53.匂いと直感を信じれば
花が咲き乱れる泉に、顔を覗き込むダンテとフィオール。その後ろではシドとルージュが花を摘んでいた。
「なんで僕がこんなこと……」
ぶつぶつと文句を言いながら泉から拳大の黒い石ころを取り出し、フィオールの前に並べるダンテ。フィオールはやる気なさそうな顔でそれを眺める。
「俺だってわけがわからねぇよ……」
ダンテは手を振って軽く水をきり、石ころの一つを指で触った。すると、その石はパックリと二つに割れた。中は白く輝く石が詰まっている。
「はい、これやって」
「は?!」
「魔力を炎に変えて操れるならこれくらいわけないでしょー」
フィオールは、うーん、と唸って人差し指の腹を石につけた。すると、指先からぼっと火が出て石ころを包み込む。
「できるか! んなこと!」
「…魔法って言うのは簡単に言えば想像を具現化する技術。炎に囚われてちゃ他の魔法が使えないよ」
「じゃあどうすんだよ」
「だから、こう」
ダンテは石ころをぱかっと割って見せた。フィオールはダンテを睨む。
「俺は魔術師見習いでもなんでもないんだ。そんな説明でわかるわけないだろ」
「そう言われても、手足の動かし方なんて説明のしようがないし」
ダンテは困ったような顔をして、溜息をついた。
「君、頭悪いんでしょ?」
「いきなりなんてこと言うんだ」
「陣や薬草、呪文なんかを扱う魔法はできないから、勢いだけで使える魔法が知りたいんだよね」
「誰が言ってたんだよ! そんなこと!」
後ろにいるルージュはしれっと花を摘んでいる。
「だったらまずはこれからだ。魔力を手足のように使えるようになる。持ったり切ったり、衝撃を与えたり。炎を使わずにね」
「……」
「あ、それと。この石は普通の石じゃないから」
ダンテは中の白い部分をフィオールに見せた。
「これ、外は普通の石だけど中は精霊石って言って魔力が石化した石なんだ。だから、魔力を感じてこの石ころの中から精霊石が詰まったものだけ選び抜けるようにもなってもらうよ」
「…どうしたらいいんだ」
「僕は頭の中がモヤモヤするけど……うーん、シドー!」
ダンテが呼ぶと、シドが振り返った。ダンテは石を二つ持ってシドに駆け寄る。
「一つは特別な石なんだけど、どっちかわかる?」
「…こっち!」
シドは左手の石を指差した。
「どうしてわかったの?」
「なんか臭いから」
ダンテはフィオールの方を見た。
「だって」
「知るか!」
フィオールが怒鳴ると、見兼ねたルージュが優しく微笑んで言った。
「人の気配ってありますよね。魔力の感じ方もそれに似ています。漠然としたそれが確かなものになった時、魔力の違いや流れも感じれるようになりますよ」
「…気配?」
ダンテは石を泉に投げ込み、その縁に座り込んだ。
「ほら、早く」
「……」
フィオールは不満気な顔をしながらも、目の前の石ころに視線を落とす。そして、その一つに人差し指を当てた。石は、炎に包まれた。
「違うってー! 炎出ちゃってるしそれ精霊石じゃないしー!」
ダンテは縁に突っ伏して足をパタパタさせる。
「いきなりできるわけないだろ! ちょっと黙ってろロリジジイ!」
「何それ! 師匠って呼びなよ! 師匠って!」
フィオールは舌打ちをして石に向き直る。そして、じっとそれらを見つめる。
「このお花痛んでる? 変な匂いするー」
「あー、そうですね。それはお薬に使えません」
シドとルージュの会話が耳に入る。横目に二人を見ると、両目を包帯で巻いたシドが鼻一つで花を選んでいる。その上、痛み具合も察しているようだ。フィオールは石を一つ掴み、鼻に近付けてみた。ダンテはその様子をぼけーっと見つめる。
