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退魔師の二度目の生は幽霊少女と  作者: 尾多 悠
第六部 君と永遠に
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18 「哭く都市 3」

 期せずして沙也たちとの合流を果たした真とハナコであったが、真にとっては行く手を阻まれる形にもなった。

 先を急ぎたいのは山々ではあったが、明らかに顔色の悪い麻希を放っておくこともできない。客室は数多くあるがいずれも鍵が掛かっていたため、仕方なく彼女を廊下の壁にもたれさせるようにしてから、互いに情報共有を始めることとなった。


「あたしたちが展望台に着いたときには、あんたたちはもう居なかった」


 沙也は腕組みをして不機嫌そうな態度ながらも、的確に起こった出来事を語った。

 展望台へと向かうエレベーターの混雑具合から、沙也たちは真とハナコから遅れて到着した。しかし、その時には既に二人は弐道五華からの接触を受けており、連れ出された後だった。

 余裕をなくしていたとはいえ、その時点で連絡を入れなかったのは真の落ち度だろう。沙也たちは不審に思いながらも二人の姿と、この場へ自分たちを呼び寄せたはずの新堂進を探したが、結果は空振り。

 そうこうしている内に、沙也がビルを覆う黒い霧に気付いたのであった。

 見ただけで身の毛もよだつ恐ろしい光景だ。理解が及ばないながらも、沙也は最大限の警戒をもってこの場から離れなければならないと決断した。


「真、あんた気付いてる? あたしたちはまだ大丈夫みたいだけど、ここに居続けるのは確実に危険よ」


 沙也は倒れている麻希を一瞥し、真を見据える。彼女の言わんとするところを汲み取り、真は頷いた。


「ああ……さっきから全身がむずむずすると言うか、隙を狙われているような感じはするな」

「ええ、そうね。信じたくない話だけど、ビル全体が結界に囚われているわ。中に居る全員が、この黒い霧に侵されようとしている」

「もしかして、お前たちを襲っていた奴らは……?」


 真の質問に忌々しげに首肯する沙也。彼女が薙ぎ倒した大人たちは命に別状がない事を確認しただけで、そのまま放置していた。


「操られてるって感じね。あいつら、あたしたちが浸食されていないから標的にしているみたいよ。ったく、ゾンビかっての」

「それで、ここまで先輩たちを庇って逃げてきてくれたってわけか。すまん、俺がいないばっかりに」

「自惚れてんじゃないわよ。あたしがお姉ちゃんを守るのは当然なんだから。まあ、そいつはついでよ」


 それで、と沙也は「次はお前の番だ」と言わんばかりに自分の話を打ち切った。


「何があったか話しなさい」

「……分かった。時間もない、手短に言うぞ」


 真は新堂誠二の秘書、弐道五華と名乗る女に会った事。そして、新堂誠二の精神が如月に乗っ取られている事。沙也はビル全体と言ったが、結界の影響範囲はおそらく凪浜市全土に及んでいるであろう事を話した。

