者も、俺にとっては無駄な存在だった。その場だけが、自分だけが、楽しければ良い、と思い行動してる奴も要らない存在だった。
二限のことを思い返していると、イライラしてきた。今、世界を変えようと、奮闘するものがいる中、グタグタと日常を生きている奴の気が知れなかった。
次の時限ために教科書をロッカーから取ってきて、イライラしながら教室に入ったら、
むっぅぅ・・・・臭い・・。ひどい臭いだった。
香水か何かの臭いが、暖房によってかなり強烈な臭いになっていた。よくもまぁ、この臭いの中にいられるのか、と教室の中にいる奴らを嫌悪した。
何人かの奴らに声を掛けられたが、適当な返事をして切り抜けた。
教科書を机に置いて、休み時間ぎりぎりまで外に出て、このひどい臭いから逃れようかと思ったが、授業が此処で行われるのだから、慣れておかないと、と考え直した。
そして、席に座り周囲を眺めていたら、ふと、窓に目がとまった。
風が強いせいか、ギュオォォォ・・という風鳴りがする。
急に窓を開けてみたい、という欲求にかられた。少しでもいい・・新鮮な空気を吸いたかった。
だが、開けたら非難喝采だろう。まだ、目立つ訳には、行かない。気の小さい人格を装っていなければならない。まだ、時期ではないのだ。
しかし・・・・・窓を開けた。ヒュォォォ、と冷たいきれいな風が入ってくる。寒いのは嫌いだが、なぜか心地よかった。さっきまで、イライラしていた心が落ち着いてきた。
だが、後ろからは、視線を感じる。どうせ、何やってるんだコイツ、みたいな顔をしているのだろうから、後ろは見なかった。それに、今後ろを向いたら驚かれるだろう。
なんせ、満面の笑みをうかべているのだから。
そこで、ふと、アイツらは成功したかな・・?という疑念が脳裏をかすめた。
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