「…わからん」
「僕だって匂いなんかじゃ魔力も気配もわからないよ」
「ダンテは頭がモヤモヤするんだっけ?」
「よくわからない。風? 違うな……でも、確かに感じるよ。頭の中ではもう反射的に区別しちゃってるから説明するの難しい」
フィオールは手にした石を地面に戻し、縁に頬杖をついた。静かな部屋。泉からは涼やかな風が流れる。シドとルージュが作業する音が響く。石だけが視界に入る中で、確かにシド、ルージュ、ダンテ、泉の存在はわかる。ダンテの退屈そうな視線も、感じる。これはどこで感じているのか、フィオールの意識は自分へと向けられた。
「……」
暫くして、フィオールは石を一つ選び、指を置いた。
「…!」
ダンテが思わず身体を起こす。フィオールは、真剣な眼差しで石を見つめた。すると、石は真っ赤に燃え上がった。
「違うってばー!」
ダンテは再び突っ伏して先程よりも激しく足をバタつかせた。
「うるっせーな! まだ三個目だろ!」
悔しそうに頭を掻きながら、フィオールは石を見つめる。ダンテはそんなフィオールを興味深く見つめていた。フィオールが先程選んだのは、紛れもなく精霊石だったのだ。十数個並ぶ石の中で、精霊石はたったの一つ。偶然かもしれない。しかし……
「…僕の事、ちゃんと師匠って呼んでよ」
「あ? わかったわかった。師匠師匠」
軽く手を上げて石選びに夢中になるフィオール。ダンテはそれを見て、笑った。
「これかな」
「馬鹿ー!」
当てずっぽうに石を燃やすフィオールの頭を、ダンテは杖で引っ叩いた。
「いてぇな!」
「期待した僕が馬鹿だった! いや、やっぱり馬鹿は君だけだー!」
泣き喚くダンテに困惑するフィオール。ダンテの魔法講習は、苦悩で満ちたスタートを切った。
暖炉の近くで、カイザはフィオールの資料から伝説に関するものを選び、読み直していた。クリストフはその隣で同じくフィオールの資料を物色している。
「…あいつ、意外と字が綺麗だよな」
クリストフがそう言うと、カイザは、そうだな、意外だな、と資料を読みながら呟いた。
「あいつ、どうでもいいことも無駄に知ってるよな」
「そうだな。オズマの不倫とか」
「俺の不倫がなんだって?」
カイザが振り返ると、オズマが沢山の瓶を持って部屋に入って来ていた。カイザはしれっと資料に向き直る。
「二人して何してるの?」
オズマはカイザの後ろに立って資料を覗き込む。
「ダンテのところに業輪が無かった以上、また振り出しに戻ったからな。何か探し出すヒントはないかと」
「ヤヒコって人のところは?」
オズマが聞くと、クリストフが言った。
「あいつのところにはガトーを向かわせてる」
その言葉に、瓶を棚に戻していたオズマの手が止まる。
「…敵かもしれない人物の元へ息子一人を向かわせたの?」
「いや、山賊共も一緒だろう」
「それでも危険じゃない? あの人達の里に向かうのは」
カイザは顔を上げ、オズマを見た。
「ヤヒコはそんなに危険な人物なのか?」
「いや、味方なら心強いけど敵にしたら怖いね。なんせ、鬼の一族を率いるお姫様だから」
「鬼……?」
クリストフは、あ、と声を出して、思い出したように言った。
「そうだ、ヤヒコは人間じゃない」
「…東の国王なんじゃないのか?」
「いや、正確には東の鬼の国を治める一家の一人娘だ。言ってみればルージュのような立場だ」
「ルージュ? じゃあ、鬼って言うのは妖精か何かか」
クリストフは顔を顰めて考え込む。瓶を棚に戻し終えたオズマは、下の引き出しを漁りながら言った。
