4LDKのアパート
4LDKを舞台にした小人達のバトルと、アパート住人達の日常を
描いた若干厨2病入ってる小説です^^
「あの・・・・・・ここにしてもらって結構ですか、家賃安い割りに部屋も4LDKって広いし」
「はい、じゃあこれ鍵ね」
「ありがとうございます!!」
俺は不動産屋の親父から鍵を渡され、店を出る。
「ちょっとあんた!」
「ん?何??」
「あのことちゃんと説明した!?」
「あのこと??」
「ほら!あのことだよ!!あのこと!!!」
「・・・・・・・あ!いい忘れてた!!」
「まったく・・・・・・。大丈夫だといいんだけど・・・・・・。」
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「ここか・・・・・・。俺の新しい家!!」
俺、大谷聖司は大学生である。
親の家業を継ぎたくないがばかりに頑張って勉強して、都会へ1人暮らし。
しかし、親父と喧嘩したものだから最低限の家具は買い揃えてもらってるが、仕送りが少ない。
ボロアパートしかないか・・・・・・。と諦めていた時!!
見つけてしまった!
家賃が安くて、とても綺麗な4LDKのアパートが!!
仕送りで充分払える金額だ!
食費とかはバイトして何とか養おう。
「さて・・・・・・・。」
俺は鍵を握り締め、アパートに入る。
二階建ての10部屋。
俺が入る8号以外は全て埋まっていたらしく、本当にラッキーだと思う。
「お、もしかして今日から入るお隣さん?」
俺が自分の部屋の鍵を開けようとしていると隣の部屋から女性が出てくる。
「あの~・・・・・・。」
「あ、あたしは隣の9号室に住んでる朱里。こう見えても大学生なんだ」
こう見えても・・・。といわれたので凝視してしまう。
短パンにシャツ一枚、それにヘッドバンドをつけて歯ブラシを咥えている。
「今・・・・・・昼ですよ?」
「ああ、いいのいいの。昼からバイトだから♪♪」
「大学は・・・?」
「単位取ってるからサボってOK♪」
「それでいいんですか!?」
「と、言うわけだからこれからお隣同士よろしくね♪」
俺の話なんて一切聞かず、彼女は最後にそういい残し、自分の部屋に戻った。
俺は「美人だったなぁ・・・」なんて呟きながら部屋に入った。
「おぉ・・・!!」
思わず絶句してしまうぐらい綺麗な部屋。
あんな家賃でこんな部屋に住めるなんて・・・・・・。
と、歓喜に満ちている場合ではない。
最低限の家具は後々配達してくれる。
俺は大学に必要なテキストやら自分の好きな漫画など、鞄に入っていたものを部屋に出した。
「ご近所挨拶にでも行こうかな・・・・・・。」
やることがなくなって引越し蕎麦(出前)を食べて呟く。
そんなとき、部屋の端っこで何か動いた気がした。
「ん?なんかいるのか??」
まさかゴキブリか?
おいおい、新しい部屋に来て早々、あんな禍々しいものに遭遇せないかんのか・・・。
恐る恐る、部屋の端っこに行ってみる。
「・・・・・・あれ?いない・・・。はぁ・・・気のせいか、よしご近所挨拶するか。」
俺はふぅーと安堵の息をこぼし、ご近所挨拶しに、部屋を出た。
「お前!バレたらそうするつもりだったんだよ!!」
「どうせいつかバレるだろ!」
「そうさ!あんな奴気にしてたら勝利はないぞ!!」
「そうだよね・・・。とにかくバレないようにしといたほうがいいと思う」
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「あのー、この度8号室に引っ越してきた大谷ってものですけどー」
俺はインターホンを押して、1号室の人・・・つまり大家さんに挨拶に行った。
「はーい。あ、あなたが大谷君?」
おおっ!これは・・・・・・・いかにも大家さん!って感じのおっとり系美人!!
