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2. 愛の示し

 彼は彼女を愛していた。彼女もまた彼を愛していたし、彼らは一生を共にしようと誓い合い、互いに愛を込めて接吻もした。しかし愛の度量なんてものは表しようがなかった。物理的な愛の示しなどはただの儀式に過ぎなかったし、彼らが本当に一生を共に出来るなどとは、誰一人として断言できるはずがなかった。

 彼らが出会ったのは街の図書館だった。重苦しい顔でドストエフスキーを読む彼のそばに、彼女が座った。最初彼は彼女の存在に気付く事はなかったが、数時間経ち、閉館時間まであと数十分と言う所で、苦悶の表情で本を閉じた彼の目に、彼女が映った。

 彼女の目はどこか虚しげだった。一方で唇は微かに曲線を描き、僅かに笑っていた。体全体は不健康だと思うくらいに痩せていたが、それが素朴で純粋な雰囲気を際立たせていた。髪は少し乾燥し荒れていたが、長い少し赤みがかった彼女の髪が暖炉の赤い火を反射して、温かみを帯びている。




 彼女は重い病気に罹った。彼が彼女の病気に気付いたのは既に彼女の病が不治の物になった後だった。彼女もまた病に蝕まれている事を彼には話さなかった。ただ黙って、彼からの愛情を一心に受け止め、それを優しい微笑で返すだけだった。


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