「鬼っていうのは東の国の化け物さ。西で言うゴブリンみたいなものだね」
「そんな化け物なんて可愛いものでもないけどな。東の国であいつらは神として祀られてるんだ」
「分類するなら、魔族に近い。所謂、俺」
オズマは引き出しから小さな壷を取り出して、テーブルの席についた。
「東の魔族、か。それで異国の化け物なら蘭丸の方が近いと言っていたんだな」
「そうだ」
「…ガトーは、大丈夫なのか」
「機嫌さえ損ねなければ、ヤヒコは大人しい。キレるとやけに攻撃的だから面倒だが」
お前が言うか……と思いつつも黙るカイザとオズマ。オズマは大きく息を吐き出し、瓶を眺めた。
「考えてみれば奇妙な話だよね。地域も人種もバラバラで世間からも身を隠すように暮らしている4人をこんな的確に言い当てるなんて。伝説を言い広めた旅人も何者なんだか」
「それを言ったらヴィエラ神話もだろう」
クリストフは蘭丸に関する資料に何やら勝手に書き込んでいる。
「ああ、クリストフさんの変な思いつきか。あれも気持ち悪いくらいに当てはまるね。シド君のことなんか身近な事実だっただけに、本当に気持ち悪い」
「近いうちにエドガーの故郷とやらにも行ってみないとな。カイザ、何処かわかるか」
カイザは小さく唸りながら考えたが、首を小さく横に振った。
「わからない。ノースに住んでいたが、故郷は……」
「なんで聞いてねぇんだよ、使えないガキだな」
クリストフに言われて、カイザが横目に少女を睨む。すると、小さな壺の中を覗き込むオズマが言った。
「鍵戦争とは関係ないじゃない。業輪と鍵さえ守りきればいいのにそんな面倒なこと」
「それとこれとは話が別だ。いや、別かもわからないだろ。業輪は必ずあたしたち3人の手のうちに戻るが、その後の秩序の崩壊と表裏一体については未だ打つ手が無い。ヴィエラ神話はその真実をつきとめる鍵になるかもしれないんだからな。ま、本来の住処が魔界のお前には関係ないだろうが」
「…クリストフさん、その意味わからないの?」
オズマの言葉に、カイザとクリストフは資料から目を離した。オズマは壺に指を突っ込み、取れない……と一人眉を顰めている。
「お前はわかるのか? 秩序の崩壊、世界の裏表が一つになる、の意味が」
「わかるよ。魔界では結構タイムリーな話題だからね」
オズマは壺の中から薄い銀の板を取り出した。その指先には赤い液体がまとわりつき、何やら生臭い臭いを発している。カイザとクリストフは鼻を抑えた。
「なんだ、なんのことを指してるんだ!」
「…声、面白いことになってるけど」
「お前のせいだろ!」
クリストフが怒鳴ると、オズマは壺に蓋をして、取り出した銀の板を紙の上に置いた。
「…世界の秩序……つまり、地上のヒエラルキー。人間が頂点に立ち、動物や植物がその生活を支える」
「人間の上には妖精やなんかもいるだろ。東でいうなら鬼が」
カイザが鼻声でそう言うと、オズマは銀の板に白い粉をかけながら笑った。
「カイザ君は優しいねぇ。俺たちをそんな地上の仲間みたいに扱ってくれるなんて。でもね、実際は違う。ルージュやヤヒコは、同じ地上にあっても人は決して立ち入ることのできない場所……例えるなら鏡の向こう側の住人なんだ」
カイザはノーラクラウンの妖精の里を思い出した。ニアが鍵を捻ると現れた、炎の門。あれが、妖精と人の境。銀の板は白い粉がまぶされ、オズマの指が撫でると金の板になった。
「鏡の向こうと言っても全く関係が無いわけじゃない。カイザ君の顔がぶっさいくになれば鏡の中のカイザ君もぶっさいくになるだろ?それと同じで、地上の環境が彼らの住む世界に影響を与えることもある」