 当然、結界も如月たちが仕掛けたものであり、進もこの場には居ないであろう予測も交えてである。


「如月って、無色の教団の頭だった男じゃない。死んだんじゃなかったの?」

「そのはずだ。だが、あの話し方と雰囲気、間違いない。肉体は死んでも、意識を生き残らせたとか言ってたが……」

「……そう。嘘か本当かは置いとくにしても、市長と秘書(そいつら)が首謀者ってことね」


 如月の件についてだけは半信半疑といった風ではあるが、沙也は一応納得したようだった。が、彼女は疑わしげな雰囲気を残したまま、次に真に訊ねた。


「まさかとは思うけど、あんた、そいつらを止めに上に向かおうとしていたの?」

「何だって?」


 まるで咎めるかのような言い方に、真も訝しんで沙也を見返す。


「放っておく理由があるのかよ。あいつらは、都市全体を狙おうとしているんだぞ」

「そうかもしれないわね。けど、あたしとしてはビルから離れるべきだと思うわ。お姉ちゃんたちを安全な場所に移すのよ」

「そ、そうだよ浅霧くん! わたしのことは良いとしても、このままじゃ、麻希ちゃんが……」


 麻希に寄り添って二人の話を黙って聞いていた柄支が、そこで堪らず口を挿む。

 薄目を開いてはいるが、麻希の意識はほぼ失われつつあるように思われた。呼吸は荒く、酷く蒼白となった顔には汗がじっとりと滲んでいる。


「ここから地上まで、まだまだあるわ。あたし一人じゃ、さっきみたいに数で押されると辛いのよ。でも、あんたが手を貸してくれるなら逃げ切れる」


 沙也とて、何の罪もなく巻き込まれた人々を手に掛けるつもりなど毛頭ない。柄支が動けぬ麻希を支える中、だからこそ沙也は守るばかりで追い込まれていたのだ。そこにもう一人攻め手が加われば、避難の難易度は格段に下がる。


「止めたいってあんたの気持ちは分からないでもないわよ。けど、敵の力はこの結界からだけでも十分に伝わるわ。そんな相手に勝算はあるの? 勇み足になってないか、もう一度冷静に考えなさい」

「……お前に冷静さを問われるとは思わなかったぞ」

「茶化すな。あんたの選択一つで、あたしたちの命運が決まるのよ」


 要するに、沙也はこう問うているのだ。義憤に駆られて勝算があるかも分からない戦いに臨むか、少なくとも目の前の友人を救うための選択をするか、と。

 沙也が最も優先するべき事柄が何であるのかは、真も理解している。彼女はそのために真の力を頭数として当てにしており、彼にもそうするべきなのだと言っているのだ。


 しかし――沙也は真の気持ちについて、一つ大きな思い違いをしていた。

 もっとも、その点に関してだけ真は伏せていたため、それも仕方のないことなのだろうが。


「それじゃ駄目なんだよ。都市全体って言っただろ。つまり、ビルから抜け出しただけで結界の影響下から逃れられるって保障はないんだ」

「だったら、凪浜市から出ればいいだけのことじゃない。分の悪い賭けをするより、はるかにマシよ」

「それでもだな――!」

「真さん! も、もうやめましょう!」


 あくまでも事態の収拾に拘ろうと反論する真だったが、そこで彼の言葉を止めたのはハナコだった。


「いいんですよ。わたしのことを気に掛けてくださっているのなら……わたしは、大丈夫ですから」

「……どういうこと?」


 何かを隠すように、悲愴な表情で訴えるハナコの様子に沙也が真に問い質す。しかし、真は険しい面持ちで顔を背けるだけで、答えようとはしなかった。

 

「答えなさいよ!」

「……うるさいな。その辺に、しておけ……」


 沈黙を貫こうとする真に掴みかからんとする沙也であったが、弱々しくもはっきりとした声が届き、彼女の動きを制した。


「麻希ちゃん! 無理しちゃダメだよ!」


 無理をして動こうとする麻希を、柄支が押さえようとしていた。だが、麻希はそれを無視して気丈にも立ち上がり、壁を支えにして大きく息を吐く。


「つまるところだ……私が足手纏いなのがいけないのだろう。芳月の手を借りずとも……逃げるくらいの事はする」

「……ッ、ああもう。話をややこしくするなっての!」


 舌打ちを隠さずに、沙也は麻希に向き直ると彼女の肩をぐいと押した。たいした力を入れてなどいない。それだけで、麻希は呆気なく尻餅をついてしまう。


「無理よ。多少の修羅場の経験からどうにか保ってるみたいだけど、それだけで凌げるほど甘いもんじゃないわ。無駄に体力使われて、他の奴らみたいに操られたりしたらたまったもんじゃない。大人しくしてなさい」

