上月学園
「れ・・・・ん・・・れ・・ん・・・・連ってば!!」
「ん?……あぁ、凛。どうしたんだ?」
「どうした?じゃないわよ。そろそろ着くわよ」
「あれ?いつのまにそんなに時間たったんだ?」
「あれ?じゃないわよ。眠いって言って到着しそうになったら起こしてって言ったのは連でしょ」
「そう言われれば言ったような」
「まったく」
目的地にそろそろ到着するようなので俺は結構寝てたことになる。
「仕方ないだろ。朝早かったんだから」
俺と俺の事を起こしてくれた、綺麗なロングの黒髪を後ろで結んでポニーテールにしてお嬢様のような風格をしている幼馴染の凛は、地元の始発の列車に乗り、長い時間をかけてとある場所に向かっていた。
「やっと着くのか。『上月学園』に」
「近年増加しつつある犯罪者、犯罪集団を捕まえるために、剣で戦う特殊な警備部隊『剣備』を育成するたに作られた訓練校、上月学園。訓練校に入学した学生は剣備部隊を目指して、三年間訓練して卒業をする。中には例外もいて優秀な生徒は剣備に所属しながら訓練校に通う場合もある。まぁこんなところかしらね」
特に覚える必要もないと思う学園説明を凛は一字一句間違えることスラスラと話した。
「わざわざ学園説明を覚えたのか?」
「なんとなくよ。なんとなく」
なんとなくでよく覚えたものだ。
「連、怖い顔してるわよ」
凛が心配そうな顔をしながら問い詰めてきた。
「ん? そんな顔になってたか」
色々と悟られないようにぶっきら棒に答える。
「連……お願いだから、無茶なことしないでね。上月学園に入学出来たけど剣備になったわけじゃないんだから」
「大丈夫。わかってるよ」
凛に心配されているが俺は進むしかないんだ。あることを成すために。
そんな話をしていたらアナウンスが流れ出した。
「まもなく、上月。上月」
「やっと到着ね。連、降りる準備をしましょう」
「準備って言っても、そんなに荷物があるわけじゃないけどな」
俺達の故郷から行きだけで6時間近くかかってしまうので実家から通うのは流石にキツイ事もあり、寮住まいにした。
なので服などの荷物はすでに寮の方に送ってある。
とりあえず、何か忘れているものがは無いか確認していたら、
「上月。上月。降りる際は忘れ物の無いよう注意してください」
到着アナウンスが流れた。
「連、忘れ物ないわよね? それじゃ降りましょ」
「あぁ、行こう」
俺達は電車を降りた。
「電車の中ではあまり気にしなかったけど、俺達と同じのがいるな」
俺や凛のように、上月学園の征服を着た学生が改札に向かっていく。
「そりゃいるでしょ。多いってほどじゃないけど剣備は憧れの職業とされているのだから」
人の流れに乗りながら進んで行き、改札を抜けた。
そこには、町の中心に噴水がありそこが休憩場所のようにベンチが置いてある。周りには雑貨屋や喫茶店、中には武器屋など色々な店が並んでいた。
「こりゃすごいな」
「遠出をしないで済むように大体のものがここで揃うようになっているそうよ」
足りないものがあってもすぐ買いに行けそうだ。
「町を見回りたい所だけれど、上月学園に向かうか。入学式に遅れるわけにはいかないしな」
流石に入学式から遅刻をして教師から目をつけられるわけにはいかない。
「そうね。入学式が終わってから色々見回りましょう。連、もちろんその時は付き合ってくれわよね?」
「わかったよ」
こんな時拒否しても無理やり連れて行かれることになるので仕方なく肯定しておく。
「うん! よろしい」
まったく、嬉しそうな顔をして、このお嬢様は。
そんな話をしながら街の中を進んでいくと、駅から少し離れた所に学園はあった。
「写真とかで見たことあるが、改めて思うが実物を見ると凄いな」
「そうね。校舎だけでも結構な大きさだけれで、他の施設も大きいわね。当然と言えば当然かもしれないけどね」
これからここで剣備に入隊するために勉強を出来る事を思うと、俺は嬉しなってきた。
「嬉しくなってないで早く入学式場にされてる訓練場に向かいましょう」
「勝手に心の中を読まないでくれ」
「あなたがわかりやすい表情をしているのが悪いのよ。分かるのは私だけかもしれないけどね」
凛は嬉しそうに言ってくる。
「はぁ、もういいよ。早く行こう」
俺は半ばあきらめて訓練場に向かった。
式場に入ると既に結構な俺達と同じ新入生がパイプ椅子に腰を下ろして、式が始まるのを待っていた。
「私達も座りましょう」
「そうだな。確か座る場所は決まっているんだっけ」
自分の座る位置を確認する。
「俺は・・・92番か」
「私は93番ね」
自分達の番号をを確認して席に向かい腰を下ろした。そして凛は周りを見回して、
「それにしても今年は何人ぐらいいるのかしらね?」
「そうだな……大体100人ぐらいじゃないかな」
「この中から剣備になれるのは何人いるのかしらね」
「さぁ? 10人いるかいないかじゃないかな」
剣備になれるのは年によって変わってくる。
10人以上の年もあれば、誰もなれない年もある。
「それより、そろそろ始まるらしいわよ」
他の新入生もいつのまにか集まっていて、式場に置かれていたパイプ椅子は全て埋まっていた。
「式を始めますので静かにしてください」
マイクで女の教官が注意を促す。
式場が静まりきったところで、50歳ぐらいの厳つい顔をした角刈りの教員が壇上に上がった。学園案内にも乗っていたがここ上月学園の校長だ。
俺達新入生の目線が壇上に集まったところで、校長は話しだした。
「私はこの学園の校長の『石渡 玄丸』だ。新入生の諸君、入学おめでとう。君たちはこれから特殊警備部隊『剣備』を目指すことだろう。中には途中から目指すものが変わってくるものもいるだろうが、もちろんそれもかまわない。ここは訓練校だが、勉学の方も力を入れている」
石渡 玄丸……この場にいるものなら知らない人はいないだろう。剣備部隊を創設し、数々の犯罪者を捕え名誉を貰っている超有名人。石渡校長に憧れているものも数多くいるだろう。
「剣備を目指す者そうでない夢を目指す者も、この三年間で切磋琢磨をして自分を磨いてもらいたい。壁に当たってしまっても挫ける事無く強い信念、向上心を持って学園生活を送ってもらいたい。私からの話は以上だ」
石渡校長が話しを終え壇上から降りていく。
「これにて式を終了します。この後皆さんは昇降口の掲示板に貼ってあるクラス分けをを見て自分のクラスを確認して下さい。各クラスの向かう教室も同じく書いてありますので忘れないで確認して下さい。以上、解散」
解散の号令とともに新入生が式場から出て、昇降口に向かって行く。




