泡沫の幻想
夜の帳が空を覆い始めた頃
薄暗い茵に蝋燭の灯が揺らめく…
そこには、物の怪の影が1つ茵に横たわる主
をみつめてる。
「貴方はいつまで其処にいるのですか?」
「…」
物の怪は答えない
布地で覆われている目を物の怪の居るであろう
場所にうつしそっと手を前にだす
それをみた物の怪は驚き目を見開いてすぐに哀しい
瞳をした
「泡沫様…私はここで御座います。」
今にも折れそうな手をそっと自分に誘導する
「あぁ、貴方はそこにいたのですね。貴方の声は鈴
の音のようで美しい。」
「泡沫様…」
「貴方は…夕月は私が朝日をみれないことわかって
いるのですね。」
そう言って物の怪の頬を触る
「泡沫様…私は貴女に何もできませんでした
それが悔しいのです。」
「夕月?私は貴方に沢山助けられましたよ。妖が視
える私の隣にいつも居て沢山話してくれました。」
物の怪は人型になると主の手を握った
「ですがっ…1番助けなければいけないとき助けれ
ませんでした」
「いいのです。それが天命なのです。夕月泣いて
はいけませんよ」
「はい…泡沫様」
「ね、夕月。私みたいな半妖は三途の川を渡って
冥府へいけるかしら」
「えっ…泡沫様ならいけます必ず」
「そうね。でも、夕月と居れるなら彼岸と此岸の堺
でもいいかしらね。」
「泡沫…様」
段々と空が赤らんで薄暗い茵に一筋の明りが
はいってきた
「あぁそろそろお迎えがくるわ。」
「嫌です…泡沫様…逝かないでください…ふっうっ…」
「夕月、貴方にとっては永劫の時の流れの一瞬の
命…私のことは早くわすれ…なさい。」
目は布地で覆われているが口元は微笑んでいた…
「泡沫様…貴女への気持ちを花に…たくします。」
「ありがとう。夕月…」
その時 「カタンッ」と蝋燭が倒れる音がした……。
「ほら…泡沫様…朝日ですよ。綺麗な朝日です…」
山の麓のその場所からは山々の間から
綺麗な太陽が顔を覗かせていた…
そして、いまも綺麗な太陽が昇る日には紫苑の花が
咲くとか咲かないとか…
紫苑
〜花言葉〜
追悼
貴女のことを忘れない
遠方にある人を思い続ける