「は、はい・・・。どうも・・・・・・。」
「ここに住んでる人はみんないい人たちよ♪だから仲良くしてあげてね」
大家さんはニッコリ笑いながら俺に言った。
「あの・・・・・・。一つお聞きしたいんですが・・・。」
「はい?」
「このアパートの土地って・・・・・・大家さんが?」
「あ、いえ。私の主人が・・・・・・。」
少し悲しげに言う大家さん。
「大家さん・・・・・・もしかして・・・」
「はい・・・・・・。あ、なんかすいませんね。しんみりさせちゃって」
「あ、いえ・・・。じゃあ俺、他の部屋の人にもご挨拶しないといけないので」
「あ、この時間だといるのは多分6号室の轟君だけだと思うわ」
「轟・・・さん?」
「他の皆さんは学校やらお仕事に行っていますので・・・」
「そうですか。じゃあ俺轟さんにご挨拶してきます!!」
俺は大家さんから逃げるように轟さんのいる6号室へ向かった。
(あんなしんみりされても俺には励ます術はないっつの・・・。)
大家さん、未亡人なんだな・・・・・・。
美人だし、すぐに再婚相手見つかると思うけど・・・・・・。
あの手のタイプはたった一人の男を愛する純愛タイプなんだろうなぁ~
なんて妄想にふけりながら俺は6号室に向かった。
「住みませ―ん!8号室に引っ越してきた大谷っていうんスけどー」
俺の声を聞いて扉を開く轟さん。
やつれた体に目にはクマがある。
髭も拵えていて、一見すると不潔感を感じる男の人だった。
「君・・・・・・。が?」
「はい!!」
「僕は轟って言うんだ・・・。ごめん、普段はこんなんじゃないんだけど寝不足で・・・・・・。」
欠伸をしながら言う轟さん。
「目にクマ出来てますしね。あの・・・・・・・お仕事は何を?」
「何って、仕事ってほどじゃないよ。サイト運営だよサイト運営」
「サイト運営?ああ、アフィリエイトとかですか??」
「君・・・・・・・詳しいね」
「はい、こう見えてもパソコンはそこそこたしなんでいるので・・・・・・。」
「そう、僕はアフィリエイトや株。後はサイト運営とか色々・・・・・・。」
「それは大変でしょー♪そりゃあクマも出来るっすね・・・。」
「よかったら上がるかい?気味悪い部屋かも知れないけど・・・」
「気味悪い?」
「この前朱里を入れたら笑いながら言われたよ。本当に軽蔑してるとは思わないけど」
俺は意味深な言葉を言った轟さんに疑問を抱きつつ
部屋にお邪魔することになる。
「うわぁーすげぇ・・・・・・・。」
リビングには大きなテレビ、右には大量のアニメのDVD、左には大量のゲームソフトやハード。
「僕は世間一般で言うオタクなんだよ君みたいなのにはちょっと抵抗があるかも知れ―――」
「すごいじゃないですか!!!!」
俺は思わず大声で叫んでしまう。
「すごい・・・・・・?」
「いや、俺こういうのよくわからないけど、ここまで綺麗に保管して、それもかなりの量・・・。
ここまでのコレクト能力って相当なものですよ。
それにどうせここにあるやつだけじゃないんでしょ?」
「う、うん・・・」
轟さんは驚いたように目が点になっている。
「いやぁ~吃驚だな。同族に驚かれたことはあるけど
君みたいな普通の人にここまで褒められるなんて・・・・・・。」
「実のところ、俺もこういうのに少なからず興味あったんです。
高校の友人が読んでた漫画とか読ましてもらったりして・・・・・・。」
「もし暇な時でもあれば何か貸そうか?」
「いいんですか!?」
「まあ同じアパート同士、仲良くしようよ」
轟さんは少し眠気が覚めたのか、さっきまでとは違い陽気に話しかけてくる。
俺は彼の言葉に歓喜しながら彼が出してきた紅茶を飲む。
その後も俺は轟さんと色々お話しして、最後にはオススメのDVDを借りてしまった。
まだテレビ届いてないのに・・・・・・。
そうして俺は自分の部屋、8号室に戻った。
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「さ!今日から楽しい1日の始まりだ!!」
俺は轟さん、朱里さん、大家さんの事を思い出して床に寝転がった。
まだベッドが届いてないので今日は雑魚寝である。
(今日は疲れたな・・・・・・。)
朝から不動産を回りに回って、いい物件探して、見つけてから
大家さんに挨拶して、轟さんと話して――――。
轟さん・・・・・・。最初は根暗な人だと思ってたけど、全然違ったな。
「・・・・ふぁ~・・・。」
ふと眠気が襲ってくる。
今日は本当に疲れた。もう寝よう・・・。
俺はそう思い、目を閉じる。
そして段々意識が遠くなっていく―――――――――――――。
「・・・・・・開戦だぁー!今日こそ悪魔をやっつけるぞー」
「「「おぉー」」」
「この地を制するのは、誇り高き我ら天使だ!やつらには負けんぞー」
「「「「おぉ」」」」
ん・・・・・・。
何か小さくて甲高い声がする。
何かの夢か?
ふと目を開けてみる。
「・・・・・・・・・は?」
目の前には、五センチほどだろうか、ちっさい人間がいた。
西洋を思い浮かべるような鎧を着けて、背中には白い羽が生えてる。
そんな小さな人間が数人いる。
「しまった!起きてしまったぞ!!」
「ど、どうしましょう!」
「と、とにかく逃げて隠れなきゃ!!」
「隠れても存在に気付かれているのだから意味がない!!」
五センチほどの小さな小人達はそれぞれに話あってる・・・・・・。
ああ、夢だ。これは夢なんだ・・・・・・・。
「お前ら・・・・・・何?」
「我々は、悪魔と闘う騎士団です!」
小さな小人のリーダーであろう人物が前に出てきて俺に説明する。
「悪魔?」
「はい、ここは我々、天使と悪魔がしのぎを削っているのです。
様々な土地をやつらに占領され、このリビングだけは阻止せねばと!」
「おい、ここ俺の家」
「もちろん、家主であるあなたに迷惑をかけるつもりはございません。
ご安心を・・・・・・。」
「はぁ・・・・・・。」
随分変な夢を見てるな、俺・・・・・・・・・。
「まあ、迷惑かけないならいいや。俺寝るから・・・。」
俺はこんな夢から早く去りたくて、再び目を閉じて、眠りについた――――――。
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「・・・・・・夢・・・だよな?」
翌朝。
昨日の夢が気になって仕方がなかった。
あれから眠りについても、あいつらが五月蠅くてまったく眠れない。
夢のはずなのにその分の寝不足の疲れがある。
いや、これは寝不足じゃない。きっと昨日の疲れがきてるだけだ。
俺は洗面台に行って、顔を洗って、歯ブラシを「はい、どうぞ」渡される。
「・・・・・・ん?」
歯ブラシを受け取った場所を見ると・・・・・・五センチほど小人がいた。
「・・・・・・・・・は?」
こうして、俺の奇妙すぎるアパート生活が始まった。