「…その嫌な例えやめろ」
臭いがおさまり、二人は鼻から手を放した。オズマは金の板をテーブルの小さな小瓶に入れる。そして、それにポケットから取り出した試験管の液体を流し込む。
「まあまあ。とにかく、簡単に言えば秩序の崩壊はヒエラルキーの崩壊……つまり、人間の絶滅を意味する。そしてそれは、地上の裏である鏡の向こうにも影響を与えるということだ」
オズマがそう言うと、二人の表情が固まった。予想していなかったわけではない。しかし、オズマに説得力のある言い方をされてその嫌な予想が確かなものになってしまったのだ。透明な液体の中で泳ぐ金の板は、ドロドロと溶けてまるで生き物のように瓶の中を泳ぎ回る。
「あと、表裏一体についてだが……ここまで話せば、鏡の向こうとこちら側が一つになってしまう、ということくらいわかるでしょ。でも忘れてもらっちゃ困るのが、俺達悪魔の存在さ」
オズマがそう言うと、金は液体の中で破裂して瓶をキラキラと輝かせる。
「もう一つの裏……それが、地上の裏側である魔界。妖精やなんかと違って人への干渉を制限されている俺達が、地上へ上がってくる。この世は人が消えて、神の使い達が暮らす楽園になるわけだ。どう? わかった?」
「…タイムリーな話題だと言っていたな。それは、どういうことだ」
クリストフが聞くと、オズマは瓶を小さく振った。
「魔界から地上へ上がる方法は二つしかない。一つは、満月が西の空に上がったその光の下に糸杉の切り株あって、その上に乗り移れる生贄がいる……とか、特定の条件が揃うのを待つ。もう一つは、人間に召喚してもらう。でも最近、高確率で地上へ上がれる通路ができたらしいんだ」
キラキラと輝く液体は、しだいに輝きを失ってゆき、ついには、黒い球が沈む透明な液体になった。
「俺は興味なかったから詳しくは聞いてないんだけど。みんな楽園の門って呼んでたよ」
「……」
「人間が滅びて門が開くか、門が開いて人間が滅びるかはわからないけど。エドガーがこうなった以上、伝説の終幕も秒読みだと思ったね」
オズマは瓶を掌の上でひっくり返した。血色の悪い指の間をドロドロと流れ出る透明な液体。そして、手の平の上で艶めく黒い球。カイザにはそれが、とてつもなく禍々しい物体に見えてならない。クリストフは眉を顰めて言った。
「…ダンテはそれを?」
「さあ。ダンテさんは伝説の魔術師といえどやっぱり子供だから。でもなんとなくはわかってると思うよ」
黙り込む二人。カイザの資料を持つ手が震える。オズマは黒い玉をカップの水に浸した。
「…どうでもよかった。ダンテさんと愛しい人さえ守れれば、この世がどうなろうともね」
オズマはカップを見つめて言った。クリストフとカイザは顔を上げて、オズマを見た。黒い球からは黒い何かが滲み出て、水に溶けてゆく。
「どうでもよかったんだけど。ベリオットからここに来るまで一緒にいた君たちには……多少、いや、微々たる感謝の気持ちがある」
オズマはカップを眺めて溜息をついた。
「できる限りのことは、するつもりだ」
まさかの言葉に、カイザとクリストフは言葉を失って顔を見合わせる。まさか、あのオズマが。
「…何だよ。この俺がせっかく協力してあげるって言ってるのに」
「嬉しいんだが……その、びっくりして」
カイザが無理矢理な笑顔をオズマに向けた。
「なんか企んでねぇだろうな」
クリストフが睨むと、オズマは眉を顰めた。
「失礼極まりないな。君達をはめてほくそ笑もうなんて考えてるわけないじゃないか。いつでも正直かつ誠実なこの俺が」
