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004.保存食

大切な食事、手作りには愛ではなく実用性を詰め込む

店の扉には「閉店」の札がかけられ、灯りを落とした店内にはカウンターの奥から漏れるわずかなランタンの光だけが揺れていた。


ノルンは袖をまくり、作業台に向かって静かに息を吐く。


「さて……始めるか。」


作業台の上には整然と並べられた食材――乾いた肉と魚、塩、香辛料、蜜で絡めた木の実、乾果、そして香り高いハーブ。

どれも保存性を重視して選び抜かれたものだが、それだけでは味気ない。

ノルンは冒険者たちが少しでもおいしく食べられるように、それぞれの組み合わせに細心の注意を払い揃えたものだ。


確認するように蜜でコーティングされた木の実の一つを口に放り込む。薄氷を砕くような歯ごたえに続いて木の実の甘さと塩気が口の中に広がる。やや強い味だが、冒険者たちはこうした濃い味付けを好むだろう。


「これは……贅沢過ぎるかしら?」


そんなことをつぶやきながら、ノルンは必要な分量を正確に測り、一つ一つ丁寧にまとめていく。


それらは冒険者たちが過酷な状況で長く耐え抜くための工夫で仕上げられている。乾燥した肉と魚はそのままでも食べられるが、火があれば柔らかくなり、味わいも引き立つ。湯があればシチューにして体を温めることもできるだろう。木の実と乾果はそのままでも勿論、香辛料とハーブとともに魚肉と合わせればそれなりの味になる。


手際よく分量にまとめられたそれを、ノルンは重ねた油紙の上に広げた。

ランタンの明かりが油紙の光沢を照り返し、温かみのある独特の輝きを放つ。その端を慎重に折り重ね、余分な空気を抜きながら丁寧に包み込んでいく。


その動きには一切の無駄がなく、まるで儀式を行うかのような慎重さだ。

ここまで気を使う必要など無いことはノルンも知っている、だが万が一にでも手を抜いたことでダメになることがあってはいけないと思ってしまう。

油紙を二重にするのも長期保存のためだけではない。

頭の中で思い描く――背嚢の底からこれを取り出す状況は、決して余裕があるときではないだろう、と。

油を含んでいるのだ火口としてはこれ以上ない品だ、簡易的ではあるが包帯の代りにもつかえる。


「無いよりはマシって物よ……」


仕上げには蝋を塗り込んだ麻紐でしっかりと縛る。その麻紐も長めに巻き付けてある。冒険者なら、この細く堅牢な紐を緊急時にどれほど有用に使えるか知っているはずだ。


作業台の材料をすべて使い切り、予定していた数を作り終える

最後に、ノルンは「選択の羊」の印を油紙の表面に押し、今日の日付を書き込んでおく。


出来上がった小さな包みを一つ手に取り出来栄えを確認する。

あれだけの食材が本当に詰まっているのだろうかそう思うほど小さくなったそれはずっしりと重く存在を主張する。

たしかにその中には冒険者が一日生き抜くための糧がぎっしり詰まっている。


そのまま背嚢の底で忘れ去られるのも良し。

命の危機に立たされたとき、ほんの少しだけ彼らを支える助けになるのも良し。それがどちらであっても、ノルンにとっては、これらの包みがその役目を果たすだけで十分だった。


「食べないに越したことないわ……こんなの、本当に食べてたら早死にするもの……」


その呟きと共に、ノルンはランタンの火を落とす。

静かに店を後にした。扉の鍵を閉める音が響き、また一日が終わる。




ノルンセレクト

非常食(2銀貨)

乾物詰め合わせ。塩・蜜・油・肉・魚・草がみっちりと一日分。

お湯があれば肉と魚のシチューが2回とお茶と甘味程度になる。

油紙と蝋紐で包まれ保存性に隙は無い。

保存食というか非常食。最近の冒険者は魔物の肉とかすぐ食べるから出番はあまりない

ぺミカン状で無く、詰め合わせ。いろんな味を少しずつ食べたい乙女心に配慮。

余裕があればおいしくできるが冒険者は多分そういうことしない。

どれも専門店買えば安く手に入るがそういうめんどくさいことも冒険者はしない(偏見)

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