表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人工知能の発展に伴う資本主義と共産主義の効率の良さの変化について

 昨今、人工知能の発展が目覚ましい。アンドロイドロボットはまだ素晴らしい出来の物は普及していないが、これもやがて普及するだろう。ここでは、人工知能やアンドロイドロボットが高度に発展した後の社会について、資本主義と共産主義のどちらがより効率的かについて議論したいと思う。

 現代では、資本主義が共産主義に対して優勢になっている。それは現代のところ資本主義の方が共産主義より有効に機能しているからである。その理由として挙げられるのは、資本主義だと投資をするかどうかの決断をする人とその決断の責任を取る人が同じであるのに対して共産主義だと投資をするかどうかの決断をする人とその決断の責任を負う人(国民)が異なるため、共産主義だと投資をする人が個人的な野心のために過剰にリスクを負って投資をする決断を行い、失敗する投資に国家の生産能力が過剰に使われ、その結果国家の生産能力が消費財の生産に回らなくなり、消費財が売れなくなることで労働者に消費財がいきわたらなくなり経済が回らなくなるということである。また、別の理由として、消費者が何を消費するかの情報は国家が知ることのできない情報であり、故に国家は国民にとって魅力的な生産計画を立てることができない、というのも挙げられる。いずれにしても、共産主義国家では経済が回らない。

 また、経済が回ることにより技術革新は進む。よって共産主義国家では技術は発展しない。故に人工知能の発展のためには資本主義が必要であり共産主義国家では人工知能についての技術は発展しない。しかし、前述したように現代では資本主義が優勢なこともあって、人工知能の技術が日々前進している。これ自体はいいことである。

 ところで、人工知能は人間の労働を自動化するものである。人工知能は人間の体を持たないのでまずは知的労働から人工知能に置き換わっていく。すると人工知能界隈はどんどん儲かり、やがて人間並みの労働ができるアンドロイドロボットを開発し実用化するであろう。すると肉体労働が人工知能に置き換わるようになる。ここまででほとんどの労働が人工知能に置き換わったことになる。すると労働者が労働をする必要がなくなり、また雇用もほとんどなくなることになる。すると労働者に払われていた賃金がなくなり、物が売れなくなってくる。よって未来のあるタイミングから資本主義では経済が回らなくなる。

 これはある種の過去への回帰である。狩猟採取時代、人間は自身が消費する消費財を自身では生産しておらず、ただ土地が生産した消費財を人々が採取して消費していた。つまり土地だけが消費財を生産していた。それが農耕牧畜時代になって人間は土地を使って労働を行い消費財を生産するようになり、産業革命以後未来のあるタイミングまでは人間は資本を使って労働を行い消費財を生産するようになった。未来のあるタイミング以降は、人間は資本が生産した消費財を人々が買って消費するようになるだろう。この構図は狩猟採取時代のときの構図と似ている。

 また、別の意味での過去への回帰である。過去、奴隷制のあった時代、古代ギリシャや古代ローマの市民たちは奴隷が生産した消費財を使って生活してきた。(これ自体は不当なことなのだが。)未来のあるタイミング以降、人類は機械、特にアンドロイドロボットが生産した商品を使って生活するようになるだろう。つまり、人工知能やアンドロイドロボットの発展した後の世界は古代ギリシャや古代ローマの時代とある意味ではそっくりということになる。この時代の変化は望ましいもので、歓迎されるべきものである。

 しかし、資本主義を続けると、この変化が起こらなくなる。なぜなら、人工知能やアンドロイドロボットが人間の代わりに生産活動を行うようになった後の社会では、資本主義では経済が回らなくなるからである。確かに一部の富裕層はそんな社会でも配当金などの不労所得で生活できるが、富裕層のお金だけでは経済は正常には回らない。故に資本主義を続けるためにはアンドロイドロボットを禁止する必要がある。

 しかし、未来において人類にはもう一つの選択肢がある。それは、生産手段の一部または全部を国有化し、国民にベーシックインカムを配るという共産主義的なやり方である。(ただし、前提としてそのような社会は人工知能やアンドロイドロボットが高度に発達した後の社会ではないと有効には機能しない、と言っておく。)そうすると国民はベーシックインカムで得たお金を使って消費財を買い、そのお金が国に入ることでベーシックインカムを配るための原資になり、経済が回るようになる。

 果たして人工知能やアンドロイドロボットが高度に発達した後の社会では資本主義と共産主義のどちらがより効果的に機能するだろうか。

 そこまで人工知能が発展した後の社会では、その社会が資本主義と共産主義、どちらを採用するかによらず投資をするかどうかの選択をするのは常に人工知能ということになる。なぜなら現在チェスで人間が人工知能と勝負にならない(どんなに優秀な人間でも全力を出した人工知能には勝てない)ように、人間より優れたアンドロイドロボットが生まれるころには経営の巧さという点において人間は人工知能には勝てなくなるからだ。よって資本主義でも競争に打ち勝つためには投資をするかどうかの選択を人工知能にゆだねなければならないし、共産主義でも人間に投資をするかどうかの選択権を与える合理的な理由がないからだ。しかし、投資をするかどうかの決断の責任を取るのは常に人間である。なぜなら人工知能やアンドロイドロボットには基本的人権も自由意思もないただの機械だからだ。よって人工知能やアンドロイドロボットが高度に発展した未来においては資本主義、共産主義によらず投資をするかどうかの決断をする存在ととその決断の責任を取る人が同じになることはない。

 また、人工知能やアンドロイドロボットが高度に発展した未来においては消費者が何を消費するかの情報は国家が知ることのできない情報ではなくなる。そんな未来においては、ビックデータによる推論は消費者が何を消費するかの情報を国家にもたらすことができるようになるであろう。

 故に人工知能やアンドロイドロボットが高度に発展した未来においては共産主義の方が資本主義より有効に機能するであろう。よって、未来においては特に自由民主主義(戦う民主主義はこれに含まない)国家においては(その自由の内容にもよるが)共産主義が優勢になるだろう。なぜなら、一部の富裕層のために資本主義を維持することは大多数の貧困層を貧困で困らせることにつながるので、そんなことを主張する政党は支持されないからだ。

 最後に理想の未来になるために必要なことは何か。それは早すぎる共産主義革命を認めないこと、それでいて共産主義的な社会への変化を恐れないこと、そして自由民主主義(戦う民主主義はこれに含まない)を維持すること、そして人工知能研究やアンドロイドロボット生産に対する国際的な規制を認めないようにするため、国家主権を維持する国家を増やすこと、以上の四点だ。

 現在共産主義といえばソビエト連邦や中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国を思い浮かべる人も多いと思う。実際、これらの国ははっきり言ってひどいものだった。しかしそれは、これらの国では十分に社会が発展していないときに共産主義を採用したことと、これらの国では自由民主主義が全く機能していなかったことが原因だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