残酷で実直な
バレーのスパイカーってかっこいいよね
ハイキュー見るのめっちゃ楽しい
東峰さんが好き
あと岩泉
戦いながらハイドは昔の事を思い出していた。
まだ群れの一員として戦い、助け合っていた日々。
ただ、群れの中で頭一つ抜けてたハイドは時期族長とまで言われていた。
しかしハイドはそれがいい気分ではなかった。
もう何回も。何千回も挑んだ。
目の前で戦っているこの化け物と。
しかし勝てないのだ。
勝てそうな希望すら見えない。
傷一つ追わない。
こんな化け物が居てたまるか、と思わなかった日は無い。
「グハァッ!!」
地面に身体が打ち付けられる。
骨が軋むようだ。
長らく痛めつけられたマイナスの感情は身体を鈍らせる。
牽制の攻撃も簡単にあしらわれる。
右手の拳は空を切り、左脚の蹴りは受け止められる。
爪の跡すら残らず無惨に行き場を失う。
予測して闘っているはずなのに。
遥か先にいるようで、ぐちゃぐちゃの心が絶えず木霊する。
ドス黒い感情と芽生えてはいけないナニカが。
心の中で顔を出すのが。
それでも攻撃し続けなければ。
ハイドの全てが壊れてしまう。
なぁ・・・なんで俺はお前に勝てねえんだ?
恐怖か?純粋な経験か?使い方の違いか?
或いはその全てか?
なぁ・・・なぜ俺は傷一つすらつけられねぇんだ・・・?
「なぁ・・・族長・・・?」
不意に出ていた言葉。
それは敵の目を見開かせ、後退させることに成功した。
「気がついたのか」
「なんでか俺は疑問だった。親が居ねえのに」
ハイドは生まれた頃から親が居ない。
戦いの中で戦死した、と教えられてきた。
元々ウルフ達は親子の概念が限りなく薄い。
群れで一つの生き物であるため全てが親であり、全てが子なのだ。
ただ疑問だった。
族長が俺に向ける視線は、親が子に向ける視線と同じだと思っていた。
「最初は皆んなにそう向けていると思ってた。でも違った。俺だけだった。あの暖かく厳格な視線は。」
「そこまで分かっているのなら打ち明けよう。そうさ。私がお前の父親だ。」
あぁやはりか。と思う。
心の中で割り切っていたはずの感情と想い。
疑問が湧き出てくるがそれを押し殺し声を放つ。
「なら、親としてのケジメだな。」
「一族の恥は親としても見過ごせん」
「親の誓と群の誓、それを持って俺はこの想いを討ち果たす。」
「かかって来い。我が一族の戦士であり一族から抜けし我が子よ。」
初めて。子供と呼んでくれたな。
良かったよ。俺は貴方が父親で。
「我が名、ジハイド・ウルフのハイド!この技を持ってこの喧嘩の終幕とする!」
「ならば応えねば。」
大きく強く息を吸った族長は周りのウルフ達を下がらせる。
「我はリリグランドの森、ウルフ族族長!誠意を持って相対させて貰おう!」
ありがとう親父。
ありがとう族長。
俺はまた一歩強くなれる。
「尖鋭なる我が身を答えん」
始動。それは詠唱。魔物が詠唱するなどついぞ知らぬ事。
しかし、この場において彼は唱えている。
「天晴と共に我らを見下ろす世界の断片よ」
族長はただ待つ。練り上げた闘気をただ一振に構えて。
「我が前に立つ強者を狙う矛となれ!」
構える。右腕を限りなく身体の後ろへ。
左手は相手を見据えたまま。
「『狼犬の剛拳』」
大きな爪が音速とも見える速度で切り込む。
これは誰しも勝てないと思える速度で・・・。
「練り上げられた良き強さ。よくぞここまで・・・」
右手で軽く胸を叩く。
それだけで良い。父親である前に族長なのだ。
甘えは許されない。
「『狼王の遺産』」
金色の光と緑の光。
僅かな拮抗の中光は輝きを失う。
「勝利は必ずしも圧勝では無い・・・か」
双方とも立っていた。
それをアルケル達が見つけたのは煙が晴れてからだった。
しかしハイドは勝っていた。
ぐらりと倒れたのは族長の方。
右胸に小さくて鋭いナイフがただ一本。
族長の胸を貫いていた。
「あれは・・・!」
アルケルが思い出す。
ハント?とかいう冒険者と戦った時に渡したままだった投げナイフ。鋭く美しい銀の光が。
最初で最後の勝利をもぎ取ったのである。
「見事だ。何処へでも行くがいい。汚名は消えた」
ウルフ達により起こされ治療されながらハイドを見てそう言った。
「気が向いたら顔くらい出しますよバカ親父」
ボロボロの体に鞭打って。
ゆっくりとアルケルの方へ歩くハイド。
倒れる身体をアルケルが支える。
「約束通り・・・勝ったぜ・・・!」
「すげぇよお前・・・!」
傷だらけ泥だらけの顔は果てしなくいい笑顔をしていた。
その顔を見てアルケルはただただ賞賛しか出来ずにいた。
決して弱くは無いあの化け物は。
化け物と思っていたアレは肉親で。
自分を長きに渡り苦しめてきたナニカであっても。
恐れず勝ちに貪欲に。
それがハイドだ。
素晴らしき狼の王。
持ちうるはただ一本の剣。
ただひとつの武器は己の信念。
その信念がある限り。
ハイドは勝ちに貪欲な狼となる。
というわけで遅くなりました!
いつも遅いって言ってる気がするね(?)
ハイド君の能力というかスキルみたいなものを少しだけ解説します。
ハイド君は信念、想いといった感情に由来しがちな能力です。要は感情の力で戦う感じ。
相手の感情が強ければ強いほど自分の力も底上げされる。
相手の応援を自分の力にするタイプ。無自覚。