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Akashic Records~Edgar~  作者: 誠
◆ナタリー~二つの顔を持つ街~
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86.朝日は昇る


 涙で赤く腫れた目。まだ朝日も昇らぬ白っぽい空の下、少女は橋に向って歩いていた。足取りは重く、じっと地面を這う褐色の足を見つめている。考えることすらままならい頭を過るのは、昨晩の光景。



ーークリストフ、違うんだ、あれは……!ーー


 何が、違うというのか。


ーーあなたも大変だったでしょ? 彼、激しいから……ーー


 自分の知らないフィオールを知っている女。悔しさよりも、惨めさで胸がいっぱいになる。

 橋の近くまでやってきて、少女は足を止めた。フィオールと別れた橋。二度と、顔も見たくない。でも、もし……もし、まだ橋にいたら……少女は、恐る恐る橋の上を見た。


「……」

「……」


 茶色い煉瓦が未明の空で白くなる橋の上。そこにいたのは、カイザとシド。二人は無言で立ち尽くし、川の方を見下ろしていた。シドがふと、少女を見た。すると、カイザも少女の方を見る。その表情は悲しげで、少女は思わず後ずさる。綺麗な碧眼が、また……涙を誘う。


「…シド、」

「うん」


 カイザが言うと、シドは眼帯を解いた。白っぽい光に包まれた橋に、真っ黒な煙が一気に広がる。それは、たじろぐ少女を覆った。

 朝がきたかと思えば、夜に逆戻り。夜なんて、もう……嫌なのに。暗闇の中、ぼんやりと視界に映る繁華街。その賑やかな暗がりに、心を抉られる。そして、目の前に現れた一人の男。驚いた顔をするフィオール。二度と、見たくなかった顔。少女の目からは、涙が流れた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「…カイザ、」

「……」


 少し驚いているフィオールの肩を掴むカイザ。向かい合う二人を見上げ、その空気を肌に感じる。ヒリヒリとする、緊張感。それは、険しい表情をするカイザから感じる。


「…こんなことを言っても、お前の気持ちは変わらないかもしれない。でも、俺はやはりお前が悪いとは思わない」

「何だ、急に」

「ユリヤは淫魔に憑かれてる」

「……」

「そしてお前は、淫魔に憑かれたユリヤに……憑かれてるんだ」


 フィオールは唖然として、カイザを見つめる。黙り込むフィオールとは裏腹に、その身体の熱は一気に熱くなる。カイザは、俯いて言った。


「…フィオールには、辛い話になるかもしれない」

「淫魔って……どういう、」

「お前が会った女はもう、ユリヤであってユリヤじゃなかった。宿主の想いに応えて、獲物の生気を吸い尽くす悪魔だ。記憶が無くなって、意に反することをしでかしたのも、その悪魔のせいなんだ」

「ユリヤが……悪魔に。なんとかならないのか!」


 フィオールの懇願するような表情。その一挙一動で、その心が透けるように見える。いや、感じる。ユリヤを案じる、フィオールの心を。


「……」


 カイザは手を放し、視線を逸らした。


「どうにも、ならない。淫魔を払えば、心を侵されたユリヤも死ぬ。かといって放置しておけば、お前が死ぬ」

「……」

「……クリストフに本当のことを言うんだ。どうするかはそれから考えよう。あいつだって、冷静に話せばわかってくれる」


 フィオールは少し黙って、言った。


「…駄目だ。これは俺と、ユリヤの問題だ。あいつは関係ない」


 関係ない。二人の間に入り込むことは、誰であろうと許さない。突き放すような、静かな言葉。


「そんな格好つけてる場合か! お前、次にまた生気を奪われればただじゃ済まないんだぞ!」


 カイザが怒鳴る。しかし、その声は人混みのざわめきに溶けた。立ち止まる3人を、人々は知らん顔で通り過ぎてゆく。フィオールは、カイザを真っ直ぐに見て言った。


「指輪が無いままで、クリストフに会いたくない」

「何言ってんだよ! 指輪と命、どっちが大事なんだ!」

「指輪だ!」


 フィオールの強い言葉に、カイザは黙り込む。


「……俺の命なんかより、あの指輪が大事だ。指輪なんかより、クリストフが大事だ」

「……」


 カイザから沸き立っていた怒りにも似た感情は、その鼓動と共に落ち着いてゆく。逆に、悲しみや憐れみに似た何かが、その碧眼から滲みだす。フィオールは、そんなカイザを見て言った。


「ユリヤから指輪を取り返さなきゃ、俺は前に進めない」


 混沌から生き残ったあの日。夢から覚めて現実を実感させてくれたのは、クリストフだった。確かで温かな感触と、身体を熱くする想い。少女を抱き締めて迸る生を感じ、涙した。終末を跨ぐ最期の恋と、覚悟した。フィオールにとってあの指輪は生の証であり、クリストフは生そのものなのだ。不老の少女と死ぬのは自分だと心に決めていた、彼にとって。