「ふざけるな……大人しく後輩の足枷になっていられるか……」


 下唇を噛み締め、沙也を見上げる麻希。だが、沙也はまるで聞く耳を持たない。もう一度足に力を入れようとするが上手くいかず、横合いから柄支に上体を支えられた。


「無茶だよ、麻希ちゃん。沙也ちゃんの言う通り、大人しくしようよ」

「くそ……いや、待て。浅霧と沙也が平気なのは分かるが……芳月、なぜお前は平気なんだ」

「え? あ、言われてみれば……確かに、そうだね……?」


 不意に問われて、柄支が目をぱちくりとさせる。彼女自身、今までその事実に気付く余裕もなかったのだろう。

 霊気の扱いに長けた真と沙也がこの状況でも問題なく動けているのは理解できるが、そうでない柄支も麻希と同じ状態に陥ってもおかしくはないはずだった。それなのに、柄支は紛いなりにも麻希の身体を支えて動けている。

 この違いは何なのか。その答えは、沙也の口から語られた。


「お姉ちゃんは、あたしと『接続』してるからよ。まあ、簡単に言うと、あたしが保護してるってことよ」


 芳月姉妹の魂は、その血と過去の出来事によって『接続』可能な状態にある。柄支は預かり知らぬ事だったが、沙也は自らの霊気をもって、姉を浸食しようとする黒い霧の手を未然に防いでいたのだった。


「そ、そうだったんだ。わたし、何も知らなかったよ」

「……その『接続』というのは、私にもできないのか?」

「できないわね」


 沙也は即答して、無情にも首を横に振る。そう易々と実現できていれば、このような苦労はしてないのだ。


「あたし一人で二人分は請け負えないわ。そこまですると、あたし自身が戦えなくなる。そもそも、あたしはお姉ちゃん以外と繋がる気はないから」

「非常時に……私情を優先か」

「非常時だからこそ、私は何より私情を優先するのよ」


 にべもなく麻希の言葉を切り捨てて、沙也は肩を竦めつつ吐息する。


「あぁ――そうね。でも、どうしてもって言うのなら、そこのお人好しにでも頼めば?」


 そして、妙案でも思いついたように真に視線を投げて、そんなことを言い出した。

 ぎょっとして真は沙也を見返すが、彼女は決して冗談の類いを口にしている風ではなかった。

 あくまでも真剣に、状況を打破できる可能性を提案しているのである。


「そう言えば、あんたは千島珊瑚とも『接続』してたでしょ。だったら、やり方は分かるわよね」

「そうなのか? 浅霧……」

「いや、確かにやり方は聞いたが、珊瑚さんのときは一方的にされただけで……俺自身がやる側に回ったことはないから……」

「? けど、実際に『接続』した経験があるなら、感覚は掴んでいるでしょう。あんたはハナコとも魂が繋がってるんだから、そこのところは普通の奴よりかはできるはずよ」


 思わぬ球を投げられて、真はしどろもどろになる。そんな彼の態度を沙也はどう捉えたのか、眉を潜めながらも利を説くのだった。


「あんたが麻希そいつの身体にかかっている負担を取り除けるっていうのなら、話は早いわ。二人が動けるなら、あたし一人でも十分に手は足りるし、あんたもこっちを見捨てずに事態の収拾に行けるってもんでしょ」

「…………」


 沙也の言うことは理に適っているようにも聞こえるが、「じゃあ」と易々と頷ける話ではなかった。

 だいたい、『接続』について真よりも詳しいはずの沙也が、どうしてそんな提案ができるのか、真はまずその神経を疑った。

 非常時にそんなことを考えている自分の方こそ価値観が違うのかとも思ったが、慌ててそのような考えを振り払う。


「浅霧、お前に負担が掛かるのは私もよしとはしないが……もしも、私に遠慮しているのなら、構わん。このまま足手纏いになるくらいなら、なんだってする」

「先輩……いえ、覚悟は伝わりましたけど、やっぱりそれは」

「じゃあ、如月たちを止めるのは諦めて、逃げる方に手を貸してもらうわよ」

「何だと!?」


 いつの間にそういう話になったのか、沙也の勝手な言い分に真は声を荒げる。

 しかし、柳に風であった。彼女は折れる気などさらさら無く、こうしている間にも状況は悪くなる一方なのである。どちらを選ぶにしても、これ以上時間を掛けるべきではないのは明らかだった。