オズマはニッコリと笑って、薄く黒い色がついた水を別のカップに移した。そして、それをカイザの前に置いた。
「はい、お薬」
「…あれ、ああやって作ってたのか」
生臭さは無いものの、薬ができる工程を見てしまったカイザはもう飲む気にならない。オズマは嫌そうにカップを見下ろすカイザをニコニコしながら見つめている。そんなオズマを見つめるクリストフが、呆れたように言った。
「お前、本当に性格悪いよな」
「クリストフさんには負けるよ」
クリストフがオズマに怒鳴りかかる直前、カイザは薬を一気に飲み干した。なんの味もしない、黒い水。あの面倒な工程が、薬を飲みやすくしているのだろうとカイザは気付いた。ヘラヘラと笑いながらクリストフをからかうオズマを見つめ、オズマのような奴ばかりなら、魔族が地上に上がっても支障はないのではないか、などと考えてしまうカイザ。
伝説の終幕が意味するところがオズマの予想通りだとして、人が人として生き延びる道はないのか。人が各々の望みのために争う鍵戦争。全ては、業輪の行末に委ねられているのだろう。空のカップを見つめて、カイザは考え込んでいた。
「…クリストフ、世界を守ろう」
カイザが俯いたまま呟くと、クリストフとオズマの口論が止んだ。
「あ? いきなり勇者みたいな台詞吐いて何言ってんだ」
「は、恥かしい……」
馬鹿にする二人を睨み、カイザは言った。
「俺が言いたいのは、世界を守るという名目で俺達がこれからもこうして暮らしていける世の中を……!」
「盗賊が勇者気取りか! 傑作だな!」
笑うクリストフ。カイザは舌打ちをしてカップを握り潰した。
「山賊の聖母よりはマシだよねー。大丈夫、こちらの聖母様はいろいろ手遅れだけど、カイザ君は今からでも勇者に転職できるから。まずは何処ぞの神殿に行って……」
「おい! 手遅れってなんだ!」
クリストフはオズマの眼鏡を取り上げた。そんなクリストフに向かって、カイザが鼻で笑ってボヤいた。
「…年増が」
「何だてめぇ! いきなり年に突っ込みやがって! 怒ってんのか?! 怒ってんだろ!」
クリストフが眼鏡を真っ二つにへし折った。すると、オズマは笑いながらスペアの眼鏡をかけて言った。
「カイザ君は大真面目に世界のことからみんなのことまで考えてたんだ、そりゃあ怒るよ」
「お前も馬鹿にしてただろ!」
クリストフが割れた眼鏡をテーブルに叩きつけた。カイザは先程のぼやきで気が晴れたのか、何食わぬ顔で煙草を吸っている。
「馬鹿にされようが構わない。俺の決意は固いんだからな」
カイザはその視線を、隅の椅子に座っているミハエルに向けた。
「ミハエルの他にも守りたいものができた。それを守り抜くために世界を救わねばならないとしたら……勇者にでもなんでもなってやる」
そう言うと、クリストフは不機嫌そうに頬杖をついて言った。
「阿保か! あたしだってそのつもりだ!」
クリストフがそう言うと、カイザは煙を鼻から出して少女を見た。
「なんだ、手遅れの年増を拗らせると勇者になるのか?」
「まだ怒ってんだろ」
クリストフは半笑いでカイザを睨んでいると、オズマが笑い出した。
「いいじゃないか。盗賊、聖母、堕天使、魔法をかじった情報屋……それに、妖精と悪魔と大魔術師。皆で仲良く世界平和を目指せば? あ、でも、これだけ役者が揃えば世界征服も夢じゃないかもね」
クリストフは横目にオズマを見て、言った。
「お前は勇者というより悪の親玉だな。絶対」
「うん。かなり悪どい感じの」
クリストフの言葉にカイザが頷く。オズマはへらへらと笑うばかり。その悪魔じみた笑顔がまた、二人には胡散臭く見えてならなかった。