「……ユリヤから指輪を取り戻したらまた話そう。悪魔の対処なんて、わからないからな」


 無理矢理微笑んで見せるフィオールに、カイザは眉を顰める。


「…"また"なんてあるのか」

「あるだろ」

「俺もついて行く」

「よせ、見られたくないんだ」


 この言葉の意味を、カイザはわかっていなかった。黙ってフィオールを見つめていたシドは、なんとなくわかっていたのだが。フィオールは小さく手を振り、人混みに消えた。


「……」


 カイザはじっと遠くを見つめたまま、動かない。


「…カイザ、」


 姿は見えないが、シドの近い声がした。


「クリストフを探すぞ。フィオールをどうにかできるのは、もうあいつしかいない」

「わかった」


 二人は屋根に飛び乗り、橋へと走り出した。フィオールとクリストフが別れた橋。指輪が投げ込まれた川。それを過ぎ去り、何もない寂れた住宅街に出た。暗い中、二手に別れて駆け回る。視界はグルグルと揺れ動き、樽の中や他所の家の屋根裏、家畜小屋まで見渡す。そして、再び住宅街の入口へと戻ってくると、既にカイザがいた。


「……そっちも駄目か」

「うん、風で匂いもしない」

「もう街に戻ったか。一度、宿に戻ろう」


 カイザに手を引かれ、走り出す。橋を渡っていると、視界に何かが飛び込んできた。対岸の川原に佇む、二人の人影。カイザの手を引き、立ち止まる。


「どうした、」

「しっ……!」


 幼い人差し指が唇に触れた。そして、その指で向こうを指した。カイザが目を細めてそれを見る。


「フィオール……ユリヤも一緒か! 行くぞ!」

「でも、さっきフィオールが見られたくないって……!」


 走り出そうとしたカイザが、舌打ちをして立ち止まる。


「そうだった……」


 考え込むカイザを見つめていると、何処か不安になった。見てはいけない。そう、わかっていながらも言えない。カイザに見下ろされ、握り合う手がぴくりと動く。


「だが、クリストフも見つからなかった以上、何かあったら俺達が止める他ないだろ」

「…うん」


 視線が下がり、カイザの足元が映る。


「もう少し、様子を見るぞ」


 二人は物音を立てないように橋の上を歩き、対岸に寄る。二人に近くなったところで、橋の上にしゃがみ込んだ。手摺の間から向かい合う男女の姿が見える。ユリヤの背中と、フィオールの暗い顔。ぼそぼそと、話し声が聞こえる。


「……お前、悪魔なんだろ?」

「急に表に出ろなんて言ったかと思えば、何の話?」

「聞いたんだ。淫魔ってのに憑かれてるらしいな」

「……」

「ユリヤじゃ、ないんだろ?」


 沈黙。そして、深い溜息。


「バレた?」


 ユリヤは腕を組んで、言った。


「人間に取り憑いた悪魔に気付くなんて。悪魔払いの友達でもいたの? それとも、教えてくれたのは何処かの優しい魔族かしら」

「どうでもいいだろ」

「そうね、どうでもいいわ。気になるのは、フィオールがどうしようとしているのか、ということよ」

「……」

「ユリヤと悪魔の精神はもう融合してる。今話しているのだって、確かに私なのよ。ただ、悪魔の力と精神を併せ持ったというだけ。ユリヤであることには変わりない」


 口調も、雰囲気も。ユリヤのまま。だが、やはり違う。ユリヤであって、ユリヤでない。カイザの言葉、そのままの光景。


「悪魔を引き剥がすなんてことしたら死んじゃうんだから。フィオールには、できないでしょ? 私を殺すなんて」

「……できない」

「やっぱりね。何を思ってこんなところに呼び出したんだか」

「……一つだけ、答えろ。どうしてユリヤに憑いたんだ。淫魔には淫魔に相応しい器があっただろ」


 そう。フィオールはそれが気にかかっていた。街で話を聞く限り、ユリヤはナタリーで男と関係を持ったことがない。言い寄られても断っていた。それでは淫魔たる行為に及ぶことすらできない。精神まで繋ぎとめ、この悪魔は貞淑なユリヤに何を求めたのか。