「真さん……えっと、わたしのことなら、本当に……」

「お前は少し、黙っててくれ……」


 おずおずとハナコが真になおも申し出ようとするが、彼女の意見を真は聞き入れようとはしなかった。

 この結界は多くの人を巻き添えにしている。どうにかしなければならないのは確かだ。しかし正直に言えば、真にとってそれは二の次でしかない。

 沙也が柄支の身の安全を優先しようとするのと同じだ。何をいても、真は弐道を追うと決断している。

 たとえ卑劣で薄情だと誹られようとも、手の届く範囲に居るこの機会を逃しては、決してならないのだと。


「……分かったよ。それでお前が納得するってんなら、やってみよう。けど、上手くいかない可能性もあるんだからな。その時はどうする気だよ」

「その時は、素直にあんたも逃げるのよ。嫌なら成功させなさい」

「勝手なことばかり言いやがって……」


 沙也を横目で睨みながら、真は麻希の前まで進んで膝をつく。張り詰めた空気を感じた麻希は一度息を呑んだが、口だけではないと示すように、じっと彼を正面から見返した。


「古宮先輩、まず説明しておきます。『接続』には相手の情報が必要だそうです。情報と言っても個人情報みたいなものではなくて、もっと生物的なもの……具体的に言ってしまうと、体液の交換をする必要があるってことです」


 真は努めて淡々と語り聞かせて、己の右袖を捲った。


「それに一番手っ取り早いのが、血です」

「……なるほど。浅霧の血を、私が吸えばいいわけか……そして、私の血も……」

「そういうことです。少し痛い思いをしてもらいますが、いいですね?」

「問題ない……。芳月、すまないが、私の袖も捲ってくれ」


 限界も近いのだろう。瞳に光を灯しながらも、麻希は身体を動かすこともままならないまでに弱ってきているのだった。


「沙也、頼む。なるべく痛まないようにな」

「努力はするわ」


 真と麻希は互いの右腕を露わにする。身体を傷つける刃物の類いはないため、その役は沙也に一任した。

 沙也の右手に鮮やかの緋の霊気が収束し、一瞬の閃光が廊下を照らす。もうそれで、霊気は一振りの太刀として形を成していた。


「いい? 動くんじゃないわよ」


 己の肉体の一部に等しい得物で沙也が仕損じるなどあり得ないことだが、切っ先を向けられて緊迫感が高まる。

 真と麻希が頷いたことを確認して、沙也が踏み込もうとする。瞬く間に、痛みを感じる暇も無く二人の腕は斬られる――はずだった。


「待て。その必要はない」


 不意に真は背後から肩を掴まれ、後ろに下がらされていた。狙いをずらされた沙也が寸でのところで動きを止める。

 いったい何事だと一同が目を向けた先には、浅霧静が立っていた。彼女にしては珍しく息を切らせている様子で、急いでここまで来たことが窺える。


「静姉!? どうしてここに!?」

「どうしてもこうしてもあるまい。このような事態、到底見過ごせるはずがないだろう」


 真の肩から手を離した静は、額の汗を軽く拭って息を整えた。

 それにしても、ここは地上から優に五十階はあるはずだが、一気に階段を駆け上がってきたというのか。

 相変わらずの出鱈目な体力に真が面食らっている間に、静は彼の胸に押しつけるようにして何かを寄越した。


「真、これを持っておけ」

「これは……」


 手渡されたものは、真が戦闘の際に使用している黒塗りの木刀であった。観光の場に物騒なものを持ち運べるわけもないので携帯していなかったが、わざわざ姉は運んで来てくれたらしい。


