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006.倉庫

売り場よりも店の性格がでる場所

旧堕法院での崩落は、ただの事故では終わらなかった。


崩落の結果として新たに見つかった下層への入り口と、封印の解放は王国中に衝撃を与えた。気が遠くなるような年月を隔離されたことで独自の生態系へと進化した地下世界。それは当面の間、様々な依頼の中心となり、多くの雇用と需要を生むことになるだろう。


ギリシャたちを送り出して以来、「選択の羊」は大繁盛と言ってよい状況だった。


「しかしまあ、大当たりを引いたもんね。」


ノルンはカウンター越しに声をかけた。話しかけた相手は、この大発見の当事者の一人であるエレノアだった。


「運が良かっただけさ。結構な恩賞も貰ったし、暫くは遊んで暮らせるよ。」


エレノアは肩をすくめて微笑む。


王国とギルドからは、彼女を含むギリシャとヴィヴィに相当額の恩賞が贈られている。


特にギリシャは発見の第一人者として祭り上げられ、仕官の話まで持ち上がっていた。最もギリシャ自身はあまり乗り気ではなく考えを保留で濁らせているらしい。


一方、解封の張本人であるヴィヴィは秘薬の副作用で未だ療養中だ。一命こそ取り留めたが極度の昏睡状態はまだ当分続くだろう。緊急事態とはいえ魔法使いにはあの薬は強すぎたのだと、ノルンは深く反省していた。


「でも、薬が無けりゃ救助どころか、私もギリシャも死んでたかもしれないし。あれがあっての成果だったよ。」


エレノアはさらりと言い、ノルンの気を軽くした。


「それにしても、店が大繁盛で何よりだね。」


新たな依頼が増えたことにより、店にはひっきりなし客が出入りしている。


光源となる松明や油は勿論、いつもは梁の上でぶら下がっているだけの蟲籠なんかも新種発見と共に瞬く間に売り切れたのだ。


「おかげさまでね。」ノルンは微笑む。


「他に何か手伝えることはない?今は依頼も受けてないし、暇なんだ。それに、ちょっとは恩返しもしないとね。」


「じゃあ、倉庫から品出しをお願いできる?棚がだいぶ寂しくなってて。」


「了解。」


エレノアは一人で地下倉庫へと向かった。

倉庫は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。壁に掛けられたランタンの光が、積まれた樽や木箱、麻袋をぼんやりと照らし出していた。広さは店舗に見合った規模で、無駄のない整理整頓が施されている。保存食や乾燥食品、小物類が整然と並び、床には積み上げられた樽や木箱が所狭しと置かれている。


巨大な岩塩の結晶や、魔石が無造作に入れられた木箱もあり、在庫とはいえノルンがある程度の財に余裕がある人物であることがうかがえる。


棚の片隅には、古びた金属製の鳥籠が置かれている。中にはすでに絶滅したとされる地域特有の装飾用鳥の羽根が数枚だけ残されており、どうやらノルンのコレクションらしい。


さらに奥には、未鑑定と思われる買取品が山積みされた木箱がある。エレノアは興味を惹かれ、近づいていった。埃をかぶった箱の隙間からは、淡い輝きが漏れている。彼女はそっと手をかざし、魔力感知の術を行使した。すると、箱の中のいくつかの品がぼんやりと発光して見える。それは単なる鉱石ではなく、微弱ながら魔力を帯びた素材であることを示していた。


彼女は箱の蓋をそっと開け、中を覗き込む。粗く削られた鉱石、古びた装飾品の破片、用途不明の金属片——その中に、一際強い輝きを放つ小さな宝石が混じっているのを見つけた。まるで鼓動するかのように淡く瞬くその光に、エレノアは無意識に息を呑む。


「……こいつら、ただの廃材じゃないな。」


彼女は慎重にその宝石を取り出し、光に透かしてみた。内部には複雑な紋様のようなものが浮かび上がり、自然の産物とは思えない精巧さを感じさせる。残念だが用途や由来は見当もつかない。それでも手にしたそれがこんな場所で無造作に打ち捨てられてよいものでないことは理解できる。


「ノルン奴……見境なしでそのまま放り込んでるのか。」


思わず苦笑しながらも、エレノアは箱を元に戻した。鑑定すれば相当な価値があるかもしれないが、それを判断するのは店主の仕事だ。


エレノアは周囲を見回しながら、「これは思ったより……面白い場所かも」と小さく呟き、品出しの準備を始めた。



エレノアセレクト

ルビナイハート:未鑑定

掌に収まるほどの小さな紅色の宝石。内部には血管のような繊細な紋様が走り、まるで脈打つように淡い光を周期的に放つ。その輝きは規則的ではなく、不規則なリズムで脈動するため、見つめていると妙な不安感を覚える。

在庫という概念があるならば必要な場所

買取しているならば猶更




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