「…楽園の門」


 ユリヤは静かに言った。


「私はそこから地上へ上がってきた。快楽と欲に塗れた人間がうじゃうじゃいて、それはもう……その名の通りの楽園だった。そこに、この女はいた」


 この女。唐突な三人称。ユリヤの声は、低くなる。


「誰もが動物みたいに身を寄せ合う夜に、この女はいつも一人だった。言い寄る男もはねつけておきながら、寂しそうに夜を越す」


 フィオールの顔が、辛そうに歪む。


「それが不思議でならなかった。だから、最初は心を覗くだけの軽い気持ちで取り憑いたんだ。そして、気付いた。愛する者との快楽こそ、この女の求めるものだ……と」


 ユリヤはフィオールにゆっくりと歩み寄る。


「それはどれ程気持ちいいのだろう。悲しくなる程の愛おしさが成就する瞬間は、どんなに身体を熱くするのだろう。私は地上でしか味わえない快楽に恋焦がれ、この女が欲するお前に恋焦がれ……何時の間にか、精神まで融合してしまった」


 ユリヤはフィオールの頬を撫でた。


「この思いを遂げたあの夜が忘れられない。もう、私はあなた無しでは生きていけない」


 ユリヤの声。フィオールは少し俯き、言った。


「……指輪を、返せ」

「……」

「今お前をどうこうするつもりはない。そこまで、覚悟もできてない」


 頬を撫でる手を掴み、フィオールは言った。


「どうするのかを決める前に、まずその指輪を返して欲しい」

「……そう」


 ユリヤは手を引っ込めてワンピースのポケットから指輪を取り出した。それを見て、フィオールの顔が少し柔らかくなる。


「どうあっても、私よりあの女をとるのね」


 ユリヤは、潤んだ目を釣り上げてフィオールを睨んだ。フィオールの表情に、不安の色が走る。その一瞬のうちに、ユリヤは指輪を口へと放り込んだ。


「!」


 フィオールがユリヤに掴みかかり、口に手を突っ込んだ。


「あいつ……なんてこと、」


 カイザの驚嘆の声が、左耳をつく。激しく揉み合ったかと思うと、フィオールはフラフラと後ずさり、呆然とユリヤを見つめる。ユリヤはケホケホと咳き込み、笑った。


「もう、指輪と私も一つになった。あなたの求める指輪は私なのよ」

「……」


 フィオールは頭を抑え、俯く。


「あなたには私しかいない! 私にもあなたしかいない!」


 狂ったようなユリヤの叫びの中、フィオールから冷たいような、熱いようなじっとりとした何かが滲み出る。目に見えない空気。シドが感じた、フィオールの心情。指輪を取り返したい。ユリヤを助けたい。死にたくない。クリストフに、会いたい。


「愛してる! ユリヤは、この女は、死ぬほどに!」


 ユリヤはフィオールの首に腕を回して抱きついた。フィオールは、無言のままにゆっくりと、その手をユリヤの腰に回す。



ーー見られたくないんだ……ーー



「……ごめん、フィオール。見ちゃうよ」


 フィオールの言葉が頭を過ったかと思うと、シドの悲しそうな声が小さく耳に響いた。互いの温もりにまどろむ二人。なだらかな空気が岸辺に流れる。


「……」


 フィオールが俯いた顔を軽く上げた瞬間。ゆったりとした空気の流れが逆流するように激しく淀めいた。そして、ユリヤの背中を真赤な手が突き破った。飛び散る血。ユリヤの背中から突き出した赤い手は、軽く握られている。一瞬。本当に、一瞬の平穏と殺意だった。二つが交差した後は、悲しい血の匂いが鼻をつく。ぐったりとフィオールに寄りかかるユリヤ。月を覆っていた雲が晴れて川原の二人を照らし出すと、帽子から覗くフィオールの髪が、黒から白へと変わってゆく。そして、左側のもみあげだけが黒く残った。返り血で染まるフィオールの顔には、涙が伝っていた。その目は、凍りつきそうな程に冷たいというのに。


「……ユリヤ、」

「…フィオール」


 フィオールはユリヤをきつく抱き締めた。ユリヤは、震える腕で力無くフィオールの服を掴む。


「ごめんなさい、お願いだから、聞いて……」

「……」


 涙を流して縋り付くユリヤ。それは、まさしく2年前の再現であった。二人が別れた、あの日。フィオールの冷たい目が、ふいに優しくなる。


「フィオール、最近忙しくて……夜が、寂しくて」

「……わかったよ」

「お願い、別れるだなんて言わないで……フィオール、愛してる……」

「……別れたりしない。俺も……ユリヤを愛してる」


 フィオールがそう言うと、ユリヤは小さく笑って、掴んでいた手を緩めた。そして、ぐったりと……動かなくなる。フィオールは暫くユリヤの死体を抱き締めると、その胸から腕を引き抜いた。そして、その緩い拳を開く。千切れた内臓と鮮血に塗れた掌には、金の指輪が輝いていた。