「事態は概ね把握している。上り切る前にお前たちに会えたのは僥倖だった」


 つまり、静はもう戦いが始まるであろう事を見越しているのだった。彼女は真を押し退けて、彼の代わりとなるように麻希の前に進み出る。


 そして、何も告げぬまま、出し抜けに麻希の唇を奪っていた。


「――むぐ!!?」


 予期できるはずもなかった静の行為に、目を白黒させた麻希は反射的に身を引こうと動くのだが、背中を力強く抱き寄せられてしまってはそれも叶わなかった。そもそも彼女に抗える力など残されてはいない。

 荒々しく熱を帯び、どこか煽情的な二人の姿態に周りの者は目を丸くして言葉を失う。それは数秒の事であったが、無抵抗な少女の唇を吸い尽くすには十分過ぎる時間だった。


「――すまんな。色気も何もないが、まあ女同士のことだ。数の内には入れないでくれ」


 やがて解放された麻希が、咳き込みながら忘れていた呼吸を再開させる。事後承諾もいいところの謝罪もそこそこに、静は麻希の背を抱えたまま、片手をそっと彼女の下腹部に触れさせた。


丹田はらに力を入れろ。それで少しは楽になる」

「……ぁ」


 まだ朦朧とする頭のまま、麻希は静の補助を受けて言われるままになる。すると、不思議と彼女の身体に活力が戻り始め、血が熱を宿すのだった。

 意識が覚醒し始めた麻希の唇に、じんとした痛みが走る。恐る恐る触れてみると、赤い血が指先についていた。


「もう少し回復は必要だろうが、立てるな?」

「はい……あの……」


 感謝か、あるいは文句か。何か言いたげではあったが、何を言うべきか思いつかないまま、麻希は自分の両足で立つ事ができるようになっていた。満足げに静は彼女の様子を見届けると、自身の口端に伝っていた血の滴を指の腹で拭い取る。


「さて、これで一つ問題は片付いたな。沙也、お前は柄支たちを連れて中心ここから逃げろ。なるべく遠くへ離れれば結界の影響も少なくなるはずだ」

「――っ、あんたね。脈絡がなさ過ぎるのよ!」


 言われて正気を取り戻した沙也が眉を吊り上げる。しかし、即座に気持ちを切り替えたのは流石と言うべきか、目の前で繰り広げられた光景を忘れるように彼女は首を振り、柄支に駆け寄って背中を叩いた。


「お姉ちゃん。いつまでもボウッとしてらんないわよ。しっかりして!」

「はっ!? え、ああ、うん。そ、そうだね」


 浮ついた空気を締め直すように檄を飛ばされて、びくりと飛び跳ねるようにして立ち上がる柄支。麻希はまだ青い顔色ではあったが、確実に血の気が戻りつつある頬を苦笑気味に緩めて、小さな友人の頭に手を乗せた。


「心配をかけたな……。ひとまず、身体の方は持ち直せそうだ。静さん、感謝します」

「ああ、大事なくて良かったよ。私たちに構わず、早く逃げるといい」

「ってことは、静姉。あんたも付いてくる気かよ」


 真もまた唐突な展開から立ち直り、姉に問い掛ける。静は「無論だ」と、真に向き直った。


「でなければ、わざわざ『接続』の役を代わったりはしない。お前は止めても行く気なのだろう。ならば、姉として捨て置くわけにはいかん。ハナコもいいな?」

「……は、はい」

「安心しろ。お前の想いを蔑ろにさせるような事は、私がさせん」


 真剣な眼差しで紡がれる静の言葉に、ハナコが目を見開く。

 どうやら、静が概ね事情は把握しているというのは嘘ではないらしい。それもかなり深い部分まで。


「さあ、とっとと決着をつけに行くぞ」


 そうして、済し崩し的に静を戦力に加える形となった真とハナコは、再び屋上を目指すのだった。

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