「……」


 フィオールはユリヤを寝かせて、血塗れの指輪をはめる。すると、ユリヤの死体が赤い炎に包まれた。フィオールはそれをぼうっと眺める。涙はない。昔からある墓を見るような、何処か、懐かしげな眼差し。そこからはなんの熱も感じない。ただ、ひんやりとした悲しみが滲むだけ。舞い上がる火の粉を見上げたかと思うと、フィオールは川に向かって歩き出した。月の光を反射する川に入り、何かを探し始める。


「…フィオールは、何を探してるの?」


 視点はフィオールに向けられたまま、シドの声がした。


「指輪を探してるんだよ」

「でも、さっき……」

「あれはフィオールの指輪。今は、クリストフの指輪を探してるんだ。あいつが命より大事だと言った指輪は、二つあるんだよ」

「……」


 キラキラと白く光る黒い川。こんなに暗くては見つかるはずもないだろうに。フィオールは、流れにかさらって川底を見つめる。ずっと、ずっと。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









 どうしたらいいのか、わからなかった。昨晩枯れる程に流した涙が、まだ溢れてくる。フィオールの昔の恋人への愛情も、自分に対する愛情も。全てが……悲しすぎた。


「クリストフ」


 両手で顔を覆って泣きじゃくる少女。カイザは少女の肩に手を置いて、言った。


「…頼むよ、あいつのこと……川から引き上げてやってくれ」


 少女は地面に座り込み、俯いたまま首を横に振る。


「どうしろというんだ……あたしに、何ができるっていうんだよ! フィオールは、ユリアのことを……」


 その時、カイザは少女の顎を鷲掴みにして顔を上げさせた。黄金色の瞳と、青い瞳がぶつかり合う。カイザはきつく少女を睨み、涙を流した。


「お前は一体、何を見てたんだ……」

「……」

「あいつは、指輪一つのために昔の恋人を殺したんだぞ!」


 少女の目にいつもの覇気はなく、ただ怯えたようにカイザを見つめる。カイザの涙が、少女の頬に落ちる。


「フィオールはお前のために昔の恋人を殺せる男だ。昔の恋人にも優しい嘘をつける男だ。そしてお前は……そんなフィオールが愛する女なんだよ」

「……」

「どうしたらいいかなんて、考えるまでもないだろ」


 カイザが手を放すと、少女は焦点の合わない目を泳がせ、俯く。そして、勢いよく立ちあがって走りだした。カイザとシドは、黙ってその背中を見送っていた。

 少女は泣きながら走り、土手を下る。そして、川の岸辺に立った。川に手を突っ込んでいたフィオールは、ゆっくりと腰を伸ばして振り返る。血で汚れた顔。その目は虚ろに、少女を捉える。


「……クリストフ」


 フィオールはぼそりと少女の名を呼び……静かに、涙を流した。


「フィオール!」


 少女は川に飛び込み、フィオールに抱きつく。フィオールは茫然と立ち尽くし、胸に埋まる少女を見つめた。そして、言った。


「…すまなかった。お願いだから、聞いてくれ……」


 何処かで聞いた台詞。それは、ユリアが死に際に言っていた台詞。


「何もわからないままに、夜は明けてて……お前を裏切るつもりなんか、なかったんだ」

「わかってる! 全部……わかったから!」

「俺はユリヤを抱いた。ユリヤを……殺した」

「いい! 何も言うな! あたしが、あたしが悪かったんだ! お前の話もろくに聞かなかったから、こんな!」

「俺じゃ、お前を汚してしまう……傷つけてしまう」


 少女は身体を離して、フィオールの曇った瞳を見つめた。眉を寄せて、涙を流しながら……真っ直ぐに見つめ、言った。


「もう、手遅れだ。あたしはもう、お前じゃなきゃ、フィオールじゃなきゃ……駄目になってしまった」


 その瞬間、フィオールは少女をきつく抱きしめた。肩は震え、その嗚咽が少女の耳をつく。


「クリストフ……愛してる」


 涙声の囁き。胸を伝う鼓動も、肩に触れる吐息も。全てが、愛おしい。少女はぎゅっとその腰に腕を回す。


「ごめん、ごめん。触れてはならないと……許されないと、わかっているのに。抑えきれない!」

「…フィオール、お願いだから……聞いてくれ」


 少女は血と涙に塗れたフィオールの頬を撫で、赤く潤む緑色の瞳を見つめた。虚ろだった目に、朝日が反射する。


「……愛してる」


 山間から顔を出す朝日は、遠慮を知らない。川の中で抱きあい、口付を交わす男女を躊躇いなく照らしつけた。重なり合った二人の影は川をなぞり、黒く伸びる。その先で、金の指輪が微かに光った。

 長い夜が明けた。寄りそう恋人達は目を覚まし、熱も冷めた身体を愛しみ合いながらベッドを出る。そしてまた、忙しい昼間を過ごすのだ。再び夜が、訪れるまで。


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